【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

2016年「32ある一人区で野党一本化」「市民と野党の共同候補」体制は転換点、岡田克也「一本化は一つの知恵」

2023年04月26日 21時16分42秒 | 岡田克也、旅の途中
[写真]「32ある1人区すべてで野党一本化」という現在まで続いた路線の最初の野党党首会談にのぞむ志位和夫さん、岡田克也さん、2015年7月、宮崎信行撮影。

 国会議事堂前に20万人が詰め寄った平和安全法制「シールズの夏」で成立した市民連合を介した「野党一本化路線」「32ある1人区で一本化」に成功した「2016年体制」が転換点を迎えました。

 岡田克也代表・枝野幸男幹事長、志位和夫委員長・小池晃書記局長の「野党連携」は、地域ごとに代表がいる「安保法制を廃止して立憲主義を回復する市民連合」(代表委員・山口教授)とともに「市民と野党の共同候補」として、第24回参院選で、「32ある1人区で一本化(香川のみ共産公認)」に成功しました。

 その後、揺り戻しはありながらも、岡田・枝野両氏が旧民主党の主導権を握り続けたため、維持され、2年前の補選の完勝を経て、第49回衆院選にのぞみましたが、議席減(小選挙区は増加)となり、枝野代表が辞任しました。この際、岡田・枝野両氏らが2016年以降一度たりとも公の場で発言していない「野党共闘」という言葉を使い、「野党共闘が否定された」という関東大震災の朝鮮人虐殺ばりのありもしないでっち上げデマ誤報を読売新聞・産経新聞が報じ、これを指摘した筆者の記事(枝野幸男前代表「野党共闘という言葉は一度も使っていない」「今の選挙制度から必然的に求められていた」「想定外に早く野党第一党になってしまい政権の選択肢を示さざるを得なくなった」 - ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記)は反響を呼びました。

 そして、昨夏の第26回参院選では、日本維新の会に比例代表で1議席上回れるという非常に歴史的な敗北を喫した立憲民主党。今週の第20回統一地方選後半戦でも日本維新の会・大阪維新の会が700近い地方議員を擁するまで組織が拡大しました。

 岡田克也さんは今週日曜日のNHK開票特番の午後10時台に、千葉5区補選で「一本化できていれば勝てた」と発言しましたが、その後大分補選で自民党候補が当選したことから、「一本化しても勝てない」という現実を突きつけられました。

 これについて、きのう令和5年2023年4月25日の記者会見で筆者の指摘に対して「野党が一本化する、あるいは選挙で候補者の調整をするということは、必要条件であって、十分条件ではありません」「やはり地力の差というのはあるのです、地域によっては」「もう少し私たち立憲民主党は力をつけなければいけないということだと思います」「候補者を調整するということは一つの知恵としてあるのだというふうに思っています」と語りました。

 数学書によると、必然的に導かれる結論が必要条件で、成り立たせるために十分な仮定が十分条件。ですから、大分のように与野党一対一で接戦になるための必要条件で、野党候補が乱立しても立憲民主党候補が接戦になった千葉5区では一本化交渉は十分条件だということになると思います。衆院選は小選挙区比例代表並立制で、他の野党は小選挙区に立てた方が比例拡大につながるので、次期衆院選に向けて野党一本化は「十分条件」の色彩が強くなり、調整は緩くなると考えられそうです。

 維新の伸長と、共産の退潮に加えて、立憲が新潟県連を除いて接戦区でことごとく負け続けたことから、野党一本化路線は転換することになりました。2016年体制のもう一方の実力者、枝野幸男さん福山哲郎さんの考え方にも注目されます。

 以上です。

GX原発60年超ルールは議員修正で「規制庁憎し」加速で可決、菅直人元首相異例の討論で「安倍晋三元首相の祖父岸信介の詔勅署名と同じ犯罪だ」と吹っ切れる

2023年04月26日 18時56分33秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]菅直人さん、きのう25日、宮崎信行撮影。

 大型法案の衆議院から参議院への送付の目安となる、大型連休入りまで後3日間で、重要広範議案GX原発60年超の総理入り質疑が行われ採決。菅直人さんが首相経験者で異例の反対討論にのぞみ、「岸信介の犯罪」と言及するなど吹っ切れました。「孤独孤立法案」では有志の会の緒方林太郎さんも前川清とクールファイブの名曲「東京砂漠」の歌詞を紐解くなど、解散総選挙から2度目の通常国会の佳境を迎えた衆議院は小選挙区当選組が吹っ切れたすがすがしさをみせています。

【衆議院法務委員会 きょう令和5年2023年4月26日(水)】
 流会しました。「入管難民法改正案」(211閣法48号)の採決は見送られました。寺田学筆頭理事が主導した修正案をめぐり立憲民主党内の機関決定がされていないことが最大の理由だと考えられます。

【経済産業委員会 同日】
 重要広範議案「GX原発60年超ルールの原子力基本法及び電気事業法改正法案」(211閣法26号)の質疑が終局。自民・公明・維新・国民の修正案が提出され「原子力規制委員会の業務拡大により原発新設審査の遅れが出ないように5年後をめどに規制庁の業務を見直す」との閣法にアクセルをかける内容となりました。立憲・共産が強硬に反対し、自民・公明・維新・国民が賛成して修正すべきだと可決しました。先に参議院に送付された「GX移行債」の法案も衆議院修正でした。正直、立共と自公維国は「電力・エネルギーという目に見えない世界」で話し合っても歩み寄れないという日本人の限界を示したと思います。
 採決に先立つ、反対討論には、首相経験者としては史上初かも知れませんが、菅直人さんが登場。菅さんは「亡くなった安倍晋三元総理の祖父の岸信介は商工大臣として開戦の詔勅に署名した。80年経ってそれと同じくらいの犯罪だ。私が総理在任中の東電福島原発事故で、日本が壊滅するイメージが頭から離れず、眠れなかった。その後、2年間原発ゼロだったが大停電は起きなかった」と振り切れた発言をしました。ちなみに、東京裁判は国内法の対象外ですし、岸は逮捕されましたが起訴されておらず、二重の意味で犯罪者ではありません。菅議員は76歳ですが、個人的には東京18区(区割りの中心は維持)でもう1期以上やってほしいとは思います。

【参議院本会議】
 防衛三文書についての岸田文雄首相の報告とそれに対する質疑が2時間以上行われました。
 その後、4法案が可決し、成立しました。
 農地法人所有とスマートシティー基金特区の「改正特区法」(211閣法37号)は立共反対、自公維国賛成多数で可決し成立しました。
 地方議会の設置根拠を初めて具体的に挿入した「改正地方自治法」(211閣法39号)は共反対、それ以外の賛成多数で可決し、成立しました。
 提出前の調整が手間取った「改正私立学校法」(211閣法21号)は全会一致で可決し、成立しました。
 「改正グリーンウッド法」(211閣法31号)は過半数で可決し、成立しました。

【衆議院厚生労働委員会】
 「水道行政の国土交通省・環境省移管法案」(211閣法45号)が共産党反対、自公立維国の賛成多数で可決すべきだと決まりました。

【国土交通委員会】
 「空家対策推進法改正案」(211閣法43号)が審議入りしました。なお、閣法45号をめぐって厚生労働・国土交通連合審査会が開かれました。

【内閣委員会】
 「孤独・孤立対策推進法案」(211閣法36号)。
 参考人質疑には、NPO法人あたなのいばしょ理事長の大空幸星理事長らが発言しました。数年前から衆参とも、参考人質疑があった当日に採決するのは参考人にも失礼ないので、しないようにしています。きょうは対政府質疑1時間を挟んで、採決となりました。採決では、有志の会・れいわ新選組が反対し、自公立維国賛成多数で政府原案通り可決すべきだと決まりました。

 討論は有志の会と緒方林太郎さんとれいわの櫛渕万里さんの2人が立ちました。緒方さんは「行政学のパーキンソンの法則のように、内閣府のスクラップ・アンド・ビルドすべきだ」とし、「東京砂漠がヒットしたのは1976年で、孤独・孤立は政策課題としては古い」と指摘しました。ウィキペディアによると、東京砂漠は前川清さんがボーカルの内山田洋とクールファイブが歌唱し、歌詞の意味は、「北九州から画家を目指して上京したものの夢破れた男性が、歌舞伎町で一杯ひっかけてモダンジャズ喫茶の前でタクシーを待っていたところ、北九州の中学の同級生の女性と偶然鉢合わせたが、初々しい面影は失せ、目を合わせないように黙って雑踏へ消えていった光景」をうたったもの。福岡9区選出の代議士として東京の国会議事堂で、北九州の先輩男性の思いを代弁したようです。

【政治倫理・公選法改正特別委員会】
 選挙のやり方について各会派の意見表明と自由討論がありました。

【衆議院財務金融委員会】
【衆議院厚生労働委員会】
 「防衛財源確保法案」(211閣法1号)の連合審査会や対政府質疑がありました。「お金という目に見えない世界」をめぐって、与野党議員が不毛な論戦を繰り広げました。

【文部科学委員会】
 「日本語教育機関認定法案」(211閣法22号)の対政府質疑の1巡目の前半が3時間20分コースで開かれました。

【外務委員会】
 「日本バーレーン投資協定」「日本アゼルバイジャン租税協定」「日本アルジェリア租税協定」(211条約4・5・6号)を承認すべきだと議決しました。この後、「調停に関するシンガポール条約」(211条約8号)「2022年国際コーヒー協定」(211条約10号)「WTOマラケッシュ協定の改正」(211条約11号)の3本が審議入りしました。このうち211条約8号は国内実施法案が既に参議院法務委員会で審議されており、「衆議院外務委員会のアンブレラの原則」という条約承認審議を優先させようという原則から外れています。以前にも、子の連れ去りのハーグ条約で法務委員会が先行した事例はありました。

【沖縄・北方特別委員会】
 大臣の所信的あいさつに対する一般質疑が3時間行われました。

【参議院憲法審査会】
 今国会3回目の開催です。衆議院側はすでに8回開催されています。合区の解消をめぐって、四国四県の正副知事が意見を述べました。徳島県は後藤田正純新知事が誕生したばかりですが、副知事が参加しました。複雑な選挙制度への不満が、目に見える世界・目に見えない世界で大きくなっています。

【消費者問題特別委員会】
 「景品表示法改正案」(211閣法27号)が趣旨説明され、審議入りしました。質疑は次回。

【3つの調査会】
 開催されました。

以上です。



りっけん首都圏の黎明期を支えた、連続4選の大野まさき多摩市議がまさかの惜敗

2023年04月26日 17時21分16秒 | 立憲構成員である読者を想定した2021-22選挙・組織情報
 枝野幸男さんが設立したりっけんの首都圏の若手市区議の選挙運動を支えた、大野まさき多摩市議会議員がまさかの落選をしていたことが分かりました。大野さんは1968年4月生まれで、27歳で東京都武蔵野市議に初当選し、連続3期。その後議席を失い、大河原雅子国会議員の秘書を経て、2010年補選から民主党公認多摩市議となり連続4選していましたが、日曜日の選挙で惜敗しました。

[画像]立憲民主党がきのうの常任幹事会に提出した資料の一部。

 大野さんは当初は「市民の党」でしたが、こちらは完全に絶交しています。大野さんは選挙上手だとそちらの残党のグループでも知られていますが、新生党出身の岡田克也幹事長の事務所ではその名は知られておらず、私がきのう大野さんの話をしていました。が、日曜日に惜敗の結果が出ていることを今日知りました。

 大野さんは、首都圏の選挙のやり方が分からない立憲の市議・区議候補を現場で指導。首都圏を回って、現場で補えることは補えました。実は4年前から大野さんは前半戦に各地の応援に回っていて、後半戦の自分の選挙は大丈夫かと懸念する同志の声はSNSで散見されていました。

 自民党、公明党、共産党でこの役回りをしている首都圏の地方議員はいないと思います。

 私はきのう岡田事務所で「旧民主党はバラバラだったけど、立憲は公認漏れの仲間には為書き一枚寄越さない方向でまとまっている」と皮肉を言いました。前半戦の最終日に、元民主党衆議院議員の応援を受けた候補が、そのままこの駅頭でマイク納めをするのか、選挙事務所でマイク納めをするのか「決めていない」「これだけボランティアの人が集まってくれたから、マイクが使える時間帯に地元地域を街宣車で回したい」という現場で起きた混乱を、大野市議と私で納めたこともあってか、当選につなげました。その時、たった一人の「他の都県連とはいえ、党員である現職」が2週間後に現職でなくなってしまい残念です。

 多摩市議会は、勉強会で知り合い早稲田大学政治経済学部の同窓でもある元市長候補の議員が仲間を誘って2候補1組で上位当選したようですが、私はりっけんの仲間を大事にしたいです。

 SNSでは、さっそく埼玉県内の市議が二人組で大野さんのもとに駆けつけたとも記述されています。

 以上です。