その日、我々取材班が次に向かったのは、日産のお店。
かつて、ルノー・カングーの購入を検討していたニータ氏が、「NV200バネットに触れてみたい」とイキな進言をしたのである。
そして、そのクルマの試乗車は、札幌市東区のディーラーさんに、実在した。
グレードは、4WDの「バン DX」(4AT:税込車両本体価格231万4440円)である。
塗装していない、樹脂色そのままのバンパーに、飾らないカッコ良さを感じる。
鉄チンホイール&ハイトの高いタイヤも、また然り。
ちなみにサイズは、175/80R14である。
樹脂感丸出しのステアリングホイールは、「手のひらに汗をかきやすい体質の私」には、無念なポイント。
しかしながら、手探り操作性バツグンの「3連ダイヤル式空調コントロール」には、花マルを捧げたい。
シンプルな1眼メーターは、必要最低限の情報を得られれば良しとする、潔い「男の美学」。
A'ピラーの存在が若干邪魔だが、視界は全方位に渡って、おおむね良好。
電動リモコン式のサイドミラーは、不特定多数のドライバーが乗ると思われる商用バンには、マストなアイテムである。
ドライブフィール&ステアリングフィールはスッキリと良好で、キビキビとしたその走りは私好み。
109馬力の1.6リッター4気筒DOHCエンジンは、痛痒なく回り、パワーを使い切るというプリミティヴな歓びに溢れている。
しかしながら、その軽快さとトレードオフで、ロードノイズはやや耳に付く。
おそらくは、遮音材をケチっているのだろうが、それによって得られた車両重量の軽さが、走りの好印象につながっているのかもしれない。
また、FFモデルでは「リーフリジッド」のリヤサスが、4WDモデルでは「マルチリンク」に変更となるのも、地味ながら重要なポイントでありましょう。
ただし、重積載に対応するためか、乗り心地は、ハッキリと、固め。
その辺は、やはり「ルノー・カングー」とは、最も異なる部分といえる。
私個人としては、このクルマの全体的なイメージには、スズキ・アルトに通じるモノがあると、感じた。
両側スライドドアは、狭隘な路地での荷物の出し入れに、大いに重宝することでありましょう。
この試乗車には、メーカーオプションの「スライドサイドウインドウ」が装着されていたことも、特筆すべきかもしれない。
そして、荷室優先のバンモデルだけに、リヤシートはハッキリと「補助席」風情。
背が高いゆえ、スペースユーティリティは、きわめて優秀。
「セルフ給油」が本流となった現代のクルマだけに、給油口にはキャップ紛失防止用のヒモが付いている。
さて、一般的には日陰というか、月見草のような存在といえる、この「NV200バネット」。
しかしながら、このクルマは、「すばらしい素材」なのではないかという気もしてきた。
全長4400mm×全幅1695mm×全高1855mmで、5ナンバー(4ナンバー)に収まる、ボディサイズ。
しかも、グレードによっては、5MTも選べる。
日産が上手くマーケティングすれば、まさしく「和製ルノー・カングー」的な立ち位置を獲得できるのではなかろうか。
このクルマのワゴンモデルは、そこを狙っているのかもしれないが、ボディカラーやインテリアカラーの設定に、詰めの甘さを感じる。
きわめて、惜しい。