一昨年の日韓合意はいささか眉唾物ではあった。”不可逆的合意”と何度も言うのも胡散臭い。それでも朴槿恵が指導力を発揮したのだと理解していた。その朴槿恵がいなくなったのである。彼女は弾劾裁判によって辞任をする公算が高く、早くも次の大統領選をにらんだパフォーマンスが立候補予定者から次々出てきている。13ヶ月前の日韓合意をほとんどの候補者が否定している。中国さえ否定者を擁護する発言をしている。安倍晋三のこれまでの言動や行動から、中韓がここぞとばかり攻撃するのである。中国と韓国以外の地球を俯瞰する外交の結果である。
安倍晋三を擁護する気は全くないが、合意はそれなりに意味があると思われる。少なくとも高齢になった慰安婦たちをこれからもずっと晒し者にすることに異論がある。彼女たちのほとんどが、お金を受け取っていることからも政争の具にするのはどうかと思われる。ところが韓国の風潮はそれを認めない。
もう一つ韓国が抱える大きな外交問題は、アメリカのサード(THAAD:高高度防衛ミサイル)の設置である。韓国は北朝鮮のミサイル実験に抗して、サードを設置したのであるが、これが中国の防衛に極めて大きな意味を持つことになる。中国の設置反対の要求を韓国は斥けているが、韓ドラや化粧品やバッテリーの輸入禁止など報復措置を中国は行っている。韓国はなすすべもない。大統領候補者の多くが、サードの撤去を主張している。
こうした高度な政治判断をする機能が今の韓国にはないのである。北朝鮮が核兵器だけで世界中を震撼させ、瀬戸際外交と言われながらも、それなりの効果を見せているのと対照的である。アメリカをも交渉の場に引き込むのは、褒めたくはないが大したものである。
韓国では、大統領が交代するとほとんどが司直の裁きを受けている。大統領選の度に政権交代が起きているからであるが、街頭デモにもみられるようにあまりにも短絡的すぎるのである。
韓国では民主主義が未熟だとの指摘もあるが、政治から意識的に目を遠ざけようとする日本とは対照的である。政権公約を勝手に反故にする、現安倍政権を何となく容認してしまう日本の方もどうかと思われる。政権がやりたい放題の状況でも黙するに日本の方が情けないといえなくもない。