先進国は科学技術に優れ、多くは軍用に転用されて侵略し収奪したのである。軍事力による差ともいえるが、これらBRICSには国家としての可能性を、先進国によって失われたといえる。ロシアは少し外さなければならない要因があるが、いずれにしても経済がグローバル化する中で、国家としての威厳と権利を回復し、21世紀の地球を担うものと思われていた。事実今世紀に入っての経済発展は素晴らしく、人口は世界の半分ほどであるが、GDPは世界の30%を超えるまでになった。
中国は明らかな低迷期に入った。前年度を下回る成長率は4年ほど続いている。国家自身が経済を粉飾している可能性すらあり、格差の拡大は日本の比ではない。社会主義を標榜するのが恥ずかしくないのだろうか。
ロシアとブラジルそれに南アフリカは、明らかに低成長期に入っている。ロシアはウクライナ問題による西側の経済制裁と、プーチン主導の経済を支えていた天然ガスと石油の価格暴落が大きく響いている。
ブラジルは様々な国内事情を抱え、オリンピックを誘致に奔走しいたころの2010年には7.53%あった成長が一気に暴落して、回復することなくオリンピックを迎えた。昨年からマイナスに転じ、今年はマイナス3.8%が見込まれている。鉱物資源の暴落と、政治スキャンダルがこれに絡み大統領まで、オリンピック直前に罷免される内政不安も抱えている。オリンピックというカンフル剤が亡くなった後の、低迷が不安視されている。
人種隔離政策をようやく克服して、BRICSの仲間入りさせてもらった南アフリカであるが、経済基盤がぜい弱な上鉱山ストライキなどあって輸出が低迷している。過剰投資も社会資本の投資も低調であるが、金融は新興国の中では珍しく堅調である。インフラ整備が進んで社会不安が少なくなれば伸びる可能性はあるが、元々容量は少な(3500億ドル)く対外定期な意味は少ない。
BRICSで唯一堅調なのがインドである。あと数年で中国の人口を追い越すことになる。数年前の10%を上回るこてゃないものの、7%台で堅調に推移している。賀寿依存の少ない経済体制は、中国とは異なりこれからもそれほどの落ち込みが起きるとは思えない。
中国とインドの共通する問題は、農村部を置き去りにしてきていることである。インドはこうした中間層の底上げをやろうとしている。中国を教訓にしているかに見える。モディ政権は、5月に「破産・倒産法」を成立させ、地方選で躍進。実績を背景に改革のスピードを上げている。
シノン主義経済は常時インフレでなければならないシステムである。しかし、先進国が途上国を食い物にして成長したシステムは、今や通用にはしない。発展するにはその広がりを受け入れる空間がなければならないが、地球は無限ではない。BRICSなど新興国がそうしたことに気が付くころにならなければ、資本主義体制は見直されないのかもしれない。
ウクライナ問題による制裁で、ロシアを排除したG7は彼らの結束を強めることになった。大会後の「ウファ宣言」では、中国の意向を強く反映して戦後70年の歴史的歪曲を許さないというもので、日本を強くけん制するものであった。
これからの世界経済の発展は、BRICS国が大きく担うものであると宣言した。新たな途上国を対象にした銀行の設立も視野に入れている。議長国のプーチンは多様性こそ必要であるとし、「ウファにはユーラシア、南米、アフリカといくつかの大陸を代表する15の国の首脳が集まった。その各国に独自の発展の道があり、独自の経済成長モデル、豊かな歴史と文化がある。まさにこの多様性、伝統の結合のなかにこそ、力が、BRICSと上海協力機構のふたつの巨大なポテンシャルが隠されていることは間違いない。」と述べ、G7先進国を大きく意識した存在になった。
習近平とプーチン主導による、欧米中心の国際秩序への対抗軸としてBRICSを強く印象付けるものである。上海機構諸国を足場にして経済成長を目指すとしている。
しかし、日本での報道は極めて緩慢で、ほとんど報道されていない。先進諸国は、BRICSや上海機構諸国の存在を無視して、世界経済もパワーバランスも語ることができないことを知るべきなのである。冷戦後アメリカ主導で動いてきた世界は、大きな転機を迎えていると言える。新たな東西もしくは南北対立の基軸が見え始めている。少なくとも安倍晋三が目指す、アメリカの従属・属国化によって、日本は乗り切れるものではないのである。
今月15日にブラジルで、第6回のBRICSサミットが開催される。BRICSとは、途上国と自認しているブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカである。これらの国が出資をして、新たな開発銀行を作るというのである。IMFのライバルになる。
相互に金を貸し出す銀行であるが、すでにあるIMFがアメリカ
主導の開発銀行であるへの不満である。
5カ国が均等に100億ドル出すことになっているが、どうやらその倍になるようである。BRICSは世界GDPの25%、人口の40%を占めている。とはいっても、第1位の中国のGDPは他の4か国合計を上回る。早い話中国主導の開発銀行ということである。
アジアには総裁は日本と決まっている日本主導のアジア開発銀行と、アジアインフラ投資銀行がある。明らかに中国は自らが主導することが出来る銀行を求めているのである。
IMFでなくBRICSに頼って救済してもらった途上諸国は、BRICS諸国の国営企業との経済関係を強化することになる。途上国に多い国営企業などに民営化を迫るより、表向き何も条件をつけずに金を貸す方が、長期的に得になる。
途上国やBRICSに進出している事業は、圧倒的に中国が多い。貸付責任や負担金の分散ができ、投資先を選択できる一方で、中国の企業に還流するシステムである。
これは全く、IMFと同じである。中国は、途上国に金を貸し付け、自国に利潤を還元するシステムを作ったアメリカを模倣して、BRICS開発銀行を設立し、世界進出を謀ろうとしている。中国による、新たな途上国の収奪が始まることになる。
中国の大気汚染が深刻である。とりわけ北京の町は、スモッグ状態となって先が見えないほどである。直径が2.5マイクロメートルの、PM2.5以下の物質が、1立方メートル当たり、200~300マイクログラムの、危険域に達していて、人体に影響が出始めている。珍しく中国はこの事実を隠さない。最も隠しようもないが、車と工場の排出物によるものと思われる。
経済活動の最優先の結果と言える。国民不在の発展の結果である。日本も類似の経過を見ているが、現在の途上国のこうした安全の置去りは深刻である。とりわけBRICSと言われ国家でより一層深刻である。
ブラジルでは、地方の30万ほどの町のナイトクラブで、ショーの花火から火災が発生した。非常口もなければ消火装置もなく、お客は231人も死亡した。負傷者は82人とされるが、この数字も何度も訂正されている。次回オリンピック開催は大丈夫だろうか?安全対策を怠った結果である。
ロシアでは、事故が最悪であった。数人死亡の事故が頻発している。広い国なので、航空機への依存度が高いが、ここ数年で毎年平均で、135人死亡している。昨年は80人であったが、十分な対策がない地方空港での事故が絶え間ない。
インドの交通事故は、世界最悪である。この9年間で車の数は、3.4倍にもなっている。08年には1日当りで、396人も死亡している。今や世界の交通事故の10%はインドで発生している計算になる。インフラの整備も含めた、安全対策をやってこなかった結果と言える。
南アフリカでは、今年の正月に首都近郊で火災が発生して、およそ800戸の住宅が燃えた。4000人が住居を失った。航空機事故も少なくない。
これらの事故は、BRICS諸国が経済発展に伴い、人命軽視ともいえる、安全対策やインフラの整備がなおざりにしてきた結果である。これらの国は、先進国が少なからず体験していることであり、丁寧に学ぶべきである。とりわけ、中国の大気汚染は、近隣諸国を巻き込み多大な損害をかける可能性もある。中国の真摯な対応を期待するところである。
ロシアのエカテリンブルグで、二つの会議が相次いで行われた。一つは15日に開催された、上海協力機構(SCO)である。ロシアと中国が呼びかけカザフスタンやキルギスなど中央アジアの計6カ国で始まった経済協力機構である。インドやイランやパキスタンなどもオブザーバーなど で加わり、その動向にアメリカが神経を尖らせている。
16日エカテリンブルグ宣言をして、閉幕した。宣言内容は、アメリカ依存の世界から、国連を基軸とする社会へとするために、国連に経済・政治に強力な権限を持たせること。そして、米ロの核軍縮を歓迎し、朝鮮半島の非核化へのプロセスの再開を促している。
また、16日からはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が同所で会議を持った。こちらの方は、3兆ドルの外貨準備を各国の通貨で持ち合うことを確認し、基軸通貨としてのドルの存在を揺さぶりをかけようとしている。
しかしながら、BRICsはもともとアメリカのゴールド万サックスが命名した、必然的なつながりのある集合体ではない。結果として同床異夢の様子であるが、多少の立場の違いを残しながらも、世界通貨としてのドルの存在に異論を唱え始めようとしている。
世界はブッシュの強引で不条理なな手法の結果、急速に世界は多極化していることを、この二つの会議は物語っている。東西冷戦の崩壊からちょうど20年であるが、アメリカ一極集中の時代が終焉しつつある。
ところが日本は、相も変わらずアメリカ追従から抜け出すことはない。テロ対策でもイラク侵攻でも気候変動枠組み会議でも、アメリカを補佐するだけの存在となっている。日本がアメリカが同盟国ならば、忠告者であらねばならないはずである。
日本は急速に多極化する世界にあって、取り残されるような、前時代的政策を行って存在感をなくしている。環境問題、食糧問題さらには民族問題や核軍縮についても、何一つとして積極的な声明を出せないでいる。
21世紀を担うといわれている、BRICSの一つブラジルは大豆の生産が急速に伸びている。今やアメリカに次ぐ世界第2の大豆生産国になっている。
大豆を生産する多くの畑は、新しく開墾したところである。広大なアマゾン川流域の、熱帯雨林を伐採して巨大な大豆畑は作られている。大豆は主に輸出向けのものである。巨大資本が参入して、機械化された効率の良い畑にするために、道路が無制限に作られる。
もともと、所有地の50%以上を開墾してはならなかった法律も今は、20%までは許可されている。大資本へゆだねるブラジル政府の意向である。その20%すら現地の検査官が買収されて守られていないところも数多くある。
アマゾン流域の少数民族は、生活の場を破壊されて、昨年は人質事件などの衝突が絶え間ない。ガイチョに説得され土地を提供した小数民族も、土地代を使い果たすと自らの生活の場がなくなったことにやっと気がつく。消費生活になじめず、結局は最貧困層へ落ち着くことになる。
外貨を稼ぐ大豆によって、少数民族は生活の場ばかりでなく、民族の価値観や誇りも失くされたのである。更にアマゾンの熱帯雨林が、急速に破壊されているのである。
大豆はしょうゆの豆(soybean)といわれているように、もともとが東洋のわれわれが食していた食物である。大豆は高たんぱくで、畑の牛肉とまで言われるが、余分な脂肪もなく保存が可能なことと大量生産が可能であったことが、国際貿易に有利に働いたのであろう。
ルーラー政権は、人用に限らず家畜用としても大きな用途がある大豆を外貨獲得、国内経済、財政再建の切り札にしているのである。不法な伐採にも熱帯雨林の破壊にも目ではない。
が、ここにきて環境省が、待ったをかけている。各省庁を横に連携しあって、今一度開発のあり方を検討しているのである。世界の淡水のほとんどを抱くアマゾン川流域は、日本や中国の大豆の需要増加に比例して危機に瀕している。