今回のWTO交渉から見えてくるものが2つある。一つは、日本政府の2枚舌である。日本政府は二人もの大臣を送りこんだが、重要品目8%を死守すると言っていたが、実は6%で合意をすることになっていたことがばれてしまった。
最初から死守などするつもりがなかったことが、交渉がとん挫したことでばれてしまった。日本国内で主張していたことはなんだったのか、農民たちにはどう言い訳するのか聞きたいところである。
つまり、日本政府は食料の自給率向上も、農業・農村の環境問題も何も考えていなかったのである。
もうひとつが、アメリカが自国の農業への補助金を削ることなく、他国に市場開放を迫ることに、日本をはじめとする世界が平伏していたことが、通用しなくなったことである。インドやブラジルは、平然とアメリカにたてついたのである。
世界がアメリカ一極によって動かされていた時代が終焉し、多極化していることがこうした結果を招くことになった。日本政府はまずそのことを認識するべきである。アメリカが、圧倒的な経済 力と軍事力で世界を支配してきた時代が、過去のものになりつつある。
アメリカの顔色を窺いながら、そのおこぼれをいただくことを基調としてきた日本外交を今こそ見直すべきである。インドやブラジルを見習えと言いたい。
さらにもうひとつ加えるなら、ドーハラウンドが始まった7年前と世界の状況は大きく変わっている。中身がなかったものの、洞爺湖サミットで提案された方向性は正しかった。
つまり、食料問題もエネルギー問題も地球温暖化問題も、市場を開放することによって、解決されるというものなど何一つなく、幻であることがだれの目にも明らかになったのである。
今回の決裂を、福田首相をはじめとする要人たちは異口同音に「残念な結果である」とコメントしている。世界の転換点を見ることのできない、情けない連中である。それと、うそつき閣僚を罷免せよ。
WTO交渉は世界をさらに悪化させる動きしかならない。見直しべき時期に差し掛かってきているといえる。