米朝会談が決裂した。金正恩は足元が騒がしいトランプは寧辺の核施設を破棄するだけで、相応の経済制裁解除が得られると読んだ見込みが浅かった。トランプは中間選挙後の議会との対立やロシア疑惑や、ポルノ女優とのスキャンダルを抱えた中で、米朝首脳会談の成功が大きな突破口になるはずであった。そうした意味で両首脳は思惑を大きく外した感もある。
しかし、金正恩は前回の米朝会談後に、あるいは会談の事実を背景にして、中国やロシアそれに韓国との関係を一層深めることができている。かつての北朝鮮の指導者になかったタイプである。日本を除く近隣諸国との関係を深める結果になっている。米朝会談の事実は金正恩にとって、大きな意味を持った。実績が必要であったトランプとは異なる。
米朝首脳会談が決裂したことを一番喜んでいるのが、なにあろう安倍晋三である。これで軍事費用を減らさない理由も何とかなるし、危機感を煽ることもできるようになった。
拉致問題を首脳同士で語りたいというような、無根拠のホラ発言も可能になった。何より、日本会議をはじめとする安倍を支援する取り巻きにとって、、北朝鮮が温厚な外交をしてくれたら困るのである。朝鮮、とりわけ北朝鮮はヘイトの対象でなければ彼らの存在価値がなくなる。安易な妥協をしなかったというのは本音である。安倍晋三に平和外交など存在しない。
北朝鮮はアメリカの経済制裁は解除されなかったが、核やミサイル開発費用を捻出しなくて済むだけで、経済的な負担を軽くできる。地政学的な利益を共有できる国家の存在がさらに大きくなる。前回に引き続き、この会談は北朝鮮だけがお得であったといえる会談だった。