【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

定点観測のスケッチ 前回鳩山代表が解散後第1声の所沢・小手指で岡田副総理が演説 埼玉8区小野塚勝俊さん

2012年11月23日 19時52分48秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

 同じ「解散後公示前」ということで、3年3ヶ月前の「あの暑い夏」に、鳩山由紀夫代表(当時、前期をもって政界引退)が応援演説に訪れた、埼玉8区(所沢市、旧大井町、三芳町)の小野塚勝俊さんのところに、岡田克也副総理が駆けつけるということで行ってきました。

 まず、前回の圧勝に思えた第45回衆院選投開票日の5週間前の時点で、私が一つ奇妙に思ったこと。前回、鳩山さんは演説で猛暑の中、「自民党政権の弊害と民主党政権の必要性」を訴えました。それに対して、聴衆からは「分かってる分かってる分かってるぞ~~~」とのヤジ(合いの手)が飛び、拍手がわきました。そして、演説終了後、鳩山さんが聴衆にもみくちゃにされたのが、次の画像です。

 

 ここで奇妙だと思うのは、私がある一定の時間と空間を切り取った写真とはいえ、「写メール」をしている人がいないことです。一人も。3年3ヶ月経って、きょうはアイフォンか、スマホか。先に結論を書くと、やはり前回演説会に来た方は「(自民党ではなく)当然次は民主党に投票する」と決めている人が多かったようです。だから、「分かってる分かってる分かってるぞ~~」とヤジが飛び、鳩山代表(ネクスト総理)と握手し、自分の意思と体を2009年夏に同期化(シンクロナイズ)する。実は政権交代の312議席圧勝は「消極的な民主党支持」だったのではないか。ということをきょうになって感じました。

 前回、小野塚勝俊さんが日常活動が充実していることを知っていた上で、小手指に行ってみたかったのは、ここは複数の私の友人の出身地で、プロ野球選手が普通に歩いている街だと聞いて、一度行ってみたかった。川上戦術、川下戦術でいうところの、川上にあたるところでしょう。前回驚いたのは、地域の小学生2人が自転車を押しながら入ってきたところを、おそらく昭和10年前後生まれの男性が、「状況を見て判断しなさい」と、自転車で歩道を通ってはいけないとたしなめたのです。地域の知り合いかどうかは分かりません。小学生は歩道で自転車を押しながら歩いていたのですから、道路交通法に沿ったことをしています。しかし、人があふれているところに自転車で入ってはいけない。そなわち「法律の弾力的運用」について、地域のお年寄りが小学生に対してたしなめるという姿をとても久しぶりに目の当たりにしました。


 
このように、自転車が通れる道は当然にして確保しながら(前回も演説中は確保されていました)、整然とした街頭演説会でした。そして、岡田副総理、小野塚さんらに対してネガティブなヤジは、私が聞いた限りではなかったです。別段、ネガティブなヤジがなければ勝てるワケではありません。また、わが党は連合の支持を得ながらも、本質的に大衆政党・国民政党であり、街頭演説会が公明党のように整然としている必要はありません(別段公明党へのけなしではありません)。整然さの中に、一定の雑然さがあった方が、より多くの国民の声を吸い上げて、小選挙区で51%以上の得票を得られます。

 小手指西友の観衆は3年前の3分の2ぐらい、おおよそ300人~500人ではないかと私は目算しました。こういう人数とか、私がジャーナリストだから、主催者発表や警察発表を取材して書くべきだという読者がいるかもしれませんが、そんなのは意味のない数字です。私は私です。人数と勝利は一致しません。聴衆のイチバン端で、写メールをしていた50代とおぼしき女性は、演説会の盛り上がってきた部分で、初めて「がんばれ!」と大きなヤジを飛ばしました。どうやら友人を誘っていてなかなか到着しないので端に構えて、連絡をとっている風情でした。ここから見晴らしが良いところに25階建てぐらいのマンションが複数あるようですが、バルコニーから聞いている人はいませんでした。さすがに寒いということでしょう。参院選なら、バルコニーにも聴衆がでるくらいの盛り上がりがあった方が勢いづきますが、小選挙区ですし、話を聞きたい人は、西友前に来ていたのだと推測します。

 前回と今回の違いは、前回は街宣車と街宣車の間に隠れるようにして立っていた山根隆治参院議員が、埼玉県連代表としてマイクを持ったことです。むしろそれ以上に来年7月に参院選を迎えるとの紹介がありましたから、それがために、今回は登壇するということでしょう。このようにシステム立てて街頭演説会を組み立てられるのは、民主党では、埼玉県連が群を抜いています。

 小野塚さんは前回とまったく同じ「1円たりともムダにしません」とのキャッチフレーズを使っています。日本銀行出身の小野塚さんのぶれない姿勢は立派です。そのうえで、新人だった3年前の夏と違い、「事業仕分けは1日、2日でやっているように思われるでしょうが、あれは私たち若手が2ヶ月も3ヶ月も時間をかけて準備しているんです」として、事業仕分け力をアピール。さらに、隣にいる岡田さんが党行政改革調査会長として先鞭を付けた行政改革実行法案」を「やり残した」として、第46回衆院選で再び国会に送り出してくれるようお願いしました。

 この後、岡田さんがマイクを持つと息をのむような静寂が支配しました。これは衆議院本会議、参議院本会議での与野党と同様の現象です。岡田さんはのっけから「社会保障と税の一体改革法」にふれて、「申し訳ありませんでした」と謝罪し、頭を下げました。とっさに小野塚さんもほぼ同時に頭を下げました。「マニフェストになかったのでおわびします」。もう1回頭を下げると、かなり大きな拍手が起きました。このあと、「一体改革法」の一つであり「幼保一体化法(子ども子育て新システム)」にふれる格好で、厚生労働省、文部科学省などの縦割り行政に取り組んできたとして、一体改革と仕分けをミックスさせた演説をしました。

 そして、「先日、新仕分けをやりましたが、その前に行政事業レビュー、横文字で恐縮ですが、行政事業レビューをやりました。5000ですよ」と語り、各省庁のホームページで行政事業レビューを見てくれるようお願いしました。そして、「自民党では絶対できません」と断言すると、「そうだそうだ」の合いの手と大きな拍手がわきました。

 そして、日銀金融政策をめぐる発言について、「自民党の安倍総裁が~~」と言うと、「岡田ー!石原倒せー!」という大きなヤジが飛びました。どっちの石原でしょうか。

 この後、「TPPはいろいろな議論があるが、力強く進めていきたい」とすると、これはヤジはなく、拍手が地鳴りのように上がりました。ちなみに、当地にはJAがあります。

 そして、「自民党はマニフェストをみると、よく分からない面がある。安倍総裁がどう考えているか明確にする必要がある」として、TPPや原発政策での野田佳彦代表(総理)と安倍総裁の討論を要求しました。

 

 小手指会場では、男女比では男性がやや多く、子育て世代(30代、40代)は少なめでした。ただ、赤ちゃんをおじいちゃん、おばあちゃんがだっこして2人で聞いている聴衆が複数みられました。

 この後、私は電車で2駅の所沢駅西口に。

 ここでは、前回鳩山代表が演説し始めたとたんに、何か叫ぶ男が県警に拘束される(同日中に釈放)出来事がありました。

 今回は弁士の到着前から「民主党が地上から無くなりますように」とのプラカードが出ていました。ところが、近くに行ったら、この活動の参加者は男性1人だけのようでした。



 で、この後、商店街を桃太郎(練り歩き)をしながら、岡田さんが登場。そして、上の鳩山さんの写真と同じ場所に、私も3年3ヶ月ぶりに戻りました。

 
 演説前、ということもああり、写メールにVサイン。

 所沢駅西口は、2階コンコースや乗降客が多いので、数え方はさまざまですが、400~1000人でしょうか。鳩山演説に比べると、3分の2ぐらいでしょう。が、小雨模様だし、そのわりには、2階コンコースで聞いている人は前回よりも真剣に聞いている人が多い傾向がみられたように、私には見えました。

 山根さんに続き、本人(小野塚さん)が演説。この後、岡田副総理登場にあわせて「政権担当能力無し!」との野太い男性の声が上がりました。ネガティブなヤジはこれが初めて。これに反応したのかどうか、岡田さんは「まずおわびしなければならない」と語りました。そして小手指と同じ一体改革の話をしながら、「私は消費税引き上げ論者です!」とし、代表時代の2004年・2005年マニフェストには消費税引き上げが入っていたと反論しました。かえって強いメッセージで上書きするのは、なんとも岡田さんらしい。

 さらにTPPの前振りとして「鎖国して日本の将来があるわけがない」と強いメッセージを発信しました。そして、「解散したときに隣の野田さんの顔を見たが、バンザイしないで粛々としていた。やはり480人の同僚のクビを切ったわけですから」として、野田さんと安倍さんのどっちが総理にふさわしいか選んでほしいと呼びかけると、ひときわ大きな拍手が上がりました。

 そして、先ほどの場所をもう一度握手して歩きましたが、車道側から握手したので、前回とは違う光景。ところが、この後、岡田さんは、テレビカメラに向かって「ここでやろうか」と囲み取材(ぶら下がりインタビュー)が始まりました。

 

 私は事前にこの日程を抑えていなかったのですが、まあ、むりやり、囲みに参加して小ネタを拾ってもしょうがないので、遠巻きに写してみました。



 というわけで、岡田さんをテレビカメラが囲み、二重、三重と人々が囲んだ所沢駅西口ということで、その風景にケータイ、スマホ、デジカメが岡田さんを写すという光景に。

 まあ、できすぎたようなオチになりましたが、私自身改めて、野党ではない、与党としての選挙だということは感じました。

 けっきょく、前回よりも聴衆はやや減りましたが、SP(県警含む)とテレビカメラは増えた。つまり、野党だったのが、与党になったということ。だから、おわびもしなければならない。そして、今回の聴衆でケータイやスマホ、デジカメで撮った人は、能動的に、演説会の話をするだろうと。前回は一体感を味わいに来た有権者も多かったでしょうが、今回人数が減ったとはいえ、足腰の強いオピニオン・リーダーの有権者が働きかけてくれるのではないか。

 そして、わが党は、十分に足腰強くたたかえる集団になりつつあるのではないか。それは埼玉8区総支部・小野塚後援会だけかもしれません。王者・埼玉県連だけで、300総支部の横の広がりでは、稀少な総支部なのかも知れません。その辺の横の状況は分からない面もありますが、わが党は3ケタを十分に超えて、比較第1党をねらえる状態にあるように感じます。まあ意外と勝てるんじゃないでしょうか。

 ただまあ、寒いですね。これは日本列島300選挙区足元から寒いです。ゆっくりと湯船に入ってリラックスする余裕がほしいですね。若い女性運動員・労務員は、これはスカートはむりでしょう。与党だから、あるいはこれからの衆院小選挙区は日常活動の延長が選挙戦に過ぎなくなるでしょう。ドラマチックなのは映画だけで十分です。

  演説会終了後、岡田副総理は関係者に対して「反応悪くなかったでしょ」と語りました。