私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

我が心の香港 映画監督アン・ホイ

2021-11-15 21:48:00 | 映画鑑賞

私は香港ノワール映画好きが高じて他のジャンルの香港映画も色々見るようになり、その中でアン・ホイの事も知るようになった。香港映画と言えばノワールのイメージが強く、男性監督が多い。そんな中で女人四十で香港電影金像獎を受賞し、レオン・ライが主演の半生縁やイーソン・チャンが出演する幽霊人間の監督もしていた事で、私の中では名前と作品が一致する監督だった。

ただ私が日本語字幕付きで見た事のあるアン・ホイ作品は決して多くはない。彼女の作品の多くは、映画祭等で上映されるなど見られる機会が限られていた事が多かったからだ。近所のレンタルショップには、チョウ・チュンファが主演しているからということでビデオ化された張愛玲原作@傾城之恋しか並んでいなかった。
人妻と恋に落ちるチョウ・チュンファの姿を確認したく私は何度も何度もレンタルし、日本軍が侵攻し日に日に状況が悪くなる香港を舞台にした恋愛映画を繰り返し見たりした。
映画は究極の状況で愛を確かめ合う二人の姿が描かれているのだけれど、この映画の中では、この傾城の恋から彼女は長いスランプに入ったと紹介され、「別の監督でリメイクされるべきだ」と散々な評判だった当時の事が短く語られるだけだ。

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映画はキン・フー監督のアシスタントとして活動を始め、テレビ局勤務を経て映画監督となり、映画監督として順風満帆なスタートを切るものの、傾城の恋以降はスランプに陥り、経済的にも行き詰った事が語られる。しかし映画作りを辞める事なく、撮り続け、自分の撮りたいものと興行成績のバランスに悩みながらも、それでも映画監督であり続ける姿が描かれる。自分の撮りたいものと興行成績のバランスに悩む姿は、自分の口からだけでなく、ホウ・シャオシェン、フルーツ・チャン、ツイ・ハークという監督仲間であったり、プロデューサーであるナンサン・シー、そして彼女の作品に出演しているアンディ・ラウの口から語られる。皆一様に優しい口調で彼女が映画を撮る事を諦めなかった事、自分のスタイルを守り続けている事が語られるのだ。

自ら脚本を書かない事が映画を撮る際に弱点になっていることを指摘されながらも、「私は書けない。自分で書く位なら脚本家を探す」と言い、監督する事に専念する。明月幾年有のプロモーションで本土を訪れた際も、「私は映画の話はするが、それ以外の事は言わない」と香港返還20周年について言及することは拒否する姿を見せる。自分が出来る事、やりたい事、そして出来ない事をはっきり認識し、出来る事、やりたい事に注力する様子は非常に潔い。