そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

酪農家になりたい君へ読んでもらいたい本、そして食料を考える人たちに

2024-09-28 | マイペース酪農
酪農業は日本古来の農業の形態ではないが、牛が広い牧草地で草を食みのんびりとしたなかで、牛乳を搾るイメージが強い。酪農は草しか生えない寒冷地や高地での農業であるから、その思い込みも間違いではない。
酪農家には新規就農者が多いが、その多くは都会からの移住者が多い。ところが既存の酪農家は、農協や行政などにケツを叩かれて、飼料(ほとんどが輸入穀物)を大量に与える工業型に移行しているのである。牛はヒトが食べることのできない草を食べ、人が食べられる牛乳や牛肉に変換してくれるのです。その原点を失い、人と競合する穀物を牛などの家畜に与えることは、日本の食料自給を圧迫します。
当地のように酪農専業地帯でも、外にいる牛を見ることがほとんどなくなった。多頭数を集約的に飼育し、穀物投与で高い負荷を牛にかけ、高生産を誇っている。
日本中の農村から農業が淘汰されてきている。

「牛乳から世界がわかるー酪農家になりたい君へ」(小林国之著:農文協刊:1,600円+税)は、何の手掛かりもなくコネもない若い君が酪農家になる入門書といえる。著者は私のように工業的酪農を正面から否定していないが、幅広い酪農界の交流から現状と実態を丁寧に説明してくれる。酪農は生産形態が極めて多様で、営農形態も酪農家の数だけあると言っても過言ではない。
放牧酪農家は収益費が高いため、40頭搾乳でも400頭搾乳と収益、可処分所得に大僅差がないのである。この本は、酪農の現状とともに丁寧に説明してくれる。酪農家になりたい君と副題があるように、都会生活に疑問を持つ人たち、もしくは興味ある人たちに是非読んでいただきたい。
放牧を主体にした家族酪農場では、農場には笑いが溢れ花を植え野菜を育てていたりと、ゆったりした時間が流れているものである。負債が少なく牛に負担を掛けず病気も少なく、肥料も農薬も少なく、環境に優しい農業は21世紀の農業の模範なるであろう。
同じく「酪農家になろう 乳牛とともに」三友盛行著や「牛の放牧入門」平野清著いずれも農文協刊が役にたつ。
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マイペース酪農交流会が日韓環境賞を受賞したが、違和感がないわけではない

2023-10-28 | マイペース酪農

東アジア地域の環境保全に貢献した個人や団体に贈られる第29回(2023年)「日韓(韓日)国際環境賞」(主催・毎日新聞社、朝鮮日報社:後援・外務省、環境省、在日韓国大使館)の表彰式が26日、東京都内で開かれ、日本側は、風土に適した循環型酪農を実践する「マイペース酪農交流会」、韓国側は先進的な環境教育に取り組んだ「山自然学校」が受賞した。
北海道の田舎者がノコノコ出かけて、椿山荘の海上で表彰を受けた。この賞は30年前に日韓関係が最悪を迎えるころに”環境”というキーワードで設けられた、環境保全活動をする団体の活動を支援するものであった。日韓の表彰団体の外に、環境事務次官、駐日韓国大使、日韓議員連盟幹事長それに外務大臣からの祝辞も寄せられた。
マイペース酪農が表彰を受けた理由は、適正な規模の乳牛を買うことで、環境保全にも大きく貢献した。大規模ではできない地域の特性に依拠した持続方酪農をつくりあれたというようなものであった。
表彰者の言葉は3分と短く制限されたが、提唱者として賞を受けた三友盛行さんは、決められた3分の倍の時間で、思ったことを述べた。
「現在酪農危機が騒がれているが、それは国が進めた大型酪農の、形態の危機であって我々ではない」「我々が環境に優しいと評価されるのは、時代がおかしいのだ」と結んだ。
私たちは、相当古くから各方面から賞賛を受けていた。理にかなっているからであるが、人が食べることのできないものを、人が食べられる肉や乳や玉子に変えてくれる、畜産の原点を大きくは逸脱していないからである。昔の古い形態だ揶揄されるが、それは昨年亡くなられた農民作家山下惣一さんの言葉通り、「振り向けば未来」なのである。世界は家族型農業、有機農業へ大きくシフトしている。環境として評価されるのには抵抗がなくはないが、農業政策など循環を重視したものに代わっていただきたいものである。
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酪農は原点に戻ることでしか未来はない

2023-07-24 | マイペース酪農

酪農に限らず日本の畜産は、アメリカの穀物を大量給与することで、外形的には発展してきたと見えた。畜産の生産効率は他農業の伸びを圧して急成長した。その成長を支えたのがアメリカの輸入穀物である。
昨日の北海道新聞の記事は、地帯で酪農を知らない人たちに衝撃を与えた。何で牛がいなくなったのか変だと思っていたとか意見を頂いた。記事は一面トップで、「放牧酪農 今こそ脚光」というものであったが、サブタイトルに「小規模でも持続性」とあったが、むしろ小規模であるからこそ持続可能、ずっとやっていけるのである。
記事は足寄に主に新規就農者の数字を全道平均と比較している。全道平均(この中には小規模農家も含まれるが)の5分の1程度の生産高であるが、コロナ禍にあって100万円近く赤字であるが、放牧農家は僅か3.1%減収したに過ぎない。大規模化を進めた国策の姿勢である。
世界の農業は、小規模家族型経営へそして有機農業へと大きく舵を切っているが、日本は世界で最も有機農業地の面積はもちろん規模も少ない国である。国が大規模農業を奨励しているのも、日本しかいない。
21世紀は大気にも大地にも優しい環境保全と、健全で適量な食料が可能な限り均等に与えられなければならない世紀である。
穀物依存型の畜産は、家畜に大きな負荷をかけ、採卵鶏では狭い檻で中空だ餌だけ与え続けられているし、豚も牛も同様である。家畜を生命ある個体として後買おうという世界的な動きのアニマルウエルフェア(家畜福祉)にも反する。
採卵鶏の巨大鶏舎は鳥インフルエンザに感染は、大量の国費を投じて処分される。生産される水っぽい卵は、物価の優等生と持ち上げられているが、このところの天文学的な国費の投入は国民の税金で賄っている。本当に安いかどうか疑問である。
放牧酪の牛たちは健康で健全な牛乳を生産してくれる。大地も汚さなければ、農薬さえ必要ない。のんびりと反芻する牛たちは平和の象徴でもある。

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健康な家畜からの畜産物、健全な大地からの農産物を生産していれば農家は大した問題は起きていない

2023-03-07 | マイペース酪農

減反政策の思想が農民の心を貧困にさせた。
減反政策、即ち生産を止めると金を出すという、もうすぐ起きる、あるいはすでに始まっている食料問題をまるで知らぬかに、食料生産を抑制する愚策は、自給率37%(実質10%台)という世界最低の農業政策、食料政策を現出させている。

先ごろ亡くなられた農民作家の山下惣一さんは、中学卒業すると国のミカン増産政策に沿って、南向きの棚田を買いミカン植えた。ミカンは6年目からとれるが、収入につながるようになるのは、10年目からである。ようやく彼が成人になって収穫できる頃、増産奨励の結果大暴落したのである。
結局はミカンの木を切れば補助金を出すということになるが、生産を止めると金を出すという、農政としてはあってはならない政策がこの後連綿と続くのである。
その後のコメ余り現象は、戦後の食糧難の時代を乗り越えた結果である。作りすぎではなく、食料の質の転換であるが、これにアメリカの余剰穀物を日本が受けたことに始まると言って過言ではない。アメリカは日本に余剰になった小麦を売りつけ大成功した。コメを食べるとバカになる脚気になると、大々的なキャンペーンが功を奏した。この時に日本各地をキッチンカーが走って、パン食の優位性を訴え、行政は生活改良普及員や農業改良普及員を農村に張り付けた。コメが待ったのはそのせい先の結果である。
国は増産計画を進めた結果のコメ余りに、青刈りなどしてコメ生産を潰すと金を出す政策に、1兆円も払うことになるのである。
小麦の次には畜産食品の奨励である。これはアメリカのトウモロコシを、飼料用として売りつけることに成功したのである。今では、畜産食品の玉子も牛乳も豚肉も牛肉も、そのカロリーの10倍以上のアメリカ産のトウモロコシが給与されている。遺伝子組み換えで肥培管理に関するする情報は全く不明の商品である。
今では人間の口に入る穀物より、多くの飼料用穀物が輸入されているのである。食料危機が目前にありながら、世界の12億の人間が飢餓の中にいながら、先進国の家畜は飽食に喘いでいる。こんな矛盾をいつまで許すのか。
今回のクワトロショック(異常気象、コロナ禍、ウクライナ戦争、円高)はそうしたことが、少し早めに露呈したに過ぎない。農業を食料を、金さえ稼いでいればなんとでもできるという、商業主義志向の結果ともいえる。事実鈴木俊一財務大臣は、食い物がなくなれば買ってくればいいと述べている。
国際分業論に、食料は馴染まない。21世紀は、環境を汚染し続けてきた農業から、家族型小農へ、有機農業への転換しなければならない世紀である。
昨日本ブログで述べた自給飼料優先の酪農家は、それ程の影響は受けてはいない。有機農家もほとんど影響ないと述べている。健康な家畜からの畜産品、健全な大地からの農産物、消費者は価格以外の食料の姿を選択肢にしていただきたいと思うのである。
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減反政策が未だに生きていて、増産指導補助した酪農家には成乳廃棄、成牛処分に金を出す愚策

2023-03-06 | マイペース酪農

今朝の羽鳥のモーニングショーはかなり的確に酪農の現状を指摘してくれた。アドバイザーとして出席していた、鈴木宣弘東大教授の指摘を受けての内容が多かったように思える。
2000頭近く搾っている十勝の友夢農場の意見はともかくとして、白糠の酪農家の発言は、訥々とした喋りでかなりインパクトがあった。国の指導で規模拡大した。クラスター事業でほぼ半額で規模拡大できたが、1億5千万円ほどの負債を抱えた。思った以上に電気や水道代など出費が多かった上に、飼料と肥料代なども高騰して、昨年は1千4百万ほどの赤字になったと言ってくれた。成乳牛を廃用にすると15万円貰えるが、搾った方が得になることも述べていた。

成乳牛を売って、つまり農家が生産を止めると金を出して需給を調整するという、世界ではほとんど見られない生産抑制に金を出す方式は、減反という稀代の悪政策を踏襲している。
北海道の生産抑制が14万トンであるが、輸入乳製品が成乳換算13万7千トンでほぼ同量である。海外から輸入して、国内の酪農家には同量を廃棄させる。愚策としか言いようがない。
これに対して、この番組は最も素晴らしい取材をしてくれた。鈴木先生が、TPPで輸入枠は強制ではないと発言しているが、これを受けて農水官僚から、「こちらの都合の良い時だけ買って、都合が悪いと言って買わないわけにはいかない」と、驚くような発言を引き出したのである。
つまり日本の酪農家には、国の政策で増産を促しておきながら、今回のような事態が起きれば、金やるから我慢しろ。海外からの輸入品は変えられないというのである。政策の持って行き方が逆でないか。
これこそ日本農政の本質である。輸出産業の代替えとして、日本農業は人身御供として晒されているのである。
更に生産調整の過程で、農産物(今回は生乳)を廃棄することなどあってはならない。ましてやそれに補助金を出すということなど、近づくあるいはすでに始まっている食料危機を全く考えない、展望を持たない農水省の愚策である。そんな金があるなら、鈴木先生がかなり以前から言っているように、国で買い上げて例えば途上国の支援に使うとか、今回のように輸入品を止めることなどするべきである。

因みに、上図は全農のサイトから拝借したものである。この図のように放牧して自由に草を食べさせている農家は、北海道の酪農地帯の当地でも10%以下であるし、出荷乳量となると2%程度でしかない。全農がこうした図を見せるのは、消費者のもつ酪農家のイメージを大切にしたいからである。
こうして自給飼料に重き、農業の基本からぶれない農家は、今回のような時でも大きなダメージなど受けていない。このような酪農家を増やしたいのであるが・・・。
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日本の近代化、経済効率、過疎化する農村などを問う良書の紹介

2020-07-02 | マイペース酪農

久しぶりに素晴らしい本を読むことができた。「よみがえる酪農のまち 足寄町放牧酪農物語」荒木和秋著 筑波書房 1,500円+税
やや視点を広げれば、日本の歩んできた近代化、経済政策の誤りが生んだ、地方行政の誤り、農業政策あるは食料というものを見下してきた今日の現状を鋭く指摘(著者は言葉では言及はしていないが)しているといえる。
日本の近代化は経済効率つまり利潤を追求することで成功したといい続けてきた。多くの人はその成功の享受を金銭という対価を得ることで、満足してきたのである。農村を”へき地”と呼び、”イナカモン”と田舎を蔑み、一次産業を見下してきた。そして自らの食料生産地域を過疎地にしてしまったことなど、失ったものも少なくはない。
核家族化によって、かつて家庭が持っていた、老年者の経験、壮年者の体力、若年者の意欲、女性のしなやかな感性で形成されていた容を崩壊させてしまった。それはわづかに農村に残ってはいたが、それすらも農村の近代化、経済効率化によって大きく変わりつつある。
農業の近代化、効率化に最もさらされたのが、畜産である。採卵鶏はつけっぱなしの明るい鶏舎の狭い中空で卵を200日ほど生み続けさせたれ、豚は狭いストールでたっぷりと穀物を給与され、乳牛もコンクリート床の閉塞空間で遺伝子組み換えの穀物を大量に食べさせられ、これらの家畜は発病寸前に追い込まれて生きている。都会の方々はそれらのことを全く知らずに、畜産食品を口にしている。

本書は穀物給与に疑問を持った多くの人達が、牛が外で自由に草を食べる放牧を主体にし、乳牛たちが自らの力で牛乳を出すように酪農家は仕向ける、そうした飼い方を追求する人たちの成功話の、いわばオムニバスといえる本である。牛の主たる食べ物は草である。しかし、穀物を与えれば沢山牛乳は出すが、病気にはなるし長く生きることができない。資金も沢山必要になる。結果、多くの頭数を飼うことになる。
放牧を主体にすることで、牛は健康になり手がかからなくなる。酪農家には自由な時間が増える。多くの自治体は、餌をたくさん購入し、多くの乳を出荷し、大きな施設を作る方が人・物。金の流れが盛んになるため、そうした酪農を推奨する。足寄町は町長をはじめとし、役場が放牧酪農のまちを大良く掲げることで、新規就農者が全国各地から集まってきた。
この20年ほどで、18組の若者が就農した。放牧酪農をすることで家庭を築き農村時間を享受している。過疎が進む田舎にこんなに若者たちが就農するのは、足寄町が農業の魅力や地方自治を経済の効率だけで考える、現行の国などの考え方に大きな歪があるからに他ならない。本書はそうした、農業の抱える問題、過疎地が抱える問題、経済最優先が抱える問題を根本から問いかえるものと言って良いであろう。
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石田氏の受賞を受けて、小農こそが世界の未来を開き人々を救うと改めて思う

2020-03-10 | マイペース酪農

日本の畜産は輸入穀物を大量に投入して、肉や卵や牛乳を生産する形態になっている。いわば、「畜産加工業」となっている。せっかく食物が貯めてくれたエネルギーを、うんと落として高価な畜産品に変換させているのである。輸入穀物の80%はトウモロコシである。それでも20年ほど前までは、穀物を多給してもそれなりに牛も経営も健全な酪農家が少なくはなかった。これは私的な経験に基づく推測であるが、この間トウモロコシは遺伝子組み換え作物化が進行している。化学肥料や除草材のハイブリット化には著しいものがあり、そうした変化が何らかの影響を与えているのかと思われる。穀物の多給は規模拡大と並行して行われ、戸数が減少する中、国内の生産量を支えてきた面はある。
しかしながら、ただひたすら生産量を追い詰めた結果、外部資源に頼るだけでなく、外部資本、外部労働力に依存する結果となってしまった。経営も牛など家畜もも極めて不健全、不健康になってしまった。
国の支援を受けて巨大化した酪農は、キロ80円の生産費がかかっている。国が高価な牛乳を促進している結果になっている。

そうした中嬉しい報道があった。上記の朝日新聞の報道である。オホーツク海を望む枝幸町の石田幸也安夫婦が、日本草地畜産種子協会から大臣賞を受賞したのである。石田さんは放牧中心で、購入飼料はゼロ。飼料はすべて自給である。牛乳生産コストはキロ30円台。昨年十意思を呼んだのは2回だけ、野草中毒と子宮捻転の2回だけ。草地は無肥料で、所得率68%である。
これはなにも新しい技術などではない。石田さんの農業理念は、「循環農法」である。理念は<牛と草地の共生> <低投入持続型酪農の確率> <飼料自給率100%>である。乳牛72頭でうち経産牛52頭、生乳生産量334トン、草地面積68ヘクタール(ちょっと前の数字であるがほとんど変わっていないと思われる)
世界は今、家族型農業の普及を目指している。小規模の低投入型農業が健全な農産物を生産し、地域紛争を減らし、食料自給の基本となるからである。日本は国連のこうした動くに参加していない。
石田さんの受賞を喜ぶと同時に、まだ健全な農業を支援する団体がこの国に残っていることを嬉しく思う。
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補助金が酪農乳製品を値上げしてくれる

2019-04-02 | マイペース酪農

政府は消費増税に伴う混乱から、値上げが予測されるものは前倒しするように指示している。要するに値上げを先にやっておけと言うのである。こんな有難いことはない。4月1日は新元号で大騒ぎである。これに乗じて多くの商品が一斉に値上げされた。
酪農乳製品もこれに便乗した。ほかの商品のことはわからないが、乳製品の値上げははっきりしている。政府の進める補助金をたっぷりもらったコルホーズ型の巨大酪農が増えたためである。このことは以前に書いたが、高価な最新酪農器具をそろえて経費ばかりが掛かる。巨大酪農家の生産コストは1キロ当たり90円もかかっている。これでは政府が投資した酪農家が潰れてしまう。そのために乳価(酪農家の手取り価格)を上げざるを得ないのである。今年乳価は2円ほど上がった。
因みに健全な農家は、1キロ当たりの生産コストは35~48円程度である。液体の牛乳の乳価は農家ごとの価格差はない。大型酪農家はやっと息を吹き返すが、家族型中小規模の酪農家は、大型農家が乳価を上げてくれてウッハウッはである。
おまけにさらなる巨大化を指導されるので、乳牛が不足する。さらにさらに、大型農家は牛が次々とだめになってゆくので、乳牛が不足する。肉値が高いので健全な酪農家は和牛を授精するので後継牛が少なくなり、乳牛が不足する。その結果初産の孕みがこれまでの倍の値段になっている。
健全な家族型中小規模の酪農家は牛が長持ちするために初産の牛を売ることができる。高ーく売れるので乳価ともども、大型コルホーズ型酪農のおかげで、バブル状態であるといえる。
政府はTPP推進をし関税の撤廃などというが、結局生き残れるのは家族型酪農でしかない。膨大な設備通しの大型酪農家は潰れるか、さらなる補助金漬けの政策を期待し、政府に陳情するしかないのである。
ここで酪農界で奇妙なことが起きている。補助金漬けのコルホーズ型酪農は自民党支持者が多く、自立型で家族型酪農家は革新系支持者が多いのである。社会主義の失政を踏襲するような形態を自民党支持者が望み、ほとんど補助金ゼロの家族型酪農の経営形態が、政策とは関係なく新自由主義的であるのは奇妙な対比である。
農業の分野では社会主義型政策が進行し、消費価格を上げているのである。
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ブラックアウトによる酪農家の損害は誰が負うのだ

2018-10-07 | マイペース酪農
北海道の大手の小売店コープさっぽろが、胆振東部地震による大規模停電で発生した損害の賠償を北海道電力に請求することを決めた。食品廃棄の損害は9億6千万円に達しているというのである。驚いたことに、北電への賠償請求を決めたのは、コープさっぽろが初めてであるという事である。
損害は酪農分野でも起きている。停電対応にはほぼ次のように分離される。

A、自家発電設備がなく全く搾乳できなかった農家
B、昨日のコメントにあるようにしっかりと自家発電で搾乳できた農家
C、何とか無理にでも搾乳して乳房炎を多発させた農家

北海道の生乳は、ほぼすべてホクレンが集荷して各乳業会社の販売している。一元集荷多元販売というシステムである。多くの乳業会社は自家発電施設がなく、生乳ん搬入すらできなかった。Bの農家ように搾乳ができても乳業会社が受け付けてくれない。搾乳した生乳は乳業会社が受け入れるまで、多くは2日間廃棄した。その損害はいったい誰が保証するのかという事である。
Aの農家は、ほぼ2日間搾乳できなかった。その後初回の異常乳を含めた2回分から4回分(通常は1日に回搾乳すす)を出荷できなかった。その損害は、農家に背金がない。誰が保証してくれるのであろうか。一元集荷のホクレンに責任はあろう。集荷を拒否する結果になった乳業会社にも責任はある。
A、Bの農家には何の瑕疵もなく、誰が保証するかは判然としないが、責任を農家に押し付けてはならない。農家には、乳房炎などの不良牛乳が出た場合や、牛に事故が起きた場合は、自らが責任を負っている。企業側も、間断なく電気を販売したり、生乳を集荷し乳業に振り分けたりとする責任がある。損失補てんが企業の義務であろう。
Cの農家の場合は、治療費用と廃用になった牛の補償は微妙である。酪農家側にも一端の責任がある。停電がなかったり長引いたことは、企業側にも責任がるというものである。C農家の生乳廃棄分と治療後の出荷停止期間の廃棄も馬鹿にならない。

いずれの農家に対しても、廃棄を農家に命じた一元集荷のホクレンに責任がある。しかし、それは生産者の負担でもある。北電は乳業会社に対して責任を負わなければならないが、自家発電施設を所有し稼働していた乳業会社もあって、生乳を受け入れていた工場もある。受け入れを拒否した乳業会社にも責任はある。
何よりも、北電は農家に対して乳業会社に対してホクレンに対して、責任を負わなければならない。
それにしても、一元集荷のホクレン以外の本州の乳業会社、MMJに出荷していた農家の多くは自家発電施設を所有しており、実害が全くなかったのをホクレンは教訓とするべきである。
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搾乳できなかったから乳房炎になるという嘘の話が流れる

2018-10-06 | マイペース酪農
丁度一月前に北海道全体が停電した。ブラックアウトである。そこで毎日搾乳しなければならないウ乳牛たちは搾れなくなって、乳牛たちはみんな乳房炎になったと、報道は騒ぎ立てている。酪農家半甚大な被害を被ったとか、共愛組合の診療所から乳房炎難航がなきなったとか言われている。
私は現在、無理せず昼も夜も牧草地に出て草を食べている、健康な牛を飼って健全な経営をしている農家しか診療に歩いていません。その農家のうち、発電機を持っていなかった農家は、その間搾乳をしませんでした。ほぼ2日間搾乳せずに、乳牛たちは外で、乳房が張り切って搾ってほしいと、「モーモー」泣いていましたが、搾りませんでした。
その二日間で、最初に搾った牛乳は粘度が高く異常乳で、二日間は廃棄しました。しかしそれで乳房炎になった牛はほとんどいません。私の乳房炎の診療も格段増えたわけではありませんでした。特段感染していなければ、搾らなくても乳房炎にはなりません。搾らなかったので乳房内で牛乳が再吸収されて、粘度が高くなったので、獣医さんたちが乳房炎になったと判断したのでしょうが、誤診でしょう。確かに高泌乳牛群で多頭化されて酪農家では、乳牛への負担も大きく大変だったとも推察されはする。
それとも、停電による被害のプロパガンダのための、乳房炎多発宣伝なのでしょうか。搾らなかった二日間と廃棄一日、それに伴う減乳が被害にはなりました。また自家発電で搾乳しても、乳業会社が操業できなかったことによる被害は、少なからずあります。
どうして無理やり搾ったのか良く解りませんから、泣く乳牛と張る乳房に焦ったのでしょうか。乳牛をもっと信頼していれば、そのようなことはなかったと思います。
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酪農の助成金が乳製品価格を上げ、巨大規模の足腰の弱い酪農家を作り出す

2018-05-25 | マイペース酪農

今北海道の健全な酪農家はバブル状態である。乳価はどんどん高くなるし、乳牛の個体販売が信じられないくらい高いからである。バブルでなく経営内容が危ういのは、政府が薦める巨大酪農家である。巨大酪農家に危機感がないのは、補助金漬けで経営内容に実態を自覚していないからである。

健全な酪農家は、農地面積にあった乳牛を飼育し、牧草を主体とした自給飼料によって、牛にも土地にも負荷をかけない営農をしている。上の絵のように、乳牛たちは広い牧草地で生理にあった飼料、つまり牧草をたっぷりと食べているからである。乳牛は健康な体から完全食品と言われる牛乳を、体力と食べたものにあった量だけ生産してくれる。
健全な酪農家の乳牛は全然病気をしてくれない。お抱え獣医師の私はサッパリ儲からない。健全な酪農家とは私たちの根室地方では、1町歩(100メートル四方)に成牛1頭程度の農家である。ここでは平均50町歩ほどであるから、搾乳牛が40頭で育成が20頭くらいの規模である。
輸入穀物は年間1トンも給与しないので、年間1頭あたりの7000キロも生産しない。因みに、平均穀物給与は日本平均で2.5トンとで、泌乳量は日本平均で8500キロ程度である。健全な酪農家は1戸当たりの出荷乳量は、300トン前後である。つまり餌も買わなければ、生産量も少ない、病気もなく、設備投資も少なく、牛たちはベテランが多く牛群が落ち着いている。牛たちにストレスがないのである。酪農家の手取りは年間1500万円程度である。

ところが国が酪農の大型化を進め、巨大な投資を促している。巨大酪農家は400頭以上を飼育し、1台3000万円するロボット搾乳機を10台程度導入し、生産乳量は400頭なら4000トンにもなる。牛は2産で淘汰される消耗品で、収益率は5%前後であるが、外部資源と外部資本に依存するため、きわめて不安定な経営となる。生理に合わない輸入穀物は年間3.5トン給与する。購入穀物は乳代の4割にもなる。閉じ込められた牛舎のコンクリートの床の上を障害歩くことになり、ストレスを恒常的に受けて、いつもに病的状態にある。
国の農業政策は、酪農家に機械を大量に買え、設備投資をして巨大な設備を造れ、大量の穀物を購入しろ、牛をストレス状態にして病気にして薬漬けにしろ、大量の牛乳を生産しろというのである。ご推奨の600頭規模なら10億円になるが、国がほぼ半分を出してくれる。

北海道が生産費調査をやっている。健全な酪農家の1キロ当たりの生産費は約45円ほど、500頭規模の農家の生産費はキロ当たり91円である。これでは大型酪農家が持たないため、乳価をどんどん上げる。大型農家には返済能力はない。国の補助をほとんど受けていない酪農家から、大型農家は牛が早く淘汰されるし規模拡大しなければならないために、高くなった乳牛を飼わなければならなくなる。こうして国の支援を受けた大型農家はさらに経費が嵩むことになる。
結局、国は大規模信仰を疑わず税金を投入して、高価な牛乳を消費者に押し付けることになる。TPPに耐えられ国際競争力を持っているのは、国の支援がなく見放された酪農家という事になる。
何かおかしくないか。
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自然農を目指す酪農家たち、先進国の畜産への警鐘

2017-05-14 | マイペース酪農

今年のマイペース酪農年次交流会で多くの酪農家、特に若い人が食い入るように聞き入っていた報告があった。宗谷地区に入植した酪農家(Y・I氏)で、全国を回って見つけたところに入植したというのでした。酪農に循環農法の可能性を感じたかからというのが理由だと述べています。
放牧主体に理由が、牛に直接食べてもらい糞尿も還元してもらう、究極の低コストだからというのです。今北海道、とりわけ酪農専業地帯である当地でも多分90%以上の牛が放牧されていません。閉塞された牛舎の中で、前年度収穫されたサイレージと輸入穀物を給与されていて、外の出ることは殆どありません。牧歌的な風景は失せてしまいました。つまり、北海道の牛乳も九州の牛乳と変わりがないものになっているのです。
このY・I氏は放牧中心にするだけではなく、草地への肥料の散布と、家畜への穀物の給与をほとんどしなくなったのです。もともと少量の穀物給与で、北海道平均の個体乳量の3割も少なかった(7,405キロ/年)のですが、更に4割も減らして、4,853キロまだ下げています。肥料も、放牧地にはもともと散布していませんでしたが、炭カルとヨウリンだけを3年毎に撒く程度でしたが、それも止めたということです。放牧地も一枚にして区切らず、掃除刈り(食い残した草を切る)もしなくなったとのことです。所得率も、51.5%から62.5%に向上したことが経営を支えています。因みに当地の農協では平均でも20%ですが、大型農家では一桁と言われています。
自然界には自然にめぐみがあり、常に共生の関係にある。それを徒に搾取しないという考え方が必要だと言います。上の左の図は、Y・I氏が概念として描いたもので、自分の農場で実現を目指しています。配合飼料(穀物)は殆ど3年前から親にもやっていない。塩だけは購入しているので、購入飼料がゼロではないというのです。
「無化学肥料、無配合飼料(穀物)で経営が成り立つのかと言われますが、家族が十分生活できています。」と答えています。

日本農業の中でも畜産は、アメリカの余剰穀物の多給で規模を拡大し、土地から離れ、牛家畜の生理を無視して生産量だけを追い続けてきました。外見的には規模拡大して急成長して、生産物の価格も卵のように”物価の優等生”と呼ばれたものもあります。その大きな代償として、農家戸数の減少と農地の循環や家畜の生理を大きく超えたものになって、国の援助だけで成り立つ高コストの巨大農家ばかりが残ってしまっているのです。Y・I氏の挑戦を高く評価したいものです。
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酪農経営を乳量(生産量)だけに特化して評価する誤りが酪農家を減らした

2017-05-12 | マイペース酪農

酪農家の経営について、牛乳生産量にだけ特化して評価する人たちがたくさんいる。高生産、高泌乳、大量生産が優秀な農家だと褒めちぎる人たち、団体、企業などなどがいるからである。酪農家は煽てられ”指導”されて、大型化に走る、高泌乳を目指すことになる。酪農家を”指導”する人たちの多くは、全く酪農を知らない人たちが少なくない。その典型が下の論文である。興味ある方はご覧になってください。乳房炎が多くなって牛乳が減ったかというのである。全く乳房炎を知らない、酪農の現場を知らない、酪農家の心情など興味置ない人の論文である。
解説するのもばかばかしいが、見なくていいように少し説明をしておく。乳房炎が最近だけで起きると信じていること、自主規制の中で酪農家は牛乳を出荷していること、年齢構成や産次数などを無視していること、乳量や乳価のことを知らないから湿度が高い夏に乳房炎が多いと結論づけている。この論文を書いた東京大学の斎藤勝宏准教授という男のことをよくは知らないが、とても分析能力が高いので、多くの周辺の研究者は、酪農家を”指導”することになるのである。
https://www.alic.go.jp/content/000132727.pdf
私の診療するまずまずの農家であるが、43頭ほどの搾乳頭数で年間300トン程度しか出荷していない。一頭当たり6000キロ程度である。日本の平均が、8300キロであるから、かなり少ない。乳房炎の治療は年間10万円にならない。廃棄する牛乳は、出荷制限内だけである。穀物給与量は年間800キロを下回っている。日本の平均が2500キロであるから相当少ない。10産以上の牛が現在3頭いる。牛乳生産価格はキロ当たり40円少々(手取り50円ほど)と思われる。北海道農政部の調査によれば大型農家は90円もかかっている。若夫婦が主体で親夫婦が手伝う形になっている。昨年度は個体販売が好調で、多分800万円程度はあると思われる。乳代と個体販売を加えると、可処分所得は2000万円ほどになる。これは相当経営内容の良い、3000トン以上の大型酪農家の手取りをも超えている。
乳房炎は、牛に輸入されたほとんど遺伝子組み換え穀物を大量に給与するための、乳牛個体への負担から起きるものである。あるいは、大量投資によるための回収に追われ、牛のことなど見ていないことが背景にある。あるいは、圧倒的に過剰となる酪農家の労働時間と、声明を持つ乳牛という家畜への配慮(家畜福祉:アニマルウェルフェア)の欠如が農家と家畜を苦しめているからである。
酪農家の減少は、1次産業の農業をまるで2、3次産業のように、生産量ばかりを追い求めさせたためである。農の原理、自然の摂理、人の営みを全く考えない農政の引き起こしたものである。その典型が、現在国が進める「クラスター事業」という、周辺産業が潤う事業なのです。

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酪農の姿を求めて

2017-04-17 | マイペース酪農
今年も年に一度の交流会の時期になりました。古くから土➡草➡牛➡牛乳と言われています。更には、牛の糞尿が土に還元されて循環が起きることが、地球の環境、循環の基本です。そうした意味でも、酪農こそはこうした循環を残している農業ともいえます。
草について、4名の方の発表があります。企業が儲からない、低投資型酪農、小規模酪農の基本になって支えてくっるのが自給飼料の草です。企業にも行政にもそっぽを向かれる儲かる酪農、地球にやさしい酪農の形を草から考えるのが今年のテーマです。
この頃は、とにかく搾れ搾れの大合唱です。規模拡大して頭数を増やせ、金ならどんどん出してやるというのが、小泉進次郎が旗振る攻める農業というもののようです。
しかし実態は、こうした大型化によって酪農本来もっている循環を壊してしまう、暴力的酪農、外部資本に依存する酪農、加工型酪農になってしまっているのではないかと思われます。
今年は4月23日に西公民館で開催されます。上記の画像はクリックすると大きくなります。近隣の方々はもちろんのこと、大勢の方の参加そして意見交換を願いたいと思います。私も本ブログで紹介した、北海道庁が行った小農こそが儲けているという経営分析結果をパネルで紹介します。
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牛乳という特殊な商品を知ってもらうために、その3

2016-09-02 | マイペース酪農
牛乳は日本の食文化にはもともとなかった食材である。日本の農地は日光量が多く水資源が豊富なため、世界的にも極めて生産性が高い地域である。日本農業が生産性が低いと思っている人たちは、規模の問題と取り違えているのである。
日本ほど一国の中で多種類の農産物を生産できるところは少ない。
上の表は農民連が作成した、植物が生産する生産するカロリーを算出して、その国の摂取カロリーで除した数字である。日本が飛びぬけて高いことが判る。

日本で最初に乳牛を飼ったのは、アララギ派の詩人で「野菊の墓」を著した伊藤左千夫たちである。明治初期のことであるが、千葉県が長年日本第二の酪農県であったのも、森永乳業が支えた伝統なのでなのである。
牛を飼うのは飼料として牧草が採れるところである。牧草は日本中どこでも採れるが、平地は生産性の高いコメを主体とした換金作物が主体となる。草しか採れないところは山間地域即ち高原や、北海道などの冷涼な地域である。つまり牧場と言えば、白樺を連想した中で草を食べる牛を思い描くが、それは伝統的な日本の風景とは言い難い、エキゾチックなロマンを思い浮かべさせるのである。伊藤左千夫たちが酪農を始めたのも、そうしたロマンが背景にあろう。
北海道に入植して牛を飼う人たちにも、非日本的な酪農風景、牧歌風景への憧れが背景にある。それは生産性の低い、非換金作物の牧草でも採れるような冷涼な僻地で、明治以降になって日本酪農は定着してきた経緯がある。
そもそも畜産は、人間が食べることができない物や残滓を家畜に与えて、肉や卵や牛乳を生産してもらう形態を言うのである。そして家畜が生産するもう一つの物、糞尿が農地に肥料とした与えられて生産を高めてくれるものであったのである。日本のように生産性の高い地域には、そうした背景によって畜産は定着しなかったのである。
ヨーロッパや大陸などの農業を日本では、「有畜農業」と呼ぶのであるが、畜産という言葉はこれらの国にはない。単に農業と呼ぶだけである。

しかし、近代になっての畜産は大きく形態を変えてきた。穀物を給与するようになったのである。乳牛であれば、これまで年間4千キロ泌乳すれば十分であったが、穀物を与えるようになって現在では1万キロも生産するようになった。
穀物はほとんどがアメリカ産のトウモロコシである。地球の裏側から金を払ってまで買って乳牛に与えるのは、穀物が安く購入できて高い牛乳を生産してくれるからである。アニマルウエルフェアーについて以前に書きましたが、穀物給与による高生産は、カロリー生産や牛の健康面などから見ても極めて大きな無駄を生むのです。
消費者の多くの方が口にされる牛乳の95%は、穀物主体の飼料によって生産されたものです。科学的な比較は難しいのですが、カロリー比較のザックリとした表現すれば、牛乳のほぼ7割はアメリカの穀物によって生産されたものと言えます。私はこうした畜産を、畜産加工業と呼んでいます。
日本の飲用乳のほとんどは高温殺菌したものです。焦げたような感じがすると私たちは表現しますが、これは牛乳の生産形態に加えて、牛乳の本来の形を失って消費者の届けているといえるのです。
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羅臼港

春誓い羅臼港