BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

狼と羊皮紙 第10巻 感想: このシリーズのダメなところばかりが目立った「月を狩る熊」を騙る詐欺回w

2024-06-22 18:28:17 | 狼と香辛料/羊皮紙
うーん、今回はダメ、正直、つまらなかった。

まぁ、作者が、あとがき書くのに苦労するくらいだから、作者本人も本巻のできが良くないにとは気づいているんだろうけどね。

にしても、ひどかった。

特に序盤で「月を狩る熊」を出してそれで引っ張っておきながら、完全な肩透かしだったのは問答無用にNG。

あと、今回、最後まで読んでも、今回の事件は実はちゃんと解決していないという、ダメな終わり方。

一応、次巻の冒頭で全部丸く収めて終わり、ってことにするのだろうけど、だったら、今回、あと50ページくらい書き足して、本巻で完結させたほうがよかったんじゃないの?

まぁ、裏返すと、今回はそんな半端なところで終わるくらい、プロットがいい加減だったってことなのだけど。

そもそも、コルたちがデュラン選帝侯の依頼で捜索に出たアマレットに行き着くところがご都合主義的すぎて、ちょっとね。

で、今回、何がヒドイか、っていえば、作中でも言い訳をコルの口から何度もしていたけど、とにかくすべてが「人ならざるもの」の超常的な力頼みだったことw

一番ひどいときなんて、コルの他には、狼(=ミューリ)、羊(=イレニア)、鼠(=ヴァダン)、鷲(=シャノン)といった人外しかいないのだもの。

おいおい、ブレーメンの音楽隊かよ?とか思っちゃうくらい。

で、基本、コルは彼らに頼みっぱなしなのだもの。

まぁ、こうなるのは、コルの協力者の人間が、エーブ以外は「人ならざるもの」の存在を明かされていないからなのだけど。

しかしさぁ、これから宗教改革を推進しようとする「薄明の枢機卿」の周りが人外だらけ、ってのはさすがに無理がないか?と思えてくる。


まぁ、それもこれも、コルが基本的に頭脳労働担当だからやむを得ないところがあるのだけど。

にしても、ローレンスだって、こんなに人外頼みじゃなかったろ?


そういう意味では、シリーズ最大のネックは、ミューリがいつまでもコルべったりの女の子をしていて、いつまで経ってもまともに成長する素振りを見せないこと。

いや、これ、結構、マジでヤバイと思うよ。

もともと、兄妹の切り離せない関係にしているから、本気で、無限の信頼関係の下での共依存の関係から抜け出せない。

これ、後ろから追いかけてきている、ホロとローレンスの二人に無理やり一度ミューリを引き取ってもらってでもして、賢狼ホロによるスパルタ教育でもしないと、ダメでしょ?

あるいは、ミューリが自分の判断で、一度、騎士団にでも入隊して、真面目に自らの騎士道を極めようとする孤独な時間をもつとか。

とにかく、コルは妹(=ミューリ)離れを、ミューリは兄(=コル)離れを、一度敢行しないと、どうにも物語が先に進まないという気がしてきた。

割と次巻くらいでそういう英断を下さないと、ほんとにこの物語は腐りそう。

まぁ、それは今『狼と香辛料』のリメイクがやっているからでもあるのだけど。

ホロとローレンスの関係は、当初は、やっぱり「契約関係」から始まっているんだよね。

だから、基本的にドライな関係なのだけど、そのドライな部分にどんどんウェットな部分が付け加わっていく形で、ホロもローレンスも成長し、歩み寄り、良好な関係が築かれていく。

むしろ、上手くいきすぎて、距離を再度、取ろうとするようなことまでする。

そうした「関係性の機微」が、残念ながらコルとミューリのあいだには皆無なんだよね。

なので、端的につまらない。

多分、それはミューリ以上にコルの方で問題で。

ここから先、薄明の枢機卿として活躍していくなら、人ならざるものとも関係ももっとドライなものとして作り上げていかなくちゃいけない。

それこそ、対価ありきの契約関係として。

そうした関係性が、「月を狩る熊」話による「新大陸発見」という、宗教改革と同時代に起きた、もう一つの世界史的大事件をちらつかせることで、ごまかしちゃってるんだよね。

それがどうにもズルい。

特に今回のように、「月を狩る熊」を「星を狩る熊」と読み替え、「流星事件」に変換してアマレットの動機にするとか、ズルすぎる。

おおー、天文学、これは、ガリレオか、ケプラーか、ニュートンか? ・・・てな具合に期待させておいて、あのアマレットの最後の振る舞いはない。

これでアマレットが、実は彼女も「人ならざるもの」で・・・とかいうならまだ愛嬌もあるのだけど、さすがに、ミューリ、イレニア、ヴァダンに囲まれて、彼らが気が付かないっことはないから、あくまでもアマレットはただの人だよね。

だとすると、ほんとに肩透かしなキャラだった。


・・・ということで、とにかく、本巻は、このシリーズのダメなところがことごとく目立った感じで、マジでだらしない一冊だった。

願わくは、次巻で、だいぶリカバーされることを。

とにかく、コルとミューリは、一回離れ離れにして、それぞれの旅に向かわせないとダメ。

でないと、いつまで経っても、おままごとが続くだけの関係に終始してしまう。

まぁ、せめて、ミューリがもっと自発的に大人の女になることを目指してくれればいんのだけど。

いまのままだと、基本、ただのくいしんぼキャラの、愛玩動物枠でしかない。

それじゃ、物語は進まない。

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狼と羊皮紙 第9巻 感想: 終わってみればコルが自ら「薄明の枢機卿」の大役を引き受ける立志伝編だったのねw

2023-08-15 09:52:04 | 狼と香辛料/羊皮紙
前巻の8巻で、多分、後の「新天地を目指す大航海編?」のきっかけとなる「地球球体説」の探求については、「賢者の狼」たる狼の化身ルティアに一任したことで
当面の間、コルは、宗教改革の鍵となる公会議のほうに集中することになった。

それを受けての第9巻は、終わってみれば、そのコルがいよいよ「薄明の枢機卿」の大役を自ら引き受ける決心をする回だった。

要するに、コルが一皮むけて、少年から大人の男の顔をするようになった回。

その分、エーブが嬉しそうだったのは置いておくとしてw

なので、9巻の宣伝文句としての、「偽の薄明の枢機卿が現れて・・・」という問題についても、その解決はあっさりしたものだった。

というか、その解決のために、むしろ、聖堂都市エシュタットの大司教を含めて、皆でコルが聖人のように奇蹟を起こした!といわれるような、大掛かりな芝居を打つことで終わっていた。

なにしろ、わざわざ川の堤を狼になったミューリに破壊させて、人為的に洪水を起こす!なんて力技まぜやってしまったのだからw

もう完全に「やらせw」による、なんちゃって解決w

一応お話的には、教会を一度は非難した市民たちを、何事もなかったかのようにエシュタットで受け入れるための口実として必要だった、ということではあったのだけど。

つまり、エシュタットなりにセキュリティ保全案件だったということでw

しかも、そうすることで、薄明の枢機卿との表立った対立構図を作らないための配慮だったということでw

もう完全にこの世界の支配者階級の思惑による茶番w

にしても、それで人為的に災害を起こす、というのはどうなんだ?とは思ったけどw

まぁ、だから、その、人為的な洪水の発案者は、騎士物語脳wになっているミューリだったのだろうけどw

それがコルを含めて大人が真顔で取り組むのだから、ちょっとねw

いくらコルが自分に求めれている「薄明の枢機卿」という英雄の役を引き受けるための儀式回だったとはいえ、仕掛けも解決方法も大味だったかなぁ、と。

コルの決意の重さを描く、ということなら、途中で、エシュタットとオルブルクの間で小競り合いくらいは起こして、多少の死傷者を出した程度の「惨劇」くらいは必要だったんじゃないかな。

なんていうか、周りが作ってくれたお膳立てにしたがって、コルがしぶしぶ自分の役を引き受けたくらいにしか見えなかったのは、正直、残念だった。

宗教改革や大航海時代など、参考にした史実をみながらプロットの調整をしているのだろうけど、ちょっとねw

多分、聖堂都市エシュタットにしたって、史実的には、神聖ローマ帝国の選帝侯としての大司教を擁したケルンとかがきっとモデルなんだよね?

で、そうなると、コルたちがやってきた島国のウィンフィール王国ってイギリスがモデルだったんだとか今更ながら気づくわけでw


ということで、今回は、とにかく公会議に向けてコルが決意を新たにし、晴れて「薄明の枢機卿」になることが全てだった。

次回はそうなると、いよいよ公会議が開催されるのかね。

それはいいのだけど、できれば平行して、ルティアに託された地球球体説の進捗も描いてほしいのだけどw

でも、それはもしかして別シリーズになるのかな?

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『狼と香辛料』、まさか完全リメイクでアニメ化するとは思わなかったw

2023-06-29 19:54:37 | 狼と香辛料/羊皮紙
いや、これはびっくり。

てっきり、今更ながらの続編としてやると思っていたのだけど、まさか、最初からリメイクとは。

にもかかわらず、CVは変わらず、ロレンスが福山潤で、ホロが小清水亜美とはw

前作の雰囲気は残しつつリメイクして、昔ながらのファンは取り込みつつ、新規読者を開拓する、ってことなのかね?

いや、物語自体はとてもいい話ばかりだから、リメイクは歓迎だけど。

しかし、リメイクとなると、これ、どこまでやるのだろう?

まさか、最後までやったりするのかな?

そうすると多分、最低でも4クールは必要になると思うけど。


しかし、マジでリメイクかw

最初の頃の流れ、結構忘れてるからなぁw

しかもだいぶ前に原作は処分しちゃったしw

まぁ、再読は必要ないとは思うけど、むしろ、再読に代わって、以前の雰囲気を新しく提供してくれるといいんだけどねw

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狼と香辛料 XXIV Spring Log VII(第24 巻) 感想

2023-03-10 20:15:43 | 狼と香辛料/羊皮紙
コルとミューリの後を追うかたちで続くホロとロレンスの旅。

今回は、そろそろ起こるかなぁ、と思っていたエーブとの再会もあった。

結局、一冊まるまるの長編で、しかも、それがエーブとの知恵比べという、なんとも懐かしい展開。

しかも「イッカク事件」とか、キーマンまで出てくるのだから、もうホント、同窓会だよねw

正直、イッカク事件の顛末って覚えていないのだけれど、でも、たしかにイッカクを巡る事件があったなぁ、という記憶だけはあるw

なので、全編、なんかもう懐かしさだけで読んでしまった。

あとは、ロレンスが、本来なら大商会の会頭になってもおかしくはなかった「凄腕の行商人」という位置付けを象徴するように、今回、彼が道すがら解決した問題は、それこそ、複数の街や領主、商会を巻き込みながらも「ウィンウィン」の関係を作る「総合開発案件、しかもSDG的w」だったのが、彼の年齢を表しているようで、嬉しくもあり悲しくもあった。

まぁ、エーブが、コルたちとの関わりもあって、だいぶ丸くなっていたこともあっての、「壮大な開発計画」だったわけだけどw

『狼と香辛料』って確か、新作のアニメーションをつくる、って発表されていたけど、もう、今やるなら、このニョッヒラ後の旅の方でいいんじゃないかなw

いまさら、イッカクの話とかされても困る気がしてきた。

いい意味でロレンスも老成してきているのでw

それを見守る賢狼妻のホロのほうが今風だと思うしw

結局、本巻の中身の詳細についてはほとんど触れていないけど、でもね、この本はね、そういう一冊なんだよ。

ロレンスの老成を描いた、同窓会のノスタルジア。

いい感じ。

あ、でも、ちょっとだけ気になったのは、エイブの勧めもあって、どうやらロレンスとホロは、当分の間、コルとミューリとは合流しないみたい。

ぼちぼち再会かなと思っていたので、ちょっと残念。

でもそうなると、逆に、コルとミューリは「薄明の枢機卿」として宗教改革の方を完結させて、それを受けてから始まる新大陸発見の旅、大航海時代の物語になって、ロレンスとホロが合流してみんなで向かうということかなとw

絶対、大航海用の船を調達するところで、大手商会の関与は不可欠で、そこでこそ、ロレンスの手腕が試されることになるのだろうな、と思っているw

ということで、まだまだこの物語は、まったり続きそうだねw

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狼と羊皮紙 第8巻 感想: もしかしてルティアに託された地球球体説の検証に賢狼ホロが協力する流れだったりする?

2022-11-06 12:30:50 | 狼と香辛料/羊皮紙
前巻までで、この物語の時代の大きな歴史的背景として、宗教改革、大航海時代、地球球体説、と、中世のまどろみから目覚めるべく大事件が控えていることが示唆されていて、どれもこれもコル&ミューリ組が解決するの?って思っていたのだけど。

とりあえず、今回の話で、最後の地球球体説については、新たに登場した狼の化身ルティアにコルが一任(丸投げ?)して対処することになった。

その分、コルは公会議の方に集中していく、ということで。

しかし、まさか、地球球体説の方の検証をルティアというもう一人の狼娘に委ねるために、ずっとミューリには内緒にしていたとは思わなったよ。

もちろん、著者の意図としてね。

でもさ、結局、この第8巻の中では、ミューリはルティアに対して、自分がルティアが「賢者の狼」という二つ名を名乗るようになった元ネタである「賢狼ホロ」の娘であることを明かしていなかったわけで、この秘匿が今後、ルティアの行動にどういう影響を与えるのか、がとても気になる。

で、今までも、コル&ミューリ組が取りこぼしてきた問題を、後続のホロ&ロレンス組が解決してきたことからすると、これはむしろ、「月を狩る熊」事件の解明も含めて、ルティアがホロ&ロレンスに合流する流れになったりするのかな?

錬金術師で猫の化身のフェネシス(『マグダラで眠れ』のヒロイン)が、どうやら先んじて、この地球球体説の検証にいどんでいるみたいだし、そもそもフェネシスもそのひとりである「呪われた一族」が新天地に飛び立った、という話もあったりすると、この「呪われた一族」は「月を狩る熊」と接点を持っているんじゃないかなとも思ったりするので。

だったら、ホロが解明に向かってもおかしくはないかな。

障害があるとすれば、ニョッヒラの温泉宿のことと、あとはロレンスが、もういい中年なので、どこまでホロたち獣の化身の道行についていけるか、ということだろうけど。

でもなぁ、これまでの作者の作風を見たら、公会議のすったもんだを描いている間に並行して、新大陸と地球球体説の方に向かってもいい気がするんだよね。

近代の夜明け、新時代の到来、を描く、ってことで。

そこで、ホロとフェネシスとミューリの話が合流するのって、なんかかっこいいじゃん!って思うのだけど。

どうかなー。

それはともあれ、今回はコルが、ちょっと若き日のロレンス風に、あれこれ社会の政治の仕組みを直感的に理解して、ほどよい解決策を即座に描けるようになってきたのだがよかった。

もちろん、それは一方で、ミューリの幼さを強調するための対比でもあったのだろうけど。

しかも、その「知恵者コル」の姿を見せた相手が、ミューリではなくルティアだった、というのが、いかにも秘事っぽくてw

なんとなくコルがエーブに気に入られているのがわかるような感じで。

今回は、そこが一番の見どころだったかな。

もちろん、大学都市の様子も面白かったけど。

しかし、この先、どう話は広がっていくのだろう。

西洋文化史的には、中世から近世、そして近代へ、という大きな流れが控えているから、作者の気概さえ十分なら、まだまだ話は膨らませられるんだけどね。

さてさて、どうなることやら。

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狼と羊皮紙 第7巻 感想: どうやらこの先コルによる宗教改革とロレンスによる新大陸開発を一気に描く物語になっていくみたい!

2022-02-20 19:03:11 | 狼と香辛料/羊皮紙
謎の錬金術師による地球儀のような物体をコルが目にして、その意味を探り始めた前巻。

それを受けて、今回は、どうもコルの中で、新大陸への冒険、というオプションが、教会と王国の間の紛争を解決する手段として大きく浮上してきた感じだった。

その一方で、

薄明の枢機卿の列聖の話とか、

印刷術による俗語訳聖書の大量頒布など、

明らかに宗教改革をイメージした展開がはっきりしてきている。

そういう意味では、大航海時代と宗教改革の中世から近世にかけての西欧史の偽史を、ファンタジーの形で書こうとしているみたい。


で、思ったのは、これ、ぼちぼちロレンスとホロが合流する可能性も高くなったんじゃないかな、ってこと。

だって大航海時代って、要するに東インド会社とか造った時代で、まさに商人の算盤勘定によって、開拓事業として冒険が進められた時代だから。

でもさすがに、その事業化の部分ではコルがやれることは少ないはずで。

もちろん、すでに、かつてのロレンスの好敵手たる商人エーブは登場しているので、彼女が、大航海時代の幕開けに一役かむ、という展開もあるとは思うけれど。

でも、やっぱり、その役は『狼と羊皮紙』の時代に、「稀代の大商人」という通り名を得ているロレンスが引き受けるべきだと思うのだよね。

だって、どうやら、この先、コルの決断いかんで、コル自身が宗教改革の推進者として「聖人」になる可能性もたかまってきたわけだから。

もう片翼の、新大陸開発という大事業をロレンスが牛耳る可能性は高いと思うのだよね。

というか、ここまで来ると、「稀代の大商人」ロレンスがもう一旗揚げるためにむりやり新大陸開発のネタを打ち込んできているようにしか見えないしw

それに、例の「月を狩る熊」という存在は、賢狼ホロにとっても因縁の相手であるわけだし。

なにより、新大陸が、ホロたち異形のものたちにとっての楽園であるのなら、そこを目指さない道理もないでしょ。

多分、ゆくゆくは、コルとミューリの旅に、ロレンスとホロの旅が合流することになるからこそ、わざわざ、ロレンスたちをニョッヒラから旅立たせたのだろうしw

きっと、地球儀とか羅針盤とか、そのあたりで、錬金術師とかも再登場するのだろうと思っているし。

ということで、俄然、面白くなってきた!

こうなると、問題は、作者がどれくらいペースを上げて、続きを書いていけるのか、にかかってきた気がするw

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狼と香辛料 XXIII Spring Log VI (第23巻) 感想

2021-10-28 19:46:53 | 狼と香辛料/羊皮紙
『狼と羊皮紙』の方から逆に、ホロとロレンスの、今更ながらの旅の物語。

前巻同様、今回の物語には昔登場したエルサも出てきていて、大部分は彼女視点からの語りだったかな。

当たり前だけど、ホロやロレンスを語り部にしたら物語が動かないからね。

しかし、これ、どこに向かうのだろう。

『狼と羊皮紙』の物語の補完、というわけでもなく、ただただホロとロレンスの旅路を描いている。

もちろん、かつてのように、旅先でロレンスとホロが活躍してその土地の問題解決をするというフォーマットは変わらないのだけど。

でも、その場合も、ロレンスがすでに「伝説の行商人」みたいな感じで、知る人ぞ知る大御所、みたいになっているので、かつてのように無用なトラブルから始まることもなくて。

ホロはホロで、もうただの腹ペコキャラのように、ずっと食べては飲む、を繰り返しているだけだし。

エルサじゃないけど、呆れるしかないw

というか、ホロはもう、いつかは訪れるロレンスとの死別のことだけを考えて活きているだけのように思えるし。

特に今回は、ロレンスが加齢で身体の自由がだんだんきかなくなり始めていることも記されていて、ちょっと悲しい。

そろそろ、何か、ホロとロレンスの旅の目的がほしいところだけど、それは、『狼と羊皮紙』の方でまずは記されるのかな?

というか、ホロたちはミューリたちにちゃんと合流するのだろうか?

でも、合流するとしたら、タイミングが難しいよなぁ。

ということで、なんとなくダラダラと、昔の好で読み続けてしまっているのだけれど、そろそろ単なるボーナストラック的な感じから脱してほしいところ、かな。

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狼と羊皮紙 第6巻 感想: そうか、この先、マジで新大陸にある「月を狩る熊」の国を目指すのか!

2021-04-15 17:31:22 | 狼と香辛料/羊皮紙
なんか、壮大な話になってきた!

この作者は、物語の立ち上がりについてはスロースターターなので、相変わらず100ページをこえる辺りまでは、のらりくらりと、コルやミューリの近況報告のようなことを書いていて、正直、たるいなぁ、と思っていたのだけれど。

でも、中盤になって、ノードストンの爺さんが出てから以降は、シャノン(鷲)イレニア(黒羊)、ディアナ(白い鳥?)、と「人ならざるもの」たちがどんどん出てきて。。。

で、鼠のヴァダンが出てきたと思ったら、猫の錬金術師でしょ?

これ、どう考えても、『マグダラで眠れ』のフェネシスで決定!だよね?

で、「人ならざるもの」が全員集合してきたのは、今後の展開が、どう考えても、新大陸を目指せ!ってことだからでしょ。

最後の、コルが「なくなった」ことに気づいた蒸留器と思っていたものって、要するに地球儀ってことだよね?

で、星占いといっていたのは、むしろ天文学の知恵のことでしょ。

ティコ・ブラーエやケプラーとか。

異端審問もガリレオに向けられたものと同類のもの、ってことだよね。


確かに、コルがやっていることは、旧教=カトリックに対する新教=プロテスタントの動きに近くて、要するに、宗教改革の時代のことだから。

つまり、コルは、マルティン・ルターのような存在。

なので、同時代的に、新大陸を目指す大航海時代が始まる、って感じかな。

そうなると、コルとミューリが新大陸を目指すにあたっては、東インド会社のような会社組織を設立するのだろうね。

その際の出資者に、エーブや、今回出てきたキーマンが一口乗る。

もちろん、デバウ商会とかボラン商会も関わってくるだろうし。

場合によったら、設立発起人がロレンスになる可能性すらあるよね。

なにしろ、新大陸到達を事業として行うのだから。

なんか、本当にオールスターが集合する話になりそうだな。

新大陸に渡ったであろう「月を狩る熊」は、ホロの因縁の相手のようなものだし。

で、そこに、今回、そこら中に痕跡を残した「猫の錬金術師」が絡むわけでしょw

なんかものすごくでかい話になってきた。

その一方で、史実の磁場が強すぎるテーマでもあるので、あー、やっぱりね、というような大味な展開にならないか、ちょっと不安。

まぁ、もともとコルとミューリのコンビが、ロレンスとホロのコンビの焼き直し、二番煎じのようなものだから、どうしてもキャラそのものの魅力には欠けるので、そういう世界観をめぐる物語でいいようにも思うけど。

でも、今回の物語にしても、途中からは、コロはちょっとアイデアを出すだけで、実行主体は、ミューリ以下、シャノンやイレニアの「人外部隊」か、そうでなければ、エーブ姉御の部下たちだからね。

コロは、なんかお願いするだけで、あとはほとんど全部、周りのものがなんとかしてくれる。

それじゃ、どうしたって、主人公としての魅力を得ることはできないよね。

コルは、語り部にはなれるけど、主人公にはなれない。

どうも、そのあたりが、この物語の弱いところだと、今回、痛感した。

次回あたりで、一度、この先の展開について、大きなロードマップを示してくれるといいのだけど。

でないと、あまりにも「新大陸発見」や「大航海時代」という史実のプロットに引きずられた展開予想を読者のほうが先にしてしまうので。

というか、話がでかくなってきたので、逆にでかい話はでかい話で、こうした見通しがないと、いったい、何が面白いんだ?ってことにもなりかねないわけで。

嫌いではないし、面白くなってきたけど、これ、この先、どうたたむのかな、というのが、ちょっと心配になってきた。

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狼と羊皮紙 第5巻 感想: まさかシリーズの原点である「月を狩る熊」の話がこんな世界を揺るがす話に発展するとは!?

2020-08-10 09:52:02 | 狼と香辛料/羊皮紙
『狼と香辛料』の延長線上で、なんとなく惰性で読んできたコルとミューリの物語。

正直なところ、4巻まではとりたてて事件としてもキャラとしても面白いところがなく、やっぱり惰性だなぁ、でもまぁ、世界観はそんなに嫌いじゃないんだよなぁ、という感じで読んでたくらい。

多分、『狼と香辛料』の面白さって、ホロとロレンスの間で交わされる洒脱な会話と、あとは最後の方で問題になった、人ならざるものと人とのあいだの愛情はいかなるものか、というテーマにあったと思っていて。

なので、そもそもコルとミューリという「お子様」のコンビでは、ただやいのやいのしてるだけで、会話に何の含みもなくてつまらないなぁと感じていた。

あと、コルが最初から聖職者だからコルの方から恋愛感情は起こりにくいよな、そもそも恩人夫妻の、年の離れた娘だからなぁ、とも感じていた。

要するに、設定に無理があった。

だいたい、4巻でちょっと面白いかも、と思えたのも、ロレンスの商人としてライバルだったエーブが再登場したからで。

なんだ、結局、旧シリーズのキャラに頼るのか?情けないなぁ、と思っていた。

そうしたら、今度は黄金羊の化身のハスキンズが登場、ということで、あー、やっぱり!、って思ったのだけど・・・


いやー、でもちょっと、ひっくり返してきたね。

その中心にあるのが「月を狩る熊」の逸話。

例の、ホロのいた村を滅ぼした「月を狩る熊」の話。

黄金羊のハスキンズにしても対処に苦慮した「月を狩る熊」の話。

要するに、「狼と香辛料」から続くホロやミューリたちの住む世界の原点であり、起源となった「月を狩る熊」の秘密に切り込んでいくのが、この「狼と羊皮紙」のメインテーマになった。

その上で、これはまだミューリの仮説でしかないけれど、その「月を狩る熊」が作ったのが、この世界の信仰の中心である「教会」だったという話。

つまり、「月を狩る熊」こそが「神」であるという仮説。

で、仮にそれが正しいとすると、コルが求める信仰や、あるいは彼の聖職者という立場もゆるぎかねなくなるわけで、となると、もしかしたら、最終的にコルは聖職者の立場を捨てて、ただ人になり、ミューリと結ばれる、という展開もあるのかもしれない、ということ。

少なくとも、ここまでのところ、コルはいわば宗教改革者として教会の不正や腐敗を正そうとする立場を取り、それが一定の成果を挙げた結果「薄明の枢機卿」なんて二つ名まで得ていたのだから、その流れとも矛盾しない。

ただ、そのような改革の果てに、聖職者も妻帯者になれるような「信仰」が待っているのかもしれない。

その意味で「神=月を狩る熊」仮説は、この世界の成立の前提からして覆す。


その上で、もちろん「月を狩る熊」は、ホロにとってはいわば仇敵であって、その存在の核心に迫りたいと思うもの。

実は『狼と香辛料』の新作で、ホロとロレンスも、コルとミューリに後を追う形で旅にでているので、このミューリの仮説をホロが知ったなら、ホロはホロの理屈で、ミューリたちと同じゴールを目指そうとするかもしれない。

そういう意味では、今回、ミューリが「月を狩る熊」仮説に行き当たるアシストをしたのがハスキンズだった、というのもあとあと、効いてきそう。

ホロとロレンスが、旧知の仲のハスキンズを訪ねていった時に、この話題が出るのは必至だから。


・・・ということで、シリーズの原点たる「月を狩る熊」のテーマを全面展開させてきたこの第5巻は、物語の転回点だった。

そういう意味では、あいまいだったコルとミューリの関係も、さしあたって「聖職としての主君と騎士」の関係にしたのも上手いかも。

『狼と香辛料』は、中世の世界を商人であるロレンスの目から見る、ということで、そこには、いわゆる中世騎士物語とは異なる市井の視点があって、あと、経済の視点があって、そこが魅力だったのだけど、その魅力がコルでは再現できなかった。

一応、エーブを再登場させることで、商人の悪巧み、というプロットは復活はしたのだけど、とはいえ、その中心にコルがなることはない。

けれども、教会の刷新という点から、より大きな「悪巧み」をするポジションにコルはいるわけで、今回、それがはっきりした。

幸い、コルの人徳で、エーブやハスキンズという、全シリーズの重鎮も協力者たりえるわけで。

そこで、ミューリを、そうした教会改革者を守護する「騎士」と位置づけたのは、苦しくはあるけれど、二人の曖昧な関係を清算するものとしてうまかったと思う。


ということで、俄然、『狼と羊皮紙』、面白くなってきたw

この勢いで「月を狩る熊」に迫るストーリーを是非とも展開してほしいな。

多分、最後は、教会の頂点たる教皇様のような存在に謁見することになるのだろうけど、その教皇の正体が、実は「月を狩る熊」本人であったりするのだろうな。

で、彼を支える枢機卿たちもまた、熊の化身。


あるいは、「月を狩る熊」たちは、教会運営は信頼の置ける「化身」の一族に委ねて、新天地に「化身」の住む楽園を作っているのかもしれない。

まぁ、妖精郷みたいなものだけど、俄然、ファンタジーっぽいじゃん!

そもそも「熊」って、キリスト教が来る前の、ドイツとか北欧のゲルマン民族の神様、というか王様として崇められていた存在だからね。

なので、そのゲルマンの土着信仰の頂点である熊が、実はキリスト教を作った、というのは、歴史改変としても結構皮肉が効いてて面白いなぁ、と思うしw

ということで、俄然、次巻が気になってきたw

いやー、ビックリだよ、惰性でも読み続けてみるものだねぇw

一つ気がかりがあるとすれば、こういう純然たるファンタジーっぽい話は、なろう全盛の今だと、なかなか手にとってもらないかも、ってことかなぁ。

実際、『狼と香辛料』は相当稀有な存在だったからなぁ。

打ち切られない程度には多くの人に読まれることを期待したいところ。

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