ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

27年ぶり衆参単独過半数の参議院日程闘争より充実審議「参議院らしい格調高い」スタート、TPP「間抜け批判」寄せ付けず[きょうの国会]

2016年11月14日 18時05分37秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

[写真]参議院、三宅坂・国立国会図書館前から望む、皇居又は霞が関から見て奥、官邸又は六本木から見て奥、自民党・民進党本部から見て手前、2016年4月、筆者・宮崎信行撮影。

 4か月前の、第24回参議院議員通常選挙で、参議院(定数242)のうち、自民党会派が122議席となり、宇野内閣以来27年ぶりに衆参単独過半数を回復しました。

 2010年以降、政治を騒がしてきた「TPP」は衆院通過直前の米大統領選で発効が絶望的な情勢となり「間抜け」な状態で、参議院に送られました。参議院側の野党第一党、民進党の小川敏夫会長・小川勝也幹事長・榛葉賀津也国対委員長は、送付翌日の本会議での代表質問と、委員会への即時付託。そして週明け9時から5時まで、たっぷり、テレビ(NHK)、インターネット(参議院や、有料のニコニコ動画)、ラジオ(NHK)入りの審議を優先しました。


【参議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 平成28年2016年11月14日(月)】

 林芳正委員長が開会。理事席には、おなじみの自民党の石井準一さんがいました。

 自民党の2人はともに、2013年初当選組。私は与党・自民党の2013年初当選組は、勘違いしている人が多い、と指摘してきましたが、もう3年以上在職して政務官にもなっているので、勘違いし続けてもいいのかな、と感じます。

 自民党(石川選挙区)の山田修路(やまだ・しゅうじ)さんは、「私はTPP交渉に入るときの、(民主党の)菅内閣、野田内閣の農林水産審議官として事務方の責任者を務めた」と語りました。安倍首相は、トランプ次期大統領当選で、TPPの発効が難しくなったことを率直に認めました。ただ、「共和党政権は伝統的に自由貿易を推奨してアメリカの経済を強くしてきた」と語りました。安倍首相自身、TPPをあきらめているが、RCEP(アールセップ)、FTAAP(エフタープ)のモデルになるので承認を急ぐ、との認識をにじませたものと解釈できます。

 昨年の安保国会でやや自民党の路線を修正する質問をした、自民党の三宅伸吾さんは電子商取引について質問。参議院では、ルール分野の質問が続きました。派閥は違うようですが、参議院清和会会長を兼ねる閣僚の、世耕弘成経産相は「三宅委員は、日経新聞でこの分野のエース記者だった」と褒め称えました。

 参議院の第一委員会室のテレビ入りは通例、民進党から質疑することが多いのですが、きょうは自民党からでした。

 民進党は小川勝也幹事長が登場。

 「与党の質疑者2人は、参議院らしい格調高いスタートだった」、「参議院らしい良い審議をしていきたい」と衆側の日程闘争路線から打って変わって、徹底審議路線を打ち出しました。

 小川さんは、米国情勢の変化をうけて、各論にはあえて入らず、「自由貿易で北海道の石炭産業が絶えた」とし、自由貿易にあたっては国内保護を先取りすべきだとしました。

 安倍首相は「TPPはガラス細工であり、一つ一つ取り出しての再交渉はできない」と語り、トランプ次期大統領の考えで漂流することを認めました。小川さんは、TPP交渉の歳出を質問。内閣官房の渋谷審議官は「ほとんどが旅費滞在費で、3・8億円だ」としました。小川さんが重ねて、大臣に随行した職員の額も問うと、渋谷審議官は「質問通告を受けて土日に計算した」とし、「1・1億円だ」と答弁しました。岸田外相は、米議会のロビイストを雇っていたことを認めましたが、金額は明かしませんでした。

 小川さんは、「アメリカは裁判もビジネスだ」とし、ルール分野で、積極的に訴訟される可能性を示唆。あとに質問した、希望の会・自由党の山本太郎さんも、代理人ムラのようなものがあり、そこには日本人は一人もいない、と裁判ビジネスの存在を指摘しました。

 無所属クラブの行田邦子さんは「与党・民主党政権の議員だったときには、TPPには反対だったが、TPPできてみると意外と良いではないかと感じている」としながらも、私は「無所属クラブだから」首相を褒めて得する立場ではない、と強調してから質問に入りました。

 日本のこころの和田政宗さんは、TPPに反対する団体は、昨年安保法に反対していた団体と同一の団体もあるが、70年前はブロック経済の行き過ぎで戦争になったのであり、自由貿易を推進するTPPに反対するのは矛盾しているという趣旨の立場を表明。山本農相は和田さんへの答弁で、、TPPが禁じる輸出奨励金について、日本国内の漁業補助金は問題無いと断言。日本からベトナム(越)への魚の輸出は関税ゼロになるので、商機があるとしました。財務省の麻生大臣は、日本酒をアメリカに輸出した場合、地理的表示(GI)があり、他国で製造したものを「日本酒」と偽ることができなくなる、と明言しました。

 先週のトランプ大統領当選による、TPP発効絶望的な観測の後ですが、それをまったく感じさせない、参議院の素晴らしい審議でした。

 午後5時頃、一巡し、散会し、テレビ中継も終わりました。

 小川勝也さんに戻りますが、今週木曜日にニューヨークでトランプ次期大統領で会談できる方向の安倍首相に対して、「総理、気をつけてニューヨークに行ってきていただきたい」と語り、質問を終えました。私も同感であり、総理は十分に気を付けていただきたい。願わくば、開口一番に「TPPをやろう」と吹っかけていただきたい。日米同盟の件は何とかなります。

 また、トランプさんは予備選で、「中国から仕事をとってくる、日本から仕事をとってくる、メキシコから仕事をとってくる」と演説していましたから、日本からの自動車部品輸入の関税をゼロにして、中国からの日用品の関税を1000%くらいにしたらいいでしょう(この一文の後段は冗談)。

 私はTPP絶対賛成ですが、RCEP(アールセップ)=交渉妥結せず=には反対です。理由はRCEPに中国が入っているからです。ただ、あまり中国を追い込み過ぎてはいけないでしょう。TPPはグローバル化なのか、はたまたブロック経済化なのか。これはもう、議論してもどうにもならないところです。いずれにせよ、私は日本人であり、日本国益第一主義者だということです。

 補正もありましたが、事実上初めての第24期参議院での第一委員会室。日程を気にせず、審議が深堀りされた格調高いスタートでした。

【衆議院 平成28年2016年11月14日(月)】

 ありませんでした。

この記事の本文は以上です。

(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
(http://miyazakinobuyuki.net/)

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パリ協定公布、平成28年11月14日(月)条約第16号

2016年11月14日 08時45分45秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

 パリ協定が、平成28年11月14日条約16号として公布されました。官報特別号外第39号に掲載されました。

 「パリ協定」の4文字が正式名称。条約は既に発効済みです。

 法律・条約の公布は通例、水曜日付け(前週金曜日の定例閣議決定)、金曜日付け(火曜日の定例閣議決定)が通例で、月曜日付けの公布は異例。異例の参議院先議条約であり、衆議院の定例火曜日の本会議(11月8日)午後に両院承認されたことから、水曜日に持ち回り閣議決定し、天皇が署名したのではないでしょうか。

 なお、当ブログは、日本国憲法の第1条象徴天皇と第7条国事行為の趣旨を基本とし、日教組等による戦後民主教育と偏向マスコミへの抵抗から、「天皇陛下は」の主語で法律の公布や、国会召集詔書を報じてきました。

 ただ、島国ゆえ、大山鳴動しがちな日本国民の間で「天皇ブーム」が起きていることの危惧から、今後は、天皇を主語から外して報じていきたいと考えています。

 パリ協定は、気候変動(地球温暖化)の枠組みで、世界のすべての国に、産業革命後摂氏1度ないし2度の気温上昇に抑えるよう行動を義務付ける条約で、昨年のCOP22パリ会議で締結されました。その前身は、その前のCOP3京都議定書となります。これもまた1997年橋本内閣の時の出来事でした。

 このエントリー記事の本文は以上です。

 
  

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