北方領土問題は安倍晋三がプーチンに提案した通り、自分たちの世代で解決することになった。安倍晋三はプーチンに軽くあしらわれた。
昨日プーチンの提案した憲法改正の国民投票があり、77.92%という高い支持で受け入れられた。プーチン自身の大統領再選可能にするための憲法改正案である。国民の支持を受けやすいように、領土の割譲禁止の条項も加わっている。
これで北方領土問題は終わった。本ブログで何度も述べているように、北方領土問題はすでに終わっている。安倍晋三が幕を引いたといえる。何故か報道はいつも安倍の後押しをしているが、とりわけ全てが裏切られた山口の首脳会談の直前の報道の過激さは忘れられない。明日にでも島の返還がされるような、どの島が帰ってくるかなどという報道があり、街には両首脳の乾杯する看板が乱立していた。プーチンはクリミアの併合やウクライナ侵攻などに続く経済制裁など多忙を極め、平然と会談に遅刻した。露店風呂に誘った安倍の無神経もさることながら、プーチンは鼻にもかけなかった。
決定的なことは、ウラジオストックで、公衆の面前で領土問題は置いてまずは平和条約を締結しようと言われ、官僚のカンペにもないことを提案されて、安倍晋三は何も返す言葉も何もなかった。ニタニタするだけで、政治家としての底の浅さを大衆に晒した瞬間である。ほぼこれで終わりである。二島とか四島とかと言う話以前である。プーチンに3000億円の共同開発として提供した金はどこ行った。
根室の友人は幼いころ、歯舞・色丹島の返却が決まったと、小学校の生徒が総出で旗振って市中を練り歩き祝ったことを忘れない。歯舞・色丹は行政的に北海道の一部である。千島列島でもなければ、北方領土などと呼ばれる筋合いのものでもない。ソビエトは戦争終結を9月4日の✕デーとしている。世界の多くの国は戦争終結を9月3日としている。因みに歯舞・色丹島にソ連が進行してきたのは9月4日以降である。どこを叩いても、歯舞・色丹島はソ連のものになるわけもない。官僚が四島の一括返還とその後の平和条約締結を、壊れたレコードのように言うしかできない安倍晋三は、金をばら撒く得意のやったふり外交の極致が北方領土交渉である。北方領土問題は今回のロシアの憲法改正で全て終わったといえる。
北方領土問題は憲法改正ですべてが終わり、安倍晋三はプーチンの僕(しもべ)でしかなかったのである。
安倍晋三はプーチンとの首脳会談を27回を重ねて、何も日本は得るものもなく一方的な譲歩を重ねている。2年前の山口の会談では、マスコミを煽って今にでも北方領土が帰ってくるような大騒ぎであった。会談にプーチンは遅れてくるし安倍晋三が用意した風呂にも入らない。クリミヤ侵攻決断の時であったからであったことなど安倍は知る由もない。
今回プーチンは二国間で領土問題は語れないといいって来た。日本はアメリカのミサイル基地化すると、ミサイル迎撃基地イージスショア設置を念頭に発言した。
安倍晋三は、「あれは北朝鮮用で・・・」と言い出した。兵器にそんな区別などあるはずもない。馬鹿げた回答であるが、プーチンが領土問題に触れようとしない理由は十分である。しかも同じ日にプーチンは、歯舞島での新たな水産加工場の解説を祝う式典に、ライブでテレビ出演している。8月にはメドベージェフ首相が択捉の基地を訪問し、ロシア領土を強調している。
安倍はバカの一つ覚えのように、官僚作成のペパーを読み上げし、「平和条約の締結を我々でしましょう」というばかりである。ロシア側にとって、領土問題は解決済みになった。今更平和条約締結などどうでもいいことである。
日本からは3000万円もの援助を頂いている。プーチンが公衆の面前で唐突に安倍にカマかけた、「無条件で平和条約結ぼう」と言った言葉に、安倍は捕らわれたままである。
その一方で日本の主張する領土では、着々と実績を積み重ねていて、政権もこれを支持している。支持率が凋落傾向にあるプーチンが、対外的に弱腰し姿勢を見せるわけなどない。プーチンは安倍に付き合っているだけである。もっと援助の金を安倍が持ってくる可能性が残っている限り、プーチンは付き合うであろう。
どこからどう見ても、北方領土問題はすでに終決している。安倍晋三が放棄したのである。
根室原野に戦後10年ほど経って入植した爺様がいた。骨太で背の高い爺様であったが、とっつきにくいところがあったが、黙々と仕事をする典型的な百姓である。口数は少なくても眼光が鋭い爺様は、経験浅い私は苦手であった。
何かのついでに上がらしてもらったことがある。そこで爺様と話をすることになった。
満州開拓者であったが、終戦と同時に祖国と逆の方向に列車で運ばれて、シベリアに抑留され強制労働をさせられた。地獄のようだと、何度も声かけるようになって話すようになった。私の記憶の数字は正確ではないが、おおむね次のようであった。
抑留されて人たちは50人に数人しか生き残って帰ってこれなかった。食料も衣類もなく住むところも狭く、押し合いながら寝ていた。朝起きると冷たくなった友人を何人も凍った大地を削って埋めた。何人も何人も何回も何回も埋めたという。
爺様は決して、ソビエトとかソ連などは決して口にしなかった。爺様はいつも吐き捨てるように、「ロスケ」と言った。爺様の精いっぱいの卑語である。自分が抑留されて強制労働をさせられ、多くの友人を亡くした国家を爺様が恨むより術がなかった。
ソビエト崩壊後にエリチェン大統領が来日した時に、シベリア抑留について口頭で謝罪をしたが、何らかの内容があるものでもなく、単なる外交辞令の域で終わっている。
ロシア外交の専門家であった、佐藤優氏がよく言うことに次のような言葉がある。「条約は批准したが、守るとは言わなかった」という言葉である。シベリア開発は、ソビエトの東進に不可欠であった。囚人で間に合わなかったのでスターリンは、留萌ー釧路で線を引き北海道の半分の割譲を連合軍に望み、そこからの労働力を期待していたが叶わなかった。それにとって変わったのが、旧満州地区からの大量の抑留である。ソビエトに倫理などない。
シベリア抑留を生き抜き帰国し戦後活躍た人物として、作曲家の吉田正、歌手の三波春夫や青木光一、作曲家の米山正夫、プロ野球選手の水原茂などがいるが、何んといっても黒を基調にした画家の香月泰男の苦悩が胸を打つ。
この何の罪も罪状もない国民がシベリア抑留されたことに、だれの責任となるのか不明で、責任の所在すら解らない惨事である。爺様が「ロスケ」と吐き捨てるように恨み続けるのが精いっぱいのことである。
日本にもソビエトにも何の責任も求めることなく、国家の後始末を個人が肉体で受け止める不条理は、黙したままで歴史の中に埋め込まれたままである。
一昨年の山口での日露首脳会談前に、マスコミにいいだけ領土問題の前進を振っておきながら、鼻であしらわれる結果になった。それでもあれだけ煽ったマスコミは何も指摘することがない。今度は、日露平和条約を先ず結ぼうとプーチンにカマをかけられて、その場では何にも返答できずにスゴスゴ帰国した安倍晋三である。
今回も全く同じである。本ブログで幾度にもわたり、ロシアの狡猾さや基本的考えが全く変化していないにもかかわらず、アホのひとつ覚えのように官僚の言いなりのままでの交渉である。何のからめ手もなく、辺野古新基地建設を念頭に、「日本に自治権があるとは思えない」とまで言われて、黙したままの安倍晋三である。そりゃそうだろう。反論する根拠が何もない。
最大のチャンスであった、ソビエト崩壊直後でも、官僚の四島一括同時返還を言い続けていたのでは芸がない。ロシアの弱みにつけ込んで暗躍した鈴木宗男を、平気で切って捨てた。
クリミア併合の時にも、反対の表明はいいにしても、欧米と一緒になって経済制裁をやっていたのでは、何の恩も売ることもできない。金をばら撒くしか能のない為政者には無理な話ではあろう。ロシア外交は共同開発のための3000億円を投資して、一件落着である。
外交は国内での安倍一強の手口は貫くことができない。プーチンをいくら、「ウラジーミル」と呼んでも彼は、忖度してくれない。
やったふり外交の北方領土問題は、根本的に交渉方法を変えなければ何の進展もない。「プロジェクト・フラ」でも触れたように、多くの日本人はアメリカは味方でロシア(ソビエト)は敵であると信じ込んでいるが、太平洋戦争終戦間際では、アメリカが最大の敵でソビエトはその合間を縫って、漁夫の利を目指した同様の敵国であったのである。
日米安保条約を破棄しなければ、北方領土は戻ってこない。
それを主導したのが、アレクセイ・ナワリヌイ氏である。今回は大統領選のボイコットを呼びかける集会を、ナワリヌイ氏とその支持者が全国各地で展開している。都会を中心に、「ロシアのプーチンはいらない」運動は日を追って広がっている。現時点でデモの逮捕者は、250人を超えるとのことである。
そのナワヌルイ氏は国から、大統領立候補を受理されなかった。過去に有罪判決を受けたことを理由に来年の大統領選に出馬する資格はないとの判断であるが、明らかな弾圧である。
プーチンは今回再選されれば、実質ロシアの大統領として2000年から24年君臨することになる。2008年から4年間三選を禁じた憲法のため、メドベージェフに4年間任せているが、実験はプーチンが握っていた。憲法で任期を年に変えて復帰した。この長さはスターリンに比肩することになる。ロシア人は独裁者が好きなのかも入れない。
プーチンの言論弾圧の強権姿勢は一貫している。幾多の評論家や政敵を抹殺している。チェチェン共和国の独立弾圧は、凄惨な結果を招いている。モスクワ劇場でのテロに対しての武力的制圧で、チェチェン人兵士41人と人質124人が死亡している。北オセチアのベスラン小学校のテロリストの占拠にお構いなく突入し、331人の死者を出しているが半数以上は小学生である。テロリストと政治家や評論家に対しては、容赦ない弾圧をプーチンは行っている。
侵略行為と何ら変わらないクリミアの併合は、明かに国内のプーチン支持を増やしている。国内を追われたチェチェン人は大量に、ISに流れている。クリミアやチェチェンへの圧政はナショナリズムを掻き立てるものでもある。
ロシア人は民主主義的行為やリベラル活動よりも、独裁者が好きなのであろう。
今年も北方墓参が企画され、多くの元島民と関係者がビザなし訪問をした。しかし、北方領土について不満を述べた、根室市長は訪問を断られた。なぜか報道はない。
日本向けロシアのネット誌の、SPUTNICは8月25日に次のように伝えている。
『8月23日、ロシアのメドベージェフ首相はサハリン州を訪れ、南クリル諸島を優先的社会経済発展地区(TOR・経済特区)にする文書に署名した。新しいTORは色丹島に設置されることになる。』
もっとも北海道に近い色丹島に置くという事は、領土返還の最小単位すらロシアが拒否したことを意味している。TORの開発はロシアの法の下で行われる。これが条件という事であるが、日本は経済援助の入り口でロシアに金だけかすめ取られたという事である。アメリカはこのことを知ってか知らずか、表面上黙している。無知なトランプは取り組み方も知らないのかもしれないが。
安倍晋三の失政は、アベノミクスは当然のことであるが、北方領土交渉も破たんしている。最優先課題とした北朝鮮の拉致被害者問題も、進展どころか更なる困難を抱える状況と言える。
憲法を無視した安保関連法の強行採決や、共謀罪の強行採決。お友達だけの規制改革、優遇政策。外交という名のばらまき政策。沖縄への新基地建設への強引なやり方など、すべての経済政策が破たんしている。
山口の日露首脳会談は完全に破たんした。数時間遅れて到着したプーチンの思うがままに、まるで赤子の首を捻るように安倍晋三はしてやられたのである。
上記のブログで、「北方領土はミサイル配備も飛行場建設もほぼ完了し、各種インフラなどはどんどん整備されている。結局は3000億円供出だけが先行する、単なるロシアへの経済支援に終わったのが、日露会談の結果である。」と書いたが、それを今回裏付けたのが、元島民らが国後、択捉両島を航空機で訪れる空路墓参であった。ほとんど唯一の成果が空路墓参であったなんと情けない現実か。
その空路墓参が、天候不良のために今月18日に中止になった。多分国後空港が有視界飛行しかできないのであろう。ガスがかかっていただけである。中標津空港で二日待たされた高齢者の島民たちは、疲労しながらも「船なら行けたのに」と呟いている。
プーチンは、「日米安保条約がある限り、北方領土は戦略基地の可能性があり交渉はできない」と明確に述べている。プーチンにしては珍しく長い歴史的経過を、安倍晋三のようにメモなどを持たずに堂々と説明し、ロシア政府の立場と姿勢を述べている。
日露首脳会談が始まるまでは、日本のマスコミは安倍晋三を持ち上げて北方領土返還の目処がいよいよつくことになると、大騒ぎしていた。日本の国民はもう忘れたのであろう。
中標津空港で、二日も待たされた元島民の、「船なら行けた」という言葉が示すように、空路墓参は日露首脳会談の唯一の成果として何が何でも外務省はやりたかったのであろう。報道各社は歳を重ねた元島民の負担軽減になると、愚にもつかない説明をしていた。なぜ「北方領土問題はロシアの主張を全面的に受け入れて、3000億円の拠出で終わった。泥棒に追い銭とはこのことだと」マスコミは書かないのだろう。与党べったりの日本のマスコミである。
「船なら行けた」のに、わざわざ飛行機で行こうとさせた、日本政府の哀れな姿が根室特有のガスの中に消えてしまった。
ロシアを慕う東部の工業地帯に、欧米は言い分を与え続けている。欧米はこの一年で、プーチンに経済制裁をやり続けることも同じである。ロシアの経済的困窮はむしろ、プーチンを支持する結果になっている。この構図は決して褒められるべきではない。
クリミヤの併合にしても、ウクライナの新ロシア派への武力協力にしても、ロシアナショナリストにとっては痛快なのである。欧米の経済制裁は、自らも返り血を浴びつつある。
KGB出身のプーチンにとって、支持されることは余程気持ちがいいと思われるが、その反面反対者については、問答無用の姿勢で臨む。今回も傷ましい事件が起きた。
ロシアでは、ウクライナ現政権の支持ではなく、ウクライナへの武力介入を反対する反戦運動も根強くある。ところが、プーチンは彼らの運動を容認しない。全国各地で反戦デモを禁止しているが、唯一許されモスクワの指導者が殺害された。プーチン政権を批判するボリス・ネムツォフ元第1副首相が2月27日深夜、モスクワの中心地で射殺された。関係者は、ロシア特殊部隊の犯行であるとコメントを出している。
2006年にプーチンを批判していた、アンナ・ポリトクフカヤが自宅の前で銃殺された事件を思いここさせる事件である。彼女は、チェチェンなどを巡り、プーチン政権批判の急先鋒で厄介な存在であった。路上で夜銃弾を数発撃ちこまれたことなど、共通点が多い。
ウクライナをテコに、ロシア全体が翼賛化しつつある。目の前の政権の浮き沈みに固執する余り、アメリカとEUは意図とは異なる方向へプーチンを追い込むことになってしまった。
プーチンは強権的になり、言論弾圧など旧ソビエトの復活劇を見るようである。経済制裁はUE諸国に跳ね返り、ロシアを中国接近に後押しすることになる。
欧米は、ロシア国内の反政府戦力への協力や、ウクライナの親ロシア派を取り込むべきなのであるが、そんな余裕は感じられない。
かつての2大社会主義国の中国とロシアが、急接近するお芝居を演じている。(もっとも中国は今でも社会主義体制と言っているが・・)内容はともあれ、習近平とプーチンの二人は、最も安定した政権運営をやっている。とりあえず、オバマのような内政で、国民にへつらう必要がないのである。
中国は突如の海洋進出で、日本やフィリッピンそれに友好国であったはずの、ベトナムとも不穏な関係になっている。アメリカには、一方的
に中国が悪いとまで指摘されている。
ロシアはウクライナ進出で、クリミアの併合までやってのけて、EUとアメリカから経済制裁を受けている。この制裁はあまり意味がなく、天に唾するようなものである。
全く異なることであるが、周辺国を介しながらもアメリカから強い指摘を受けている点だけ共通している。内容的には相当異なっているし、ことと次第によっては、中国はロシアを、ロシアは中国を非難してもおかしくはない内容である。お互いの傷を舐めあっているだけである。
アメリカへの反発以外の共通点はないが、急接近を演じている。両国は、ドイツを破ったり日本を降伏に追いやった、戦勝記念を来年合同でやろうとまでしている。毛沢東もスターリンも、日本やドイツに勝ったのではない。日本は連合国と蒋介石に、ドイツは連合国に負けたのである。
歴史認識を、習近平が声高に主張するのであれば、天安門事件を正面から見つめるべきである。
ロシアは、多くの国民や収容者や犯罪者への弾圧など、ソビエトの崩壊を検証すべきである。ソビエトの行ってきたことを、連邦の崩壊と共になかったことにするのは、歴史を正面から見ていないからである。プーチンは、ソビエトの都合の良い所だけ継承している。
特に中国は軍事力を高めることによって、その威力、威光を誇示する。都合の良い歴史観を持ち出して、戦闘性を高める。軍事力の持つ普遍的な作用である。
平和のために世界に進出できる軍隊を持つと、日本の安倍首相がもっともらしく主張し、これが積極的平和主義という。まるで中国の進出を待つかのように都合よく、集団的自衛権容認に向けて走り出す。この男も歴史認識を都合に合わせて、こうしたことに利用しようとしているのである。
習近平中国国家主席が、就任後初の訪問国としてロシアを選んだ。この意味は小さくはない。中国は戦闘機20機以上を購入し、潜水艦も3隻購入した。戦闘機をこれまで中国は、せいぜい2機購入する程度だった。それを複製することで各国に嫌われていたが、お金ができた現在太っ腹に購入したのである。
潜水艦は、東シナ海の海軍の戦力強化のためである。日本やフィリッピンに対する威嚇でもある。先ごろリメイクした航空母艦も、ウクライナの中古品であった。
双方の国の国営企業など、35の企業が合意文書に署名した。中国は天然ガスの購入を約束している。中露は「戦略的パートナーシップ」関係で「革新的利益に抵触する諸問題で、双方を断固支持する」と、共同声明を発表した。
これは一つには、戦勝国が敗戦国の利益になる行為を容認しないとする、領土問題に絡み両国に関係する日本を強く意識したものである。また、アメリカの「一極支配」を強くけん制するものであると言える。
中露の接近でシリア情勢が一段と悪化するかもしれない。今や後がなくなった、アサドをロシアが支援しているからである。更に中国がこれを補完している。シリア情勢は混迷の一途をたどり長期化する。両国の接近が儀礼的との見方もなくはないが、ここまで強くなれば良好関係と言えるであろう。
習近平はその後、アフリカのタンザニア訪問し、南アフリカでのBRICSの会談に向かった。タンザニアでは、抜け目なく領土問題での中国支持をひき出している。
抜け目ない中国の外交は着々と進んでいる。暴力的であるが経済的なつながりも関連させて、極めて戦略的であると言える。
ロシアの実効支配が続く北方領土問題である。根室の返還運動に、最近微妙な動きが生じている。ロシアが不法に占拠しているが、日本の固有領土であるため四島一括返還を唱える、本筋論の方々。一方現実に目を向けて、経済交流を通じることによって、打開策を求める人たちである。
原則論を譲らないのは、一世の方々である。無念の気持ちが消えることなく、一括返還にこだわっている。この方々は平均年齢でも70代後半であり、65歳以下の方はいない。
疲弊する根室の現状に、経済成長する北方領土を目前にして、原則論にこだわらないで、経済交流を積極的にやる。そのことで、地域の活性と併せて領土問題を考えていこうとする、二世、三世の若い人たちが主流の主張である。
原則論をかざし続けるには、もう若くない人たちはこうした若い世代に押され気味である。
私も一度、ビザなし交流で北方領土を訪れたことがる。択捉に三泊ほどしたが、報道で見るとその町もわずか10年で、大きく様変わりしているのに驚かされる。ビザなし交流は、経済活動がままならなかったロシアが、日本と交流することで一方的に恩恵を恩受ける運動であった。
この10年で大きく変わった北方領土は、経済成長で飛行場が出来たりして変貌したのは街並みばかりではない。豊かになった住民が、自らの足元の権利などを主張し始めたのである。
この間日本政府は一貫して、ロシアと交渉してきたのではないことも大きい。とりわけ小泉は、中国とロシアを一方的に嫌ってきて経緯がある。そうしたことにロシアの経済発展もも相まって、彼らにナショナリズムを引き起こさせてきた。
連合国と日本の不法占拠説も、ロシアに反論の論拠を与える一面がある。ヤルタ会談以降、スターリンは一貫して、樺太南部と千島全島それに北海道の東半分の割譲を主張していた。その間の交渉相手は、イギリスもアメリカも首相や大統領が代わり、中国も実質欠席状態であった。唯一、友好国のはずだったスターリンだけが、ポツダムまで継続的に交渉していた。周到な準備がなされていたとみるべきである。
昨日(11日)サハリンで大々的なデモがあった。南千島は歴史的にロシアのものだというデモである。この極東の僻地で、4000人ものデモが行われたが、日本の報道機関は無視したようである。産経新聞と北海道新聞以外の報道は、ないようである。
北方領土は、これまで政治家にまかせて密室でやられていた、話し合いや交渉ではなく、民間で幅広い論議を国境を越えて論じなければならない時期に来ている。