食文化の問題や宗教観などの違いはあるが、日本がIWC(世界捕鯨委員会)から脱退した。メディアが好意的に扱っていることもあって、日本ではあまり否定的でない風潮である。
確かにクジラの個体の減少は欧米の、食用の肉ではなく灯りや暖房用に脂を目的に獲り続けた乱獲が根底にある。海洋国でもある日本は食文化として長年定着してきている。クジラに対する敬意等も高く、決して乱獲などしてこなかった。捕鯨団体を説得できなかったのは極めて問題である。
クジラに限らずマグロにしても、資源が減少してくれば捕獲は止めるべきである。それでも食べたいという、国内にも我儘を説得するべきである。そうし内容での脱退なら容認されることである。しかし今回のIWC脱退劇は、戦前の国際連盟脱退を彷彿させるような、ナショナリズムの臭いさえ感じさせるのは、安倍晋三と二階自民党幹事長の選挙区の姿が見え隠れするからである。事実二階の地元では、万歳三唱し大歓迎である。
もう一つ大きな問題は、憲法学者の水島朝穂氏の憲法違反の指摘である。憲法73条第3項は内閣の行う事として、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」と明記されている。
条約締結はもちろんのこと脱退も同じことである。安倍晋三は独断で、国際条約IWCを脱退した。国会はもちろんのこと、国民すら何の説明もない。
又憲法98条2項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定している。これにも安倍政権は違反する。脱退だけならいつでもできる。国際法規を踏みにじるならその説明が必要である。
これまで安倍晋三は国会で、何に対しても誠実な説明は一切してこなかった。国会中継を聞いてみても、まともに質問に答える誠実さは欠如したままである。沖縄県民に寄り添うなどと、平気で嘘を言い続ける傲慢さが、脱退を促し憲法を無視したのである。
安倍晋三のIWC脱退は、世界各国が憂うるように国際的な恥じである。国民には何の説明もない憲法違反行為であり、自身と幹事長の選挙区への利益供与でもある。