★盆送り 寺の前にも 六十年
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「おじいちゃんの夏」
早朝散歩にでた。何時もよりさわやかでべとつかない。空も幾分高い。鰯雲も見られる。まだまだ暑さは続くだろうが暦の上では秋だ。少し行くと何時もの掲示板が目に付いた。ここは、音楽会、歌舞伎、落語、リサイタル、芝居など文化の発信基地である。定期的にビラ(ポスター)が変わるので催し物の状況がわかる。
「おじいちゃんの夏」のタイトルで、
縁側に腰掛けたおじいさんが背中を向け麦藁帽子をかぶり、横には波型の円い金魚バチが置いてあり、中に金魚が二匹き泳いでいる
ほのぼのする”絵”である。
あの夏のうちのおじいちゃんは最高であった。
暑かった。
わけも分からなく切っなかった。
うれしいのに涙が出た。
夕立に打たれた。
虹の下で笑った。
いろいろなことが駆け抜けていった。
あの夏の雲の下。
おじいちゃんはいた。
多くのキャスト、名前が連ねてあったが有名人は見わたらなかった。これから上演されるのでどんな出し物か分からない。小・中学生○○○○円と入場料が記されていたから子供さんも見て十分楽しむことが出来る内容であろう。
時期も時期、夏休み期間中である。
何時もの散歩コースの中川土手に出た。1,8キロの散歩コースと表示されている。橋の上に釣り人がいた。スポーツ新聞を広げ、携帯イスに腰掛けて竿を二本出していた。始まったばかりの様子らしく、つり道具がアチコチに散らばっていた。
「何がつれるんですか?つれました?早いですね・・・」と声を掛けた。
「イヤ・・たいしたことはありませんわ。時間を釣っているところです」
時間を釣るとはうまい表現をするおじいさんと思った。
「ハゼですよ。まだまだちょっと早いんです」
「そうですね・・・まだ早いでしょう。陽気が涼しくなってくると掛かりもよくなり、大きくなるでしょう」
と相槌を返した。
ハゼつりのおじいちゃんと話をしながら、あのポスターのおじいちゃんは何が最高だったのか?夏をとりあげた理由は、そして夕立・・・・、虹・・・・・。
いろいろあった六十年。