[画像]答弁する村木厚子厚生労働省社会・援護局長、2013年5月29日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
さあいよいよ、泣いても笑っても、会期末ウィークとなりました。
会期終了後には、閣法成立を見届けた各省局長以上級の幹部が人事異動。厚生労働事務次官には村木厚子さんが昇格します。女性の事務次官としては、村木さんと同じ労働官僚の1997年~1998年の松原亘子・労働事務次官以来。まつばら・のぶこさん、通称タンコさんですが、私は半年間だけ労働省記者クラブに在籍したことがあります。そのとき女性事務次官ということで、我ながら巡り合わせに恵まれていると感謝します。何回も書いていますが、民主党結党の母である、笹森清・連合事務局長(当時)とタンコ事務次官が「伊吹労相選挙干渉事件」の「手打ち」の記者会見をしたことを覚えています。一方的に話す笹森さんの隣で、タンコさんが大臣の名代として背筋を伸ばして上品に静かに受け答えしていた姿をよく覚えております。
私は横浜支局記者時代にも、労働省の出先機関の女性管理職に、毎月の雇用手当の推移のプレスリリース(県庁記者クラブ投げ込み)を取材していました。ペーパーそのままに記事にする月もあるのですが、雇用情勢が流動的だった時代で、直接出向いて取材する月もよくありました。私の「雇用手当の推移だけでなくそこから見える地域経済、日本経済の現状を描きたい」という取材意図をよく理解してくれ対応してくれました。各出先機関の同じ担当者が集まる会議で聞いた全国の雇用状況なども教えてくれました。労働官僚は連合ともつきあい、文部省ともつきあい、現下の雇用情勢や学生の就職などを支えてきました。同じ建物の厚生省と合併してしまったのはとても残念です。それから13年間、働き方は多様化しましたが、それは労働者にとって「蜘蛛の糸」のように厳しく、学生にとっては人生のスタートが切れない事態が多発したまま、ふたたび自民党が政権を握ってしまいました。
さて、会期末です。
参議院厚生労働委員会は「生活保護法の改正法案」(183閣法70号)を審議しています。
この法案は生活保護法24条に次のような文章を入れるものです。
[生活保護法の改正法案の第24条から抜粋引用はじめ]
保護の開始の申請は、第七条に規定する者が、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出してしなければならない。
一 要保護者の氏名及び住所又は居所
二 申請者が要保護者と異なるときは、申請者の氏名及び住所又は居所並びに要保護者との関係
三 保護を受けようとする理由
四 要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む。以下同じ。)
五 その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項
として厚生労働省令で定める事項
ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない。
[抜粋引用おわり]
と言う風になります。最後の「ただし、」からは、衆院段階で、民主党の柚木道義さんらが修正したものです。
これは本当に腹立たしい話で、生活保護を申請しようとする人が、こんな難しい書類を書けるわけがないでしょ!世間というものを否定するに等しい。再チャレンジがどうの、自立がどうのという問題ではありません。
そして、衆議院修正で、「ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りではない」と入りました。これで会期内に成立する見通しでしたが、先週末、参議院の状況が変わりました。
石井一・予算委員長が月曜日に集中審議をやることを決めたことを受けて、自民党の中曽根弘文参議院議員会長らが「議長不信任案」(183決議案4号)を提出しました。これにより火曜日に採決する予定だった生活保護法改正法案の会期内成立に暗雲がともりました。現在、月曜日の本会議は設定されていません。本会議は前日までに設定し、公報に載せなければいけません。火曜日は定例日ではありません。会期末ですから、火曜日に開いても良いでしょうが、このままでは議長不信任案の採決は26日水曜日の会期末当日の本会議になりかねません。
そうなると、生活保護法改正法案は審議未了廃案になる可能性が出てきました。
ただ、山井和則さんが提出した「子どもの貧困対策推進法」はすでに参議院で可決・成立しています。
生活保護法改正法案は、村木事務次官のもと、もういちど厚労省が練ってもいいのではないでしょうか。
生活保護行政は、法定委託事務でありながら、自治体に4分の1の負担を求めており、これが「水際作戦」による窓口での追い返しにつながっています。全額国費で負担すべし。ただし、今の国財政ではかなり厳しい。村木次官、総務省、財務省の3者チームで、もう一度揉み直して、来年の通常国会に出してみてはどうでしょうか。社会保障制度改革推進国民会議がまとめる「年金制度の将来像の法案」も含めて、セーフティ・ネット総合法案をつくるのです。村木さんの先輩、松原タンコ次官は、笹森さんにも動じなかったような人です。村木さんならやれます。セーフティ・ネット総合法を成立させて、東宮大夫からご即位の礼を経て、宮内庁長官へ。ご皇室の持続可能性も村木さんにお任せしたい。
このほか第183回国会では、電気事業法改正法案(183閣法54号)、海賊多発海域の日本船舶警備法案(183閣法48号)、水循環対策推進基本法案(183衆法39号)なども、審議未了廃案となる見通しになりました。どうしても、「成立させるべし」という意見がある人はこういう政治日程の場合、Twitterで働きかけるのがもっとも有効です。
そして、やはり、衆議院で安倍内閣不信任案を出して、会期末当日に野党各党党首と与党幹事長が演説して参院選を迎えることが、国民に選択肢を見せることになります。
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