6月19日、米国国務省が農業分野のノーベル賞と言われる、世界食料賞(World Food Prize)の今年の受賞者に、モンサント社の副社長兼最高技術責任者のロバート・フラリィを含む3人のバイオテクノロジー研究者・技術者を選んだ。世界の飢餓を救い農業生産を高めたというのがその理由である。果たしてそうか?
モンサント社は、枯葉作戦のダイオキシンを開発しベトナム戦争で、たっぷりと使ってもらって大儲けして、飛躍的に業績を伸ばした会社である。その前に、日本ではカネミ油症で知られる、猛毒のPCBを世に送り出している。
枯葉剤ではベトナムで大量の奇形児を発生させているが、モンサントはこれを認めていない。PCBでは世の中の風当たりが強くなると、町に放棄してまま工場を移転させている。
その後には、今世界で怖れれている、遺伝子組み替え植物(GMO)の生産にいそしんでいる。今や世界の遺伝子組み換え種子の80%以上は、モンサント社のものである。
家畜には、大腸菌に作らせた成長ホルモンを投与(注射である)させて、乳量を増加させている。今では、成長ホルモンの投与で発がん物質が、乳腺から分泌されることが判っているが、それでもアメリカの飲用乳の半分はこの処理をされた乳牛のものである。
このモンサント社の技術責任の最高責任者が、こともあろうか世界農業賞を受賞したのである。アメリカの政治は、ロビー活動が大きくものを言う。モンサントはこれが得意である。今回受賞も、ロビー活動の延長であろう。
遺伝子組み換え植物が、通常の改良と同じものであり、表示義務を持たないとパパブッシュに献金をいっぱいやって、通してしまっている。アメリカでは表示義務さえないのである。日本やEUでは市場に出ることも禁止されている種子でも、堂々とそのまま売られるのである。
仮にモンサントの言い分が正しくて、収量も増えて病害に強い種子が作られても、数世代で病害虫やウイルスに克服されているし、収量も期待できるほど伸びてはいない。
ニューヨークタイムズのコラムニストのマーク・ビットマンが、怒りの声を上げている。「飢餓は食糧の不均等な分配によるもので、不平等の象徴である、食糧の真のヒーローは低投資農業を改良・実践する人々であって、この人たちが真にこの賞に値する」と結んでいる。