今読んでいるとても面白い本がある。「雑食動物のジレンマ」という本である。人は効率を求めて、トウモロコシの炭酸異化作用に頼っているといものであるが、ここは難解なので別の本を読むことになってしまった。いずれ紹介したい。
本書の一文である。有機農業をやっているある農家の声である。
「うちの商品には全部の経費が入っている。今の社会では、水質汚濁や、抗生物質の耐性や、食物感染や、穀物に石油に水の助成金やらの、環境と納税者が払っている代償が隠されている。安い商品は安いと感じるだけだ」
何のことはない。これはそっくり原発生産のエネルギー(電力)に当てはまる。安全や事故に関わる予防も含めた経費を、いずれ納税者は払うことになるのである。
日本は今回のフクシマの事故で、それを学んだはずである。それを無視した、原発の電力価格は安価であると言い続けてきたのである。
農産物も同じである。大量生産と生産効率を追求することで、農産物価格はとりあえず安いだけである。
さらに最近では、小農は効率が悪いと切り捨てられて、大農に多くの補助金が支払われている。大農、大型生産体系は環境、エネルギー、家畜、水質などに多くの負荷をかけることになるのである。
結局はいずれかの時点で、我々の子孫がその代償を払うことになるのである。
原発の放射性廃棄物も同じである。農業の場合は、物理学ほど明快な数字を出すことはないが、こうした生産構造は、原発依存社会とまったく同じである。
有機農業により生産された農産物が高価であることは、将来の代償も納税者への負担も、生産者が行っているためなのである。