ほどなく2010年が過ぎ去ろうとしている。来年は21世紀になって、10年目の年になる。今世紀が始まって世界を変えたのは、何といっても9.11同時多発テ ロであることに間違いない。このテロで犠牲になった方には申し訳ないと思うが、アメリカのブッシュ大統領がこの対応に誤ったことが、今世紀初頭の最悪に事態を引き起こしたことだと思われる。あるいは結果的に、世界は暴力では解決できない時代になっていることを証明したといえる。
ブッシュはこのテロを単に暴力的に理解したに過ぎなかった。なぜこのテロが起きたのか分析することなく、犯人探しと報復に突っ走った。アメリカの世論も当初はこれを支持した。一月後に、犯人のビン・ラディンを匿っているとしてアフガニスタンに攻め入った。世界最強の兵力はいとも簡単に政権を倒して、勇躍とイラクにフセインの悪行と危険性を作り上げ乗り込んだ。
ブッシュの戦争は当初、アフガニスタンもイラク勝利したかに見えたが、今日に誰もが見ることが出来るように、明らかに大きな破綻をきたしている。イラクは未だに政情が定まらず、アフガニスタンは混迷の中にある。
膨大な戦費に耐えられなくなったブッシュを引き継いだオバマは、早々に撤退計画を模索する。都市部の駐留が終わったイラクは、選挙後半年でようやく組閣が出来るところまで持ってこれた。この間にもテロは際限なく発生している。アフガニスタンは、ビン・ラディンを追い詰めるべく画策していた地域は、実質タリバンの支配下にある。
この間に、ソビエト崩壊後唯一の超大国として世界に君臨し続けたアメリカは、台頭する新興国に存在感を失ってきた。社会主義体制崩壊後、体制を持ちなおしたロシアや中国は、局地でアメリカに従わない勢力を支援し始めた。イランもミャンマーも北朝鮮も補完材料として存在し、経済的にはインドやブラジルが大きく伸ばしてきたのである。
世界の多極化が一気に進行した。アメリカの相対的な力の低下は、冷戦時代のように敵国を非難することでは、国民は納得しなくなってきた。日本はそうした中でも、必死にアメリカに追従することで乗り切りを図ろうとしてきたのである。
こうした情勢の中、日本の政権交代は極めて意義深いものになるはずであった。鳩山の提唱した、東アジア構想も普天間の移転もそうした背景を考えると、脱アメリカの第一歩のように我々を錯誤させるに充分であった。結果は、評論に耐えない内容で今日至っている。自民党ですらなしえなかった、アメリカ依存の強化体質に変貌した。
今や世界は暴力行為では解決できない世紀に到っていることを、9.11は証明したのである。が、いまだに兵力を増強することで国家が安泰になるとか、国家の存在感を示せると信じる、国粋主義へと民主党は舵を切ったかに見える。
平和憲法を持つ日本は、今こそ暴力行為が世界を救えないことを証明できる、格好の位置いることを現政権は理解しない。疑似政権交代と言える、政権交代をし国民を裏切った政権を持つ我々はこの不孝を恥じ入らねばならない。