坂本龍一が亡くなった。反戦・反原発・環境問題に強いメッセージを送り続けていた。彼の父は、「イッキさん」あるいは「イチカメさん」と呼ばれた、気概のある伝説の編集者であった。父坂本一亀は河出書房の編集者で、三島由紀夫や野間宏や中上健次や高橋和巳それに椎名麟三と、名だたる文人を世に送り出している。
分野は異なるが、その父イッキさんの血が坂本龍一に流れている。近年の彼の強いメッセージは、明らかに父からの譲りものである。
坂本龍一の音楽は、いわゆる”サビ”と言われるような、特定の部分を強く効かせるような曲がほとんどない。曲全体の流れ、メロディーの美しさ、重さを求めるものが多い。
クラッシク音楽と現代音楽、アナログ楽器に電子機器楽器を融合させた特異な唯一無二の作曲家である。ラストエンペラーなど映画音楽にも名作を数多く残している。
大島渚の「戦場のメリークリスマス」に役者として出演し、音楽を担当したことが彼を大きく変えた。この映画作品はあまり評価したくはないが、坂本の音楽が世に知れたことや活躍する分野が大きく広がった。大島渚の弔辞は坂本の本心が強く出て、謝意を述べている。
奇しくもYMOのメンバーの高橋幸宏も今年1月に亡くなっている。細野一人になった。1978年結成のYMOは彼を大きくさせ、世界への足掛かりを作ってくれた。奏者無表情のテクノミュージックは、時代の先端を走っていた。
坂本龍一はこの20年病魔の中、環境問題に提言を繰り返し、反原発と反戦平和の訴えを妥協することなく訴えていた。彼の強いメッセージは活動家たちを強く励まされるものである。
彼の最後のメッセージになったのが、神宮外苑開発反対である。小池百合子は握り潰しそうであるが、坂本の忠告は届くのであろうか。
坂本龍一の死を悼む。合掌。