地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

瀋陽周辺鉄三昧 (1) 高貴なる満鉄客車

2006-08-24 03:03:22 | 中国の鉄道


 いつも当ブログを楽しみにして頂いている皆さんには、20日以上にわたって更新をお休みして大変恐縮でしたが、このたび中華人民共和国への出張から無事帰国しましたので、出張中にヒマを見つけて撮り貯めた最高に地味で濃いぃネタを順次ご紹介して行きたいと思います。
 まずは、東北部の遼寧省・瀋陽を訪れたときの話題から。派手な?打ち上げ花火としまして、更新のウチに入らない撮影日誌を記していた時点からご関心の向きが多かったと思われる満鉄客車を取り上げてみましょう。
 省都の瀋陽と、その東にある工業都市・撫順との間には、乱発運転の高速バスにすっかり客を奪われながらも毎日数本の急行列車が走っており、ヒマさえあれば撫順の炭鉱鉄道へと自ずと足が向かってしまった私もこの急行に乗って2往復したのですが、現在、瀋陽で世界園芸博覧会が開催されており、大部分の撫順ゆき列車はこの博覧会場に設置された臨時駅を通る北回り線を通って運行されていますので、南回り線を通って撫順に向かうのは朝6時発の1本だけ。
 この列車は、これが中国の列車とはとても思えないほどの空気輸送で痛快&快適極まりないのですが (^^)、汽笛一声、そんなガラ空きぶりを堪能する約40分の旅が始まった矢先……瀋陽駅の南西側にある側線に、他のダークグリーンの客車に混じって、1両だけ圧倒的な存在感を放つ客車が停車しているのを発見しました。
 深い屋根、シルヘッダー付きの重厚な車体……まさに満鉄客車!!! 
 しかも、写真などで見たことがあるどの満鉄客車よりも窓が大きいように感じられ、窓配置も尋常ではありません。この客車の前を通過するのはほんの一瞬でしたが、その強烈な印象に目が釘付けになってしまいました……。
 さらに次の瞬間、この客車が留置された位置のすぐそばの鉄道用地内に勝手に人が住んでいるのを発見! (^^;)。その隣にある立体交差から簡単に入ることができそうだ……ということで、翌日 (瀋陽を離れて北京に戻る当日) の午前、迷わず探訪してみることにしました。



 立体交差の脇から線路に登る踏み分け道 (人糞に要注意! ^^;) を歩き、鉄道用地内に入りますと、一番西側の線路は草蒸していて容易に歩くことが出来ましたが、その隣の線路は現役で、時折旅客列車が通過して行きます (かなり恐いですが、誰も咎めに来ないのがさすが何事もテキトーな国らしいところ。線路は道の延長だと思っているふしがあり、結構線路を歩いている人はいます)。そして、勝手に掘っ立て小屋を立てている住人たちの注視の中、件の客車の前に向かいますと……EX22 98000という特殊な車両番号といい、定員9人というとんでもない数字といい、極めてレアなドアのRといい……今でこそ線路補修工事用の宿舎車両に身をやつし、台車も交換されているようですが、やはりその生い立ちは尋常ならざるものがありそうです。
 「ま、まさか……満州国の康德皇帝 (溥儀=清のラストエンペラー宣統帝) 専用客車か、日本の皇族が満州国を訪問したときの専用客車なんてことはないだろうな……」
 ……思わず、こんな妄想で頭がいっぱいになってしまいました (^^;)。満鉄の経済力や関東軍の軍事力をバックとした、砂上の楼閣のような傀儡国家に咲いた一輪の徒花……であるとしても、余りにも貴重な発見に、ただただ見とれる他はないのでありました。
 ともあれ、90年代初めころまでは中国各地で鈍行用としてゴロゴロしていた満鉄・華北交通・華中鉄道の日本製客車 (満鉄工場製を含む) も、今ではほとんど見かけることすら難しいだけに、本当に貴重なひとこまです。