世はまさに、「有識者会議」のオンパレードである。文部科学省が「指導力不足教員の定義」のための有識者会議、高野連が「高校野球特待生問題」のための有識者会議、経済産業省が温暖化対策に向けての「エネルギー革新技術計画」のための有識者会議、そして農林水産省が「BSE対策に関する」有識者会議と、右を見ても左を見ても「ユーシキシャカイギ」ばかりである。
それぞれの会議の詳細は熟知していないが、BSEに関しては全くお粗末なものである。プリオン専門委員会の委員の 半数が辞職した結果の報告を受けて、この有識者会議がアメリカ産牛肉の輸入を許可した経緯がある。他も大差はないかと思われるが、ここにきてもっとひどい「有識者会議」の全容が見え始たものがあった。
安倍晋三の意向を受けて設けられた政府の、集団的自衛権の憲法解釈の見直しを検討する「有識者会議」である。有識者とは、広辞苑によると「学問があり見識の高い人」とある。ここでは、学問や見識の質は問うてはいない。
安倍ボンが招集した「有識者」は、自分がお好みの右寄りの学者や元外交官や評論家ばかりである。この人たちが、僅かに、憲法解釈として、国際法上の範囲で集団的自衛権は存在するとしても「不行使」とする、従来のギリギリの憲法に抵触しない解釈を、いとも容易に超えた論議を行っている。
自分たちが設定した、4通りの架空の状況を設定して、日本の法律では集団的自衛権すら行使できないと、結論付けるようである。彼の言い分を現行の憲法ではできなから、憲法を変えなければなrないとするのは、論理のさかさまである。「これでは集団的自衛権を行使なんかできません」とするなら、自衛隊をそのような状況下におかないようにするのが、法治国家の「有識者」のまともな考え方であろう。
一般道路を、急ぐ場合は時速60キロでは間に合わない、だから速度制限を100キロにしなければならないと言っているのである。時速60キロの速度で、仕事ができるように都合をつけるのが法治国家の論理なのである。そのための努力こそが、順法精神である。彼れらは、法律が間違っていると主張するのである。
イラクに派兵されていた、先遣隊長で参議院に立候補したひげをトレードマークにしている男が、本当のことをついつい喋ってしまった。友隊が攻撃されたら駆けつけて、護衛を集団的自衛権の名のもとに行うとする発言内容であるが、自らが攻撃されなくても、いくらでも集団的自衛権は演出できることを、図らずも証明したのである。
集団的自衛権の演出方法を、有識者会議とやらは検討しているのである。