エリック・カロニウスの「なぜビジョナリーには未来が見えるのか? 成功者たちの思考法を脳科学で解き明かす」と言うこの本、
原題は、Ten Steps Ahead: What Separates Successful Business Visionaries from the Rest of Us
10歩先へ:成功した企業のビジョナリーが我々とに差をつけているものへは何か
と言ったところであろうか。
この本の特色は、スティーブ・ジョブズなどの偉大なイノベーター経営者の成功譚の語り口が、従来の経営学的な分析とは違って、ダニエル・カーネマンやエイモス・トヴェルスキーなどに触発されて、認知心理学など脳科学や現在脚光を浴びている行動経済学的な視点からアプローチして、ビジョナリーの誕生の秘密を分析していることである。
ビジョナリーの秘密開陳から脱線して、脳科学の説明や、行動経済学の解説書のような記述にのめり込む部分もあるのだが、この斬新な視点からのアントレプレナー解説は、非常に啓蒙的である。
カロニウスの略歴なりバックグラウンドについては、インターネットで、英文資料を調べても何も分からないのだが、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューズ・ウィーク、フォーチュンと言った名だたる経済誌の記者や編集者を経験しており、この本でビジョナリーとして登場しているウォルト・ディズニー以外は、スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、リチャード・ブランソン、アンディ・グローブなどと言った多くの巨人アントレプレナーには実際に親しく会ってインタビューしており、後追いながら、脳科学や行動経済学的理論で分析しながら、個人的な逸話なども交えて興味深く語っているので非常に面白い。
「脳」が、「ビジョンをもたらす装置」であると言う発見が重要で、脳には、思考に「像」をもたらし、実在しないものの青写真を作る機能が備わっており、顕在意識では解決できない問題を無意識下で解決しようとする傾向があり、絶えずパターンを探し求め、自分を取り巻く世界を作り変えていることも明らかになったと、まず、ビジョナリーが、アイデアを思いつく方法について、物や考えを頭の中で視覚化して自在に動かす能力から説き起こしている。
ジョブズのような最も卓越した企業家は、未来に、そして、逆境の時に、如何にして、大胆かつ途轍もないビジョンを生み出し得るのか、と言う問題意識である。
さて、著者は、どんな障壁をも突き破り、物事の本質を見抜く力、これが、「ビジョン」であって、このビジョンの持ち主が、「ビジョナリー」であり、普通の人が見落とすものを見つけられる人のことだと言う。
例えば、ジェフ・ベゾスは、ウェブ人口が年に200%前後増加していると知って、アマゾンを立ちげ、フレッド・スミスは、翌日配達に商機を見出してフェデックスを創業し、スティーブ・ジョブズは、ゼロックスのパロアルト研究所でマウスとGUIを見た瞬間に、パソコンの未来を見出したのである。
ところで、タレブの「ブラック・スワン」を随所に引用して、本当に大きな驚きとなる出来事など誰にも予測できないと言っている。
プロの投資家さえ、その戦績は、猿がダーツを打った銘柄の株式投資の結果と殆ど変わらないと再説しているのだが、もっと、敷衍すると、エマニュエル・トッドの経済予測が的中したとしても、それは、経済学の知識によるのではなく、人口動態学や家族制度研究の結果であり、それに、歴史的には、経済学者の経済予測など殆ど当っていないと言われているのであるから面白い。
「ビジョナリーには未来が見える」と言うのは思い込みであって、「直観」の大切さ、常人とを分かつ「勇気」、「EI(心の知能)」の働き、仲間や協力者を引き寄せる親和力やカリスマ性、夢を実現させる「運」など、ビジョナリーをビジョナリーとしている所以を、詳細にわたって分析していて非常に面白くて、なるほどと思わせるところが、この本の良さである。
原題は、Ten Steps Ahead: What Separates Successful Business Visionaries from the Rest of Us
10歩先へ:成功した企業のビジョナリーが我々とに差をつけているものへは何か
と言ったところであろうか。
この本の特色は、スティーブ・ジョブズなどの偉大なイノベーター経営者の成功譚の語り口が、従来の経営学的な分析とは違って、ダニエル・カーネマンやエイモス・トヴェルスキーなどに触発されて、認知心理学など脳科学や現在脚光を浴びている行動経済学的な視点からアプローチして、ビジョナリーの誕生の秘密を分析していることである。
ビジョナリーの秘密開陳から脱線して、脳科学の説明や、行動経済学の解説書のような記述にのめり込む部分もあるのだが、この斬新な視点からのアントレプレナー解説は、非常に啓蒙的である。
カロニウスの略歴なりバックグラウンドについては、インターネットで、英文資料を調べても何も分からないのだが、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューズ・ウィーク、フォーチュンと言った名だたる経済誌の記者や編集者を経験しており、この本でビジョナリーとして登場しているウォルト・ディズニー以外は、スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、リチャード・ブランソン、アンディ・グローブなどと言った多くの巨人アントレプレナーには実際に親しく会ってインタビューしており、後追いながら、脳科学や行動経済学的理論で分析しながら、個人的な逸話なども交えて興味深く語っているので非常に面白い。
「脳」が、「ビジョンをもたらす装置」であると言う発見が重要で、脳には、思考に「像」をもたらし、実在しないものの青写真を作る機能が備わっており、顕在意識では解決できない問題を無意識下で解決しようとする傾向があり、絶えずパターンを探し求め、自分を取り巻く世界を作り変えていることも明らかになったと、まず、ビジョナリーが、アイデアを思いつく方法について、物や考えを頭の中で視覚化して自在に動かす能力から説き起こしている。
ジョブズのような最も卓越した企業家は、未来に、そして、逆境の時に、如何にして、大胆かつ途轍もないビジョンを生み出し得るのか、と言う問題意識である。
さて、著者は、どんな障壁をも突き破り、物事の本質を見抜く力、これが、「ビジョン」であって、このビジョンの持ち主が、「ビジョナリー」であり、普通の人が見落とすものを見つけられる人のことだと言う。
例えば、ジェフ・ベゾスは、ウェブ人口が年に200%前後増加していると知って、アマゾンを立ちげ、フレッド・スミスは、翌日配達に商機を見出してフェデックスを創業し、スティーブ・ジョブズは、ゼロックスのパロアルト研究所でマウスとGUIを見た瞬間に、パソコンの未来を見出したのである。
ところで、タレブの「ブラック・スワン」を随所に引用して、本当に大きな驚きとなる出来事など誰にも予測できないと言っている。
プロの投資家さえ、その戦績は、猿がダーツを打った銘柄の株式投資の結果と殆ど変わらないと再説しているのだが、もっと、敷衍すると、エマニュエル・トッドの経済予測が的中したとしても、それは、経済学の知識によるのではなく、人口動態学や家族制度研究の結果であり、それに、歴史的には、経済学者の経済予測など殆ど当っていないと言われているのであるから面白い。
「ビジョナリーには未来が見える」と言うのは思い込みであって、「直観」の大切さ、常人とを分かつ「勇気」、「EI(心の知能)」の働き、仲間や協力者を引き寄せる親和力やカリスマ性、夢を実現させる「運」など、ビジョナリーをビジョナリーとしている所以を、詳細にわたって分析していて非常に面白くて、なるほどと思わせるところが、この本の良さである。