BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 第8巻 感想

2015-06-30 23:49:40 | ダンまち
アニメのミノタウルス戦でおお!と思ってから、原作を一気読み。
放送は第5巻までなので、最新刊である8巻の間には6巻、7巻がある。また、外伝の四冊も微妙に絡んでくる。
なので、この感想はそれらの内容も踏まえたものになると思うので、その点、ご了解のほどを。
ということで、いつもどおりスペースを開けます。


























































作者があとがきで書いてあるとおり、この8巻は第二部の完結編。

じゃあ、第二部のテーマはなんだったかというと、ヘスティア・ファミリアが正式にたちあげられるということ。6巻で別ファミリアだったリリとヴェルフが正式にファミリア入りし、また、命も一年間の期間限定で移籍。7巻で新たに命の旧知である春姫がファミリア入りする。だから、眷属は都合5人。それなりの人数になったところで、6巻の事件を経て、ファミリアの拠点のホームもゲット。

8巻はそういう環境の中で、表紙に描かれた、命、リリ、ヴェルフ、エイナ、シル、ヘスティア、の6人に焦点を当てた連作中編集。

うまいな~、と思ったのは、一応、その連作をまとめる糸として、前々から触れられていたラキア王国のオラリオ襲撃、という事件が使われていること。その事件によって、先ほどの6人の恋話?だけでなく、魔剣や精霊といった、この世界における重要項目の説明が実は丁寧になされていた。

この物語と設定紹介のすり合わせが無理なくなされていて、マジで、この作者、構成がうまいなー、と思ったのでした。

しかも、外伝の方の話も微妙にかぶらせてきていて。
まぁ、書いてる側からすると、本編と外伝も連続して出しているから、両者の内容がきちんとオーバーラップするのは当然かもしれないけれど。それにしても上手い。

で、8巻単体で見た時、オモシロイ!と感じたのは、リリ(2章)、シル(5章)、ヘスティア(6章)、を扱った章かな。

特にリリと、なんとロキ・ファミリア団長のフィンとの間の縁談話は、なるほどなー、と思ってしまった。

もともと、この本編に手を出したのは、例のミノタウルス戦があまりに素晴らしかったからなのだけど、あの時の、ベルではなくリリの行動がフィンの心を激しく打っていた!といのは、おお!と思うよね。まさに、サイドストーリーなわけで。

まぁ、外伝の方も含めて見れば、あのミノタウルスに挑んだベルの英雄的戦いは、アイズだけでなくロキ・ファミリアの面々の心を鷲掴みにしたわけで、もしも、あの場面を見ていなかったら、ロキ・ファミリアの上級冒険者は全滅していたかもしれなかったわけで。その意味では、フィンにとっても、ベルの偉業は十分注目に値し、フィンもベルに一目おくようになったわけで。

しかし、それ以上に、フィンの心をガツンと掴んだのがリリだった、というのはホント、サプライズですよ。

で、何がオモシロイかといって、このエピソードによって、アイズとベルだけでなく、フィンとリリとの関係も、ロキ・ファミリアとヘスティア・ファミリアの間に成立した、ってところなんだよね。

まぁ、結局、フィンとリリの縁談は破談になったわけだけど、この関係性は、後日、また扱われるのだろうな、と思うのだよね。それこそ、ベルないしヘスティア・ファミリアが絶体絶命の危機に直面した時、リリが嫁入りしていいからフィンに助けを乞う、というような展開でね。

アイズとベルの関係はファミリアの都合で叶わぬ恋、いわばロミオとジュリエットの関係にあるわけだけど、フィンの縁談についてはロキも黙認するということなので。

で、また、外伝を読むとわかるけど、ベルが英雄だとすれば、フィンは文字通り、勇者なんだよね。パルウムに課せられた身体的ハンデを覆すのは、どんな状況でも率先して行動に移る「勇気」にある。

フィン自身、強さと勇気は必ずしも一致しないと述べているし。
そして、そんな考え方をしているからこそ、なけなしの勇気をふるってミノタウルスと戦うベルの救援を呼びに行動したリリを意中の人として見初めたわけで。

作中でも明記されていたけど、フィンとリリが鏡のような関係にあるところが、ホント、うまかった。

結果として、リリだけでなく、フィンというキャラにも感情移入できる要素が描かれたし。

微妙にフィンが死亡フラグを立てているのが気になるところだけど、それも含めて、フィンはこの先、本編にも大きく関わる余地があるんだろうな、と。


じゃ、ロキ・ファミリアと双璧のフレイヤ・ファミリアはどうか、というのに微妙に答えているのが、シルを扱った5章。

今回の話で、シルにはフレイヤの指示で護衛がついているわけで、やっぱり、シルは、フレイヤと浅からぬ関わりがあるんだな、というのが再確認された。てか、フレイヤの分身とかだったりするのかね。まぁ、初期のベルのパワーアップをシルが先導しているところもあるわけで。あんな都合よく魔導書なんて忘れないよね!とか。

もっともシルだけでなく「豊穣の女主人」自体が、フレイヤ・ファミリアの別働隊なのかもね。ヘルメスが、ミアにフレイヤとの仲介を頼む場面もあったし。

まぁ、ミアがもともとはフレイア・ファミリアの一員で、何らかの理由でフレイヤの公認の下で、ファミリアから離れているのかもしれないけれど。

5巻以降、もはやリューさんがヘスティア・ファミリアの準メンバーみたいなものだから、彼女のヘスティア・ファミリア入りのエピソードがこの先あるのかもしれない。その時には、あわせてミアとフレイヤの関係も明らかになるのかもしれない。


フレイヤといえば、ロキとともに、15年前に、ゼウスとヘラのファミリアを駆逐した、というのだけど、あからさまに北欧神話の二神がギリシア神話の二神を排除した、というのも微妙に気になるところ。

その15年前の話が、ベルとアイズの出生の話に繋がるのだろう。

で、その二人の出生の秘密と微妙に関わる話であったのが、ヘスティアを扱った6章。

ラキア王国の主神アレスに情けなくもw拉致られたヘスティアを追って、アイズとベルがオラリオの外に出て、ヘスティアを救出した後、山間の村で、ある意味牧歌的に過ごす、という話なのだけど、ここで、初めてオラリオの外の世界が描かれ、さらには、アイズの両親?の敵である黒竜の鱗まで出てくる。

基本的には、この6章は、悠久の時を一切外見を変えずに、今の姿のまま永久に生き続ける神様と、有限の時しか生きられず、晩年は老いて死ぬヒューマンを始めとした下界の存在との間の、絶対的なズレについて記していて、この話は、タケミカヅチラブの命や、ヘファイストス一択のヴェルフと違って、神との関係を本質的に表していて、興味深かった。

結果として、ヘスティアとアイズの双方との関係がまた一つ強固になったベルくんの試合巧者ぶりには脱帽ものだけどw、それを差しおいても、なにげにこの6章の話は深いなぁと思ったのだった。

外伝の方を読むと、ベルのミノタウルス攻略の一件以来、アイズも、ベルの姿を見続けていることが明確に描写されているので、この事件は、黒竜の鱗を発見したということだけでなく、アイズにとっても深い印象を与えているのだろうな、と思う。いつか彼女のそんな心情も外伝の方で描かれるのかもしれない。

ということで、とにかく第三部の事件が始まる前に、ファミリアの「つながり」を再確認するのが本巻の役割だった、というところだろうか。

で、その第三部への序章として、最後には、なんかまた新種のモンスターがダンジョンの中に誕生している。

これ、新種のモンスターということで、主には深層の超強力モンスターと対決していた外伝の方と、本編もクロスさせるのだろうか。

本編の6巻、7巻、って結局、ダンジョンには潜らず、つまり、冒険はせずに、地上でファミリア間の抗争に明け暮れていたので、それもあって、第三部では、タイトル詐欺にならないようにw、ベルくんたちもダンジョンに再び潜るのだと思うだけど。
さてさて。

正直いって、外伝の、ロキ・ファミリアによる深層攻略のエピソードが、あまりにも直球のパワー型戦闘を行っているので、いくらベルくんたちのレベルやステイタスが更新されているといっても、彼らのパーティだけでの攻略で、それほど手に汗握る話が出てくるとは思いにくいんだよね。

だから、何らかの形で、ロキ・ファミリアと絡む話にならないかな、と。

個人的には、ベルがガレスやベートに稽古をつけてもらうような状況が生まれると燃えるんだけどねw

で、そうやって師弟の関係ができたところで、実は、ガレスはゼウス・ファミリア討伐の急先鋒で、直接的にベルの両親を殺した敵だった!なんて展開だともう最高なんだがw

いやー、実際、ありそうだよねー。

実際、ロキ・ファミリアの中で、ガレスだけが、ベルの戦闘シーンを一切見ていない、というのが、その前哨ではないかと思っていたりする。

ともあれ、ロキ・ファミリアとの共闘でも実現しない限り、ベルがアイズたちの敵である新種のモンスターたちと相対することはないんだろうな。

となると、ベルくんがレベル4を超えて、一足飛びにレベル5にならないと現実的には難しいんだろうな。

あと、ヴェルフが指摘している通り、ベルたちのパーティには魔導師、望むらくはエルフの魔導師が必要だよね。でないと、5巻の階層主との戦いとか見た後では、パーティとしてどうしても限界を抱えてしまうから。巨人が出てくるたびに、ベルのアルゴノォトで底上げされたファイアボルトで駆逐、というのでは、あまりにも芸がないから。

で、エルフの魔導師の候補としては、やっぱりリューさんが筆頭なわけだけど、大穴として、ロキ・ファミリアのレフィーヤが、命のように期間限定で移籍してこないかな、と思ったりもする。ベル同様、アイズの崇拝者であるレフィーヤは、既にベルとは遭遇しているわけで、しかも犬猿の仲っぽく描写されてしまっているわけだけど、それでも、この二人が協力して事にあたる場面がでてこないかな、と期待してしまう。

まぁ、普通に考えて、ロキが許すはずないんだけどね。

というわけで、本編と外伝が交差するのは、やっぱりベルがレベル5になって、パーティにエルフ魔導師を加えてからなんだろうな。となると、第三部がそうしたヘスティア・ファミリアの実力の底上げに使われて、外伝の第二部は、本編の第二部の間のアイズたちの動きを補完することになるのだろうな。黒竜の鱗についても、外伝第二部でもっと詳しく語られるのかもしれない。

というわけで、だんまち、オモシロイよ。
とりあえず、9月の9巻を心待ちにすることにする。

あとは、ゼウスがどのタイミングで登場するかだけど、ギルドの奥にいるのがウラヌスだからなぁ。ポセイドンとあわせて、やっぱりラスボス的扱いなのかな。。。

あ、そうか、ウラヌスたちに仇なす相手って、もしかしてポセイドン?
いや、超適当だけどw

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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 第13話 『眷族の物語(ファミリア・ミィス)』

2015-06-27 14:49:53 | ダンまち
いい終わり方だったねー、と言いたいところだけど、
さすがに最後は駆け足だったかなー。
原作は、超絶・盛り上がるラスト!だったんだけどね。

SHIROBAKOのナベP的に言えば

「原作者―、これ、カロリー、高すぎます!!!」

って感じかなー。

いや、最後の超・階層主=大巨人との戦いは、モブも含めて群衆が一環となって大巨人に挑む!という話で、その中で、英雄の一太刀を振るうベルくん!って感じなんだけど、いかんせん、SHIROBAKOの「馬の群れ」の描写と同じく、そこまでモブの動きを表現し切ることができなかった、それゆえ、なんか、駆け足で、ショボイ映像になってしまった、って感じだね。

だから、これは、原作がどうこうというよりも、アニメ化そのものの限界。

それこそ、原作5巻の終盤の盛り上がりをそのまま再現しようとするなら、『進撃の巨人』なみに、贅沢な数だけのアニメーターを動員しないと無理。

いや、それはそれで見てみたかったけどね。
モブの冒険者たちがガッツリ動いてる横で、リューさんやアスフィが、それぞれ一騎当千の上級冒険者として活躍する様は、止め絵じゃなく、動きの中で見たかったなー。

あと、構成的にも、原作の「カッコイイセリフ」ばかりを拾った感じになってしまったので、その分、タメがなく、薄っぺらい感じになってしまったのは残念だったかな。

原作だと、ベルの爺さんが神ゼウスであったことは、もう少し前にヘルメスとヘスティアの対話の中でほのめかされていたので、唐突な感じはせず、あ、やっぱりそうか!という感じだったんだけどね。

何が言いたいかというと、アニメにするための駆け足の構成の結果、ベルくんが、いかにもよくある「俺TUEEEEE」型のキャラのように描写されてしまったのが、ちょっと残念だったかな。ベルくんは「お兄さま」みたいな俺TUEEE!じゃないからね。

原作だとちゃんと努力している。
まぁ、彼のリアリス・フレーゼがチート!といえばそうだけど、でも、これもちゃんと憧憬の対象=アイズが現れたからのものなので。
このあたり、原作でも含みのある描写にとどまっているから、ベルの努力との因果関係がわかりにくくて、それゆえ、チートキャラみたいに見えてしまうのだけど。
原作では、もっとそのあたりは丁寧に描写している。
というか、神々たちですら、ベル、ズルくね?と怪しんでるわけだから。
そのあたり、読者の代弁をする神々の描写が欠けているのも、ベルはチート、みたいな理解に行ってしまう理由なんだろうな、と。

そうそう、最後の「英雄の一撃」のアルゴノゥトにしても、原作では説明が一応されてるしね。

だから、まぁ、半分くらいは、アニメ化が下手だった、ってことにはなるんだけど、でも、そのうちの半分は、まぁ、アニメじゃ無理だよね、という感じで。

そういう意味では、原作は、きっちり書き込んでいて、超・オモシロイ!

原作は未読だったけど、ベルがミノタウロスを撃破したところで、おお!、これはもしかしてすごい?、と思って、原作を手にとって見たら、これが、まぁ、ホントにオモシロイ。

あまりに面白くて、久しぶりに、本編8冊、外伝4冊を、一気読み。
いやー、マジで面白かった。

原作の方の感想も、そのうち書こうとは思うけど、なんだろう、勢いがあった頃の、アクセル・ワールドみたいな感じかな。災禍の鎧編が終わるあたりまでの。

ベルの成長にもちゃんと理由があるし、ベルの憧憬の対象となるアイズについても外伝できっちり描写がある。
その他、ヴェルフやリリ、ロキ・ファミリアについても。

そういう意味で、この最終回の最後で、「豊穣の女主人」で、ベルたちとロキ・ファミリアの面々が、卓を共にして飲み食いしている場面があったけど、あれは、一つのオマージュだよね。

とにかく、原作では、ベル以外のキャラにもちゃんとストーリーがつけられ、しかも、本編と外伝で、それぞれ、ファミリアの話と、都市・神々の話が、描き分けられていて、結果として、とても重層的な物語になっている。

ベルの祖父が神ゼウスで、どうやらベル自身は、ゼウスファミリアのメンバーの落とし胤らしい、ということも含めて、きちんと神話・英雄譚的な仕掛けもされているし。

アイズやヴェルフなど、どうやら、神に最も近い「精霊」との関わりがあるようだし。

なにより、神々の戦いたる、巨大な陰謀も背後では動いているみたいだし。

・・・という意味では、この先、二期が仮に作られたとしても、今回の階層主との決戦以上に、原作的には群衆の動きが錯綜する描写が続くはずなので、どう考えても、『進撃の巨人』なみのリソースを割かない限り、ショボイものになるのは目に見えている。

まぁ、ロキ・ファミリアの総力戦とか、実際には見てみたいんだけどね、映像で。
でも、絶対、ショボくなるよなー。

なので、二期を期待するよりも、このまま原作を、文字ベースで楽しんだ方がいいような気がしている。

いや、原作、ホント、オモシロイし!

だいたいさ、ベルくんがチートだから云々、とか言うけどさ、
英雄譚における「英雄」って、半神半人だからね。
神の一歩手前。
むしろ、神の絶対性をひっくり返すところがオモシロイわけで、だから、チートであるのはある意味、当然。
そういう意味で、ベルくんは、あと、アイズも、そのあたりは、きっちり、ちゃんと正統の英雄譚を題材にしているところが、かえって好感がもてるところ。

まぁ、このあたりは、原作の感想の方で書くようにするけど。

ということで、アニメは面白かった。

とにかく、ミノタウロスとの死闘のところは、動きも構成もBGMも含めて、よく出来ていて、鳥肌ものだった。
なにより、あれをきっかけにして原作を知れたのはよかった。
タイトルがタイトルだけに、そうそう手にするものではないけど、読んでみたら、タイトルから来る、いかにもなラノベ(まぁ、そういう部分もあるけど)ではなく、むしろ、正統派のジュブナイルで、ファンタジーだったのがよかった。

アニメは、最終回のCパートを見て、あー、やっぱり、ヘスティア目線でベルくんの成長を見守る、という構成だったのだな、と思った。

それはそれで(最初期の「紐」騒動も含めてw)、よく出来ていたんじゃないかな。

とにかく、原作を紹介するためのPRアニメ。
でも、その策に乗っかって、原作を手に取ると、オー!と思う世界が待っている。

その意味でも、成功したアニメ化じゃないかな。

群衆の動きもバッチリやります!というのなら、二期にも期待したい!
なにしろ、この最終回の後から、つまり、原作6巻以降から、「眷属の物語」が本格化するのだから。

ワンピとかだらだらアニメ化するくらいなら、こういう作品を映像化していくほうがいいのではないかな。


追記

最後、あれ? と思って原作5巻を見なおしたら、
やっぱり、階層主は、ベルくんのアルゴノゥトの一太刀でやられていたよね。
なんで、あの一太刀で決めなかったのだろう?

これ、結構、地味に「改悪」だよね。

なぜなら、「英雄の一撃」で決着した事実こそが、ヘルメスをしてあれほど感嘆させたわけだから。

つまり、アルゴノゥトならば、起死回生の一撃、乾坤一擲の大博打を打っても絶対勝利する!というのが、ヘルメスを驚愕させた理由なわけだから。

それをアルゴノゥトでは退治できずにトドメを撃たなくちゃいけなかった、じゃ、英雄の一撃じゃないじゃん!

まぁ、上でも書いたように、アニメ化は、基本的にヘスティア視点の物語だったから、最後はヘスティアナイフを使って決着を付けたかった、ってのもあるのだろうけど。

でもなー。

比類なき一撃、撃退できない相手はいないのがアルゴノゥトだ!という意味では、台無し。

むしろ、あのトドメをさすところに使った尺を使って、その後の様子をもう少し増やして欲しかったかも。
酒場の光景とかね。

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アクセル・ワールド 第18巻 『黒の双剣士』 感想

2015-06-11 22:00:50 | SAO/AW
AWも18巻!
え、もう18巻なの?なんかそんな実感ないんだけど、と思ったら、なんと、17巻は去年の10月に出てたのね。

8ヶ月ぶり。

そりゃ、お話そのものを忘れてるから、18巻?とか思ってしまうはずだよね。

ということで、いつもどおり、スペース空けときます。






























































で、読み終わっての感想は、え?、ここで終わるの?ってこと。

しかも、前巻同様、後ろ50ページ位は、BD特典だった短編が無理矢理掲載されていて。

おいおい、8ヶ月待って、本編たったの250頁かよ、いくら何でも、手、抜きすぎじゃね?

というのが本音。

今回の最後って、ハルユキが帝城にもう一回進入するところで終わる。
正直、この帝城進入は、え?なんで?、と思うくらい、唐突な展開で、これはこれでツッコミどころは満載なんだけど、まぁ、それはあとに書くとして。

とにかく、ハルユキ(とレイカー)が帝城に侵入して、当然、そこでは、トリリードと再会するのだけど、なんと!、というには、まぁ予想はついていたのだけど、リードの親が、黒の双剣士(w)グラファイト・エッジだった!ってところで終わってしまった。

リードがグラさんを、僕の親です!と紹介したところで、まだ結構頁が残っていたので、どうしてこういう経緯になったのか、きっとそれを残りの頁で説明しながら、次の展開に行くんだろうな、と思って、頁を繰ったらいきなり「つづく」で、マジ、びっくりしたよ。

えー、ここで終わりにするかよ!

いや、冗談抜きで8ヶ月待って、本編250頁しか進まないってどういうことよ!

って思うよね。

8ヶ月開けたら、400頁くらいは、進めようよ、さすがに。

いや、他にも、SAO、SAOP、それにアイソレータとかあって大変なのはわかるけどさ。

とはいえ、8ヶ月待ってこれはないよ。

少しは鎌池和馬を見習えよ!、とマジで思ったな、これは。

しかも、本編は、ほとんどグラさん話で終わり。

あとは、突然のリアル割れが、プチパケ、コバルト・マンガン組で起こってしまって。

あれ、リアル割れ、ってもっと慎重にやるもんじゃなかったけ?

と結構唖然。

まぁ、例のメタトロン攻略→ISSキット殲滅作戦のところで、ずっとアバターで戦闘ばっかりで、あれは単調だなー、と思っていたので、作者の方も、リアルワールドでキャラを動かしたい、と思ったのだろうけど。

とはいえ、これは迂遠かなぁ。

加えて、取ってつけたような宇宙ステージ戦闘で、いつもと勝手が違う戦闘で作者的にはチャレンジだったかもしれないけど、読む側としては正直、どうでもよかった。

作用反作用で、飛んでっちゃうとか、ぷぷぷ、と笑いは確かに漏れるけど、でも、それだけだよねー。

まぁ、それも本編が400頁くらいあるところでやるならいいけど、さすがに250頁で、これはないわ。

それに、せっかくグラさんが登場したのに、無重力状態じゃ、全然グラさんの凄さがわかんないじゃん。そこも不満。

てか、いくらなんでも、バトル・ロワイアルモードへの突入が唐突すぎでしょ。

なんていうのかなー、川原礫という作者は、「お兄さま」の作者と違って、設定に溺れずきっちり物語を進めていくのがいい感じだったのに、今回、というか、前巻あたりから、物語の進め方がとても雑になってきてる気がする。

そういう意味で、今回の読後感は、正直、よくなかった。
つまらないし、迂遠。
変に物語を引き延ばしているなーと思わせられる一方で、一つ一つの場面転換が唐突すぎて。

その最たるものが、帝城アゲイン!のところね。

これ、黒雪姫の目的であるブレイン・バースト世界の究極に触れる、ということを行うために突然スタートしたことなのだけど、その黒雪姫の方にしても、もしかしたら卒業後、留学しちゃうかも?というネタが突然、文脈無視で出てきたことへの、いわばハルユキの脊髄反射的な対応から出てきたので。その分、唐突さは拭えない。

作者も、あとがきでわざわざ強調しているけれど、視点キャラが少しずつ変わってきていて、要は、複数場面での同時進行の話が適宜挿入されるようになってきている。

で、この方法は、作者的には押しなのかもしれないけれど、読んでる側からすると、冗長で、もたついているように感じる。つまり、あまりうまくない。

視点キャラの複数場面の挿入って、それら別々の動きがゆくゆくは一つに修練していくからこそ面白いのであって、今回のように、次回に続く、って時は、あまりやる意味が無い。というか、やるべきでない。

なんていうか、本来なら短編で紹介するような日常風景を、無理矢理差し込んできている気がして。

今回であれば、プチパケの面々のリアル学校での様子ってのは、ホント、本編から浮いてた。彼女らを紹介するのはわからないではないけど、でも、それだったら、ハルユキたちとのリアルでの初顔合わせについても、あんな感じで省略するのではなく、ちゃんと書くべきだよね。

まぁ、視点キャラを複数にしたのだから、リアルハルユキと会った時の驚愕!wは、きっと、後々、回想としてプチパケの面々で語り合うことになるのだろうけどね。

とはいえ、それもねー。

・・・ということで、刊行に8ヶ月も間が開いているからかもしれないけれど、なんか、一体何をしようとしているのか、随分ぼやけてしまってる気がして。

実は、作者も、この先、どうまとめようか、悩んじゃってるんじゃないかな、という気がしてきている。

というのも、四元素最後の一人であるグラファイト・エッジが、いろんな意味でワイルドカードすぎるから。

なんていうか、彼は、もうほとんどブレイン・バースト世界の秘密を全部知っている、神的存在のように思えてならないから。

裏返すと、メタトロン同様、そんな設定があったのか!と、という内容を、さもありなん、と語る便利なキャラとして登場したようにしか思えなくて。

まあ、黒の双剣士ってところからして、キリトなんでしょ、これ、って感じだしね。

あ、これは、例のアンダーワールドで200年生きてしまった方の、フラクトライト化した方のキリトね。同様に、グリーン・グランデが茅場んの成れの果て、というのと同じ発想ね。

彼がさらに長生きして、おもしろキャラ、というかほとんどゲーマスとして、ブレイン・バースト世界に降臨している、という感じしかしないしね。

ていうか、ハルユキが帝城に再進入した理由も、7つの神器の、フラクチュエートなんちゃら、の正体を探るためだから、もろに、グラさんの設定に関わってくると思うし。

で、その話を、当人であるグラさんが、リードの親として帝城にも登場してしまうあたりで、もう、これは便利な神キャラなんだな、と思うしかなくて。

あー、それにしても、なんでグラさんが帝城にいるのか、ちゃんと説明してから次巻に続くにしてくれよ。これじゃ、生殺しだよ。

しかも、次巻が出るのは次の冬だったりするし。
つまり最速でも1月ってことだよね、多分。
また、半年も開くのかよ、って感じで。

ただ、もうこれは前からずっと書いていることだけど、AWの世界はどう考えてもSAOのアンダーワールドの先にある世界だから、その二つがどこかで必ずクロスするはず。

でも、SAOの方では、まだアリシゼーション編の決着が付いていない。
(ネット版では終わっているけど)
だから、多分、アリシゼーション編が終了しない限り、ホントの意味でAW世界の真相解明はできない、というジレンマに陥ってるんじゃないかな、と思うんだよね。

裏返すと、アリシゼーション編が完了するまでの間は、AWはノラリクラリと進めていくしかない。

作者は、今、そういうジレンマに陥っているじゃないかな。

そして、それゆえ、勢いにまかせて物語を書き進めることができない。

で、その分のエネルギーを、SAOPや、アイソレータの方に費やしているように思える。

アイソレータの方は、1巻は世界観の説明もしなくちゃな内容で、あまり面白くなかったけど、2巻の方は「仲間」や「敵」が明確になってきて、それなりに面白くなってきたように思った。

で、確かアイソレータの2巻のあとがきで、最新の物理学の成果を利用すると面白よね!みたいなことが書いてあって。多分、今回の宇宙ステージも、そういったノリで書いちゃったんだろうな、と思う。

そう思って見直すと、アイソレータって、物理学や技術の進展で、今までだったら、AWやSAOのように、ヴァーチャルな世界でしか実現できないと思われていた「超能力」的力が、一応は物理学っぽいことで説明できるから、リアルワールドのままで、そんなにうそ臭くなくできるよね、ということになってきた気がする。

AWの場合、このヴァーチャルとリアルの描き分けというのが、思いの外、物語を沈滞させてしまってマイナスに働いていると思う。だから、今回のように、むりやりリアル割れの話をいれないといけなくなる。

この点、SAOの場合は、ヴァーチャルもリアルも容姿は同じ、というデスゲームの設定で大分緩和されていたけど。

ともあれ、そのリアル/ヴァーチャル問題を、アイソレータでは気にしなくていい分、作者も楽しんで書いているように思える。

そういう意味でも、AWは曲がり角にあるかなー、という感じ。

視点キャラを変える工夫も、そういう厳しさへの対応でもあるのだろうな、と。

そもそも、視点キャラがハルユキだけであると、もはやイジメも克服し、もしかしたら生徒会役員にもなるかもしれない、リア充キャラにハルユキがなってしまった現在、書けることに制約がつきすぎるよね。川原礫という作者は、トラウマを使うのが大好きなはずなのに、こんなにハルユキが健やかになってしまったら、トラウマ的ぐりぐり感を書くのも難しくなるし。

・・・という具合に、AWはお話としては曲がり角にあるかなー。

そういう意味では、やっぱり、クロム・ディザスター編で、ハルユキの成長物語としては完結してしまっていた、ということだよね。

さてさて、この先、どうなることやら。
間延び感や引き伸ばし感をなくして、どこまで続けるのか。
そういう意味でも、転換点に達してしてまったと思った18巻だった。

はやく19巻、出ないかなー。 はぁ(嘆息)

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