新年おめでとうございます。
このところ、しばしば頭を去来するのは、この国のあり方です。考えてもしかたがないと思いながら年末から新年にかけて、やはり頭に浮かんできました。
日本に限らず、世界は非常に不安定な、「危機的」時代を迎えています。ブログでしばしば取り上げてきた「危機の時代」と呼ばれた17世紀ヨーロッパと、どこが違うかと思う深刻さです。これまで年末には人間の幸福とか、進歩といった哲学的なトピックスを考える機会があり、その一端を記すことがありました。しかし、このところ、そうした命題を考える余裕がなくなった気がします。
例年、年末に深く考えさせられる話題を提供してくれる、いくつかの内外の評論も、アメリカの財政の壁、ユーロ危機、イスラエル・パレスチナ問題、中東の戦争、尖閣諸島問題など切迫した問題が押し寄せていることもあって、Can America Be Fixed?, Goodbye Europe, Old battles, new Middle East (Gaza, Israel and Arab Spring)など深刻なタイトルで目白押しになっていました。例年、年末特集で、愉しみに読んでいたThe Economist にいたっては、A rough guide to Hell...and much more, including 「地獄への殺風景な手引き、そしてそれ以上の・・・」という陰鬱な特集でした。もちろん、内容は多分にシニカルで、現在の世界の惨憺たる有様をイギリス人ジャーナリストらしく、斜めに見ているのですが。いつの時代でも地獄へ行きたいなどと考える人はいないので、今回は、the Infernal Tourist Board (さしずめ、地獄旅行案内公社)が、ダンテとミルトンの調査結果に基づいて、旅行案内を作りましたという、凝りようです。旅行されたい方はぜひお読みください*。
「ストップ・アンド・ゴー」政策という言葉があります。元来、保守党から労働党など、政策方向が対立する政権が交代するごとに、政策目標が変えられてしまい、結果として長期安定的な成長は阻害され、国家として停滞の道を歩むという政治現象です。
リーマン・ショック以降の日本は、ほとんど前進しない列車に乗っていたようでした。そして、年末、突然の総選挙。そしてほとんど前触れもなく突如生まれた「未来の党」が瞬時にして、未来のない党になってしまうなど、国民も振り回され、右往左往してしまいました。そして、迎えた新年。前方に線路が敷かれていない列車に乗っているような思いがします。他に乗る列車がなかったといえば、それまでですが。
英語のことわざに、The road to hell is paved with good intentions (地獄への道はよき意図という敷石が敷き詰められている、言い換えると、よい意図があっても実行出来なければ結果はかえって悪い)という意味のものがあります。なかなか意味深長です。日本という列車はどこへ行くのでしょうか。
* ”HELL:Into everlasting fire” The Economist, December 22nd 2012