【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

魔法なんてありません。

2012年11月20日 22時27分05秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

[画像]民主党代表(ネクスト総理)に当選した鳩山由紀夫さん、2009年5月16日

 第45回衆院選の勝利を伝える民主党機関誌を引っ張り出して見ました。2009年9月4日号。日刊紙(公明新聞、新聞赤旗)や週刊誌(週刊自由民主、社会新報)と違って月2回発行なので、通巻で216号となります。野党で215回発行して、与党としての記念すべき第1号でした。

 この中で、鳩山由紀夫代表は「数に奢ることなく国民の声が届く政治を目指したい」と語っています。ところが、やはりすでにこの時から、この3年半の失望の兆しは既にあり、まず、鳩山代表は「自民党、公明党に投票なさった皆さまも」「日本の将来を考えて一票を投じていただいたのではないかと思います」として、「この選挙、この政権交代の勝利者は、(民主党などの支持者だけでなく)国民の皆さんです」として、惨敗した自民党、公明党支持者も勝利者だ、というワケの分からない認識を語っています。さらに、「官僚たたき、役人たたき、そういった誰かを悪者にして、政治家が自らの人気をとるような風潮を戒める」として「官僚諸君の意識をかえる、新たな国民主権の政治を実現してきます」と語っています。よく知る人によると、鳩山さんは人に嫌われたくない八方美人的な性格のようです。ところが、そのわりには、この記念すべき政権交代を伝える機関紙で、連合に対する言及はまったく無し。

 鳩山さんは、まずは隗よりはじめよ、で民主党内、小鳩グループをしっかりとまとめるべきだったのです。

 野党時代、公示前2日前の沖縄での集会で亀井静香・国民新党代表(当時)にけしかけらて、普天間基地の「最低でも県外移転」と軽口を叩いてしまい、その後、民主党本部から首相官邸にわたり、第93代首相となった鳩山さんが大迷走し、米大統領に「トラスト・ミー」、沖縄県民を傷つける内憂外患の大炎上となったのは、皆さんうんざりしながらもご承知の通りだと思います。

 この機関紙では308議席(その後、追加公認3人と前副議長(議長に就任)1人で実質312議席)獲得した中で、長崎2区の福田衣里子さんを象徴的な当選者として1人ピックアップしています。このことについて「私は機関紙に取り上げてほしいと頼んでいない」というクレームは政治家には認められません。それは、頼んでいないのに自分に投票した有権者をけなすようなもので、政治家というのは良い意味でも御輿であって、どのようなメンバーに胴上げされようとも、しっかりと両手と背筋を伸ばして、胴上げされやすい格好にならなければならない。それが政治です。


[写真]政権交代なるーー立党の所期の目的を達したことを伝える民主党機関誌「プレス民主通巻216号」左は民主党(当時)の福田衣里子候補、2009年9月4日付。





 まあ、第45期衆議院で、福田議員はよく頑張ってきたとは思います。「被災地のみなさまにお見舞い申し上げます」と質問を始めた、東日本大震災直後の福田さん(上)とそのまた次に質問をしたときの福田さん(下)です。(上)の画像では、白いメガネで、(下)の画像でっは黒いメガネをしているように思いますが、私の目の錯覚でしょうか。歳費なのか、文書交通滞在費なのか知りません。公職選挙法第199条をていねいに読むと、諫早半島が選挙区の福田さんが、東日本大震災の被災地への義捐金などでは、寄付ができる団体もあるはずです。厚生労働委員なので、日本赤十字社の義捐金口座はどうかはビミョーなところで、私には判断がつきかねますが、その他のルートもあるわけです。その中で、複数のおしゃれなメガネを着用する彼女の姿に違和感を持っていました。それと彼女が住んでいた議員宿舎は、床暖房なんですよね。解散制度がある衆議院議員で床暖房というのは、ある意味、「麻薬」に近いものだと感じます。この真冬に、床暖房の宿舎を出るのは辛いですよね。だから、はじめから床暖房を止めるということを衆議院はすべきだと考えるのですが、まああれば使っちゃうのは人間として当然です。そういった大人の事情も含めて、この福田議員のメガネ姿を見ると、彼女が言う「命をつなぐ政治」とはなんだったんだろう。そう感じざるを得ません。有権者に最終的判断をゆだねるというのが議会制民主政治の最低限のルールです。まあ、政治とは理論ではなく感情ですから、党外の人を細かいことでいじめていると、わが党の厳しい闘いがますます厳しく見られてしまいますから、この辺で打ち止めにします。向かい風のときほど、前に向かって飛べば、浮揚力が働いて高く飛べるそうです。向かい風の中、改革を前に進める方に向かっていきたい。

 「せっかく膨大な作業をしたのだから、ちょっと質問してくれないのかな」ーー
 「フリーランスで宮崎信行ですが、これは資料の3枚目の右側のグラフですけれども、あまりこの分野、知見ないのですが・・・」

 いやー弱っちゃいましたよ、首相官邸内の記者会見録にこんなやりとりが残ってしまいました(>_<)

 2012年11月6日分です。 


 
[画像]首相官邸内ホームページ

 この会見録をみると、なにか私が岡田さんにけしかけられたように思えますが、さにあらず。私は国家国民のために、政権交代ある二大政党政治の完成のために、民主党を応援し続けているのであって、このときの会見資料にハッとするものを感じました。

 このグラフの右側を見ると、国政府から旧特殊法人など(公益法人) に渡ったマネー。補助金などの格好で1600億円。そして契約として1400億円。ほぼ同額が渡っています。

 ここで左側に目を移してください。補助金の件数は600件、契約は4700件です。すなわち補助金1件あたり2・6億円、契約1件あたり0・3億円です。

 4年間の任期の中で、今までの政治はこの、補助金をカットすることで自分の実績をつくろうとする動きが中心でした。4年間の任期というのは首長の任期のことです。補助金をカットして「20億円のむだづかいを削減しました!」と実績を訴えて、再選をめざすという選挙手法は、メッセージとして明確に伝わります。一方、契約をカットするのは、上のグラフで明らかなように、1件あたりの削減額が小さくなります。さらには、契約をとるのは、補助金をとることよりも手間がかかります。当然にして、公益法人は能力のある専務理事をかかえなければなりせん。専務理事は、営業力と知識が必要です。では、その役所に営業したり、手続きに成熟している優秀な人材はどこにいるかというと、それはその役所の退職者なんですよね。先輩が役所の局長室にやってきても、局長は先輩を追い返すわけにはいきません。それが営業力ということになります。ですから、改革政治家が、契約におけるシロアリを退治することは、労多くして実績としてアッピールする数字は上がりにくいし、切られた専務理事は、敵対的な勢力に入れば、弁が立ちますから、選挙では強敵になります。だから、首長らはこの契約におけるシロアリ退治をせずに、切りやすいところの補助金を切って、「20億円節減!」とメッセージを発信する。これは予算法案を審議する権限を持つアメリカ連邦議会でも顕著で、これがために、NASAは切られやすく、スペースシャトル計画が終わってしまいました。

 シロアリ退治は労多くして功少なし。

 岡田行政刷新担当大臣は「せっかくこれはある意味では解剖図ができたわけですから、その解剖図に従って、しっかりと問題がないかどうか、更に突き詰めていきたいというふうに考えております」と語りました。この資料ができただけでも、民主党政権3年3ヶ月の「事業仕分け」の成果だと、私は絶賛したい思いです。

 岡田さんは以前から、地元の地盤を子息に世襲させないことを公言しています。中には、世襲をめざして環境整備してくれた方が、岡田さんの攻撃力が弱まることに期待している向きもあるかもしれません。政治主導とは官僚や広い意味での「公共」をいじめることではありません。岡田さんはそれを意識してか、「(この資料に挙げられた)公益法人はシロアリではないですからね、シロアリに食われた公益法人があるかもしれないということでチェックするということですね」と付け加えました。

 そして、岡田さんは「実はこれが野田(総理)さんの言ったシロアリ退治なのですよね。だから、そのための基本的なデータがそろったところですから、問題があるかどうかはこれからしっかり調べていくということです」と語りました。しかし、いかんせん解散になってしまいましたから、この先は分かりません。これが政権交代ある二大政党政治の情報公開力であり、民主党政権の仕分け力なんです。そして、ふさわしい議員かどうか、議員の中にもシロアがいますから、これは有権者が議員仕分けをする。まずは現職(前職)議員の第45期衆議院における国会議事録を精査することからスタートです。

 有権者に課せられた責任は極めて重い第46回衆院選になります。一人で決めて、一人で投票して終わりではありません。夫婦で、家族で、だれに投票するか、2枚目(比例区)はどの党にするか、話し合い、決めて、責任を共有しなければなりません。議論から説得へ。オピニオン・リーダーは自分以外にも働きかけないといけません。あなたの背中は注目されています。今の有権者だけでなく、子々孫々からも注目されていると心得るべし。

 世界恐慌の足音がしています。今、世界は相互依存を強めています。日本が潰れることはありません。国を開き、国情に応じた電力の安定供給を構築さえすれば、必ず他国との相互依存で日本は生き残ります。その中で、子々孫々に後ろ指を指されない選択をする。それは、「その都度投票」で「今度はどこに入れるか」は許されません。競馬じゃないんだから。

 話し合い、説得し、納得し、投票行動に責任を共有しあう。そうして日本国を受け継いでいく。「質問してくれないかなあ」「あまり知見がないですが」という、この記者会見録が子々孫々に見られる可能性があるのはちょっとだけ恥ずかしいですが・・・(>_<)
 
 改革を前へ。今と未来に誠実でありたい。





 魔法なんてありません。 






首相官邸内岡田副総理2012年11月6日(火)記者会見録から引用はじめ]

(前略)

 それから、2番目は「公益法人に対する支出状況(平成23年度分)の公表について」ということで、これも資料がお配りしてございます。御覧いただければというふうに思いますが、公益法人への支出、全体像というのを初めて示したわけですが、契約によるものが総件数の(約)75%、額でも(約)1,972億円と約52%ということになっております。資料の2枚目のところに書かれたとおりであります。
 それから、3枚目が分かりやすいので、参考のところですね、グラフが出てまいりますが、支出については、国からのものと独法からのものということになっておりますが、いずれにしても契約、独法は契約と契約以外が半々ですが、国からは契約が非常に大きくて、残りが補助金等ということになっております。金額で見ると、国からのものも補助金と契約というのはほぼ同じと、若干補助金のほうが多いということではあります。
 それから、この中で1件当たり1億円以上の契約に関わる支出のうち、継続的なものであって、競争性確保が十分でないもの、例えば随契とか一者応札となっているものが金額上749億円ありますので、ここの部分について重点的な点検、見直しを行っていくとしております。
 本年度中に、各省に本年7月の公益法人に向けた支出の改善に向けた(総務省)行政評価局の勧告において示された自己点検表に基づいて再度点検を求める。内閣府においても、その内容を精査した上で、行政刷新会議に報告を行っているということにしたものであります。
 作業はかなり膨大になりますので、少し時間がかかっております。
 自己点検表というのは、例えば契約等における参入拡大のための措置の促進とか、競争性のない随契の適正化とか、競争性のある契約等における適切な評価、点検の実施の確保といったものが示されているところであります。
 それから、あとはこれを御覧いただければと思いますが、あとはこれは金額ベースで見たものですが、公益法人に着目をいたしますと、この参考の資料の最後のところを御覧いただきますとお分かりのように、右のほうですね。公益法人ごとの支出額ということで、50億円以上のものが20法人、その20法人で1,612億円ということで、かなりのウエイトを占めております。10億円以上まで含めますと半分以上を占めるということになっております。
 この中で特にベスト20というか、多い20法人に特に着目して、少しここはここで先ほど言ったのはお金の流れで中身を見るということですが、こちらは公益法人に着目して、例えばそこに天下りの実態とか、関連団体への支出とか、そういうことをもう一度よく見てみる必要があるのではないかというふうに思っております。
 既に今までの事業仕分けなどで取り上げてきたものも、この20の中には多いわけですが、少し時間もたっておりますし、それから全てが対象になってきたわけではありませんので、もう一度見直す必要があるのではないかというふうに思っております。
 以上、それからせっかくこれはある意味では解剖図ができたわけですから、その解剖図に従って、しっかりと問題がないかどうか、更に突き詰めていきたいというふうに考えております。
 私から以上です。

(中略)

岡田副総理

せっかく膨大な作業をしたのだから、ちょっと質問してくれないのかな。
 これはかなりの作業量だったのですね。

記者
 フリーランスで宮崎信行ですが、これは資料の3枚目の右側のグラフですけれども、あまりこの分野、知見ないのですが、私もこれをちょっと見て非常に驚きまして、公益法人に国から流れている補助金が(約)1,600億円で、契約が(約)1,400億円あるということで、ほぼ同じぐらいのお金が契約という形でも流れていると。
 支出の件数、左側、取引で見ると補助金が(約)600件、国からの支出件数は(約)5,300件と、ですから一つ、ごめんなさい、違いますね。契約が(約)4,700件ですね。
 ですから、1件当たりの契約における金額というのは、それは補助金に比べれば大分少ないわけですが、そうはいっても、当然これは手間がかかるわけですね、補助金というのは真水ですから。この契約をするというのは、様々な手間がかかる。
 その分野でひょっとして、天下りというか、専門的な知見を持つ公務員経験者なんかを公益法人で専務理事なんかをやってもらいたいというふうな、そういったところもあるのではないかと思いますが、そういったところに今後この資料を使っていかれますでしょうか。

岡田副総理
 先ほど言いましたように、まずはそういう公益法人に着目したチェックというのは、大どころ、20ぐらいをまずよく詳しく見てみようというふうに思っています。そのことと、この契約の中身でその内容が適切かどうかというチェックと縦糸、横糸でやっていこうということですね。

記者
 大どころの20というのは、この50億円以上の20法人ということおっしゃっているのですね。

岡田副総理
 そうです。

記者
 それと、行政事業レビューで、これは国のほうの歳出ですけれども、見たときに驚いたのは一者応札というのは、随分多いのだなと、ちょっと驚きました。
 そういったところで、契約の関係の見直し、全体的にどういった仕組みでチェックをこれからされていきますでしょうか。

岡田副総理
 これは一つひとつ見ていかなければいけませんので、基本的には所管省でまずチェックしていただくということが重要なのですが、同時に我々のほうでも各省が見た結果について、もう一度しっかりチェックをしていこうということです。
 いろいろな理由があるというもの、やむを得ないものもあるのだろうとは思いますが、本当にやむを得ないかどうか、よく見る必要があるというふうに思っています。
 実はこれが野田(総理)さんの言ったシロアリ退治なのですよね。だから、そのための基本的なデータがそろったところですから、問題があるかどうかはこれからしっかり調べていくということです。
 この公益法人はシロアリではないですからね、シロアリに食われた公益法人があるかもしれないということでチェックするということですね。

(後略)

[引用終わり]

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岡田克也「羽田孜総理が心血注いだ政治改革をしっかり後世に」「政治家というのは国家と国民のためにある」

2012年11月20日 04時49分42秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

[写真]民主党初代幹事長に就任した羽田孜さん(1999年当時)と民主党幹事長就任会見(2010年9月17日)で議員バッジを外す岡田克也さん、右の写真は民主党ホームページから。

 羽田孜さん(77)を「政治の母」と仰ぐ副総理の岡田克也さん(59)。

 私は2011年5月30日(月)の岡田・民主党幹事長記者会見で羽田内閣総辞職の前夜に2期生の岡田さんが官邸に乗り込んで、「野党の自民党と社会党から羽田内閣不信任案がもうすぐ提出されるが、その前に総辞職すべきだ」と迫った経緯について聞いてみました。

 岡田さんは新生党青年代議士時代の羽田総理(新生党党首)への進言について、

 「いずれにしても、後で振り返ったときに、あのとき解散すべきだったかどうかは議論の分かれるところで、私も時々考えることがあります。あのとき解散すれば勝てたんじゃないかと。確かに当選1回の脆弱な議員が多かったですが、選挙制度(改革)をようやく実現して、そこで自社が野合して村山さんを担いだ政権ができることに対して、解散して戦えば我々勝てたんじゃないかと、そういう思いは時々あります。 羽田さんを何時間もかけて説得して、それの結果だったのかどうかわかりません、帰った後、(総辞職表明まで)数時間まだありましたから。しかし、結果的には総辞職ということになったので、羽田先生には申しわけないという気持ちは常に持っておりますし、それがその後、新進党において私が党首選挙で海部さんではなくて羽田さんを応援した。逆に言うと、小沢さんの考え方とそこからずれが出てきたと、こういうことです」

 と述べ、今でも時々考えることがある、つまりは後悔していることを明かしました。

 そして、羽田さんが1994年6月30日(木)の内閣総辞職の記者会見で語った「国会議員はもっと虚心(坦懐)になってほしい。少なくとも(すべての国会)議員が羽田孜ぐらい(虚心坦懐に)になってくれれば、もっと日本の政治はよくなるはずだ」「もう政局はやめにしよう」という言葉について。岡田さんはどう思うか。2011年5月30日の岡田幹事長。

 「大事なことは、政治家というのは、当然のことながら国家・国民のためにあるわけですから、この大震災の中で、例えば総理を代えろという声がある。総理を代えて、じゃあその後どうするのか。谷垣さんにも別にプランがあるわけではない。あるいは党内でいろいろ言っている人にもそういった具体案があるわけではない。結局、それは混乱を招くだけで、時間もロスする。はたして被災地で苦しんでいる皆さんの立場から見たときに、それがどういう意味を持つのかそのことは虚心坦懐に考えていただきたいと思っています」。

 こう語りました。しかし、この記者会見の3日後に、菅内閣不信任案が上程される事態となり、否決されたものの、その後の政局の混乱はみなさん、うんざりしながらご承知の通りだと存じます。

 それから1年半。野田佳彦総理が衆議院を解散しました。岡田さんは7期生にして初めて官邸内に執務室を持ち、解散詔書に署名しました。それから4時間後の定例記者会見。この3時間後に衆議院は解散され、羽田孜さんは連続14期在職43年間の衆議院議員生活にピリオドを打ちました。任期は来年8月まであったのですが。

 この解散制度における政治の不条理をどう思うか、質問しました。

 「少し大きくて答えるには難しい質問ですが、あのときに私が解散すべきでないと申し上げたのは、選挙制度改革、小選挙区比例代表並立制が国会を通っていた。しかし、まだ実施に至っていなかったという状態ですね。そこで解散すれば中選挙区で解散すると。中選挙区で新たに選ばれた人たちが、選挙制度改革をもう一回、元に戻してしまう、そういう危険も考えられたわけですね。そういう中で、やはり羽田総理が心血注いでつくってこられた政治改革をしっかり後世に確実に実現するために、解散はすべきでないと申し上げたところです。今回は大分事情も違います。そういう特段の事情もありませんから、この時期の(野田佳彦)総理の決断というのは、私は見事なものだと思います

 断言しました。

 「あのとき解散すれば勝てたのではないか」と苦悩を吐露した2011年5月の岡田幹事長とは違った、2012年11月の岡田副総理がそこにいました。たった64日間で羽田内閣は倒されちゃったけど、羽田さんは立派な息子たちを残したものだと感じます。

岡田克也幹事長/記者会見要旨 2011年5月30日(月)16時05分~16時35分から引用はじめ]

(前略)
○羽田内閣総辞職を振り返って 
 
【フリーランス・宮崎記者】1994年6月24日、いわゆる宮沢解散から1年と1週間後に羽田内閣総辞職があった。これは少数与党になったということで、当時第1会派の自民党や第2会派の日本社会党などが内閣不信任案を提出する構えを見せて、ほぼ可決されることが確実である状況で、不信任案を上程する前に羽田内閣は総辞職した。24日の夜、当時2回生の岡田克也さんと3回生の石破茂さんが官邸で羽田総理と会って、翌朝まで話し合った。その内容は、政治改革関連法案が既に成立しているので、次の総選挙は小選挙区でやりたい、今解散したら中選挙区になってしまう、中選挙区だと広域でお金もかかる。若手から、1年しかたっていない、解散をやめてほしいという意見があり、それを受けて岡田さんと石破さんが総理に伝えに行ったと。あのとき実際はどういうことだったのか。また、岡田克也個人としてはどういう考えだったのか。 
 
【幹事長】講談社から出ている『政権交代』をお読みいただきたいと思います。私が書いた本です。あのときに、私も石破さんもともに「解散をすべきではない」と、そう申し上げに参りました。ただ、理由は2人異なったわけで、石破さんは、今おっしゃったように「若い議員のために、ここは解散すべきでない」という話でした。私のほうは「せっかく小選挙区制度の法律が通った。しかし実施は、今やれば中選挙区になる。中選挙区で1度選挙をやりますと、そこで当選してきた人たちが、この選挙制度についてどう判断するかはわからない。また中選挙区に戻る可能性がある。そういう中で、相当努力した結果できた小選挙区比例代表並立制を確実なものにするために、解散すべきではない」と申し上げました。ですから、論理は2人全く異なりました。結論は一緒です、「解散すべきじゃない」と。

いずれにしても、後で振り返ったときに、あのとき解散すべきだったかどうかは議論の分かれるところで、私も時々考えることがあります。あのとき解散すれば勝てたんじゃないかと。確かに当選1回の脆弱な議員が多かったですが、選挙制度をようやく実現して、そこで自社が野合して村山さんを担いだ政権ができることに対して、解散して戦えば我々勝てたんじゃないかと、そういう思いは時々あります。  羽田さんを何時間もかけて説得して、それの結果だったのかどうかわかりません、帰った後、(総辞職表明まで)数時間まだありましたから。しかし、結果的には総辞職ということになったので、羽田先生には申しわけないという気持ちは常に持っておりますし、それがその後、新進党において私が党首選挙で海部さんではなくて羽田さんを応援した。逆に言うと、小沢さんの考え方とそこからずれが出てきたと、こういうことです。 【フリーランス・宮崎記者】数時間後の羽田さんの記者会見を見ると、「国会議員はもっと虚心になってほしい。少なくとも議員が羽田孜ぐらいになってくれれば、もっと日本の政治はよくなるはずだ」と、羽田総理ご自身がおっしゃっている。今振り返って、この言葉をどう感じられるか。 【幹事長】どういう趣旨で言われたのか、率直に言って私もよくわかっているわけではありませんので、コメントは控えたいと思います。  ただ、大事なことは、政治家というのは、当然のことながら国家・国民のためにあるわけですから、この大震災の中で、例えば総理を代えろという声がある。総理を代えて、じゃあその後どうするのか。谷垣さんにも別にプランがあるわけではない。あるいは党内でいろいろ言っている人にもそういった具体案があるわけではない。結局、それは混乱を招くだけで、時間もロスする。はたして被災地で苦しんでいる皆さんの立場から見たときに、それがどういう意味を持つのか、そのことは虚心坦懐に考えていただきたいと思っています。 【朝日新聞・南記者】当時を振り返って、自社が野合して、そのときに解散したほうがよかったんじゃないかと思うことがある、とおっしゃったが、今まさに、自民党側が次の政権プランを示さぬままに総辞職を求めて、内閣不信任案を突きつけようとしている。これに対抗して、万が一可決された場合には、解散すべきと幹事長はお考えか。 【幹事長】それは総理が決めることです。もちろん、総理の解散権は誰にも制約されることはありません。それ以上のことは申し上げるべきではないと思います。それは菅総理がお決めになること、それ以上のことはありません。 【日経新聞・恩地記者】党内には、「もし不信任案が可決されたら、総理は解散する」という見通しの声と、逆に「被災地はまだ県議選も行っていないのに、解散なんかできる状況にない」という声もある。被災地の状況なども踏まえて、実際問題、解散できる状況にあるとお考えか。 【幹事長】そういう議論をするべきではないと私は思います。その前提は、内閣不信任案が民主党の中の賛同者を得て可決されるという議論ですから、そういった仮定に仮定を重ねた議論まですべきではないと思います。  そういう意味では、私は(達増)岩手県知事の発言は、怒りを持って聞きました。ぜひ被災地の皆さんのことを第一に考えてもらいたい。知事にもお願いしておきたいと思います。 【共同通信・中久木記者】今日、自公の幹事長会談で、不信任案提出について週内にも行うことで調整することが決まった。不信任案が提出された場合に、すぐに週内に採決すべきなのか、あるいは週をまたいで来週か。今の段階でのお考えがあれば伺いたい。 【幹事長】それはその状況で判断するしかないですね。ただ、あまり引き延ばすことは、私は賢明ではないと思います。やはりこれだけ重要な案件が山積しておりますので、少しでもしっかりとした審議を早く行うことが重要だと思います。ただ、多少のやりとりといいますか、駆け引きは当然あるかと思いますが、基本はやはり、出されれば粛々と否決していくということだと思います。

 (後略)

[引用おわり]

平成24年11月16日岡田副総理記者会見要旨から引用はじめ]
(前略)記者

 フリーランスで宮崎です。衆議院解散(まで)、もう3時間ほどでなりますけれども、昨年6月の民主党幹事長会見で私からお伺いしたのですが、羽田孜内閣総辞職のときに、2期生として官邸に乗り込んで「解散しないで総辞職してください」と言ったという話がございました。
 間もなく解散になりますと、羽田孜さん、43年の衆議院議員生活にピリオドを打ち、引退ということになります。今、官邸側で解散をする側の立場として、解散とは何か、政治とは何か、今、岡田さんはどう思われますか。

岡田副総理

 少し大きくて答えるには難しい質問ですが、あのときに私が解散すべきでないと申し上げたのは、選挙制度改革、小選挙区比例代表並立制が国会を通っていた。しかし、まだ実施に至っていなかったという状態ですね。そこで解散すれば中選挙区で解散すると。中選挙区で新たに選ばれた人たちが、選挙制度改革をもう一回、元に戻してしまう、そういう危険も考えられたわけですね。そういう中で、やはり羽田総理が心血注いでつくってこられた政治改革をしっかり後世に確実に実現するために、解散はすべきでないと申し上げたところです。
 今回は大分事情も違います。そういう特段の事情もありませんから、この時期の総理の決断というのは、私は見事なものだと思います。

(後略)

[引用おわり] 

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