子どもの頃、雨の日は幼稚園へ行くのが憂鬱だった。50年以上も昔の事だけれども、今でもはっきり覚えている。
理由はとても単純だった。クラスの中で私だけ黄色の傘と長靴だったからだ。
幼稚園児の私には大問題だった。
皆仲良しの友達と「同じ色の傘だね。」だの「キャラクターが一緒だね」などと賑やかにしているのに、ひとり黄色の傘と長靴で浮いているのだ。
男の子で黄色の長靴の子がいたような気もするが、ちょっとからかい気味に「なんで女なのに黄色なんだ」と聞かれても私も返事のしようがない。むすっとして傘を振り回したりするものだから、乱暴な態度を先生に怒られたりして踏んだり蹴ったりだった。
「女のは赤かピンクの傘と長靴、男の子は青か黒の傘と長靴なのに、私はなんで黄色の傘と長靴なんだろう」
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勿論両親に不満をぶつけた。両親(特に父親は)「黄色だったら、妹でも弟でもおさがりに出来るだろ?赤やピンクの長靴だったら弟にはおさがりに出来ないじゃないか?」と非常に現実的な言葉を幼稚園児の私に返してきた。母からは「女の子だから〇〇とか男の子だから○○なんて決まりはないんだから、そんなのは無視していればいいのよ」とも激励された。
私もそれは分かった。家では「女の子だから○○しなさい」などと言われた事は一度もなかったからだ。
ただ幼稚園では違った。「ゆみこちゃんは女の子なのに黄色の長靴だよ。」などと先生に報告する子がおり、先生も「あら本当ね。」とその子の言葉に返事をするだけで、私に対してはなんのフォローもしてくれなかったからだ。
子どもながらにフォローしてくれない先生に心の中でがっかりして、無視したりしたので、更に先生に良く思われないという悪循環だった。今なら心の内を説明も出来るが、当時はただただ仏頂面をして幼稚園に通っていたはずだ。
あの頃の私にこの本をプレゼントしてあげられたらよかったのに・・・と思う。