【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

自民党公認候補全員に説明責任があるだろう地方創生の結末、共産・田村智子「鉄道の廃止代替案は国が主導すべき」と修正案提出も否決される

2023年04月20日 18時12分35秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]JR東日本・東急・東京メトロ3社が3分の1ずつお金を出し合い、地方創生の「容積率緩和特区」で建設した渋谷駅ビル47階で「東京に出てきてよかったね」と語り合う若者たち=3年前の2020年、宮崎信行撮影。

 統一地方選たけなわですが、国会は「ほぼ8割運転」です。これでも、4年前よりは国会のセンセイ方も、地方の仲間を大事にし出したような印象です。

【参議院国土交通委員会 きょう令和5年2023年4月20日(木)】
 「地域公共交通活性化・再生法案」(211閣法17号)の法案審査。蓮舫国土交通委員長が仕切りました。共産党はこの法案を統一地方選の同党の包括的な政策として連携した議論を試みました。質疑終局後に田村智子・副委員長が修正案を提出しました。内容は、JRなどの鉄道の存否をめぐる再構築協議会を設ける政府案と並んで「再構築協議会では、国が主導して代替案を示すべきで、鉄道網全体を考えて、鉄道廃止の代替案はなるべく鉄道による案を心がけるべきだ」とする内容。

 採決では田村さんの修正案は広がらず、否決。政府案が共産・れいわ反対、自公立など賛成で可決すべきだと決まりました。あす成立のはこび。

[写真]田村智子さん、今月2023年4月8日、横浜市港北区「日吉駅」で、宮崎信行撮影。

 田村さんは、前半戦の最終日の夕方、横浜市・港北区の東急東横線「日吉」で、県議会・市議会の現職のともに女性候補2人を応援。票は減らしつつも、2人とも当選しました。

 その東急東横線の始発「渋谷駅」は、小泉内閣でできた「SPC特別目的会社」を、東急・JR東日本・東京メトロ3社が3分の1ずつ資金を出して新設。安倍内閣の「地方創生」で、容積率緩和の「特区」に認定され、銀行からの融資も受けて「渋谷スクランブルスクエア」を建設しました。正直、商業サービルフロアは渋谷地区でかなりの後塵を拝している印象ですが、事務所フロアを超えた最上階は「渋谷スカイ」としてSNSで有名となっています。最近韓国人インフルエンサーが投稿した「ティックトック」は一つの動画だけで2000万再生を超えて、日本語・英語・フランス語・アラビア語の言語で「いつの日か、日本に行ってみたい」とのコメントであふれています。私が東京生まれの友人にぜひ行くべきだとすすめると、2000円の入場料が高いとの反論もありますが。東急・JR東日本・メトロは、ここであがった収益を、配当ないし鉄道の維持・持続可能性に使えるわけで、アベノミクス地方創生の皮肉な結実としかいいようがありません。自民党公認の各級議員全員が説明責任を負っているといえそうです。

【衆議院本会議】
 採決は無く、「空家対策特措法改正案」(211閣法43号)について、大臣の趣旨説明と、立憲、維新の2党議員の代表質問がありました。感染対策で半数出席のルールが適用されました。法案は「吊るし」が降りて、今後、国土交通委員会で審査されることになります。

【参議院内閣委員会】
 第一委員会室で開かれました。重要広範議案「新型インフル特措法及び内閣法改正案」(211閣法6号)で、総理入り質疑がありました。

 自民党の三宅伸吾さんは「内閣官房で庁をも設けるのは初めてだ」と指摘すると政府は「府省の外局と、内閣のデジタル庁などがあるが、内閣官房は初めて。行政各部の総合調整をする。司令塔として一段上の組織となる」と答弁しました。私は30年近く前、政治学科で片岡寛光教授に「ドイツ語の官房は、動詞でもあるが、日本では動詞としての官房は使われず調整というが、総合調整という言葉は日本以外ではあまり聞かない」という趣旨のことを習いました。当時の首相官邸は小さかったですが、巨大官邸になった2023年でも総合調整という言葉が使われ出すようになりました。

 採決は、立憲・共産・れいわ反対、自民・公明・維新・国民賛成多数で可決すべきだと決まりました。あす成立のはこび。採決では、政治改革選挙で初当選したスター議員で多くの若者から尊敬された上田清司さん(国民民主党会派)が、政府案に賛成するのに舟をこいでいたようで、委員部委員が走っていき上田さんを起こす残念な場面がありました。

【衆議院憲法審査会】
 8週連続8回目の開催となりました。自由討議では、憲法9条の2「国防規定・自衛隊明記」について発言が集中。立憲民主党の階猛筆頭幹事が「なぜか9条に集中している。議題は自由討議なので、緊急事態条項について発言したい」とし、共産党の赤嶺政賢さんは、現行憲法下で自衛隊創設を共産党が主導した「野坂参三・吉田茂論争」を持ち出して、知識を高めるよう求めました。

【参議院総務委員会】
 「地方自治法改正案」(211閣法19号)が趣旨説明されました。質疑は次回。「地方自治体に、議会を置く」だけの条項を初めて具現化する自治官僚の息遣いが聞こえる骨のある地方議会改正法案ですが、本会議での説明は省略され、大臣が読み上げただけで、次回に法案審査するてはずとなりました。国会議員たちの地方議会軽視がうかがえます。

【外交防衛委員会】
 参議院の矜持が見えました。日英・日豪の駐留軍地位についての条約と実施法案が一括して審議入りしました。外務大臣が「日豪円滑化協定」「日英円滑化協定」の承認案を説明し、防衛大臣が「実施法案」を説明しました。「211条約1号」「211条約2号」「211閣法33号」「211閣法34号」の4案一括で、次回質疑します。

【法務委員会】
 「仲裁法改正案」(211閣法28号)「調停に係るシンガポール条約国内実施法案」(211閣法29号)「ADR裁判外紛争手続法改正案」(211閣法30号)を一括して採決して、可決すべきだと決めました。

【厚生労働委員会】
 「健康保険法改正案」(211閣法16号)が審議入り。
【衆議院地域・こども・デジタル特別委員会】
 「マイナンバー法改正案」(211閣法46号)の参考人質疑。
【参議院経済産業委員会】
 「GX経済移行法案」(211閣法12号)の参考人質疑。
【参議院文教科学委員会】
 「私立学校法改正案」(211閣法21号)で衆では呼ばれなかった幼稚園経営者も招いた参考人質疑。

 以上です。

 

 

【維新・大阪市議会過半数の影響か】衆・憲法審で公明党・北側一雄さんが「9条の2条文イメージ」で自民党・新藤義孝さんを名指し批判、

2023年04月20日 17時20分38秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]公明党の北側一雄さん、今から14年前の2009年8月、大阪府・堺市で、宮崎信行撮影。

 衆議院憲法審査会は定例・木曜日のきょう2023年4月20日、8週連続で開催されました。

 自民党の新藤義孝さんは憲法9条に「自衛隊」の規定を追加することで、違憲論の解消をはかる考えを、先週から再び憲法審の俎上に戻しています。

 連立与党の公明党・北側一雄中央幹事会議長が異論を唱えました。北側さんは2014年7月1日の解釈改憲と2015年の平和安全法制で、高村正彦自民党副総裁と2人で連立与党の協議最高メンバーをつとめました。その経験に加えて、先々週投開票の選挙で、日本維新の会が結党以来初めて大阪市議会でも単独過半数をとり、大阪府内で10年以上続いた維新・公明の小選挙区協力の解消を明言したことから、大阪16区(堺市中心部)の北側さんが大阪17区(堺市郊外部)の馬場伸幸・維新代表との間合いを探り出したとみられます。

 北側さんは「平和安全法制は、2015年5月に法案が国会に提出され、同年9月に成立し、翌2016年3月に施行されました。平和安全法制には、安全保障に関わる様々な関連の法整備が含まれていますがその肝となるのが憲法9条のもとで許容される自衛の措置の限界を明確化したことです。いわゆる武力行使の新3要件です。その基本的な考え方は、法案提出の前年である。2014年7月1日の閣議決定で示されています」としました。北側さんは「私は自公の与党協議、さらにはこれに基づく関連法案の策定、成立に至るまで与党の実務者として関わりました」「憲法9条のもとで許容される自衛の措置について、これまでの政府見解の根幹、基本的な論理は何か。改めて確認したいと思います」としました。

 この後、北側さんが述べた意見は、2014年から2015年にかけてのものと全く同趣旨でした。

 そのうえで、北側さんは「先週の新藤議員の意見に対する若干のコメントを申し上げます」とし異例の連立与党批判。北側さんは「新藤議員はこれまでの9条の政府解釈は堅持したうえで、9条の2として、国防規定とその担い手である自衛隊を明記すべきと主張されています」としつつ「次の点についてはやや疑問があります。自民党のたたき台案では、必要な自衛の措置をとることは妨げずとありますが、9条2項の例外規定と呼ばれる余地を残すことになり、賛成できません。また、自衛隊という組織を憲法上明記することによって、憲法上の国家機関とされないのか、また憲法72条で行政各部の一つとして位置づけられている防衛省の上位機関とみなされないのかということです」と語りました。

 これについては、自民党内での調整でも意見が出ているところです。

 きょうの憲法審査会では、立憲民主党の階猛さんが「自由討議なのに、なぜか9条の話ばかりしている。緊急事態条項の話をしたい」と語り、自民・公明・維新・国民・有志が事前に「9条の2」で議論が進むように示し合わせたのではないかとけん制しました。

 以上です。

国民民主党ぬるま湯、政府案に賛成なのに採決時に舟をこいでいて委員部員に起こされる かつてのスター議員・上田清司さん

2023年04月20日 16時53分46秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
 かつてのスター議員が国民民主党のぬるま湯につかってしまいました。

 参議院内閣委員会は、「新型インフル特措法及び内閣法改正案」(211閣法6号)について岸田文雄首相を呼んで質疑しました。この後、採決になりました。

 この法案は自民、公明、維新、国民が賛成し、立憲、共産、有志の会(衆院のみ)、れいわ新選組が反対しており、野党内で賛否が分かれています。

 採決では当然、上田清司内閣委員も起立しますが、どうやら居眠りしていたようで、委員長がフェイント。参議院職員である委員部員が走り、上田さんを起こして話して、上田さんが起立し、「可決すべきだ」と決めました。



[画像]起立するはずの上田清司委員を起こしに走る参議院委員部員、きょう令和5年2023年4月20日の参議院インターネット審議中継から宮崎信行がキャプチャ。


 国民民主党は4年前の統一地方選で現職再選を優先するために、新人の公認を絞りました。前回衆院選でも「現職全員当選」を目標とするなど、現職議員のぬるま湯ぶりが際立っています。

 以上です。