トラブルで筆を絶った元直木賞作家。今は、元担当編集者を呼び出し、途中まで書いた小説を見せては「先が読みたかったら金を出せ」とたかりのような事をして糊口をしのいでいるその男の書いた内容は、まるで本当の事を書いているかのような臨場感だ。
富山の小さな街で、運転手まがいの仕事をしていく中で起こった出来事の数々。古本屋で購入した本。深夜のカフェで出会った男。雪が降る中で車に乗せた男性。そしてなぜか手にした贋札。
一見何の関係もないような出来事が羅列されるその小説の中に、売れる本の香りを感じながらも、「書いてはいけない事が書かれているのではないか?」と疑い持つ担当編集者。
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何が偶然で、何が必然なのか。。。元直木賞作家は積極的に事件に関係しているのか、それともなぜか巻き込まれてそのまま流されているだけなのか。
羅列されたエピソードは時に整理され、時にそのまま置き去りにされ、また裏に糸を引く人がいることも分かり、その全貌らしいものは見えるもののそれが全部なのかどうかもはっきりはしない。
主人公であるはずの元直木賞作家はただの狂言回しなのか、それとも途中で全貌を把握して小説を書きだしたのか、それさえもはっきりしないのだ。
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情報の提示が一方的で、何が言いたい話なのか分からなくとも、その突き放し方がなんだか妙に面白いと思って鑑賞。畳みかけるような情報の渦だが、伏線の回収もかなり一方的だ。ただ、一方的だということは、勝手に解釈していいのだともいえる。私は裏の主役は風間俊介と豊川悦司と思って鑑賞。思わせぶりなリリー・フランキー、岩松了、ミッキー・カーチスそしてカフェ店員の西野七瀬もやっぱりどこか思わせぶりだ。