トヨタが赤字決算の見込みだと発表し、各方面に大きな影響を与えている。トヨタ側の一方的な発表によると、今年度は1500億円赤字見込みということである。アメリカへの輸出が34%も減っているし、この円高による損失もばかにならないということである。
確かに輸出産業にとっては円高は打撃であろう。1円上がると400億円もの損失が生じるということである。しかし、それは輸出に関することであって、加工産業である以上原材料の多くは 輸入することになる。鉄鋼や石炭などはかなり安くなるはずである。石油は7割も値が下がった。円高のデメリットばかりを言い逃れにする、企業としての身勝手さがここにある。
昨年はトヨタは2兆円超の純利益を出していた。この純利益は企業内に温存しながらも、たった1500億円の赤字を内外に印象付けるのは、下請け企業や派遣社員などを切り捨てる口実の前振りに他ならない。赤字決算を印象付けることで、言い訳が立つというものである。
赤字企業に転落することによる税制面での優遇もばかにならない。こうして考えると、トヨタが一方的にマスコミに垂れ流した、1500億円の赤字も怪しいものである。愛知県が日本で一番失業者が増えたという事実ばかりが先行している。トヨタの思うつぼである。
日本は輸出産業を育成することで外貨を稼ぎ経済発展を遂げてきた。その犠牲になったのが農業である。オーストラリアなどはそのいい例である。日本からの輸入品はほとんどが車である。その見返りに、日本が懸命に鉄鋼や石炭を輸入してもたかが知れている。
貿易赤字がいつまでたっても解消されないオーストラリアは、日本に農産物を輸入するように圧力をかけるのである。ここ2年ほど干ばつのためにその声は小さくなったが、いつ再燃するかわからない。
今回のトヨタの見かけ上の赤字決算は、農業者にとってはありがたいことと思わなければならない。本当は農業者がありがたいのではなく、消費者にとってありがたいのであるが、日本の食料自給率の向上のためにも、自動車産業は実質的に赤字になることを歓迎すべきなのである。マスコミの「大変だ大変だ」という騒ぎに惑わされてはならない。