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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

新約 とある魔術の禁書目録 第8巻 感想

2013-09-12 14:32:55 | 超電磁砲/禁書目録
第6巻の引きから考えるに、さて、オティヌスとオッレルスの因縁に終止符が打たれるのか?そんな流れになると思われていた第8巻だけど。。。

さて、いかに?

ネタバレになるところもあるので、以下、ちょっとスペースを開けておきます。

















































予想通り、第7巻が完全に科学サイドの話であったのに対して、第8巻は実質的に魔術サイドといっていい話になっていた。

で、7巻が、フレメアを中心に、新約に入ってからの科学サイドの物語、特に1巻から3巻ぐらいまでの科学サイドの話を、実は背後にはこんな陰謀があってね、というように、舞台裏を明かしていった話であったのに対して、この8巻は3巻から6巻までの魔術サイドの話、つまり、グレムリンがいろいろと仕込んできたことの目的、という種明かしをする回になっていた。

このあたりは予想通りなのだけど・・・
うーん、どうしてこうも魔術サイドの話になると、つまんないんだろう、というのを痛感させられたかな。

なんだろうな、7巻が完全科学サイドであって、いわば学園都市の陰謀、というか木原一族の陰謀、が背後に控えながら、その陰謀の合間を上条さんたちがすり抜けて、最後は相手の意図をくじいて幕引き、というのが基本的な流れだった。

そして、全体としては、かなりスパイスリラー風であり、要所要所に破天荒な暴力の爆発を含むカタルシスが用意されていて、読み終わってみたら構成的には随分あらが目立つものの、しかし、初読の時は、グイグイと頁をめくらされる勢いがあるものだった。だから、単純に面白かった。

でも、この8巻についていうと、そういうグイグイ感がほとんどなかったんだよね。

物語中盤までの、登場人物たちの目論見が腰砕けになって、全く違う方向に話が流れていく、という、ジェットコースター的な展開はいつもどおりなのだけど、その中盤までの物語も、中盤を越えて以後の物語も、今回はなんだか中途半端。

序盤は、オティヌスの陰謀を阻止しようとする海外魔術勢力+アメリカの策謀という比較的シリアスパートと、久方ぶりの登場のレッサーを交えた上条さんの女難喜劇を楽しむパートの、二つから成り立っている。

で、まぁ、どっちも面白いといえば面白いのだけど、まぁ、それだけかな。
あまり例えになっていないけど、西尾維新の『化物語』シリーズによくみられるどうでもいい話が延々コミカルに伝えられるだけで、まぁ、読んでる時はニヤニヤできるのは確かなのだけど、でも、それだけ。そのニヤニヤの出来事の中に、後半の上条さんがサバイバルする展開に関わる要素が今回はなくて。

オティヌス阻止を意図する3巻で登場したカッツェ米大統領を含む首脳会談には、旧約の時の、イギリスやフランスの大人物が現れて、おお、懐かしいね、君たち元気だったんだ!という感慨を抱くものの、彼らの登場もただそれだけ。

で、中盤でカッツェチームの策謀が頓挫して以降、いつもどおり、上条さんが出動させられる場面に入っていくわけだけど、今回は、ここが面白くなかった。

いや、今回は、上条さんが美琴&インデックスの助力を願い出てチームで勝利した!というのが新しい、という声もあるようだけど、うーん、それが何?って感じかな。

正確にいうと、汎用性の高い美琴が戦線に加わるのは全くありだし、実際、彼女の臨機応変な対応は戦略的に見ても面白い。それになんたって、わかりやすくらいのツンデレ属性なので、上条さんとのやりとりもいい感じ。

でもさー、インデックスって、役立つのスペルインターセプトぐらいじゃん。てか、それしかないじゃない。まぁ、これ、一種のハッキング能力だからそれなりに汎用性があるのはわかるけど、バトルになると華がない。なので、やっぱり、インデックスは、上条チームのメンバーとして加わるにしても、後詰めの後衛だよね。

なんか、そういったキャラ能力属性を無視して、インデックスを前線にだしてしまったから今ひとつ盛り上がらなかった。

ていうか、それなら、バードウェイとレッサーがいるのだから、彼女たちに活躍の場を与えればよかったのにー、と思うけどね。

なので、中盤以後の、上条さんがサバイバルするところも今回はカタルシスに欠ける。

さらに厄介なのは、その上条さんの動きとは全く別のところで決着が着いてしまったオティヌスとオッレルスの因縁。

これは、正直言ってよくわからなかった。
なんか、この北欧神話の魔術の話は、設定そのものが付け足しっぽくて、なんかね。
全体論の魔術とかいうのも、確か4巻あたりでいろいろ説明されていたけど、トンデモ過ぎてよくわからん。で、よくわからないから、カタルシスもわかない。

そう、カタルシスがこの8巻にはほとんどなかったのだよね。
そこがこの巻の最大の欠点。

思うに、7巻のように科学サイドの話だと、学園都市という架空の世界の話ではあるけれど、今までの物語の蓄積があるから、科学的にどんなことがこの世界では可能か、ということにある程度の予測がつく。

で、読んでる時に想像しているこの予想が、あれれ、そんな方向から覆されますかという感じで、予想の斜め上を超える。あるいは、全く予想通りにハマる。そんな時、カタルシスが生じる。で、読んでて楽しくなる。

対して、どうも魔術サイドの話って、制約条件がなさすぎて、事前に想像がつかない。あるいは、陳腐な想像が浮かんでしまう。今回だったら、東京の人の波がゾンビに見えるとか(なにせ、最近はゾンビブームw)、フレイヤの、実はお腹の中の子の方が本体でした、というのは、割とよくある話。

なんていうのか、魔術サイドの話は、後付けで何とでも理由が付けられてしまうから、それを言われても、あー、そうなんですね、ここではそういう設定なんですね?という感想しか抱けない。

でも、それは楽しくないよね。

それは、最後のオッレルスが頑張る場面でも感じたこと。


ということで、7巻のハードな面白さに比べたら、この8巻は全然面白くなかった。
あるいは、6巻の大団円的な終幕とくらべても面白くなかった。


・・・って考えてくると、普通に思うのは、この8巻は、むしろ新章の始まりだった、と捉えるべき、ということだよね。

実際、学園都市の目と鼻の先である東京湾で、グレムリンが活動しているにも拘わらず、その阻止のための動きが、学園都市側からあまりになさすぎた。ただ、爆撃機が登場するだけだもの。

アレイスターも出なければ、木原一族の木の字も出ない(まぁ、加群はグレムリン側の一人として登場したけど)。一通さんも麦野も出ない。

学園都市側があまりにも静か過ぎた。

そこから考えられるのは、むしろ、今回の最後のオティヌスの変化自体が、アレイスターや木原一族からすれば想定内の出来事でしかない、ということなのかもしれない。

となると、9巻は、オティヌスによって滅んだ世界から始まる、というよりは、もしかしたら、8巻の内容が進められている時の、同時間の学園都市内の動きについての物語になるのかもしれない。つまり、グレムリンの企図について対処しようとする学園都市内部の動き。そして、そのグレムリンへの対処に対して意見がわかれた学園都市内の小競り合いの話になるのかもしれない。

とまぁ、今回の8巻がどうも不完全燃焼気味だったので、それを補う内容をどうしても次巻以降に求めてしまうかなー。

ていうか、もろもろ8巻で登場した魔術サイドの人たちの行動の顛末も記して欲しいところだけど。でもねー、本筋の話からすれば所詮は陽動でしかないからね。。。

ということで、早く9巻が出て欲しいところだけど。
最速で年明けの1月くらいかね。
この不完全燃焼を解消してもらうには、12月ぐらいには出て欲しいところだけど。

てかさ、もう面倒だから、ちゃんと上条軍団、結成しようぜ。
で、チームプレイで戦う、っていうのでいいじゃない。
なんか、みんな本籍はあるけど、今回に限りレンタルで上条チーム、って展開には飽きてきたし、敵方の力がこれだけインフレして組織的になってくると、やっぱりチームで当たらないと無理があると思うのだよね。

まぁ、チームにすると、それぞれのキャラの影の部分が消えて話に厚みがなくなる、と思われているのだろうけど。でも、さすがに、そろそろ、この広げた大風呂敷を少しだけでも畳んで整理する必要があると思うのだよね。

というわけで、新約の8巻は不完全燃焼だった。
満足度は高くない。

次巻に期待。

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