私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

無名

2024-05-07 21:05:24 | 映画鑑賞

日本の真珠湾攻撃を前に、当時の政権、日本軍、そして人民解放軍の三つ巴でスパイ合戦が行われている、1941年の上海。
フー(演:トニー・レオン)とイエ(演:ワン・イーボー)は政権の元で諜報活動を行うものの、三つ巴の利害関係は複雑怪奇だ。
今日の敵は明日の味方かもしれず、敵は敵のままかもしれず、情報を仕入れようとして直接働きかけるのではなく、玉突きのようにして情報を仕入れているかもしれず。

戦況と自分たちのパワーゲームの状況を見ながら諜報活動は行われる。
スパイ映画の要素とノワール要素が複雑に絡み合っているのだ。辛うじて登場人物の立ち位置を確認することは出来るものの、スクリーン上で、スパイがそして登場人物達が語る言葉の真偽を確かめる事はほぼ不可能で、スパイたち同様、観客も自分の勘を信じて、諜報活動の成り行きを見守るしかない。

年長のフーは微笑みを浮かべながら交渉し、年下のイエは表情を変える事なく活動に従事する。そのスタイルの違いもキャリアによるものなのか、諜報活動を行う上でのテクニックなのかも分からない。

真珠湾攻撃後の上海、当時の日本軍の戦況、そして秘密裏に活動する人民解放軍。
中国での9.1億元の興行収入の秘密はどこにあるのか・・・という事を考えながら、監督がどこまでもこの二人を格好良く撮ろうとしていることをを確認しつつ、諜報活動での駆け引きを堪能する。

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私はトニー・レオンファンの為、後日もう一度鑑賞予定。その際にはもう少しフランクな感想を書く予定。


青春18×2 君へと続く道

2024-05-06 20:02:35 | 映画鑑賞

18年前の夏の台湾。大学入学前の夏、台南のカラオケ店でバイトをするジミーの前に突然現れた日本人バックパッカーのアミ。

「財布を無くしたので、旅行資金を稼ぎたいからバイトをさせて欲しい」と突然バイト先にやって来た彼女の存在は大学入学前の彼にとっては不思議でもあり眩しくもあり。中国語も分からない彼女の教育係になった事で彼女との仲はどんどん近づいていき、バイト先にもあっという間になじんでいた彼女だが、あまりにも唐突に日本へと戻ってしまう。

18歳の青年にとってはショックな出来事だ。そしてその出来事は、18年後、36歳になった時に彼女からの一枚のはがきを手に日本に旅立つ位に大きな出来事だったのだ。

18歳と36歳を完璧に演じ分けるシュー・グァンハンの存在感がこの映画の全て。

台湾での少し年上のお姉さんであるアミへの淡い思いと、突然自分の目の前から姿を消した彼女に36歳になって日本で再び近づこうとする大人の男性。

18年後の彼の様子からどんな事があったかは大方予想がつく。それでも18年前の思いを大事にするジミーの姿からは、思い出を胸に前に進もうとする真摯な思いが伝わってくる。

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台北よりも南国風でノンビリした雰囲気のある台南の雰囲気も素敵だったが、飯山線を途中下車し、雪原の中に入っていくシーンが印象的だった。40年前、飯山線の戸狩(当時はまだ温泉が出ていなかった)のスキー場の民宿で泊まり込みでバイトをしていた。バイト先に向かう為、長野から乗り込んだ飯山線でトンネルを通り抜ける度に雪景色が広がっていく様はまさに映画のシーンと一緒だった。映画のおかげで私も40年前に旅する事が出来た。バイトの思い出とともに自分の若い時の事も思い出しながら雪景色を楽しむ。

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マリウポリの20日間

2024-05-04 20:46:38 | 映画鑑賞

2022年2月のマリウポリ、AP通信のウクライナ人記者は現地に入り、通信状況が悪い中でもカメラを回して映像を海外に送り続ける。他の海外メディが状況が悪化し脱出するなかでも取材を続けるも、ロシア軍の侵攻が進む中、取材をし続ける事は難しく、軍の特殊部隊の掩護を受けて取材した映像を持って市内から脱出。そんな非常事態の中で、ウクライナ東部のマリウポリにロシアが侵攻してからの20日間を追った映像。

ニュースで観た映像が、砲弾、銃声の音、逃げ惑う人の声と恐怖に震える息遣いと共に目の前に現れる。

自衛のために侵攻するというプーチンの言葉、病院で傷を負った妊婦の映像に対する「フェイクニュース」と反応するロシア政府の幹部の対応、民間人を狙わないという言葉とは裏腹に砲撃を受け崩壊する住宅。

ニュースでは分からない、侵攻の状況がそこにはある。勿論ニュースの映像も衝撃であることに変わりはないのだが、映画は砲弾の音一つの後ろにそれに怯え逃げ惑う人が何人も存在する事、ひと時も休まる事がない恐怖との対峙、いつ終わるとも知れない侵攻への怒り等、何十倍もの情報量で迫って来る。

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自分の好みで映画を観ているだけなので、(ここに映画の感想を書いているのは自分のリアルな生活とは全くかけ離れている)実生活の中では、観た映画を人に勧める事はないのだが、この映画だけは、「見て欲しい」と声を上げたい。

 


異人たち

2024-04-27 20:07:34 | 映画鑑賞

12歳の時に両親を交通事故で亡くし、40歳の今、脚本家となりロンドンのマンションで一人暮らすアダム。そんな彼が幼い頃両親と暮らしていた家に行くと、そこでは両親が大人になった自分を迎え入れてくれるのだ。

両親と遠い昔の答え合わせのような時間を過ごし、ひと時の幸せを感じるアダム。しかしそんな幸せにも変化が訪れる。

誰もが心の奥底に抱える孤独。人は誰もが誰かの異人になるが、同じように誰かの孤独を少しだけ癒せる存在にもなるのだ。そうやって繰り返される深い悲しみを乗り越えるしかない。

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アダムの住むロンドンのマンションから見える朝焼けの中の、夕暮れの中の街並みが美しい。空の色も驚く程澄んで神々しい色合いを見せる。


ジェニファーのしたこと

2024-04-18 21:06:43 | 映画鑑賞

カナダの閑静な住宅街で起きた事件。ベトナム移民の家に男達が押し入ったのだ。警察に連絡をしたのはその家の一人娘であるジェニファー。証拠として撮影された映像と、当時を回想する刑事たちの映像から事件の真相が語られるドキュメンタリー映画。

タイトルからも、刑事たちが当時の状況をジェニファーに尋ねる様子からも、彼女のした事は薄っすらと分かる。

混乱する彼女をなだめながらも、事件当時の様子を刑事たちが確認する様子は、証拠として撮影されている為、彼女の様子が全て正面から捉えられている。映像は不鮮明であっても彼女の一挙手一投足が全部そのまま収められている。

移民であることで後ろ指を指されないようにと、彼女に十分な教育を与えようとする両親と、その期待に応えようと努力するものの、十分な成果が出せずに悩む娘。家族の様子、期待に応えられない彼女が選んだ道が少しずつ浮かび上がってくる。

同じ移民出身である女性刑事のコメントがなんとも切ない。


貴公子

2024-04-16 20:58:05 | 映画鑑賞

具合の悪い母の治療費を稼ぐために賭博格闘技で金を稼ぐ青年マルコ。
フィリピン人の母と韓国人の父の間に生まれ、コピノとして差別を受けてきたであろう彼にとっては、生きていく為の選択肢は少ないのだ。

そんな彼の元に突然やって来た父の使いという韓国人弁護士の男性。金の工面の為に母をフィリピンに残して渡韓する事になるマルコだが、その前に突然現れるのは白いスーツを着こなし、常に満面の笑みを浮かべる若い男性。飛行機の中での挑発は単なる予兆でしかなく、マルコが弁護士の男性とともに父の元に向かうのを何故か笑顔を浮かべながら拳銃で阻止。

襲われる意味がわかっていれば覚悟も出来る。恐ろしいのは笑顔で意味もなく襲われる事だ。
父の元に送り届けるのがミッションという弁護士、そして常に満面の笑みを浮かべマルコを付け狙う男(貴公子?)から彼を守る女弁護士。


弁護士の彼らは誰かに雇われ、何かの目的をもってマルコに近づいてきている事は分かる。ただ、カーチェイス中も、銃弾が飛び交う中でも満面の笑みを浮かべて、マルコに近づき、マルコを挑発する白いスーツの貴公子の目的は何も分からない。金が目的なのか、復讐が目的なのか、理由を明かさず、満面の笑みを浮かべたままマルコの後をついてくるその貴公子。

貴公子の笑顔に翻弄され意図が分からずに追い詰められるマルコと、韓国でマルコが来るのを待ちわびるキム・ガンウ演じる財団の理事、さらに弁護士でありながらとんでもない瞬発力を見せる女性と、これらの登場人物だけでも十二分に殺伐として陰湿なノワール映画だ。そこに一点の曇りもない軽めの笑顔で映画の雰囲気を完全に掌握するキム・ソンホ演じる貴公子。

韓国映画らしい重量級の痛さが感じられる場面はキム・ガンウ演じる財団の理事にまかせ、キム・ソンホ演じる貴公子は部外者然とした軽さと満面の笑みでその場の空気を支配する。
一点の曇りも躊躇もなく拳銃を討ち続ける姿はどこか突き抜けた様子あり。


パスト ライブズ /再会

2024-04-13 21:01:55 | 映画鑑賞

女性と男性の違いを改めて感じずにはいられないストーリーだ。

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幼い頃一緒に韓国で過ごすも、少女の両親の海外移住の為に12歳で別れる事になる少女と少年。12年後、ネットで繋がりオンライン上で再会するも現実に会う事はかなわず、実際に再び出会う事になるのは更に12年後、女性が結婚して生活するニューヨークの街だ。

12年後のオンライン上での再会。24歳の女性は若くて未来も輝いているように思える年齢だが、選択の年齢でもある。恋に生きるのかキャリアに生きるのか。両方を手に入れる事も出来るかもしれないが、彼女たちの場合はそこに距離が立ちはだかる。先に進みたい女性と違い、兵役を済ませ現実社会に戻って来たばかりの男性には、24歳はまだ大人になるための猶予期間なのだ。彼女に会いたくて熱意が実り再会するも、その再会の喜びに満足してしまい男性はその先の一歩を先延ばしにしてしまう。しかし、両親についてカナダに渡り、更にキャリアを積むべくニューヨークに移り住んだ彼女にとっては人生はどこかに向けて進んでいくものなのだ。二人の歯車はかみ合わず、再び出会うのは男性がやっと重い腰を上げる事になった12年後の36歳だ。

諍いがあって別れたわけではない二人の関係故、そのもどかしさは見る者に様々な感情を連想させる。今更会っても何も変わらないはずなのに、男性は何故女性に会うのか、会ってどうするのか、ただの懐かしさなのか。そしてその再会に更なる感情を付け加えるのは、女性が自分の夫に語る韓国語のイニョン(因縁)という言葉。前世という言葉と一緒に使われる事の多い因縁が24年ぶりの再会にどんな意味をもたらすのか。

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私は24年ぶりの再会に心揺れる二人の感情に思いをはせていたのだが、私の後ろの席で観ていた20代前半と思われる大学生らしい二人の男性は違ったようだった。

言葉も分からずに二人の24年ぶりの再会の様子を隣で観ていた女性の男性に感情移入したようで、「アーサー(女性の夫の名前)が可哀そうで涙が出そうになった。俺だったら絶対メンヘラになる・・・」と二人で熱く語りあっていた。

映画館で映画を観る醍醐味は、こんな風に自分とは全く違う視点からの感想が自然に耳に入って来る事だ。

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二人が再会するニューヨークの景色はどこまでも綺麗だ。映画を観ながら、中国本土から香港そしてニューヨークと長い年月をかけた男女の関係を追ったピーター・チャンのラブソングを思い出していたのだが、やはりそんな風に思う人はいるようで、監督にその事を確認しているインタビュー記事を目にする。

 


オッペンハイマー

2024-03-31 18:57:25 | 映画鑑賞

原爆を開発するマンハッタン計画の化学者達のリーダーとなり、1945年7月のトリニティ実験を成功させ、原爆の父と呼ばれたオッペンハイマーの生涯を追う映画。

昨日のブログで『物理に詳しくない事と併せて、監督のクリストファー・ノーランの得意とする時間軸が入り組む展開にやや心配があり…』と、やや気弱な事を書き、YouTube等でいわゆる予習をした事を書いたが、時間軸が入り組む展開についての心配は、そんなにする必要はないと思う。

モノクロが過去、カラーが現在という固定概念を捨ててしまえば、入れ替わる時間軸についてそんなに拒否感を持つ事もないだろう。モノクロは他者目線、カラーが彼の視点。映画は原爆が開発される過程を描いてはいるが、映画そのものは原爆を開発したオッペンハイマーの視点から描かれたものであるからだ。

実験は苦手であるが理論に優れた才能を示し、更に芸術にも造詣が深い化学者であったオッペンハイマーが、どのようにマンハッタン計画への招聘を受け入れ、秘密主義の計画に不満を示す化学者達をまとめ上げたか。その後、出来上がった原子爆弾が自分の手元を離れて、世の中に与える影響の大きさに苦悩する様。そんな一人の優秀な化学者オッペンハイマーの歩んだ道がモノクロとカラー画面が何度も入れ替わりながら描かれる。

広島、長崎の惨状が描かれなかったのも、その時点で物事はもう彼のコントロール下になかったからだ。映画はあくまでも彼の視点から描かれているからだ。

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私の場合は、オッペンハイマーが活躍した時代は量子力学が飛躍的に発展した事(アインシュタインさえも過去の人だ)、エドワード・テラーが重水素を使って核融合反応を利用すればさらに強力な核兵器(水爆)が作れる事に固執したのか・・・等を見る前にちょっとだけでも予習した事が映画を楽しむ上で役に立った。

このちょっとした予習がなければ、ウランの核分裂反応を用いて核爆弾を作っている中で、(そうやって作り出した核爆弾を用いて)更に強大な核融合反応を作り出し、何倍も強力な水素爆弾を作り出すという事の意味を理解することが出来なかっただろう。

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米上院議員のマッカーシーが主導した赤狩りに端を発するいわゆる「オッペンハイマー事件」

私は、映画好きなので、「映画業界のどこに共産主義者が入っているか徹底的に調査する」とマッカーシーが赤狩りを主導したことでブラックリストが出来上がり、ハリウッドを分断した事は知ってはいたが、この赤狩りがアメリカ全体に吹き荒れた事はよくわかっていなかった。赤狩りは、下院非米活動委員会が主導したとの事。映画の中の執拗なやり取りを見ながら「非米活動」という単語が、何故か2024年の今も不穏な単語のように思えてくる。


オッペンハイマー

2024-03-30 20:01:05 | 映画鑑賞

明日、オッペンハイマーを見に行く予定なのだが、物理に詳しくない事と併せて、監督のクリストファー・ノーランの得意とする時間軸が入り組む展開にやや心配があり、事前にYouTube等を検索して見る。

普段はこんな事をした事はないのだが、やはり3時間超の上映時間が私にこんな行動をさせたのだろう。

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検索バーに「オッペンハイマー」と入力しただけで、これらのワードがヒット。

【予習動画】オッペンハイマーを観る前にこれを見ろ【ネタバレなし】


ビニールハウス

2024-03-24 18:46:36 | 映画鑑賞

ビニールハウスの中で暮らしながらも、少年院から出てくる息子と一緒に暮らす事を夢見る女性。老夫婦の自宅に訪問介護士として毎日出勤し、時間があれば息子と暮らす家を下見する日々。ギリギリの生活でも息子と一緒に暮らすという夢はあったのだ。

しかし、そんな小さな夢を持っていた彼女の日常は、老夫婦の妻が入浴介護中に暴れた事からあっという間に歯車が狂い出す。息子と一緒に暮らしたいという思いから、亡くなった老夫婦の妻の替わりに自分の母親を老夫婦の家に住まわせ、世話をすることで事故を隠ぺいしようとする彼女。

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不慮の事故で亡くなってしまった老夫婦の妻を助けようと救急車を呼ぼうとするものの、そこに1本の電話がかかって来た事で事態は雪だるま式に悪い方向に流れていく。そもそも最初からギリギリの生活だったのだ。リカバリーできる余裕もない。余裕のなさ故、選ばざるを得なかった極端な選択がどんどん彼女を不幸な方向に進ませるのだ。

貧困になった事でこんな風にどんどん不幸が連続するのか、不幸になった事で貧困にならざるを得なかったのか。とにかく不幸が続き、救いを求めようとして参加する場所でも答えを得る事は出来ず、更にトラブルの種を手にする事になってしまう。

BGMも殆どなく、鮮やかな色も眩しい光も感じられない画面。救いのなさをどんな風に受け止めればいいのか。

 

 

 


ゴジラ-1.0

2024-03-17 19:35:54 | 映画鑑賞

特攻隊員でありながらも虚偽の故障を申し出た男は、待機していた小笠原諸島の島の基地で怪獣に遭遇する。襲ってくるゴジラに零戦の砲弾を向ける事も出来ず、結果的に整備兵たちを見捨ててしまった男。

焼野原の東京に戻って来ても自分を迎えてくれる両親もおらず、戦争に対する自分の思いに区切りをつける事が出来ずにいる男。そんな中で、ビキニ環礁で行われた核実験の影響で巨大化したゴジラが日本に向かってくるのだ。

私の中では子どもの頃見たゴジラのイメージで止まってしまっているのだが、その記憶の中のビジュアルのイメージのまま、今の技術でより綺麗に、リアルにバージョンアップされている。

大きなゴジラが襲ってくるという緊迫感、スピード感、スケール感というより、自らが発する熱で自分も傷つくという、ゴジラのやや寂し気な雄たけびがやっぱり印象的だ。

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日本政府は混乱を恐れてゴジラの存在を国民に明かせず、駐留している連合軍はソ連軍を刺激してはと行動を起こさず、結局、民間の力を集めてゴジラを封じ込める作戦に出るしかないというストーリー。このストーリー展開には色々考えさせられる。

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先日のアカデミー賞で視覚効果賞に選ばれた「ゴジラ-1.0」は、子どもの頃に色々見たな・・・と私の中での記憶がそこで止まってしまっており、見に行くチャンスがあったものの今日まで見ないで来てしまった。

ただ作品賞を受賞した「オッペンハイマー」と「ゴジラ-1.0」を原爆というキーワード(あくまでもキーワードとして・・・原爆に対する視点は全く別だろうから、比較する事は出来ないだろう。)で色々考えるのも面白いのではないかと思った事で、今回IMAXシアターで鑑賞。


第96回アカデミー賞

2024-03-12 21:51:17 | 映画鑑賞

全部門ノミネート一覧

映画好きなので、アカデミー賞の行方は、ある種の指標として気になる。ある種といちいち書きたくなるのは、私は趣味として好きというだけなので、どうしても全方位カバーとはいかないからだ。

今回の作品賞のノミネート作品だった(さらにエマ・ストーンが主演女優賞を受賞した) 「哀れなるものたち」は、見たいという気持ちもあったものの、予告編を見ただけでやや毒気にあたったような気分になってしまい、そのまま見るチャンスを逸してしまったし、視覚効果賞に選ばれた「ゴジラ-1.0」は、子どもの頃に色々見たな・・・と私の中での記憶がそこで止まってしまっており、見に行くチャンスがあったものの今日まで見ないで来てしまった。

ただ、そうは言っても、ある程度の本数を見る事は、自分独自の基準作りには必要な事だなと思っている。とにかく色々見る事で、あれこれと比べて見たりすることが出来るのが、私としては楽しい。

長編アニメーション賞は、受賞した「君たちはどう生きるか」より「スパイダーマン・・アクロス・ザ・スパイダーバース」が、斬新な色使いとアニメ手法の使い分けの素晴らしさが際立っていて、こちらに軍配があがるのではと思ったりしていた。たとえ外れたとしても、そんな風にある事ない事を色々考え、映画の本編を見た後もまた別の楽しみがあったりする。

受賞結果を見て、作品賞を受賞した「オッペンハイマー」と「ゴジラ-1.0」を原爆というキーワード(あくまでもキーワードとして・・・原爆に対する視点は全く別だろうから、比較する事は出来ないだろう。)で色々考えるのも面白いのではないかと思い、今更ながらだが、「ゴジラ-1.0」を見ようかなと思っている所だ。

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私にとっては、アカデミー賞はあれこれと作品比べが出来るきっかけを与えてくれるものだ。そういう意味では受賞結果でなく、ノミネート作品一覧を見ている時が一番楽しかったりする。


ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語

2024-03-04 21:48:48 | 映画鑑賞

綺麗な絵柄と鮮やかな色で語られる大人に向けた摩訶不思議な物語。
思いがけない展開が、まるで紙芝居が一枚一枚めくられるように語られる。

壮大なおとぎ話は、にわかに信じがたいが、信じた方が自由を感じられるような気分にもなる。

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登場人物たちは誰もが圧が強い。演じる面々も、レイフ・ファインズ、ベネディクト・カンバーバッチ、ベン・キングズレーと摩訶不思議な物語にピッタリだ。

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2024年のアカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされている作品。ネットフリックスで鑑賞。


彼方に

2024-03-03 19:18:03 | 映画鑑賞

理不尽な事件で家族を失い、今はライドシェアサービスのドライバーとして、アプリでマッチングした人を自家用車の後部座席に乗せ、目的地まで送り届ける男。様々な人々を後部座席に乗せて車で移動するだけだ。会話もなく感情が交差する事もないはずだった。

ただ、感情を押し殺して日々を過ごすなかでも、すれ違うだけだった人の存在が、自分の心の中にある何かに触れる一瞬はあるのだ。

そんな一瞬を18分という時間で見せる。

映画としては制約があり過ぎにも思えるが、自分であれこれ想像する自由もあり。

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2024年のアカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされている作品。

ネットフリックスで鑑賞。配信されていなければ、見る機会もなかなかないタイプのものだ。

 


梟ーフクロウー

2024-03-02 20:33:02 | 映画鑑賞

17世紀の韓国。友好的に中国の明と関係を結んでいた李氏朝鮮に侵入し、属国となる事を要求してきたのは衰えが見えて来た明の隙を狙って台頭してきた後金(のちの清)。

映画はそんな清に人質として長年拘束されていた王の息子が、帰国後いくらもしないうちに亡くなった史実をベースに、その最期を目撃する事になった盲目の鍼師の目から描いた映画。

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身体の弱い弟を助ける為に宮廷に入り、その腕前からあっという間に王のお抱え医師の弟子となる盲目の鍼師。

清に人質として捕らわれていたにも関わらず快活な印象の王の息子と比べ、父である王はすべてに置いて疑心暗鬼だ。清に侵攻され籠城するも食糧難と寒さから降伏し、清への忠誠を誓う屈辱を味わった王。親子でありながらも全く違う様子の二人が過ごす宮廷内は、それぞれに仕える家臣たちの人間関係もあり、妙な緊張感が漂う。権力争いの香りがあちこちから強く漂う。

そんな中、盲目であるがゆえ、人々から必要以上の関心を持たれる事もなく過ごすはずだった鍼師だが、その特性故、人が見えない物を感じ取り、王の息子の最期を目撃する事になってしまうのだ。

真夜中、漆黒の暗闇となる宮廷内。顔を認識するのも難しい中、鍼師は音もなく宮廷の中を歩き回り、見えない物を感じとり、多くの事を目撃する事になるのだ。

スクリーンの中に描かれる宮廷内は、蝋燭の火も少なく薄暗く、その広さだけがかろうじて感じ取れるのみ。

スクリーンの中と同様に映画館の中も真っ暗だ。スクリーンから光が感じられない為、自分の手元さえもよく見えない。普通、画面の中で何が行われているか分からない位に暗かったりするとイライラを感じたりするものなのだが、逆に自分もスクリーンの中の様子を同時に体感しているような不思議な感覚に陥る。

映画館で観るべき映画だ。

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清が李氏朝鮮に侵略する丙子の乱は、韓国ドラマでもよく取り上げられる題材。ドラマ@恋人で丙子の乱によって翻弄された人生を送った女性を演じていた@アン・ウンジンが、ここでは若い王妃として手にした権力を見せつけている。