新書だが読み応えあり。
個人的には第6章が非常に読み応えがあった。
若くて有益な人材を遣い潰し、新卒の「選別」と使い捨ての過程で発生する費用を社会への費用転嫁として処理しているというくだりは、非常に説得力がある。
しかしこのくだりは、企業側から見たら、全然別の話が出てくるだろう。
決してコスト転嫁などでなく、社会制度をごく普通の手順で使っているだけだと。制度をキチンと使いこなすことは、恥ずべきことではなく、きちんとした企業運営がなされているだけだと。
企業の社会的責任という言葉がよく聞かれるが、人材育成は、今の日本では企業の社会的責任とは考えられていないのだなというのが、改めてよく分かる
時間がなければ、
第1章ブラック企業の実態
第2章若者を死に至らしめるブラック企業
第3章ブラック企業のパターンと見分け方
これだけでも目からうろこという人も多いと思う。
人からなんとなく見聞きしたことがあることが、系統立てて並んでいるので、順序立てて理解するのにいいと思う。ただこの本の一番の読みどころは、第7章の日本型雇用が生み出したブラック企業の構造と第8章のブラック企業への社会的対策だろう。
コスト削減という観点から日本型雇用のいいとこどりだけが行われていることがよくわかる。
ただ、これも企業側からしたら、「コスト削減のために取りうる手段はすべて取る」という一言で終わってしまうんじゃないだろうか。企業のビジョンは長期的でなく、とても短期的なのだ。何がどう変わるか分からない先の10年を語るより、四半期の売上、半期の利益が大事という企業が多いはずだから。
私もブラック企業と呼んでも差し支えないところに2年弱程務めていたが、「スタッフ部門は利益を生み出さず、コストを食うだけということを忘れるな!」と毎日のように言われていた。
社歌を歌う声が小さく、挨拶の声が小さいと毎日のように叱られていた。従順でなかったことがよくなかったらしい。
****
「社会保険労務士の劣化は深刻。手頃な資格だが、弁護士のように労働法に熟知しているわけではない。労務管理のプロといっても、それは保険関係の処理などに限定されており、契約、法律論を学んでいるわけではない・・・」
社会保険労務士としては、胸が痛む記述だ。
たしかに私が資格取得した1990年代とは全く違い、今は人気資格なようだ。
弁護士から見れば民法、民事訴訟法などの知識は不足しているだろう、労働判例に関する知識も
まだまだだろう。
さらに使用者側に立った仕事が中心だし、試験に合格したばかりでは実務経験も浅いから、質問に関する答えも紋切型になるだろう。
そういう点を考えると、この著者が社会保険労務士に期待していないということもある意味本当だと思う。
私個人としては、社会保険労務士としての活躍の場は、裁判になる前のあっせん段階であるとか、(企業内なら)調整能力にあると思うのだが、それには法律問題もさることながら、問題がどこにあるかを見極める能力が必要になってくると思う。法律問題では弁護士にかなわないなら、そういう点を磨いていきたいと思っているのだが・・・・
個人的には第6章が非常に読み応えがあった。
若くて有益な人材を遣い潰し、新卒の「選別」と使い捨ての過程で発生する費用を社会への費用転嫁として処理しているというくだりは、非常に説得力がある。
しかしこのくだりは、企業側から見たら、全然別の話が出てくるだろう。
決してコスト転嫁などでなく、社会制度をごく普通の手順で使っているだけだと。制度をキチンと使いこなすことは、恥ずべきことではなく、きちんとした企業運営がなされているだけだと。
企業の社会的責任という言葉がよく聞かれるが、人材育成は、今の日本では企業の社会的責任とは考えられていないのだなというのが、改めてよく分かる
時間がなければ、
第1章ブラック企業の実態
第2章若者を死に至らしめるブラック企業
第3章ブラック企業のパターンと見分け方
これだけでも目からうろこという人も多いと思う。
人からなんとなく見聞きしたことがあることが、系統立てて並んでいるので、順序立てて理解するのにいいと思う。ただこの本の一番の読みどころは、第7章の日本型雇用が生み出したブラック企業の構造と第8章のブラック企業への社会的対策だろう。
コスト削減という観点から日本型雇用のいいとこどりだけが行われていることがよくわかる。
ただ、これも企業側からしたら、「コスト削減のために取りうる手段はすべて取る」という一言で終わってしまうんじゃないだろうか。企業のビジョンは長期的でなく、とても短期的なのだ。何がどう変わるか分からない先の10年を語るより、四半期の売上、半期の利益が大事という企業が多いはずだから。
私もブラック企業と呼んでも差し支えないところに2年弱程務めていたが、「スタッフ部門は利益を生み出さず、コストを食うだけということを忘れるな!」と毎日のように言われていた。
社歌を歌う声が小さく、挨拶の声が小さいと毎日のように叱られていた。従順でなかったことがよくなかったらしい。
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「社会保険労務士の劣化は深刻。手頃な資格だが、弁護士のように労働法に熟知しているわけではない。労務管理のプロといっても、それは保険関係の処理などに限定されており、契約、法律論を学んでいるわけではない・・・」
社会保険労務士としては、胸が痛む記述だ。
たしかに私が資格取得した1990年代とは全く違い、今は人気資格なようだ。
弁護士から見れば民法、民事訴訟法などの知識は不足しているだろう、労働判例に関する知識も
まだまだだろう。
さらに使用者側に立った仕事が中心だし、試験に合格したばかりでは実務経験も浅いから、質問に関する答えも紋切型になるだろう。
そういう点を考えると、この著者が社会保険労務士に期待していないということもある意味本当だと思う。
私個人としては、社会保険労務士としての活躍の場は、裁判になる前のあっせん段階であるとか、(企業内なら)調整能力にあると思うのだが、それには法律問題もさることながら、問題がどこにあるかを見極める能力が必要になってくると思う。法律問題では弁護士にかなわないなら、そういう点を磨いていきたいと思っているのだが・・・・
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