昨年の12月24日に沖縄のアメリカ空軍に所属する25歳の兵士が、公園で16歳未満の少女に声をかけ、自宅に連れ込んだうえ、性的暴行をしたが、これが明るみに出たのは、それから6か月たった6月25日である。
外務省は当初から把握し、官邸にも通知されていた。こうした事件に対しては、日米の通報体制が決められていたが、官邸も外務省も沖縄県には通知しなかった。
上川外務大臣は、「被害者のプライバシーを守るために」通知しなかったというのである。東京の官邸が沖縄県の被害者をどうして守ることが出来るのか不思議な話である。言い訳に過ぎない稚拙な理由である。
被害者のプライバシーを守るのは、現地沖縄の県だったり警察である。沖縄は信頼できないと言っているように見える。沖縄防衛局にも通知を入れていない。外務省はアメリカ大使館には即座に通知している。
この事件は米空軍兵の初公判が、7月12日那覇地裁で開かれている。
沖縄に知らせなかった理由は、普天間基地建設に反対する沖縄県への差別である。
しかし、政府には事件が明るみに出たら困る、数多くの理由があった。
先ずは、昨年12月に米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、国は沖縄県民の神経を逆なでする地位に代わって工事を承認する「代執行」を行っていた。年が明け1月に着工し、知事は「民意を軽視している」と強く反発し。
次には、首相は4月8日から国賓待遇でアメリカを訪問し、首脳会談や議会での演説が予定されていました。こんな時期に、こんな都合の悪いこと発表できるわけがない。
さらに5月、アメリカのエマニュエル駐日大使が、台湾に近い日本最西端の与那国島を初めて訪れ、「戦争を防ぐいちばんの方法は確かな抑止力だ」と日米同盟の重要性を訴えるセレモニーがあった。恥ずかしくて隠したかったのだろう。
そして、6月16日に投開票された沖縄県議会議員選挙である。この選挙で自民党や公明党、維新の会などで過半数を獲得し、立憲民主や共産など知事与党が少数派に転落する結果となりました。事件を隠ぺいした効果ありありである。
そして、6月23日の沖縄慰霊の日です。糸満市摩文仁の平和祈念公園で開かれる「沖縄全戦没者追悼式」には首相も参列し、追悼の言葉を述べる。これはいくら何でもよくない。
そしてこの半年の間、沖縄と情報が共有されれば、防げた可能性のある2件所女性被害事件が起きている。
6月28日、地元紙が「5月にアメリカ海兵隊兵士が成人女性に性的暴行をしようとしてけがをさせ、6月17日に起訴されていた」と報じた。こりゃうまくない、と3日後に政府は事件を発表した。もう1件3月に起きていたのである。
デニー玉木知事は「非人道的で卑劣な犯罪が再び発覚したことは、女性の人権や尊厳もないがしろにするもので、断じて許せない。こういう状況がある意味、野放しにされているということは、もう遺憾の意を超えている」と怒りを露わにし、県に連絡がなかったことについて「日米で合意した通報手続きに基づいた情報提供の徹底について強く抗議していきたい」と訴えている。
政治的に隠蔽されたアメリカ兵による性犯罪事件である。