橋本治が「乱世を生きる市場原理は嘘かもしれない」と言う本を書いたので、いつもユニークな作品を作出する作家なので、実際の経済なり市場原理についてどのように考えているのか興味を持って読んでみた。
読後の感想だが、正直なところ、何を書いているのか分かるようで分からない不思議な本であった。
ブラジルの日系移民の間で戦時中起こった論争を皮切りに、勝ち組・負け組の話から始まるのだが、勝ち組と負け組を峻別するのは何故なのか、それは、投資家とエコノミストの専売特許だと言う。
ここで、エコノミストが出てくるのだが、橋本の定義では、本心か茶化しか、とにかく、「投資家の周辺にいる人」で、とても頭が良く、世界中を対象にして膨大なデータを収集分析し、すごく難しいことを考える現存する唯一の「思想家」である。
エコノミストは、「日本経済そのものが負け組になった」などとは絶対に言わない。
何故なら、負け組になると言うことは日本経済が見捨てられると言うことで投資対象がなくなって仕事の種がなくなる。
エコノミストは、存在する「経済そのもの」を決して否定しない。未来は、「その経済」がある限り存在して、「その経済」は、未来がある限り破綻しない。エコノミストとは、そのように未来を疑わないものなのである。
従って、エコノミストは、経済と言う枠組みを必要とするので、絶対世界経済は破綻するとも言わない。
ところが、著者の知りたいのは、世界経済が破綻したらどうなるのかと言うことなのだが、世界最高の知能は世界経済は絶対破綻しないと言う、これは「金持ちの傲り」ではないか、と言う。
もう既に世界の経済は破綻していて乱世が来ているのに、エコノミストは、世界経済が破綻したら困る、乱世にならないようにするにはどうすれば良いか考えているが、この「世界経済を破綻させないように」として、エコノミストが絶対的な権限を握ってしまったこの危機状態が乱世なのだと言う。
何故こんな発想が出来るのか、不思議な気がしながら読むのだが、多少なりとも、経済学を専攻した私にも、その理論展開が分からない。
エコノミストは、経済が破綻すれば破綻したと当然言うし、破綻しても別に驚かないし、そもそも、人間社会がこの世に存続する限り経済は存在する。経済が破綻(破綻とは何を言うのかが問題だが)しても、人間が生きている限り経済は存続しており、投資対象は消滅する筈がないのである。
後段で、たった一つの方向性、価値観で突っ走った経済社会が、飽和状態に達して閉塞状態になっている現状を捉えて、如何に生きて行くべきかを論じているので、その伏線として読めば、それで良いのだろうが、いずれにしろ、全く別な視点から、既定の共通認識を離れた議論を展開されると面食らってしまう。
もっとも、巷には、殆ど経済学や経営学の基本さえ理解できずに評論するエコノミストや経営評論家が多いが、橋本治は、この本の後段で極めて貴重なユニークな経済論を展開しているので、これについては稿を改めて書いてみたいと思っている。
読後の感想だが、正直なところ、何を書いているのか分かるようで分からない不思議な本であった。
ブラジルの日系移民の間で戦時中起こった論争を皮切りに、勝ち組・負け組の話から始まるのだが、勝ち組と負け組を峻別するのは何故なのか、それは、投資家とエコノミストの専売特許だと言う。
ここで、エコノミストが出てくるのだが、橋本の定義では、本心か茶化しか、とにかく、「投資家の周辺にいる人」で、とても頭が良く、世界中を対象にして膨大なデータを収集分析し、すごく難しいことを考える現存する唯一の「思想家」である。
エコノミストは、「日本経済そのものが負け組になった」などとは絶対に言わない。
何故なら、負け組になると言うことは日本経済が見捨てられると言うことで投資対象がなくなって仕事の種がなくなる。
エコノミストは、存在する「経済そのもの」を決して否定しない。未来は、「その経済」がある限り存在して、「その経済」は、未来がある限り破綻しない。エコノミストとは、そのように未来を疑わないものなのである。
従って、エコノミストは、経済と言う枠組みを必要とするので、絶対世界経済は破綻するとも言わない。
ところが、著者の知りたいのは、世界経済が破綻したらどうなるのかと言うことなのだが、世界最高の知能は世界経済は絶対破綻しないと言う、これは「金持ちの傲り」ではないか、と言う。
もう既に世界の経済は破綻していて乱世が来ているのに、エコノミストは、世界経済が破綻したら困る、乱世にならないようにするにはどうすれば良いか考えているが、この「世界経済を破綻させないように」として、エコノミストが絶対的な権限を握ってしまったこの危機状態が乱世なのだと言う。
何故こんな発想が出来るのか、不思議な気がしながら読むのだが、多少なりとも、経済学を専攻した私にも、その理論展開が分からない。
エコノミストは、経済が破綻すれば破綻したと当然言うし、破綻しても別に驚かないし、そもそも、人間社会がこの世に存続する限り経済は存在する。経済が破綻(破綻とは何を言うのかが問題だが)しても、人間が生きている限り経済は存続しており、投資対象は消滅する筈がないのである。
後段で、たった一つの方向性、価値観で突っ走った経済社会が、飽和状態に達して閉塞状態になっている現状を捉えて、如何に生きて行くべきかを論じているので、その伏線として読めば、それで良いのだろうが、いずれにしろ、全く別な視点から、既定の共通認識を離れた議論を展開されると面食らってしまう。
もっとも、巷には、殆ど経済学や経営学の基本さえ理解できずに評論するエコノミストや経営評論家が多いが、橋本治は、この本の後段で極めて貴重なユニークな経済論を展開しているので、これについては稿を改めて書いてみたいと思っている。