安倍晋三の対ロシア外交は完全に破たんし、プーチンの思い描いた通りになっている。すなわち領土交渉は終焉を迎えていて、それに日本は経済援助をするというのである。互いにウラジーミル、シンゾーと呼びあい、二十数回の会談を重ね、我々の世代で解決するといった言葉は、その通りになった。
「四島の帰属なくして平和条約の締結なし」という長年の日本政府のドグマが領土交渉を膠着させ、役者不足の安倍晋三がプーチンに一捻りされたといえる。すでに北方領土問題は存在しない。日本側も”固有の領土”という言葉を公式に外している。
ロシアのラブロフ外相と河野太郎外相は5月31日、領土問題を含む平和条約締結交渉を行った。北方領土の共同経済活動に関する局長級協議を6月11日に都内で行うことを決め、6月に大阪に開催される主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて安倍晋三とプーチンとの会談前の調整を進めることが確認された。
ここには領土問題は存在せず、経済活動の手順と思ってもいない平和条約の話を、枕詞のように持ち出しているに過ぎない。択捉島では何度も短距離のミサイルが発射されているが、報道は何もない。国後には飛行場、色丹島にはヘリポートが建設されても、だんまりを決め込んだだけである。北朝鮮のミサイルより余ほど危険であろう。
日本で報道されないのは、安倍外交を忖度しているからである。失政の指摘をためらう理由は政権側からの脅しが功を奏しているのであろう。