外国人研修実習制度がまたメディアに取り上げられていた*。案の定、なにも新味のない議論の繰り返しである。ほとんどこの制度が導入された直後から出ていた問題の提示であり、相変わらずの議論である。各省の対応も「省益」とかいう歪んだ思想から脱却できない。立案過程で「省益」を擁護するような研究会しか作られないので、各省滑稽なほど予想した通りの結論が出てくる。
問題点はいくつかに分かれるが、決定的な問題は制度の「透明性」が最初から欠けていたことにある。
今になって罰則を強化してみたり、「研修」の段階から(最低)賃金を支払うとしてみても、根幹となる方向設定がねじれたままだから解決にはならない。悪用につながりかねない仕組みが制度に組み込まれてしまっている。
これまでも使われてきた「実習」という用語も悪用を招く原因になる。「実習」という用語は、しばしば教室での「座学」ではなく、工場など生産現場での熟練技能の習得という語感もあるため、(実際には就労であっても)使用者は技能を実習生に教える過程であり、労働者としての賃金を支払う必要がないとしたり、それを悪用する者が出てくる。違反事例は全体からみれば少数といっても、表に出ない例は数多い。この制度を利用したい企業は、低賃金指向型なので制度のわずかな欠陥も悪用されかねない。この制度に応募する研修生も制度の複雑さや日本の職場についての知識不足に翻弄され、母国の悪徳派遣業者などの犠牲になる。
ここまでくれば、制度改革の方向は、「研修」と「就労(雇用)」の次元を別の制度として切り離すことで、制度の透明性を確保する以外にない。それぞれの次元をいかに構想、具体化するかは、廃止を含めて当然検討の課題となる。
「研修」を制度として独立、存続させるならば、「研修」期間中は少なくも日本での人間としての適切な生活が可能な水準を保証しなければならない。それが先進国としての責任である。そして、重要なことは日本で研修、習得した技能が、帰国後の母国で活用される道を確立することである。
他方、「就労(雇用)」の次元についても、廃止の可能性を含めて十分な検討が必要である。廃止をしないとなれば、不熟練分野に一定の正規受け入れの道を設けることになる。
やや先を見て簡約して言えば、特定の産業領域に限定した外国人労働者「特定領域雇用」制度(仮称)のような形での受け入れの道が検討されてもよいのではないか。アメリカなどで検討されてきた季節農業労働者制度のようなシステムである(現状では導入されていない)。ただし、その数は当初は試験的に少なく、せいぜい年間数万人以下、2-3年くらいの雇用期間でテストしてみることだろう。さらに、就労期間終了後、使用者責任の下に全員必ず帰国してもらう。再度の来日は認めるとしても、1-2年の空白期間を設定して、他の労働者にも機会を与えるなど、いくつかの配慮が必要だ。
在日中は、すべて国内労働者に準じた待遇を保証する。日本人が就労しない分野を担ってもらうのだから当然である。もちろん、この受け入れ枠からあふれる労働者は多い。彼らが従来のようにさまざまな不法就労の道を選択する可能性は高い。その意味で不法就労問題の解決にはならない。しかし、外国人登録制度などの改善と併せれば、問題山積、不評な現行制度よりは透明性の高いものとなりうるだろう。
*「クローズアップ現代:国境を越える研修生トラブル」NHK 12月5日