BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

新約とある魔術の禁書目録 第3巻 感想

2011-12-28 19:53:31 | 超電磁砲/禁書目録
新約になってようやく盛り上がってきたとは思ったものの、これ、やっぱり、無印のまま終わらせておいたほうがよかったんじゃね? というのが読後一番に感じたことかな。

いやー、無駄に話を大きくし過ぎ。
さすがに、上条に背負わせるにはデカすぎでしょ。

というか、3巻の当初はいいよ。
バードウェイの指揮のもとで、以前に「上条勢力」と言われていた主力のメンツが勢ぞろいでハワイに乗り込んだところまでは。

あと、確かに一通さんと美琴がタッグを組むのはいいし、美琴と番外個体が対面するのもいい。でも、「上条勢力」として面白かったのはそれくらい。

黒夜海鳥が再登場したのは驚いたし、それが番外個体によるイジラレキャラ扱いというのは新約1巻のことを考えるとギャップがありすぎる。

で、結局、3巻を終わってみれば、上条たちはバードウェイに体よく利用されたことが判明して、あっさり、バードウェイ指揮下の上条勢力は解散。

もちろん、バードウェイは今回、悪役を自ら買ってでただけなので、上条たちとの再合流はあるものと思いたい。でないと、さすがに、上条に、上条勢力の面々を取りまとめることなんかできないでしょ。

というか、無印も含めて上条がリーダーポジションになりつつあるのは仕方ないと思っていたが、しかし、彼は本来的にリーダーではない。彼の無謀な猛進に周りがやむなくついていった結果、一種の信頼が生まれてグループのようなものができているだけで。

ま、その意味で、上条は確かにヒーローなんだけどさ。
でも、今回の物語後半で示した彼の、子供を取引の材料にするなんて許せない!、的な正義感という倫理観というのは、多分、周りは共有できないはずだよね。
彼には幻想殺しがあって、使いどころは難しいし、そこまでのお膳立てが絶対必要な能力だけど、その使いどころに至れば、無敵と言うか、すべてをチャラにする能力なので、敏い奴らには利用される。というか、上条には露払いがどうしても必要だから、結果的には持ちつ持たれつの問題解決になるのだけど。

だから、上条は、どう考えても、孤高のヒーロー。一通さんと同じように。

その本来なら先鋒を務める特攻要員のような上条ですら、徒党を組まないといけないようなヤバいような状況が、つまり、魔術と科学が混在して利用される文字通りの混戦状態が当たり前になった状況が、新訳の世界なわけで。

でも、これ、対処できないでしょ、いくら何でも。

今回のハワイの事件で、学園都市が要するに補給を絶たれることになって、科学と魔術の間の均衡が大きく動くことになって、そうなればアレイスターらも黙っていないだろうし、今回は、ハワイ/アメリカが舞台だったけど、翻って、イギリスやフランスもでしゃばってくるだろうし・・・、というか、もともとはこれ、イギリス国教会がモデルの話だったわけだよね。そこに、大国間の戦争までもちこむようになったら、もう上条の出る幕なんてないじゃない。どれだけ露払いが必要になるのか。

というか、無印の第三次世界大戦の当たりから、その手の作劇上の無茶が生じていたのだけど。ただ、あの時は、物語的な大団円ということもあって、主には魔術サイドのそれまでの面々がオール出演の形で効率よく露払いをしてくれたから上条の話に何とか集中できた。それに、一応、インデックスを救出するというのが上条の内面の動機としてあったので、彼の苦悩も、まぁ、理解することができたし、その苦悩の果てに、彼の説教が来る、というのがお約束の展開だった。

でも、今回は、それが全然ない。

美琴が参戦していることでヒロイン交代か?という見方もあるようだけど、どちらというと、上条の無茶というか、無理な決断をもっともらしくさせるために随伴させられた、という感じしかしないかな。シスターズの時もこんな感じだったのだろう、だから、今回も彼が無茶して人助け、世助けに行っても仕方ないよね、と言わせるための存在。

って考えると、美琴の立ち位置は切ない。
最後の指輪の話も要するにそういうことでしょ、きっと。

で、ホントに最後になって登場した、真の敵?なキャラだけど、これは、よくわからん。
なんかSSの方の話が絡んできてるようなんだけど・・・。
いやー、これ、もう風呂敷広げすぎでしょ。
魔神って何? 黒小人って何?
というか、だから何? って感じだよ。

与えられた情報で次巻以降先ず気になるのは、協力機関に散っていたはずのミサカネットワークの面々がどうなるのか、ということだし、これは直接的に彼女らの演算能力に頼っている一通さんがどうなるのか?ってところかな。

上条の行動原理が彼特有の正義感で他人からは(読者からも)理解不能なものであるように、一通さんの行動原理もミサカネットワークへの贖罪が根底にあるから、彼らの共闘というのは偶然の一致でしかない。なので、ミサカネットワークを人質に取られた一通さんが上条らと三度目の対決、とか、わかりやすく離反、とかあるのかもしれない。で、ここらでようやく土御門とかなんだっけあの顔が変わる南米の魔術師、彼らが仲裁役に入るのかもしれない。

・・・というような、上条と一通さんの分断ぐらいしか予想できない
その反面、バードウェイや魔神やらが、彼らの思惑で何だかでっかい天上の戦いを始めるのだとすると、もう全く予想がつかない。

ということは、要するに、物語として次の展開が読めないし、登場人物に感情移入することもできない。読み進めるとしたら、冒頭でゲーム的にルールを提示して、あとは、シーンごとに感情を揺さぶるような展開(すげぇ戦い、とか、共闘でwkwk、とか、ギャグとか、エロとか・・・)を繋げていくしかないよね。

しかし、それをわざわざ読もうとする気になるかなぁ。微妙。

新約は、こうした問題を抱えていると思うだよね。
お願いだから、シャナみたいなバカバカしい神々の戦い=僕らの戦い、みたいな話にはして欲しくないなぁ。

あ、あと、無印の時も思ったけど、この物語は、外国をいじり過ぎだと思う。今回だったらアメリカだし、無印の時だとイギリスやロシアということになるけど。妄想が膨らむのはいいけど、それにも一定の制約があると思うかな。ただでさえ、馬鹿でかい話になっていて、流れ的には、世界の破滅みたいなことに繋がると思うのだけど、その時は、さすがに他国の扱いはもう少しファンタジックにしたほうがいいように思うかな。

ということで、さて、この物語、一体どうなっちゃうのかな、と疑問。
人気シリーズだからやめられないんです、って理由だけで延命するのはやめてほしいなぁ。
多分、学園都市に戻る次巻で、もうちょっと何とか話を等身大に戻して欲しい。
今までは確かに学園都市の中で囚われていて、しかし、守られていた。だから、そこから巣立つように独り立ちすることが大事だ、というのはわかる。成長物語として。
でも、独り立ちすることは必ずしも世界を掌握することではないはずだから。
そのあたりを勘違いしないでほしいな。でないとただの誇大妄想だけの話になるから。
いかに等身大のヒーローの物語に戻すかが、次巻以後の課題だな、きっと。

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魔法先生ネギま! 348時間目 『全力で吐かせます』

2011-12-27 13:19:00 | UQH/ネギま!
あはは、ちづ姉のアーティファクト、ホントにネギだったよw
予想通りに過ぎて、さすがに泣けた。
しかも、「治療しつつ質問に(無理矢理)答えさせる」って、どれだけ女王様ツールなのかw あ、女帝か。ちづ姉っぽいといえばそうなのだが、しかし、いくら何でもピンポイントの機能すぎやしないかと。

とはいえ、ここまでピンポイントだと、逆に真性のネタ過ぎて、引いちゃうんだよな。面白いけどw 委員長の「誰でもアポ(どこでもドアw)」カードの時もそう思ったのだけど。ネタに過ぎる分、ああ、これはネタとして使えばそれまでなんだろうな、と。

今回、途中でユエ・のどか組がネギを助けて離反したけど、やはり彼女らのアーティファクトぐらいがアーティファクトとして妥当だよね。読心術とか世界情報探索とか。それくらい、普遍性と言うか汎用性があるものでないと、なんかね、応用が効かないし。

実際、例の雲隠れのような仲間の消失も、夏美+楓のアーティファクトのコンボによる応用だったわけで。姿を消す、とか、異次元空間に物体を隠してしまう、とか、汎用性があったからこその裏技的方法だったわけで。それらは、ネタ的ピンポイント特性ではないよね。

なぜアーティファクトの汎用性にこだわっているかというと、いうまでもなく、どうやら次回、アキラがようやくパクティオーをしそうだから。ああ、やっぱり魔法世界ではしてなかったのか、とか、おお、ようやくここではか、とか、なんでまた、こんなタイミングで、といろいろ思うところはあるのだけどw でも、ようやくアキラ回なわけで。

よくよく考えれば、このタイミングで、つまり、ネギに好きな子がいるの?という問いがあり、しかも、他でもないそのネギを救うために今こそ、というシチュエーションの用意のされ方は、いかにアキラのパクティオーが大事に扱われているか、という現れでもあると思うのだよね。

あの魔法世界でのパクティオーの安売り大バーゲンの時には頑なに拒んだアキラが、もおろもろのお膳立てができたところでようやく、というわけだから。しかも、アキラ自身、もはやネギへの好意を隠さず口に出しているわけだし。こんなにフェアーな、正々堂々とした態度もないよねw

むしろ、アキラのパクティオーイベントのために、そのお膳立てのために、今までの体育祭エピソードがあったといってもいいのかもしれない。

これは今回の裕奈たちの振る舞いとの対比で一目瞭然と言うか。裕奈が本命は誰か?とか詰問しているのはファザコンゆえのお子様的振る舞いでしかないわけで、それを冗談で済ますか済まさないか。で、ちづ姉のアーティファクトは、その一線を越えさせてしまったわけで。

実は、ちづ姉のネギへのネギ攻めwの部分は、あれ、ちづ姉ってこんなキャラだったっけ?と違和感をもったのが最初の感想。冗談と冗談でないものを「大人的」目線で仕分けるのがちづ姉のポジションだと思っていた。ただのバカバカしいことならちづ姉も悪乗りする。でも、相手を傷つけかねないことなら手を引く。そういう人だと思っていたので、ネギへの告白の無理強いは彼女らしくないと思った。

ザジにしてもそうで、そのあたりのバカバカしさがわかってるからこそ、「クラスの総意として」このイベントに参加したと言ってるわけで。なので、クラスの意見が別れたら元通り観測者、傍観者に戻りますというのは、とても彼女らしい。というか、エヴァにもツッコミが出来る稀有なキャラとして、ザジは、すっかり作品内のメタキャラのポジションを取ってしまったなと。実はおいしい位置を占めてしまっている。

ともあれ、アキラのパクティオーについては、カモの登場も絶妙。案外、カモの言うとおり、ネギの気になる人というのはアキラなのかもしれない。

ということで、単調で退屈な感じのしていた体育祭イベントも、まさかのアキラのパクティオー回への展開という盛り上がりを見せてきた。年末年始の実質的な休載を考えると、絶妙の引きといえば引きw さて、年明けの話はどうなることやら。

アキラのパクティオーカードはどんなものが出てくるのか。どうやって、このネギを巡る集団痴話喧嘩を収めるのか。いや、そもそもアキラはパクティオーをするのか・・・という具合に予想は広がっていく。年初という節目でもあるから、次回のアキラ・パクティオー回から怒涛の新章突入を実現してくれないかなぁ。いい加減、ナギの話もしようよ。

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Fate/Zero 第13話 『禁断の狂宴』

2011-12-26 18:57:31 | Fate
こちらも一期が終了。二期は4月から。
しかし、キャスター討伐編のさわりを見せて終わりとは。

正直、微妙な所で終わってしまったが、しかし、ここの数話の作画の乱れを見るなら、キャスターの大捕物については一期初期のクオリティで作劇して欲しいので、穏当なのかもしれない。普段あまり作画がどうこうとは思わない方なのだけど、さすがに、11話以降の乱れは気になった。セイバーだけでなくライダーの乱れも気になった。彼の精悍な顔つきはきっちり描いてくれないとただのギャグ担当に見えてしまうからw

しかし、つくづくZeroの物語は、ライダー組とキャスター組があっての物語だなと改めて感じた。両者が出てくるかどうかで盛り上がり方が全く違う。

というか、もはやセイバーは全く主人公ではないし。
(原作的にもそういっていいと思うけど)。

それもあって、一期でキャスターが退場するという場面までは行かなかったのだろうが。
とりあえずは、二期冒頭のキャスター編の怒涛の展開に期待。

*

それにしても、二期があるとはいえ、Zeroもホライゾンも1クールで終わり。ダークホースだったベン・トーやUN-GOも終わってしまい、とても残念。一方、2クールで継続するのが、予想通り単調な戦闘シーンが続いて退屈この上ないシャナIII と、未だに物語としても主人公としても何をしようとしているのかわかならいギルクラとは・・・。なかなかうまくいかないものである。

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境界線上のホライゾン 第13話 『境界線上の整列者達』

2011-12-26 18:43:10 | Weblog
ホライゾンも後半になるにつれて良い感じにドラマ的盛り上がりを見せてよかった。

二期制作があらかじめ決定しているから、ということもあるのだろうけど、最後のところで、トレス・エスパーニャの陸上部w襲撃の描写があったのはよかった。
なんというか、次の話が動き始めた、という感じで。

そういえば、オリオトライが、トーリや喜美の実家である葵家が、ホライゾンの実家である松平家の警護役であると話していて、あれ、これ、4巻のネタバレじゃない?と思って1巻を確認したら、確かにそのセリフはあってちょっと驚いた。一体全体作者はどこまで見越して設定=世界観を作っているのか。後で、ちゃんとこの手のセリフが生きてくる、というのは凄い。

とりあえず、二期は7月からか。
その間、もう一度原作を読みなおしてみるかなw

しかし、最後の場面の点蔵やウッキーの会話とその後の展開を考えると、5巻の主役は御広敷になるのかと思えてきて、えー、それはちょっと-、と思ったのだが、さて、どうなることやら。流れ的にはノリキと北条、もしくはペーやんと毛利の話になるのが妥当だと思うけど、それだと花に欠けるからなぁ・・・、しかし、だからといって御広敷はなぁ。

まぁ、7月だと5巻の上が出るかどうかは微妙なタイミングではあるのだが。しかし、プロモ的には、二期の前後もしくは最中に一、ニ冊出すほうが盛り上がるはずで・・・

5巻と二期開始のタイミングも含めて楽しみだな。

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ベン・トー 第12話 『国産うなぎ弁当 790kcal』

2011-12-26 18:28:00 | Weblog
うん、まとまったいい最終回で。
結果的に、佐藤に焦点が当たった形での終了も、オルトロス姉妹を窮地から救う、という流れだと穏当でよかった気がする。先輩がその場にいると、どうしても決め台詞は彼女が持って行きがちだから。その意味では、佐藤=変態=わんこの独り立ち、というニュアンスもあって、その分、最終回っぽかった。

それにしても、ヘラクレスの棍棒、どれだけ強いのかと期待していたら、他の狼に根回ししてオルトロスを「ぼっち」にするという精神的いじめの行使だったとは。さすがにそのしょぼさに笑ってしまった。

まぁ、ぼっち、がどれだけ当事者には辛いか。
オルトロスが、姉妹のコンボで強いだけに精神面をつく、というのはそれなりに説得力はあったけどねw

ともあれ、これで最終回。

前にも書いたとおり、これは完全なダークホースで、ここまで盛り上がってくるとは思わなかった。

ホント、毎回OPを聞くと吹き出していた。
あ、そうか、今回最初に盛り上がらかなったのは、OPがなかったからか。
この作品では、OPによるバカっぽさの強調は大事だからw

久しぶりに、無邪気に笑える作品で、その割にちゃんとストーリー的盛り上がりもあったので、これはできれば続きが見たいところ。

とりあえず、時間を見つけて、原作に手を出してみようかな。。。

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輪るピングドラム 第24話 『愛してる』

2011-12-25 00:39:57 | Weblog
かなりの力技だけど、一応の収束。

第1話は衝撃的だったけど、その後、いまいち、よくわからないまま、とはいえ、一応だらだらと見続けて、そしたら、後半三分の一ぐらいで、かなりギアが入れられた感じで、最後は、へぇ、という感じで終わった。

かなり早い段階で指摘されていたように、基本的には、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を下敷きにした現代の寓話だったということ。

第1話を見直してみると、最終回を暗示するように宮沢賢治の話がきちんとされている。苹果が宇宙だ、という話も既にされている。運命の話もしている。

そういう意味では、「輪る」輪は、最初から仕組まれていた、ということで。

多分、物語的な転機は、途中から、冠葉、晶馬、陽毬、の三人が実の兄弟ではなかった、というところから。言ってしまえば、兄弟姉妹の家族の関係は強固に一つのユニットで一種の安全地帯だったのが、突然、複雑で、フラットな人間関係に転じてしまった。

これはよく考えてみると不思議。彼ら三人を家族と見ていると、確かに、苹果やその他登場人物のように、三人の「外部」にある人達が謎をもたらすものとしてどうしても必要なわけで、その謎が一つずつ明らかになっていくと、あれ、この物語、登場人物が少なすぎやしないか?と思ったところで、実は三人は血の繋がった兄妹ではなく・・・、という、ある意味でお約束の展開が来る。でも、そのお約束の展開が決してあざとく見えないのは、それまでの過程で、三人が互いに互いを実の兄妹、家族であると頑なに信じ、助け合っている姿が描かれているから。

しかも、よくある、実の兄弟だと思っていたのにそうではなく・・・、という展開ではなく、それぞれが「家族」になったことをちゃんと覚えていたところ。これは大事なところで。実はこの時点で、確かに宮沢賢治が『銀河鉄道の夜』で描いたように、既に、キリスト教的な家族概念が、この世界に浸透していることが明らかなわけで。そこから、最終話の「愛」を輪(まわ)すところに繋がっていく。

で、そういったクリスチャンの世界が全部だったかというと、決してそうでもなく、むしろ、桃華と苹果が、いわゆる世界改変能力者としてあるわけで、特に最後になってようやく苹果がこの物語に不可欠のピースであることもはっきりした。『まどマギ』ではないけど、世界改変を最後に仕掛けてくるわけで。

ただし、『まどマギ』とは違って、徹底的に私的なことに集中して世界を変えてしまったにも拘わらず、いわゆるセカイ系的な空気がないのは、賢治的なクリスチャンの物語が背景にあるからなのだろうな、と感じた。

だから、最終話だけ見ると、ご都合主義的に見えなくもないのだけど、キリスト教的な意味での愛=アガペーのような、必ずしも男女の間だけでない、人と人との間を繋げる「愛」に関連付けることでむしろ説得力、というか見た目には感動を呼ぶような物語だったのだと思う。

突き詰めると、登場人物の間での愛憎劇が延々と描かれていたのだけど、その個人間の愛憎劇が、より大きな意味での愛憎を象徴するような話として、つまりは寓話のように描かれていたのが、よかったのだろうな。

ということで、もう一度最初から見返したらもっと発見はあるのだろうし、宮沢賢治の作品を紐解くことで寓話の象徴をもっと読み解くこともできるのだろうけど、まずは、思っていた以上によい終わり方だった、ということで。そして、中盤までのアレレ?感を見事にひっくり返して、物語を完結させたところには素直に素晴らしかった、といいたい。

いや、でも、これ、やはり難しい話だよ。
それを引っ張ったのは、物語だけでなく、絵柄や時折挿入された過剰なまでの作中内演劇性やギャグにあったのだろう。

とても、演劇的な作品だったと思う。

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UN-GO 第11話 『私はただ探している』

2011-12-23 22:07:58 | Weblog
うん、これはよかった。
文字通り、しり上がりに話がまとまっていた感じで。
よく出来てるなぁ。
というか、安心のボンズ・クオリティ。
ボンズは、いい構成と脚本に恵まれるとホント、いいヒットを飛ばすよね。
いい仕上がり。佳作。

坂口安吾が原作と聞いて、何だそれ?と思ったわけだけど、それをうまく現代風にアレンジして、微妙に、探偵物、SF物、時代物、をうまく混ぜあわせた創作料理に仕立てたところがよかった。

もっとも、今回の太陽光(もとい太陽熱かw)エネルギー話を含めて、あからさまに311後の日本の状況を踏まえての構成になっているから、多分にメッセージ性のある話になっているわけだけど、そのあたりは見る側が差っ引いいて適当に解釈しろ、ということなのだろうな。

なぜなら、安吾の原作の改変ものであるという時点で、ある程度は時代批評のようなものになることは織り込み済みなわけだから。その分、わかりやすい。同じアプローチで作っているのに、ギルクラよりも安心して見れるのはそういうのもある。予め解毒されているところがあるから。こういうのは、とことん、バランスだな、と思う。

特に、この最終回は、捕物帳的な仕掛けもあり、また、今までのエピソードが何だかんだいって集約されていて、各回が最終回に向けてのパズルのピースだったと思わせるところもあって面白い。最終話を見ないと、あ、あれがあとで効いてくるのか、とはわからないわけだから。

このあたりは、やたらお約束とかフラグとかという言葉で、終幕のイメージを牽引するような構成の作品が乱発されていることからすれば、とてもスマートだと思う。

物語的には、確かに風守が登場した当たりから、物語の幅も主人公の行動範囲も一気に広がってよかった。因果が人外で、風守がAIというのは、まぁ、ある意味で『禁書目録』的な世界なわけだけど、そのアンバランスさを、安吾的な社会正義の所在を目的にすることで、バケモノやネットワークの存在にきちんと意味が与えられたのがよかった。

多分、ノイタミナ枠で一番いい出来だったんじゃないかな。

ということで、これは二期を是非。
安心のクオリティだからw

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境界線上のホライゾン 第12話 『平行線上への相対者』

2011-12-22 12:12:00 | Weblog
ホライゾンとトーリの平行線の相対はいいね。

これ、正純がインノケンティウスと相対して平行線をたどるというのがちゃんと前フリとして生きているんだよね。ここは原作を読んだ時にえらく感心したところ。この物語の象徴である「境界線」を引き出すためには「平行線」の対峙が必要で、その平行線という対話戦術が異端審問の中で生み出されたものだった。この前フリがないと実は「境界線」が引き出される理由がわからない。

平行線というのは、この物語世界では、重奏世界とリアル世界との平行線も意図されているだろうし。で、その両者の間で、さしあたって折り合いをつけるところが「境界線」ということになる。

もちろん、ホライゾンの立場に立てば、自動人形と人間との間の縁に立っていることも示唆している(それがタイトルの意味)。

ということで、いろいろと示唆的。

このあたりは、原作を読む方が、厚みのある印象を持つように思える。

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ワンピース-ONE PIECE- 第650話 『知っておくべき2つの変化』

2011-12-22 11:41:39 | ワンピ
情報量がとんでもなく多い回。
というかルフィらの修行期間の二年間に起こったことのダイジェストだから密度が高いことを仕方ないか。

海軍の赤犬化
青キジの遁走
黒ひげの四皇化 + 能力奪取の定着
しらほし=三大兵器ポセイドン
他の二つ=プルトン、ウラヌス

と、ワンピ世界の勢力動向の要約が提示された。

ともあれ、赤犬の総大将化で、海軍が完全な敵キャラに位置づけられたわけで。
で、その海軍の浄化作用として青キジが位置づけられる。
ルフィ同様覇気に目覚めたコビーは、もしかしたら青キジの方に合流するのかも。

青キジといえばロビンだし、ロビンはこの二年間革命軍と共にあったわけだから、青キジ、ロビン、革命軍、が繋がる可能性もある。
あるいは、すでに、青キジが革命軍に接触して、その結果、ロビンが革命軍から追われるようにしてルフィらに合流するはめになったのかもしれない。
意外と、ロビンは既にプルトンやウラヌスについて情報を持っているのかも。

しかし、ここに来て、ホント、ロビンがオハラ=世界の知恵の集積島のただ一人の生き残りという設定が生きてきているのはいいね。彼女は、物語全体の謎を説く第二の主人公として位置づけられる。

ルフィやゾロ、サンジが、武力としての「力」を体現しているとすれば、ロビンは「諜報」としての力を担ってるわけで。今後、麦わらの一味のとんでもない危機で、ロビンがぎりぎりの交渉術を駆使してくるような場面もでてくるのかもしれない。いわば、ジョジョ的、もしくはハンター×ハンター的心理戦をロビンが行う。物語が世界の秘密に繋がる以上、そうした、大人の役回りも必要になるわけで。そういう意味では、ロビン以後の仲間がルフィらよりも年長の大人として設定されているのは、そのあたりのバランスを考えてのことかもしれない。

となると、ジンベエの仲間入りもまんざらではないことになる。この数回の描写で結構、ジンベエは情報通というか、意外と細かいことを気にかけるタイプだということがわかったから、文字通り、麦わらの一味の副長にうってつけ、という気がする。是非、仲間入りをw

で、こうしたワンピ世界の勢力図や秘密に関わるところで、

四皇ビッグ・マム の登場

というイベントが早々に行われる・・・のだが、実はこのビッグ・マム、だれだっけ、あのナミがゾンビの島で仲良くなった人、あ、ローラか。あのローラの母親ではないかと思ってるのだけど。確か、ローラの母親は海賊だ、と言ってたよね。

なので、ナミがローラからもらったビブル・カードだっけ?を見せて、意外とあっさり、打ち解けてしまうのではないかと思っている。

というか、そのためにカリブーが持ちだした財宝の奪還を指揮するのがナミなんじゃないかな、と。

で、そのカリブーは、しらほしの秘密の頒布役として、しばらくの間、物語のトリックスターとして、小物だけど、重要な情報を世間に頒布していく役割を果たすのだろう。

上の情報だと、王下七武海の話が抜けていて、当然、総大将が赤犬に変わったら、七武海も今まで通りということはないだろうから、多分、ド・フラミンゴあたりがカリブーの情報を得るとか。でその現場を、カリブーが持ち逃げした財宝を追ったナミらルフィ一行が目撃する。そんな感じかな。

それにしても、さすがは二年経ってからの新章突入という感じで、話がデカイ。

このワンピ世界のデカイ話に、今後、どうルフィらが絡んでいくのか。

考えただけでワクワクするのだが、しかし、これ、終了まで恐ろしく話が長いよな、きっと。となると、果たしてそれまでジャンプが続くのか、ということのほうが気になってくるw

ワンピは、例のエース処刑の話のところから、物語のトーンが大きく変わったように思っていたのだけど、それが、ここに来てたしかにそうだったと確信できるようになった。

とりあえずは次回の内容で先ずどこに向かうかが楽しみ。

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西尾維新 『恋物語』 感想

2011-12-21 13:19:19 | 西尾維新
セカンドシーズンの最終話だが、既にファイナルシーズンとして来年三作が出版されることが公表されているので、そのための伏線を張る、仮初の最終回という感じだった。

以下、どうしてもネタバレ部分も含む記述となるので、未読の人はご了解のほどを。






































冒頭から、あー、そうきましたかぁ、という感じ。今回の語り部は貝木泥舟。

で、良くも悪くも、今回の話は、語り部が貝木であることが全て。
貝木がしょぼい中年探偵よろしく、依頼された事件を解決していく物語。
依頼主は、戦場ヶ原ひたぎ。
依頼内容は、神となった千石撫子を騙すこと。

要するに、『囮物語』で引き起こされた千石のヤンデレ神化を解決する物語。
それが、今回の縦糸
で、横糸になるのが貝木による彼の仲間、すなわち、臥煙、影縫、忍野、に関する情報が断片的に公開されていく。どうやら、ファイナルシーズンは彼らの話が中心になる。

で、こちらの側の縦糸が、忍野メメの失踪事件で、鍵を握るのは、セカンドシーズンで唐突かつ思わせぶりに登場してた、つまりは、あー、こいつ、裏できっと暗躍してんだろうなーと、と思わせてきた、忍野扇。
貝木によれば、忍野メメには身寄りがないということだから、とすると、扇は忍のように、メメが名前で縛り付けたかつての怪異、という可能性が高い。それが何かのきっかけで、怪異的力を取り戻し、一種の時空操作?のような、もしくは集団催眠のようなことをしでかしているように見える。
西尾維新は、メタネタが好きだから、この扇の介入に寄って、そもそもセカンドシーズンの構成が、時系列が前後して、途中虫食いになるような構成になった、ということなのかもしれない。
そして、この忍野メメ失踪事件については、今回、貝木によってその対怪異の潜在能力にどうやらお墨付きを得られた羽川が活躍してくれそうな気がする。

この忍野を巡る話がファイナルシーズンの縦糸で、横糸となるのが神原を巡る物語。正確には、神原の母方の血筋である臥煙の物語。
で、こちらは『猫物語(白)』で虫食い章になったままで結局セカンドシーズンでは語られなかった学習塾跡地炎上事件にまつわるもの。
ファイナルの流れ的には、まず、この部分からケリがつけられるのだろうな。『化物語』で、結局、ゴールデンウィークの羽川の物語が語られず、後日、『猫物語(黒)』として発表されたのと似たような流れ。
そして、ここでの中心人物は、もちろん、神原。
そこに、臥煙、阿良々木、忍、あたりが絡んできて、まずは、臥煙や忍野たちの昔話が明確にされていく。
で、その話の中から、今回の千石のヤンデレ蛇神化を持たらした御符の話も出てくるのだろう。

ということで、学習塾事件=臥煙を巡る物語を、セカンドとファイナルの繋ぎ、つまり扇の要にしたところは、うまいよね。

あとは、これらの話を通じて『鬼物語』で成仏して作中からは消失したことになってる八九寺が帰還できるのかどうか。それに、ファイアーシスターズの二人、とりわけ、怪異そのものである月火がどう絡むのか、が気になるところかな。そして、八九寺にしても月火にしても、阿良々木くんが躍起になることはまちがいなので、いわば、物語の転の部分として使われそうな気がする。

・・・と、ファイナルシーズンの予想みたいなことを書くところから始めてしまったけれど、それは、この「次回へ続く」の部分が『恋物語』では、一番面白いなと思わせられたところだから。

それを除くと、要するに、貝木が千石を更生させた話でしかないから。

もっというと、『囮物語』とあわせて千石ファンへのサービス回でしかなかったと思うから。それも、結構、西尾維新の皮肉交じりのサービス回。

貝木が見下すように作中で評定していたように、千石は可愛いだけで甘やかされた馬鹿の引きこもり。可愛いとちやほやされただけの存在。そう世間からラベリングされたのは千石の不幸といえば不幸なのだけど、それをいいことに千石自身はそこに逃げ込んだ。そして、阿良々木を好きという感情すら、極めて一方的に都合よく、いわば千石自身の精神的防波堤としてつくられたものでしかなかった・・・。

という具合に、いわば、千石から見れば、彼女と阿良々木しかいなくて、後は全てその他大勢としてしか認識されていない。で、その認識を貝木は最後に粉砕することで、千石を邪神への囚われ、というよりも「逃避」から解放したわけで。
これって、要するに、一種のセカイ系批判だよね。
千石目線のセカイ系的把握に対する。
このあたりの、現実逃避を挑発し、現実をちゃんと見ろ、という冷たい視点は、とても西尾維新っぽくて、こういうところは健在だなぁ、と思った。

ただ、そうした、徹底的な上から目線で千石を叱る役割は、さすがにたかが高3のガキにすぎない阿良々木(しかもセカンドシーズンでは幼児好きの変態志向が増した彼ではさすがにキャラ的にカバーできない大人役)では不可能なので、今回の、荒療治の担い手は、冴えない中年の、自称詐欺師の貝木だった、というわけ。探偵と言うよりは、むしろ教師役。しかも意外なまでにお節介。

もっとも、貝木目線の地の文を読んでいくと、貝木がある意味で、阿良々木が大人になったらこんな風になっていたのかも、と思わせるところもある。今回、貝木は戦場ヶ原の依頼で動いていて、その戦場ヶ原の貝木に対する発言の多くは、実は、貝木と阿良々木を比較したものであったことも、貝木を未来の阿良々木のように思わせる仕掛けなのかもしれない。

ということで、阿良々木と戦場ヶ原の殺害の危機を見事回避させ、その上、千石を更生させた貝木は、多分、本シリーズで一番の、大人のヒーローだった。いやー、貝木、すげーじゃん、と感心していたら、最後にちゃんと信賞必罰の部分もあって、そこも西尾維新らしい。もっとも、『花物語』で貝木はしっかり登場しているから、まぁ、きっと大丈夫なのだろうけど。

結局、『恋物語』で起こったことは、阿良々木の世界から千石を切り離したこと。単なる憧れは自己満足、自己欺瞞、もっといえばただのナルシシズムでしかないことを、千石の邪神化を通じて表した。

その一方で、戦場ヶ原の阿良々木への想いは、彼の生存を優先するところまで行き着いたもので、これはもはや「恋」ではなく「愛」の域だろう。互いが隠れた所で互いを慈しみあう存在として、阿良々木と戦場ヶ原を描いた。その描写をする上で、『化物語』の出発点であった戦場ヶ原の「蟹」の問題に関与し(蟹に関与しているのは、最初期なこともあって、忍野と阿良々木だけだから)、戦場ヶ原の心中を吐露させるだけの毒をもった存在として、今回、貝木が担ぎだされた、ということなのだろう。

その意味では、貝木は、本作では、十分、その大役を務めたことになる。
戦場ヶ原と千石の阿良々木にもつ想いの質の違いを明確にする役割は、詐欺という行為を通じて徹底的に人と関与せざるを得ない貝木だからこそできたことだろう。

そして、戦場ヶ原と千石の二人の本心を抉り出すために「嘘」という言葉の刃に訴えたところが、戯言遣いの話から作家生活を始めた西尾維新の面目躍如たるところだ。

うん、だから、『恋物語』は全然、千石の物語ではなく、文字通り、ひたぎエンド、の物語だったということ。そう見ると、この話は、とても納得が行くし、とても面白かった。戦場ヶ原の魅力を十全に引き出すには、貝木は最適だったわけで、このエンドのために貝木が用意されていたとするなら、西尾維新恐るべし、ってことになる。

ということで、ファイナルシーズンに向けて千石が阿良々木ワールドから退場し(あと八九寺の退場もあるけど)、あとは、基本的に怪異(持ち)ばかりとなった。阿良々木、忍、羽川、神原、月火、影縫、臥煙、斧乃木、という具合。戦場ヶ原と火憐が微妙だけど、戦場ヶ原は阿良々木と羽川を、火憐は阿良々木と月火を、それぞれ精神的にサポートするような役回りをしていくのだろうな、と思う。

と見ると、実は千石って今一つ怪異話には接点がなくて、放っておいたら登場機会がなかった。むしろ、蛇神話で彼女の退場を明らかにすることで、ファイナルシーズンはテンポよく物語を始めることができるように思える。その意味でも、千石の蛇神化は西尾維新からのファンサービスだったのだと思う。

実は、この先、ファイナルでまだ三作も出てくることには、実はちょっと疑問のところもあって。もちろん、阿良々木くんの物語がまだ読めるのは嬉しくもあるのだけど、そろそろ、この話はお開きにして欲しいところもある。その点で、セカンドシーズンの中で伏線を回収しきってくれなかったことには不満。一度キチンと閉めて、間をあけて、新ためて新章突入、という方がいいかな。むしろ、その方が、化物語自体に長いシリーズになるだろうから。

もっとも、こういう評され方を予見したからこそ、サードシーズンではなく、ファイナルシーズンと付けたのだろうな、とも。

ま、このファイナルもまたひっくり返される可能性はあるけれど。
さすがに、その時は、阿良々木、羽川、戦場ヶ原、神原、の四人が、臥煙、貝木、影縫、忍野、の四人のポジションを占めて、怪異の発生は新たな新キャラが受け持つことになるのだろうけど。

ともあれ、春先にでる、ノベルスの新刊ととも、ファイナルシーズン三部作を楽しみにしたいと思う。全編終わった時に、おおお!!!、と是非唸らせてくれることを、超期待!

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