アメリカ上院は7000億ドルもの金融大救済法案を否決した。民主、共和党が超党派で練り上げた法案であるが、あっさりと否決された。与党である共和党から大量の造反者が出たことが、想定外だったようである。
任期末期のブッシュは相当がっかりしたようなコメントを出している。お金持ちの金融機関を救済することが、庶民感情を逆なでしたのである。国民の反発を無視できない議員たちが、否決に回った結果である。
元より経済には門外漢ではあるが、今回のサブプライムに始まる金融危機は、歴史的な失政であり国家的な汚点である、イラク戦争の経済的なツケが来たのでないかと思われる。イラク戦争による3兆ドルもの出費が、国家経済と人々の心を蝕んだ結果である。
イラク戦争以降、世界は急速に多極化しつつある。エネルギーを国家統治するロシア、二ケタ成長を続ける中国、インド、さらに欧米への反発で大きく様変わりするイスラム諸国。アメリカは確実に覇権国家の位置を失いつつある。
ベネズエラはロシアにすり寄り、北朝鮮は中国を介してアメリカを揺さぶり、インドはフランスと核開発で協力し合っている。イラクはロシアや中国の後ろ盾で核開発に踏み切った。パキスタンは親米の大統領が失脚した。多極化を先取りする形で世界各国は動いている。日本はこのことを大きく見誤り、失政を繰り返している。
公的資金の投入を議会によって拒否されたアメリカは立ち直ることができるのであろうか。アメリカ依存の世界経済は終焉を迎えつつあるのではないか。