[写真]民主党・新緑風会会長の輿石東さん、筆者撮影。
逃げました、逃げました。安倍首相が逃げました。
参議院予算委員会は2013年6月24日(月)、午前9時から「予算の執行状況に関する調査 外交・内政をめぐる諸問題」の集中審議を行うことになっていました。
ところが、あろうことか、前夜の都議選自公全勝による二日酔いでもあったのか、安倍晋三首相ら答弁者、参議院自民党の予算委員が現れない事態になりました。
[画像]閣僚席と自民党・公明党委員席がぽっかりと空いた参議院予算委員会、2013年6月24日(月)午前9時15分頃、参議院インターネット審議中継からキャプチャ。
石井一委員長(今夏改選)は、
「ただいまから予算委員会を始めます」「この場に自民党と公明党の委員はいませんが、この委員会の開会要求書が今月上旬から出ています。参議院規則第38条の2は『委員の3分の1以上から要求があったときは委員長は委員会を開かなければならない』と定めており、その後13回の理事による話し合いを経ても開催のめどが立ちませんでした。私としても苦渋の中、もう少し中立な立場から委員会を開催したかった」として、楠木正成の言葉を引用した上で、「集中審議開催のための質問取りを拒否するよう安倍首相は事務局に命令しており、私から質問項目を伝えましたが、現段階での開催は困難な状況となっております。日本国憲法は(63条で)内閣総理大臣は、答弁または出席を求められたときは国会に出席しなければならないとあり、(憲法99条で、天皇や内閣総理大臣の)憲法尊重遵守義務も定められているところですが、こうして欠席するという対応は参議院予算委員会を愚弄したものだ。本日は集中審議を行わない方向ですが、念のため、休憩にして、(安倍首相の一分の正義を)待ちたいと考えます。暫時休憩します」
と語りました。
[画像]「参議院予算委員会を愚弄している」と経緯を丁寧に分かりやすく説明した上で休憩を宣言した石井一委員長、2013年6月24日(月)午前9時15分ごろ、参議院インターネット審議中継からキャプチャ。
第183回通常国会は、補正予算、本予算、暫定予算、再び本予算という極めて異例の予算審議をしてきました。5月15日(水)の本予算成立後、「予算の執行状況に関する調査」は両院予算委員会で一回もされていません。予算の執行に関していくつも問題があります。緊急経済対策である補正予算なのに、いまだに未契約の案件があります。過去に国から自治体に渡しきりにして「基金」のうち、一部を返してもらえる見込みが立っていますが、法的根拠に乏しいゆえに、国会でしっかり議論した実績をつくらないと財政法定主義に反します。そして、実際の経済の押し上げ効果のほか、都市と地方、資本家と労働者、高収入者と低・無収入者へのお金の巡り方もしっかりとチェックしなければ行けません。
なによりも、参議院議員通常選挙(4日公示、21日投票)の前に、与野党の論点をしっかりと提示する必要があります。安倍首相は反論型の答弁をしています。日本記者クラブやニコニコ動画の討論会に出席して、国会に出席しないのは道理が通りません。
ただ、安倍自民党ばかりせめるのは、ちょっと違うかな。率直な感想です。
輿石東・民主党・新緑風会会長による戦略ミスが浮上してきました。
このため、先週金曜日に参議院自民党の中曽根弘文会長外(ほか)が「議長不信任決議案」(183決議案4号)を出しました。これは「衆議院0増5減区割り反映法案(183閣法51号)について、参院で審議・採決しなかったことで院の存在価値を下げたという理由です。これは確かに道理が通っています。
参・総務委で趣旨説明された「自治体の臨時職員に期末手当を支給するなど抜本的待遇改善法案」(183参法9号)が、質疑されずに廃案になる公算が高まりました。「自治体の臨時職員」というのは、「民間企業の非正規雇用者」とは意味合いが違い、長く勤めるのにはその自治体で資格をとる必要があります。たとえば、各職場で、健康保険組合のしくみが分かっている人が臨時職員1人だけということはよくあります。「季節労働者」と揶揄される、財政課の職員が何日も職場のソファで睡眠を取りながら働いているときに、健康診断を1年以上受けていない職員はだれかを掌握したりします。週4日勤務ですから、育児とも両立しやすく、共働きしやすいです。ただ、やはりそういった働き方をしているのですから、期末手当は支給すべきだという法案です。
さらに、民主党・無所属クラブ(衆院会派)が一生懸命修正協議をした、生活保護法改正法案、電気事業法改正法案(電力改革法案)も廃案になりそうです。超党派による、水循環基本法案、雨水利用促進法案も厳しい。衆議院側でも、久しぶりに審議が加速した条約案件が本会議に間に合わない可能性が出てきました。
このように、輿石東会長は7期目を迎えて、慢心があったのではないでしょうか。そもそも、海江田万里代表・細野豪志幹事長体制を参院主導でつくったのが、最大の戦略ミスです。参議院公明党では会長・幹事長がともに引退するので、輿石人脈が生きなくなります。輿石さんを支えた会派の副会長、国会対策委員長らも多く引退します。中には、「輿石アズマではなく、輿石アクマだ」と揶揄する声もあります。輿石会長にしっかりと楔を打ち込めるかどうかが、第23回参院選に前後した参議院民主党の真価が問われるのです。
ちなみに、輿石さんは1990年衆院初当選なので、岡田克也さんと同期なんですよ。この2人の志の違いはなんなんでしょうか。ダーウィンの進化論「わずかな違いが存亡を決する」ならとっくに存亡を決しているはずですが、下町でけんかにあけくれる少年時代を過ごし、今でも左頬にけんかの傷が残る私と違って、民主党参院議員はあまり人を見る目がないように感じます。それでいて個別訪問はまったくやらず、自分が先に消えていくんですから、支持者はたまったものではありません。
参議院における輿石恐怖政治から脱却しないと、参院選も衆院選も負けるでしょう。
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