今年はまだ少し日にちがあるが現在は読書モードではないので、読み終える本は増えそうにない
ここ数年続けている恒例の「今年読んだ本」は現在のところ
去年より数は少ない
内容と分量で読むのに苦労するような本が多かったせいもある
一方、一日で読んでしまった本もある
ほんの少し前のことなのだが、もう忘れてしまっているような本もある
これには落ち込んでしまうが、仕方ないと割り切ることにしている
この中から今年の三冊を選んでみると、2つは難なく選ぶことができる
「戦場のピアニストを救ったドイツ国防軍将校」(ヘルマン・フィンケ)と
「帰れない山」(パオロ・コニッティ)だ
前者は映画「戦場のピアニスト」の最後の場面で登場したピアニストを救った(見逃した)
ドイツ国防軍将校のノンフィクションで、彼の日記とか手紙がふんだんに使われたリアリティのある作品だ
トップの立場ではない、命令されたことを行う普通の人の生活感や感情が垣間見られる
そしてそれは、誰でも感じそうなことでそれ故にこうした記録が残っている事自体が
とても意味あることのように思えてくる
彼が休暇で妻のもとに帰ってきて僅かな時間を共にし、また離れていく時のやりきるぬ思いは
時も場所も違う自分にとっても切実なものとして心に残る
いつか、また読み直さねば!と心の中にチェックを入れてある
後者の「帰れない山」は描写が優れていて、目前に景色や行いが現れるような静かな物語
この人の語り口が良い
淡々と出来事を語っているに過ぎないのだが、それは雪のように静かに人のこころに積もっていく
大声で人生とは、、、などと語るのではなく、時間の経過が生み出す変化が、少しばかりの諦めの感情
を伴って人のこころに静かに語りかかける
そこで不思議なことに気がついた
今年は真面目な硬い本に関心がいっていたはずなのに、こうして振り返ってみると
その手の本はどうも印象に残った本としては選ばれていない
「自発的隷従論」「処罰社会」「監獄の歴史」「服従の心理」「歴史の終わり」「近代の虚妄」
「事実はなぜひとの意見を変えられないか」「メディアと感情の政治学」これらの本は確かに参考になった
自分の頭の中を整理する上と、新たな概念を知る上で
そしてまたいつか丁寧に読み直さねば、、とも思った
でも、振り返ってみるとこころに刻まれた量が多いのは、真面目な本というよりは感情を刺激する
タイプの本だった
もしかしたら3冊目は意外に良かったエレーヌ・グリモーの「幸せのレッスン」かもしれない
内省的な物語でヘッセの生真面目さを感じさせるような内容は、またじっくり読もうと感じさせるものだった
結局のところ自分の性格的なものは、左脳を活用する手の書籍よりは
右脳を刺激する書籍の方が好ましいと思っているのかもしれない
だが、もしかしたらそうではないのかもしれない
多く偉人が(物語としての)古典の知識を自らの判断材料としているのを知ってみると
一見空想の物語と思えるようなことも人には大きな影響を与えるものなのかもしれない
人には「作話作用」があると言っのはベルクソンだった(と思う)
この作話作用は案外馬鹿にできないぞ、、と実感するのだが、最近では困ったことに
陰謀論でもその力を発揮しつつある
ところで3冊目はグリモーの作品ではなく、特にこの一冊というより先にあげた真面目な本全体
ということろかもしれない(これらも読み直さねばと感じたので)