【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

民主党、マニフェスト発表。野田代表「実現する苦労を知ったが、それでも掲げて選挙を闘う」

2012年11月27日 20時57分44秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

[写真]2012マニフェストを発表する野田佳彦・民主党代表(首相)、2012年11月27日午後5時過ぎ、筆者撮影。

 民主党は2012年12月4日(火)公示16日(日)投開票の第46回総選挙のマニフェスト(政権公約)の前提になる政権政策を発表しました。2009民主党マニフェストは日本を代表する「ホテル・ニューオータニ」宴会場で発表しましたが、きょう11月27日(火)は党本部内ホールでの発表となり、「しわけの民主党」を体現しました。

 2003年の第42回衆院選以来、「マニフェスト」という言葉を初めて日本に紹介した民主党の試みは、与党として初めて衆院選のマニフェストをまとめるという新しい段階に入りました。野田さんは「この3年3ヶ月間で、マニフェストを実現する苦労を知りました。厳しい検証をしながらも、それでもマニフェストを掲げて選挙を闘う」と語りました。マニフェストは公約実現の時期と数値をハッキリ示すもの(イタリア語でマニフェスト)ですが、野田さんは2009マニフェストで政権を担いながら、リーマン・ショックによる減収と東日本大震災が発生したことを踏まえて、数値を柔軟にしたとしながらも、それによりかえって「書いてあることは今まで以上に実現性が高くなり、現実的になりました」「より現実的になったのは間違いない」としました。

 消費税法(平成24年法律68号)の附則18条2項には「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する」となっています。

 2012マニフェストの19ページ、「1.共に生きる社会」の「9.」には「消費税率引き上げによる増収分は、すべて社会保障の財源に充てる」と書いてあります。自民党の「国土強靭化計画」は10年間で200兆円(民間資本含む)となっています。かりに、現在の5%時代に国庫で使える歳入は、8兆円程度であり、地方分、民間分を含めても国土強靭化200兆円はムリ。公明党が求めた低減税率も入っていません。低所得者への給付措置(3党合意で言う「簡素な給付措置」)、「事業者が価格に消費税分を適性に転嫁できるように、独占禁止法・下請法の特例」(いわゆる転嫁Gメン)は入っています。しかし、6月15日の3党合意(すでに法律として公布)に対するゼロ回答ともとれます。民主党内では、修正後の議案を参院で採決する直前に3党首合意(「近いうちに信を問う」)に追い込まれたため、6月15日の3党合意は白紙に戻ったとの認識もあります。そもそも法律には「検討する」としかなっていません。民主党は自民党の国土強靭化計画、公明党の防災減災ニューディールにゼロ回答をしたともうけとめられます。

 このほか、「次の4年間もムダづかいの根絶に取り組む」として「特別会計の数を17会計51勘定から11会計26勘定に減らす法律を来年の国会で成立させる。」「現在の独立行政法人を102法人から65法人に統廃合する法律を来年の国会で成立させる」「行政改革実行法の制定をめざ」す、など、具体的な法案により、政府を縛る与党らしいマニフェストになってきました。

 2009マニフェストは外交防衛で章立てしていませんが、2012マニフェストでは4番目に章立て。しかし「冷静かつ現実的な外交防衛」となっており、政権を担う重荷を感じさせます。

 要諦は、民主党総支部長(衆議院議員?)がうまく有権者に説明し、あるいは説得し、有権者からの声を総支部長経由で党に届けることができるかです。ちなみに、2009マニフェストには「仕分け」という言葉は1回も登場しませんでした。野田さんは「各候補者がそしゃくして、ここに書いてあることは頭の中に入れて、説明してほしい」としました。また前職に関しては「つくる過程に参加していただいております」として、説明はできるはずだとの認識を示しながらも、「項目によっては政調会長に一任をいただいた部分もあり・・・」と言葉を濁しました。政調会長に一任した以上は代表なり、政調会長なりの決定に従うのは、与党・自民党なら当然です。ところが、民主党はこれまでそうでなかった。その民主党自身のあり方が仕分けられる選挙にもなります。野田さんの背中を押しましょう。ただ、きょうの記者会見で細野豪志・政調会長、司会の馬淵澄夫・政調会長代理が「野田総理」と言っていましたが、こういう記者会見では「野田代表」と呼ぶべきです。これは自民党ならば、幹部、議員、職員が徹底しているところです。こういうところがまだまだだと感じます。

 きょうの記者会見で筆者はトップバッターで質問することができました。民主党らしいのですが、やはり与党として守りのマニフェストとして、3年半前、超有名ホテル宴会場記者会見での情報発信と比べると守りでした。ただ、ほぼ同時期、この同じ会見場で、一仕事終えて、外のソファに腰掛けタバコを吹かしていた司会者が、スポーツ紙記者から「すいません、ちょっと都議選の話でお伺いしても良いですか」と声をかけると「私で良いんですか?」と驚く野田佳彦幹事長代理の姿を思い出しました。ちなみに、ソファの近くに分煙スペースができたので、現在そのソファでは喫煙できない状況だと思いますが、野田さんは政権交代後、ずっと政務三役を務めている唯一の政治家なので、そのことを知らないでしょう。たくさんのSPに囲まれる野田総理は私たち庶民の総理です。そして、ソファで一服していた司会者が総理になるというのが、政権交代ある二大政党政治のダイナミズミです。私のように、これからの日本の将来がハッキリと見えている、もちろん違った未来になるわけですが、そうなった要因も楽しんでいきたいという心の世余裕を持ち合わせる人間にとっては、野田という男はよくやっているし、全力で支えたいと惚れ込める。

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 テクスト版マニフェストはこちら(http://www.dpj.or.jp/global/downloads/manifesto2012.txt)。

 衆議院は解散されましたが、野田内閣は当然職務を執行しています。岡田克也副総理は、2012年11月27日(火)の閣議後定例記者会見で、3党合意にもとづく発足する社会保障制度改革国民会議の民主党、自民党、公明党が5人ずつ選んだ15人の委員の一人である宮本太郎・北海道大学大学院教授が日本共産党の宮本顕治元党首(参院議員)の長男だという指摘について、「親父は共産党の大幹部でも、息子は社会保障の分野では実績がある有識者」として、親は親、子は子だと強調したうえで、期待を示しました。さらに、「30年ぐらい前の話ですが、自民党が出していた選挙公約は、役所に(執筆を)依頼して、役所がチェックしていた」「(通産省の)会計課(=民間会社でいう社長室に相当)がつくって、各課に回してチェックしていた」「私もチェックしたことがある、30年ぐらい前の話ですよ」と暴露しました。30年前なら、鈴木善幸内閣のころですから、さもありなん。とはいえ、特例公債はすでに発行していました。
 
 さらに、小沢一郎氏は、新生党(羽田孜党首)、新進党、自由党についで、国民の生活が第一の解党を決定。ついに4つめの解党となりました。なお、国民の生活が第一は昨年末に結党した新党きづなが合流しており、政党交付金は2・5億円程度入っていたと思われます。だれか、東京地裁に保全申請をしてほしいものです。もともと、今回の解散は、新進党三羽烏(野田首相、岡田副総理、藤村修官房長官)が小沢氏に政党交付金がわたる前に解散したという見立てがありました。比例東京ブロックと言っても、定数わずか17人で、おおよそ6%の得票率で1議席獲得できる狭き門です。小沢氏が情勢が厳しく、1月1日付の政党助成金要件に絶望して、国民の生活が第一を解党して、日本未来党を旗揚げに走った可能性があります。小沢氏は借金して選挙資金を工面しているのかも知れません。極限状態になると、人間は本性を隠しきれず性根があらわれ、一度裏切る人間は二度裏切るとされます。そうやって小沢氏が燻り出されている。ただ、私は長年、小沢氏に近寄るのは危険だと警鐘を鳴らしてきました。しかし、私が批判されたり、私が冷笑されたりしてきました。ドン・キホーテを気取りながらも、なぜ私の説得が説明が15年間、届いてこなかったのか。東京拘置所に拘束される友人が複数出るまでにいたってもなお、小沢氏に近づく人がいます。激しくなじりたい。「ほらみろ、あなたの人生おじゃんになったじゃないか」、と。その辛さ、私自身の説得力にかける理由をこれから探していきたいと考えます。

 

 そういう中で、きょう質問したときに、「きょうの五反田の演説で代表は「仕分け」という言葉を使わなかったが、(他の)街頭演説では「仕分けの継続」への反応が良いようだ」と言うと、「おおそうですか」と目を大きくしていました。政界では、こういう風に目を大きくする表情は、かならずしも本心でない、何か思惑がらみであることが多いのですが、野田さんの目は本気のように私には感じられました。ただ、では総理のもとにどういう情報が入っているのか。どうもきょうの五反田での演説、社会保障と税の一体改革からスタートする演説は、財務省が書いているように、私には感じられました。内閣総理大臣の漆黒の暗闇の孤独。とにかく総理を裸の王様にしてはいけません。これが官邸運営のコツのコツだと、私は考えています。

 しっかりとていねいに説得できる人間に成長していきたいと考えています。それが私自身の第46回衆議院議員総選挙の自分の中でのたたかいです。克己心です。