時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

私の心は虹を見るとおどる

2009年05月12日 | 午後のティールーム

 

  少し旧聞になってしまうが、5月8日夕方、都心に大きな虹がかかった。路上で空にケータイをかざして、写真を撮っている人を見かけて、思わずなにを撮っているのだろうと思い、空を見上げた。久しぶりに見た大きな虹だった。虹は全体としてはすでに消えかかっており、下の方の一部分だけだったが、雨上がりの空に映えて実に美しかった。一瞬にして心が洗われる感じだった。ケータイは携帯しないことにしているので、残念ながら写真を撮ることはできなかった。翌日の新聞は競うように虹の写真を掲載していた*

  虹というと、直ちに思い出す詩がある。英国の桂冠詩人ウィリアム・ワーズワース William Wordsworth(1770-1850)の「虹」 The Rainbowだ。多分小学生の頃に読んだ。もしかすると、教科書に採用されていたのかもしれない。その点は記憶が不確かだ。日本語への訳詞について、ネット上に公開されているものも含めて少し調べてみたが、かなりの数の邦訳があるようだ。しかも、少しずつ異なっている。

 頭の中に刻まれているのは、「私の心は虹を見るとおどる」  My heart leaps up when I behold/ A rainbow in the sky で始まる訳詞だ。ただ、この訳詞で始まるものも目にしたが、その後が微妙に記憶と異なっている。記憶の底に残るものが、誰の訳詞によるものか定かではない。「子供は大人の父である」 The child is father of the man. という一行。これも大変好きなフレーズで、簡潔きわまりないが、心に響く。大人になることは成長することではない。多くのものを失ってもいるのだ。虹が時々見られるような世界であってほしい。

 

The Rainbow
          William Wordsworth

 
 My heart leaps up when I behold
A Rainbow in the sky:
So was it when my life began;
So is it now I am a man;
So be it when I shall grow old,
Or let me die!
The Child is father of the man;
And I wish my days to be
Bound each to each by natural piety. 



[仮訳]



  私の心は、虹を見るとおどる、
  子供の時からそうだった、
  大人になってもそうである、
  歳をとってもそうだろう、
  そうでなければ、死んでいたい、
  子供は大人の父である、
  そして、私の日々が自然な敬う心で
  結ばれていますように。


 

 『毎日新聞』2008年5月9日、朝刊

 『朝日新聞』2008年5月9日、朝刊


 

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