多くの人が行き交う空港で久しぶり再会する二人の男性。ショパンのノクターン第2番変ホ長調Op.9-2が流れる中、ニューヨークに住むデヴィッドと彼の従兄ベンジーの旅が始まる。(その後もショパンの曲が二人の旅に静かに寄り添う)
子どもの頃、兄弟のように過ごした二人の久々の再会。ユダヤ系の二人は祖母が亡くなった事をきっかけに一緒にポーランドでの『第二次世界大戦 ツアー』に参加する事にしたのだ。
二人が愛した祖母の辿った道を確認する旅のメンバーは、イギリス人のガイド、アメリカ人の夫婦と一人で参加の中年女性そしてユダヤ教に改宗した男性。目的は同じでも、初対面同士の旅は緊張するものだ。
計画性もありキチンと物事をこなしたいデヴィッドは相手との距離感を図りつつトラブルを回避する理性的な行動をするも、ベンジーはどこでも誰にでも壁を作らず相手の懐に飛び込んでいく。見ようによっては無作法ともとれるその振舞。ワルシャワ・ゲットーの英雄記念碑、ワルシャワ蜂起記念碑と歴史遺産を次々と見学していく中、ある時は銅像の前で全員で写真を撮り、ある時は痛みを感じる為に来ているはずなのにと高級車両で移動する事を拒否して一般車両に移る。そしてどこか痛みを感じる事が少ないホロコースト・ツアーの在り方に疑問までも投げかける。
しかし非日常という旅の中、逆に壁を作らず、常識にとらわれず、自分の感情を素直に吐き出す彼を自然に受け入れる同行者たち。
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空港から始まった二人の旅は空港で別れる事で終わりになる。旅を無事に終わらせるというストレスから離れてすんなりと普段の日常に戻っていくようにも見えるデヴィッドと、自由に旅をしていたように見えたベンジーは、すっきりと旅を終わらせる事が出来ない。
二人が旅で感じたリアル・ペインがどんなものだったのか考えさせられるエンディング。