7月末から8月初めにかけては、バレエ・ダンス関係の催しが目白押しである。
東京文化会館でも、7月26日から8月3日まで、パリ・オペラ座バレエ団が2組に分かれて公演を行った。
オペラ座のエトワールのうちなんと12人が東京に集結しており、何だかオペラの「引っ越し公演」のようである。
やはり、日本出身で初のエトワールとなったオニール八菜さんへの拍手が物凄い。
クラシックの定番(「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」 、「ライモンダ」など)も、コンテンポラリー(「コム・オン・レスピール」 など)も、安心して観ていられる。
だが、ひときわ目を惹いたのは、ヌレエフのために振り付けられたという「さすらう若者の歌 」で、何だか「見てはいけないものを見てしまった」ような気分になった。
それもそのはず、この曲はマーラーが渾身の”呪い”を込めて作った歌であり、それにベジャールが”呪い”のダンスを振り付けたようだからである。
こちらは、マチュー・ガニオとドロテ・ジルベールを中心に、2,3年に一度の頻度で開催されてきたガラ公演だが、コロナ問題のため今回は4年ぶりの開催。
この二人は「平常運転」で、特にマチューは、終始笑顔が絶えないほどリラックスしており、「ソナタ」では生演奏(ピアノとチェロが素晴らしい)の音楽に大満足の様子だった。
もちろん、ドロテはいつもの如く「私、失敗しないから」という言葉を顔面に出した状態で、超難しいダンスを披露する。
この二人は、もはや緊張という言葉とは縁がないようである。
他方、明らかに普段よりも張り切っていたのは、フリーデマン・フォーゲルで、よほどオペラ座のメンバーが好きなのだろうか?
「マノン」より“寝室のパ・ド・ドゥ”では、リュドミラ・パリエロと完璧に息の合った動き(というよりは、相撲のぶつかり合い?)を見せ、(おそらく)この日一番の拍手を浴びていた。
さて、マチューとドロテはいずれも39歳ということで、オペラ座のダンサーの定年である42歳まであとわずかである。
来日公演で二人のダンスを観ることが出来るのも、限られているわけだ。