熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

総選挙の投票に行ったのだが

2024年10月29日 | 政治・経済・社会
   総選挙の投票に、夕方遅く行った。近くの小学校なので楽である。
   海外生活の14年間を除いて、大学生の頃からであるから、ほぼ、60年間、投票に出かけたことになる。

   今回の選挙は、予想通り、自公が半数割れに終わった。
   政権の不安定は否めないが、日本の政治には必須だと思うカウンターベイリング・パワーが機能することとなったので、喜んでいる。
   野党が結束すれば、今後は、自公の法案も葬り去ることができるし、内閣不信任決議案を可決すれば、内閣は、10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければならなくなり、チェック機能が働く。
   
   今回の選挙結果については、いろいろ言われてはいるが、止めを刺したのは、終盤に飛び出た2000万円問題で、あれだけ裏金問題で窮地に立ったにも拘らず、全く反省の色無き国民を無礼(なめ)切った所業で、自民党の悪政ここに極まれりであった。
   安定政権に胡坐をかいた自民党政治の独善独断横暴は、極に達しており、国民の反発は必然であった。
   私自身は、自民党の失政の最たるものは、日本の成長発展にブレーキを掛けた失われた30年を惹起した致命的な政治だと思っている。

   さて、日本の政治だが、野党第一党の立憲民主党が、かなりリベラルかつ穏健な民主勢力であり、維新や国民民主党など強力な野党ももっと保守的で自民党に近く、共産党を除いて、極端な反自公民政治を推し進めるとは思えないほど安定している。
   日本は、幸か不幸か、政治の二極化が極に達したアメリカや右派勢力の台頭で分断著しいEUなどのような修復不可能な混乱状態ではないところが救いだと言えようか。

   今後、政局がどう動くか分からないが、立憲民主党が利害の入り組んだ野党勢力を束ねきれると思えないので、自公民が、是々非々主義で、他の野党と連携しながら政権を維持してゆくような気がしている。
   石破降ろしが囁かれているが、看板を架け替えても同じで、穏健で良識派の石破総理の方が無難であろうと思う。

   さて、私は、今回、地方区は立憲民主党、比例代表は社民党に投票した。
   私の考え方は、自民党に近いと思っているが、政治にはカウンターベイリング・パワーが必要なので、野党に投票している。
   社民党については、大学生の頃から、社会党に投票し続けて60年、長い歴史で紆余曲折があるのだが、政策には多少異議があるけれど、いわば、カウンターベイリング志向の影響もあって、今や昔の面影もなく泡沫政党になってしまったが、機会があれば、投票し続けている。
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社会資本・主義にパラダイムシフト?

2024年10月08日 | 政治・経済・社会
   東洋経済onlinew読んでいて、小幡 績 慶応大教授の「石破政権の誕生は「日本経済正常化」の第一段階だ」の記事に出会った。

   19世紀の「産業資本・主義」から20世紀の「金融資本・主義」そして、22世紀の「社会資本・主義」へ向けて、21世紀は移行期(混乱期)にあり、イシバノミクスは、「社会資本・主義」へのパラダイムシフトの時期に遭遇する、と言う。
   「社会資本・主義」というワードは「小幡造語」で、「社会資本」の主義、という意味であり、社会資本が社会・経済においてもっとも重要となる世界がやってくる、ということだ。と言うのである。

   小幡説をさらに説明すると、
   この「社会資本」とは、宇沢弘文氏のいう「社会的共通資本」をも含むが、もっと広く、かつ価値観的にニュートラルであり、1990年代に少し流行した”Social Capital”という概念のほうが近い。  つまり、経済発展は、需要の拡大によるものでもなく、供給サイドの生産力の拡大だけではダメで、社会という基盤がしっかりすることで初めて、真の地に足のついた経済発展が始まる、ということである。そのためには、需要政策でも生産性向上政策でもなく、何よりも健全な社会という土台を作り直す、という「経済」政策である。なぜなら、社会という土台がしっかりすれば、経済は長期的には持続的に自然と発展していくからである。  
   この社会資本が充実している国ほど経済成長する、という実証分析が流行しており、現実の経済政策に関して言えば、すべての人々が安心して暮らせる社会、これこそ、「社会資本」である。そして、これを支えるための法制度そして政策、それが「社会資本・主義」政策である。 
   イシバノミクスは、以下のように体系化できる潜在的可能性がある。  この「社会資本」の確立、修復、安定を政策の目標とする。国家を地政学リスクから守ることで、安心して経済活動に専念できる。災害から国土を守ることによって、安心して生活ができる。安定した消費、生産活動ができる。インフレという価格変動リスクから生活者、中小生産者を守る。健全な消費、生産活動につながる。将来のリスク、不安、不確実性も減るから、設備投資、人的投資もできるようになる。そのためには、社会不安が減り、将来の見通しへの不安が減ることが必要である。 
   これは、石破氏が生み出したものではなく、社会の動きが高まっていることによるものであり、石破政権で実現しなくても、パラダイムシフトは、今後21世紀前半のどこかでは起きることになるだろう 。

   しかし、社会が「社会資本・主義」に変わることへマグマが溜まっていたところに、「石破政権誕生」という偶発的な事件が、これに点火したことは事実であって、石破政権誕生という2024年は、分水嶺となる可能性があり、パラダイムシフトであって、経済は明るいと言うことであろうか。

   ところで、日本株式市場、日本経済、日本社会は、転換点を迎え、新しい発展段階に入るだろう。この事実には、私以外、誰もまだ気づいていない。石破氏本人でさえわかっていないだろう。 というのだが、
   金子 勇 教授が、昨年6月に、「社会資本主義 人口変容と脱炭素の科学」出版して、
   「新しい資本主義」を「社会資本主義」と命名した本邦初の「経済社会学」。「社会的共通資本」と治山治水を優先し、国民が持つ「社会関係資本」を豊かにし、一人一人の「人間文化資本」を育てる。これら三資本の融合を理念とし、「人口変容」と「脱炭素」を論じつつ、経済社会システムの「適応能力上昇」を維持して、世代間協力と社会移動が可能な開放型社会づくりを創造する。として、「社会資本主義」時代の到来を説いている。 
     マルクス、ウェーバー、パーソンズ、高田保馬の核心を融合した経済社会学による「新しい資本主義」論 だというから、違うのかもしれないが、読んでいないので、何とも言えない。

   さて、問題は、「社会資本・主義」が、「社会資本」の確立、修復、安定を政策の目標として健全な社会という土台を作り直す、と言うことだが、非常に漠然とした概念であって、経済政策の柱となり得るのかと言うことである。
   健全な社会の土台を作るというのは、住み良い安心安全や社会を作ると言ったような理想社会を実現するのと殆ど同義語であって、経済政策としては当然の目標である。
   また、公共財よりは狭い概念であろうが、経済学における社会資本は、企業・個人の双方の経済活動が円滑に進められるために作られる基盤のことのようだが、この社会資本の充実は、デマンドサイド、サプライサイド両面の経済政策の結果であって、並立する経済現象でもない。

   また、ダロン・アセモグルの「社会全体の豊かさをもたらす「正しい」技術革新のためには、政治による正しい方向付けが必要だ」との主張を同義だとして、政府は、「正しい」方向へ社会を導くことにより経済の自律的な発展を促す。  そして、これは、経済至上主義、市場至上主義、金融至上主義と、どんどん倒錯してきた世の中を、社会至上主義(「社会主義」よりも本当の意味での「社会」主義)という正しい姿に戻す、つまり、これまた、膨張しすぎた近代資本主義社会の「正常化」、すなわち、政治・金融市場・経済の「正常化」へのパラダイムシフト  だという。
   政治が「正しい」方向へ社会を導く政府主導の福利厚生経済が良いのか、民主導の市場原理主義の経済が良いのか、振り子運動の一環であって、その振り子が、社会価値重視に移るという議論のような気がしている。
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石破内閣の経済成長戦略は

2024年10月05日 | 政治・経済・社会
  石破内閣の経済対策について、石破首相は4日、秋に取りまとめる経済対策の策定に着手するよう閣僚に指示した 。経済対策は、物価高に対応して低所得者世帯向けに給付金を配るほか、自治体向けの交付金を大幅に拡充する方向だ。 と言う。

   関心のある経済問題だけに集中して、
   「石破首相「成長戦略を継承」 貯蓄から投資へ、流れ加速」を論じたい。

   「岸田政権で進めてきた成長戦略を着実に引き継いでいく」「資産運用立国の政策を発展させる」と言う前政権の経済政策を継承する考えを表明しており、「賃金が上がり消費が増え、人手不足対策を含む設備投資の拡大により更なる賃金上昇につながる好循環をつくる」と訴えている。
   GDPの半分を占める個人消費の回復を重視するとも唱えていて、消費を後押しするため食料品やエネルギー価格の上昇に対応する経済対策を打ち、物価高の影響を受けやすい低所得者に給付金を支給すると表明した。国民の将来不安を緩和するために医療、年金、社会保障の見直しに着手するとも語った。

   
   首相が提示した成長戦略は、
   「従来のコストカット型経済から高付加価値創出型経済へ転換し、投資大国日本を実現していく」と打ち出し、自動車や半導体、農業などを挙げて「輸出企業が外から稼ぎ、生産性を向上させるための投資を促進していく」。
   地方創生が「日本経済の起爆剤」だとも掲げた。最低賃金を現行目標の30年代半ばから20年代に前倒しして平均1500円へ引き上げる方針も提示し、成長分野への労働移転を促すためのリスキリングを説く。
   エネルギー政策を巡っては政府が24年度中に中長期戦略となる次期エネルギー基本計画を策定する。前政権は生成AIやデータセンターでの電力需要の増加をにらみ、安全性が確認できた原発を最大限活用する方針を示した。
   

   一方、施政方針演説での経済政策は、
   「経済対策を早急に策定し実現に取り組む」と表明した。
   経済対策は「物価高の克服」「日本経済・地方経済の成長」「国民の安心・安全の確保」を柱とする。物価高の影響を受ける低所得者世帯への支援や中堅・中小企業の賃上げ環境の整備、国土強靱化などを進める。
   物価上昇を上回る賃上げを定着させ、国民が生活が豊かになったと実感してもらう必要があると言及した。生産性の向上などにより、最低賃金を2020年代に全国平均1500円にする目標を掲げる。

   言っていることは、整合性はともかく、間違ってはおらず、必要な経済政策であるが、どうするのか、能書きだけで中身がない。
   根本的な問題は、持続的な消費回復や賃上げの実現には有効かつ実際的な成長戦略が欠かせない 、すなわち、持続的な実質賃金の上昇を維持するためにはそれ以上の経済成長が必要だと言うことで、全ての元となるのはテクノロジーの進歩など経営革新によって生産性(特に全要素生産性)を向上させて経済成長を持続することであって、その原資を十分に確保出来なければ、賃上げも出来ないし国民生活も豊かにならない。
   リスキリングなどの人への投資の強化や事業者のデジタル環境整備などと言った末梢的な生産性向上策を、施政方針演説で打つようでは、先が思いやられる。根本は、後述するように経営革新と産業構造の抜本的改革である。

   生産性の向上と言っても、単純ではなく、アセモグルの「生産性バンドワゴン」によると、
   生産性の向上が生み出した余剰が経済の他部門に振り向けられ、テクノロジーの進歩によって大きな改善が進み、新製品、新産業を誘発してそこにおける新たな労働需要を生み、と言った波及効果があってはじめて賃金が上昇して、生産性の向上が労働者に及ぶことが可能になるのである。
   一にも二にも、シュンペーターの説く創造的破壊を生み出し爆発させる土壌の醸成であり、
   この好循環の実現である。

   アベノミクスでは、成長戦略は、第三の柱として「民間投資を喚起する成長戦略(成長産業や雇用の創出を目指し、各種規制緩和を行い、投資を誘引すること )」と明記されていたのだが、不発に終わってしまったので、鳴かず飛ばずで成長から取り残されて、失われた20年が30年になり、先進国でも最低の水準に落ち込んでしまった。
   しかし、石破内閣は、良く分からない岸田内閣の新しい経済に、つけ刃の施策をくっ付けて継承するということで、さらに、成長戦略がぼやけてしまって、期待はできない。

   日本経済が低迷しているのはなぜか、
   少子高齢化による人口減もその一因だが、最大の要因は、日本企業の没落退潮で、国際競争力の著しい低下のみならず、ゾンビ化して存続そのものが危なくなってきており、産業構造とその基盤がどんどん弱体化して、それが全経済に伝播蔓延していることである。
   極論すると、歴史と伝統のある大企業の殆どは、成長発展から無縁の馬齢を重ねただけの停滞状態であり、その岩盤体制が日本経済を支配し圧迫していて、その風土環境が、日本の政治経済社会を仕切っているから、
   最先端科学やテクノロジーを追求し駆使して、イノベイティブで斬新な経営環境や新規企業が生まれて活躍する余地など醸成し得ないし、最先端を行く優秀な外資も呼び込めない。

   唯一の生きる道は、岩盤組織の旧態依然たる既存企業に起死回生の再建を迫り、出来なければ退場を強いて、産業構造を新陳代謝して根本的に改革することである。

   尤も、成熟化して制度疲労してしまった日本そのものに問題がある。
   看板をかけ替えるだけで何の変化も進歩もない自民党政治に安住している限り、これ以上良くなることは望み得ないが、カウンターベイリングパワーである筈の野党に何の魅力も実力もなく、改革革新の道が途絶えてしまっているのが悲しい。
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石破内閣で日本経済はどうなるのか

2024年09月28日 | 政治・経済・社会
   経済成長優先の高市政権の夢が潰えて、石破茂総裁の誕生が決まると、一挙に、金融市場は、株安・円高・金利上昇で反応 して、日経平均の先物は現物終値比で2000円超下落する場面があった。財政刺激・金融緩和を主張する高市早苗の勝利を事前に織り込んでいた反動が強く出た格好で、「高市トレード」の巻き戻しがいつ収まるのか、石破政権誕生で日本経済への疑念は収まらず、日本株はこれから停滞しかねない、来週明けには、株は更に下落筆致だという。
   新政権の新しい経済政策が始動して政局が治まるまで、紆余曲折があるであろうが、日本経済そのものがほぼ健全である限り、程ほどのところで安定するであろう。

   石破総裁は、経済に弱いということだが、就任後、「物価上昇を上回る賃金上昇を実現するために、新しい資本主義にさらに加速度をつけていきたい」と強調した。「デフレからの脱却の確実化」にふれ、アベノミクスではなく、物価高対策や労働市場改革など岸田政権の経済政策の基本的な方向性を継承する考えである。 「さらに加速度をつけて」という政策なり戦略なりが問題であろうが、あまり期待でいないが、しかし、大きなブレはないであろう。 

   経団連は、「石破氏は、閣僚や自民党幹事長などの要職を歴任され、地方創生や防衛分野をはじめとする幅広い政策に精通されており、経験豊富な政治家である。 」と歓迎してるのだが、地方創生と防衛分野しか知らないということであろうか。

   選挙戦で注目を浴びたのが税を巡る発言で、税の応能負担の原則を掲げ、株式の売却益など金融所得への課税強化や法人税と所得税の引き上げ余地があるとした。
   これは、金融所得課税の強化は、配当などの利益が非課税となる少額投資非課税制度(NISA)の拡充など岸田政権が進めてきた「貯蓄から投資へ」の流れに逆行する政策であると批判を浴びたが、これは慎ましい庶民への投資促進制度であって、
   もっと強力な富裕者や強者に対する課税の強化、すなわち、余裕のある企業、富裕な個人に負担を求めることで、財政や社会保障制度の持続性を高め、弱者をより支援することができるというリベラルな発想に基づくもので、所得の平準化や格差拡大の抑止にもなり、成長戦略としても有効なので、大いにやるべきであろう。

   さて、NRIの木内 登英 氏が、
   「自民党新総裁に石破氏が選出:地方創生を中核に据えた成長戦略の推進に期待・・・」で、アベノミクスに触れている。
   興味のある部分だけについて触れるが、
   成長戦略の更なる推進に期待として、石破政権の経済政策では、アベノミクスの第3の矢に相当する、企業の投資を引き出すような成長戦略の推進を最も期待したい。それこそが、労働生産性の上昇、実質賃金の上昇を通じて、国民生活の改善につながるのである。石破氏は、地域創生、地方経済の活性化を長らく掲げており、それが石破政権の成長戦略の中核となるのではないか。 というのである。
   他方で、石破政権には岸田政権の成長戦略も是非引き継いでほしい。それらは、「資産運用立国実現プラン」を通じ「貯蓄から投資へ」の流れを加速すること、「三位一体の労働市場改革」で、労働生産性向上と産業構造の高度化を実現すること、「外国人材確保(外国人実習制度改革と特定技能制度拡充)」を進め、労働供給と需要創出を促すこと、「インバウンド戦略」でインバウンド需要を地方に呼び込むこと、などである。 ともいう。

   安部でも岸田でも、何でも良い。
   高市早苗が連呼したように、「経済成長、経済成長、経済成長」である。  
   あらゆる手段を駆使して、生産性をアップして、日本経済を高みに引き上げる、これしか道はない。

   石破政権が、旧態依然とした自民党政治を引き摺って走るのなら、明日は暗い。
   トップクラスのテクノクラート頭脳集団を糾合して、最強の政権を構築して、日本の舵取りを進めてほしい。
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危ないスクランブル交差点

2024年09月27日 | 政治・経済・社会
   スクランブル交差点で、もう少しで、轢かれるところだった。
   スクランブル交差点は、横断歩行者と自動車の交通を完全に分離する方式の歩車分離式信号機が使用される交差点で、歩行者用の信号機が青の時は、どの車も停止すべきで動けないはずである。
   ところが、歩行者信号が、前方で一気に青に変わったので、スクランブル交差点とは知らなかったのであろうか、最前列の車が、勢いよく飛び出してきて、杖をついて歩きだした私の前で、急ブレーキをかけて止まった。中年女性の運転する小型車であった。

   西鎌倉の住宅街にある唯一のスクランブル交差点で、人と車の交通量の少ない田舎の交差点がスクランブル化された典型的な例で、地元の人間は良く知っているので問題はないのだが、
   大船と江の島、鎌倉と藤沢とを結ぶ道路の交差点なので、よそ者の運転者が多く居て、こんな田舎にスクランブル交差点があるとは思わず、車道歩道に関係なく、一番よく見える所にある歩道用の信号が青くなれば突っ走る。
   数日前、孫にもこのような経験があり、近所の老人たちも何度か事故にあいかけて困っており、信号無視で通過してゆく車が後を絶たない。

   警察へ電話を掛けた。
   要するに、結論は、このような信号無視の運転者はいるのだという前提で、歩行者の方も、渡るときに、前後左右をよく見て、安全を確認してから渡れ。違反車に遭遇すれば、車体番号をメモするなり写真を撮って警察に通報すれば取り締まる。パトロールしているが、通報以外に、違反者を見つける方法はない。
   年寄りで歩行が困難で、スクランブル交差点を斜めに横切るのに、信号が変わってすぐに歩き出しても、途中で赤信号に変わるので、歩く前に前後左右を確認する余裕などないと言ったら、
   斜めに渡るのではなく、L字型に、まず反対側に渡って、2度に分けて信号を渡れ、すなわち、十字交差点で歩行者が斜め向かい側(対角線上)に渡る場合、2回道路を横断 しろと言う。

   スクランブル交差点には、案内標識に「歩車分離式」「スクランブル式」「スクランブル信号」などと表記されていると言うのだが、誰が見ているのか。
   スクランブル交差点は、住民の要求によって設置するのだが、交差する交通が交互に通行するよう信号機で制御されている一般的な交差点の方が良いので、警察も出来れば、設置を避けたいと思っている。という。       
   スクランブル交差点は、人通りの多い繁華街の交差点において主に採用されていて、渋谷でもなし、
   人と車の交通量の少ない鎌倉の片田舎、それも、高齢者人口が過半の住宅街には全く不釣り合いである。
   インテリかぶれの多い鎌倉の文化文明気取りの住人が要望して設置されたのかもしれないが、迷惑である。

   素人考えだが、運転者が、青い歩道用信号を見てGOサインと誤認するのなら、車道用信号機は離れたところにあるので、左右2つ並んでいる歩道用信号の真ん中か直近に並んで、車道用の補助信号を設置して、注意を喚起するのも、一つの方法かと思って提案したが、無回答。

   私は、オランダとイギリスで長く住み、ヨーロッパ各地で車生活を送ってきた。ドイツ、スイス、オーストリア、デンマーク、フランス、ベルギーなど遠出もした。
   相対的に言って、日本よりヨーロッパの方が、交通規則も規制も、はるかに厳しいと思っているのだが、運転者のモラルは、日本よりもずっと高い。
   多少の飲酒運転を容認していても事故が少ないし、日本のように教習所もなく厳しい免許取得制度もないにも拘わらず、問題なく機能しているのは、その査証であろう。
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日本製鉄によるUSスチール買収計画の再申請を許可

2024年09月18日 | 政治・経済・社会
   各メディアが、「日本製鉄によるUSスチール買収計画の再申請を許可する」と報じている。
   買収計画は、11月の米国大統領選挙を前に政治的論争の種となっているのだが、対米外国投資委員会は、日本製鉄の提案再提出の要請を認め、買収を承認するかどうかの決定は選挙後まで延期される。というのである。

    ジェフ・メイソン、アレクサンドラ・アルパーによるロイターの「米国による日本製鉄のUSスチール買収の決定、選挙後まで延期」という記事が詳しいので、これによって考えてみる。

   日本製鉄によるUSスチール買収の149億ドルの買収を審査している米国国家安全保障委員会は、両社に買収承認の申請を再提出することを許可し、政治的に微妙な合併に関する決定を11月5日の大統領選挙後まで延期した。
   この動きは両社にとって一筋の光明となる。両社の提携提案は、対米外国投資委員会(CFIUS)が8月31日に、この取引が米国の重要な産業の鉄鋼サプライチェーンを脅かすことで国家安全保障上のリスクをもたらすと主張したことで阻止されるかに見えた。
   関係者は火曜日、CFIUSは、この取引が国家安全保障に与える影響を理解し、当事者と交渉するためにさらに時間が必要だと述べた。再提出により、提案された提携を審査して決定を下すための新たな90日間の期限が設けられる。
   バイデン、ハリス、トランプ、そして、全米鉄鋼労働組合が、この買収に反対していることは、周知の事実なので、ここでは省略する。

   CFIUSは、日本製鉄の合併により、重要な輸送、建設、農業プロジェクトに必要な鉄鋼の供給が損なわれる可能性があることを懸念していると、ロイターが独占入手した8月の両社宛ての書簡で述べた。
   また、CFIUSは、安価な中国製鉄鋼が世界的に供給過剰になっていることを挙げ、日本企業である日本製鉄の下では、USスチールが外国の鉄鋼輸入業者に関税を求める可能性は低くなると述べた。さらに、日本製鉄の決定は「国内の鉄鋼生産能力の削減につながる可能性がある」と付け加えた。
   一方、ロイターが独占入手したCFIUSへの100ページに及ぶ回答書簡で、日本製鉄は、本来なら休止状態になっていたであろうUSスチールの施設に数十億ドルを投資し、「米国国内の製鉄能力を維持し、潜在的に増強する」ことを「議論の余地なく」可能にすると述べた。同社はまた、USスチールの生産能力や雇用を米国外に移転しないという約束を再確認し、不公正な貿易慣行に対する米国法に基づく貿易措置の追求を含む、貿易問題に関するUSスチールの決定には一切干渉しないとした。
   日本製鉄は、この取引は「米国と日本の緊密な関係を基盤とした、中国に対するより強力なグローバル競争相手を生み出す」と付け加えた。

   新日鉄とUSスチールは3月に審査を申請し、CFIUSは6月に再申請を許可し、9月23日に期限を迎える2回目の90日間の審査期間が始まったとロイター通信は金曜日に報じた。12月にCFIUSは、国家安全保障上の懸念に対処する措置を講じて取引を承認するか、大統領に取引を阻止するよう勧告するか、または再度期限を延長する可能性がある。CFIUSの厳格な審査には90日かかるが、審査委員会の懸念に対処する時間を増やすために、企業が申請を取り下げて再提出することはよくある。というのである。

   同じくロイターは、「USスチールCEO、日鉄による買収成立を確信」と報じて、
   デビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は17日ミシガン州デトロイトで講演し、日本製鉄による買収成立に楽観的見方を示した。CEOは買収の審査プロセスは「非常に堅牢」だが、「われわれはそのプロセスを信頼し、尊重している」、とした。
   この統合は、両者の将来のみならず、国家安全保障、経済安全保障、雇用の安定を強化することは非常に明確であり良いことだと強調したのである。
   USスチールのHPは、
   NIPPON STEEL CORPORATION AND U. S. STEEL COMBINATION IS THE BEST DEAL FOR AMERICAN STEEL 一色、疑いの余地なし。

   9月5日に、このブログで、「米国の愚行:日鉄のUSスチール買収反対 」を書いて、アメリカにとって、この買収阻止が如何に愚行かを論じたので、蛇足は避ける。
   いずれにしろ、米国の財務省や国防省でさえコメントを控えていて、アメリカの政治経済社会に大きな影響を与える微妙な問題、
   新大統領の対応如何にかかっていると言うことであろうか。




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米国の愚行:日鉄のUSスチール買収反対

2024年09月05日 | 政治・経済・社会
    日鉄が買収しようとしているUSスチールは、世界を制覇していた頃のアメリカ経済の最高峰のシンボル企業であり、アメリカ資本主義の命そのものであった。
   そのUSスチールが落ちぶれて、日本企業に買収されようとしているのだから、腐っても鯛は鯛、
   墓穴を掘っても、誇り高きアメリカ国民にとっては耐え難い。

   米大統領が、日鉄の買収阻止へ最終調整に入り、統合話が消える公算が高くなり、これに対してUSスチールが反発というニュースが日米のメディアの話題になっている。  

   買収計画には、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対していて、11月の米大統領選を控え民主党候補のハリス米副大統領は2日、USスチールについて「米国内で所有、運営されるべきだ」と述べ買収に反対の姿勢を示し、トランプ前大統領も再選すれば買収を阻止すると明言している。 
   買収は対米外国投資委員会(CFIUS)が審査していて、CFIUSが日鉄に対し安全保障上の懸念があると伝えたと言うことで、バイデンはCFIUSの勧告に基づき、買収を禁止する行政命令を出すとみられている。 

   それを受けて、USスチールのデービッド・ブリットCEOは、日本製鉄による買収が不成立なら、製鉄所を閉鎖することになり、本社をピッツバーグから移転する可能性も高いと米紙ウォールストリート・ジャーナルに語った。ブリット氏はインタビューで、日鉄はUSスチールの老朽化した製鉄所に約30億ドル(約4300億円)の投資を約束しており、それが競争力を保ち雇用を維持する上で不可欠だが、日鉄買収が不成立に終わるなら、それは実現されない。と述べたという。 

   さて、USスチールの情報を知ろうと、HPを開いたら、日本製鐵とUSスチールのロゴが横並びで表示されて、口絵写真の真ん中に、次の表示のみ、
MOVING FORWARD TOGETHER AS THEBEST STEELMAKERWITH WORLD-LEADING CAPABILITIES  
   LEARN MORE をクリックすると、
Nippon Steel Corporation + U. S. Steel
Moving Forward Together as the ‘Best Steelmaker with World-Leading Capabilities’
Nippon Steel Announces Transformative Investments at U. S. Steel's Mon Valley Works and Gary Works
日鉄の投資提案を提示し、加えて、
The Steel CityとStandard Steel’s Comebackとの短い動画で明るい未来を描く。
   HPには、2社の統合に関する情報以外に記事はない。統合によって、USスチールの未来が如何に明るく起死回生を図れるかのオンパレードである。
USスチールにとっては、日本製鐵との統合以外には眼中になく、破談すればその未来はないと思っている。

   詳細は省くが、既に、USスチールの命運はほとんど尽きており、日本製鐵との統合がだめになれば、衰退の一途を辿るだけで、反対する労働者の生きる道もなくなってしまうのに。と思っている。
   なぜ、買収反対がアメリカにとって愚の骨頂かは、2月22日のこのブログで、プロジェクト・シンジケートの論文アン・O・クルーガー 「 アメリカの鉄鋼狂気 America's steel madness」を紹介したので、一部引用する。

   バイデンは、3つの主要な経済政策目標を定めている。外国直接投資の奨励などにより「良い仕事」の数を増やす。 米国の製造と現地生産を強化する。 そして最新テクノロジーの導入を加速する。 バイデンはまた、より多くの貿易、特に重要な物品の輸入を米国の同盟国に振り向けること、いわゆるフレンドショアリングを目指している。
   この鉄鋼合併はこれらすべての目標を前進させると同時に、米国の主要同盟国との関係を強化する可能性がある。
   日本製鉄による 買収とそれに伴う技術の向上により、US スチールの衰退は逆転するはずである。 取引条件は、この買収により米国の鉄鋼業界の生産性が向上する可能性が高いことを意味している。 米国の鉄鋼価格が下落すると、鉄鋼を輸入するインセンティブが低下し、冷蔵庫や自動車などの製品を製造する米国のメーカーはコストを削減できるため、競争力が高まるだろう。 これらすべてが米国の製造業と技術基盤を強化し、米国での「良い仕事」の継続的な提供、そして可能性のある創出を確実にするであろう。
    US スチールの運命を逆転させ、アメリカの鉄鋼産業の見通しを改善する本当の機会を意味するこの出来事を歓迎すべ きであって、このチャンスをミスるのは、America's steel madness正気の沙汰とは思えない。 と言うことである。

   日鉄はUSWに譲歩案として、少なくとも、現行の労働協約が失効するまでは従業員のレイオフ(一時解雇)、工場閉鎖は実施しないとも公約したのだが、この公約を「空約束」として、USWは首を縦に振らない。しかし、このまま、衰退して解雇されるよりは、USスチールが技術革新によって生産性が向上して起死回生すれば、雇用機会も増え労働条件も良くなると考えるべきであろう。

   選挙ともなれば、「アメリカファースト」も色あせてしまって、金の卵を殺すのも知らずに、労働者票を取りたいばっかりに、定見も知見も欠如したUSWにすり寄る悲しさ、
   トランプは勿論、ハリスも。

   日鉄のUSスチール買収反対は、アメリカ製造業凋落の象徴ともいうべき現象で、葬送行進曲の序章がかすかに聞こえてくる、と言えば言いすぎであろうか。
   米鉄鋼メーカー、クリーブランド・クリフスが買収合併に動いているようだが、斜陽の弱者同士の統合は死期を早めるだけ、
   アメリカ政府が、国内企業の統合だけで危機を乗り切ろうとするのなら、先は見えている。


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カマラ・ハリス:大統領候補指名受諾演説

2024年08月23日 | 政治・経済・社会
   シカゴで開かれている民主党大会の最終日の22日、大統領候補に指名されたカマラ・ハリス副大統領(59)が受諾演説を行った。黒人、アジア系として米国初の女性大統領を目指して、11月の大統領選で、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)と対決する。
   首席スピーチライターのアダム・フランケル氏の草稿に手を加えながら数週間かけて演説を練り上げてきたというのだが、さすがに検察官のキャリアーがものを言って弁舌さわやかで、感動的なスピーチであった。
   私は、NHKの放映を通じて、全公演を聴講して、解説も読んだ。
   参考にして、感想を述べたい。

   冒頭、母はインドからカリフォルニアへ渡ってきたと自分の生い立ちを語って、「さまざまな政治的な見解を持っている人がいることはわかっている。皆さんに知ってもらいたい。私はすべてのアメリカ国民のための大統領となることを約束する」と宣言した。
   そして「力強い中間層の存在がアメリカの成功に不可欠であることを私たちは知っている。そして、こうした中間層を築き上げることが大統領に就任した際の決定的な目標になる。 (A strong middle class has always been critical to America's success. And building that middle class will be a defining goal of my presidency .)中間層の家庭に生まれた私の思いだ」と述べて、アメリカ社会の根幹はミドルクラスの健全な存在であって、この繫栄あってこそアメリカ社会の活性化と未来があるとの持論を強調した。
   さらに「私は私たちの最も高い志で国民を束ねる大統領になる。人々を導き、耳を傾け、現実的で良識のある大統領になる。そして常にアメリカ国民のために戦う。それが裁判所からホワイトハウスまでの私のライフワークだ」と述べて、非常識極まりない対戦者を揶揄し、「政党や人種、性別などに関係なく、すべてのアメリカ人のために、懸命に働き夢を追い求めるアメリカ人のために、大統領候補への指名を受諾する」と述べ て、アメリカンドリームを匂わせた。

   「今回の選挙は私たちの人生において最も重要であるだけでなく、私たちの国の歴史において最も重要なもののひとつだ。トランプ氏は不真面目な男だ。しかし、彼をホワイトハウスに戻すことの結果は極めて深刻だ。(Trump is "an unserious man" and his return to the White House would have "extremely serious" consequences.) 彼が大統領だった時の混乱や災難だけでなく、彼が前回の選挙で敗れたあとに起きたことの重大さを考えてほしい」と述べて、さらに、恐ろしいと指摘したのは、「大統領公務なら免責」とする最高裁の判断。免責特権が幅広く認められる恐れがあり、大統領の権限が法律で制約されなくなると、「自分ファースト」でモラルを欠き常軌を逸した傍若無人な独裁者が、大統領になればどうなるのか。

   ハリスは、ガザ・イスラエル問題について、イスラエル支持とガザでの平和停戦に言及しながら、「私たちは、世界の歴史上、最も偉大な民主主義の継承者だ。」として、「前向きと信念に導かれ、愛するこの国のために、そして育んできた理想のために戦う」と述べた。ハリスの命の叫びである。
   トランプはNATOから脱退すると脅迫したが、、ウクライナやNATOの同盟国を強く支持する」と述べ、国際協調を重視する姿勢を示した。トランプのように、「暴君や独裁者にすり寄ることはない」 としたのが興味深い。

   移民政策については、 国境管理「法案を復活」 させ、人工妊娠中絶については、「復活法案 誇り持って署名する」として、
   ハリス氏は「ともに戦おう。投票に行こう。これまでで最もすばらしい物語の次の偉大な章を記そう」と述べて演説を締めくくった。 
   
   さて、今度のテレビ討論会でのハリスの対決戦略は、「検察官対重罪犯」で十分だと思う。
  ハリスは、元検察官という自らのキャリアに言及して、「女性を虐待する略奪者、消費者からだまし取るペテン師、自分の利益のために規則を破る詐欺師、あらゆる種類の加害者と私は対決した。だからドナルド・トランプのようなタイプを知っている」と、大統領経験者として史上初めて重罪で有罪評決を受けたトランプと、犯罪者と対峙してきた元検事の姿を浮き彫りにした。
   トランプは、ハリスが追い詰めた重罪犯の資格は十分に持っており、その追求だけで勝負がつく。

   トランプは、ハリスをバカ呼ばわりしているが、箔付のために大学進学適性試験(SAT)を替え玉受験して入学してウォートンを出た学卒より、加州大ロースクールを出た法務博士のハリスの方が知的水準は遥かに上のはずで、その上に、法廷に立った百戦錬磨の敏腕検察官、
   口から出まかせ嘘八百で生き抜いてきたトランプがどう対峙するか。

   また、トランプは、ハリスは共産主義者だとか、ハリス政権になれば、アメリカ経済を崩壊させるとか、第3次世界大戦を引き起こすとか、根も葉もない暴言を口走っている。
   2016年の選挙でトランプが勝ったのは、エスタブリッシュメントを否定して、アメリカの東部から中西部に広がる製造業の集積地帯「ラストベルト(Rust Belt)」で、中間所得層からの転落を恐れる多くの白人労働者の怒りと不満を浮かび上がらせて集票に成功したからであった。しかし、このトランプ戦術は賞味期限切れで、産業構造も労働環境も大きく激変していて、
   今回の選挙は、中間層の取り込み以上に、女性票やマイノリティ票や若年層票がキャスティングボートを握っており、浮動票の帰趨が選挙の結果を制しよう。
   トランプ、そして、保守党の戦略戦術、ビジョンや政策は、既に既知で手垢にまみれている。たとえ、バイデン政権の遺産であっても、今回のハリス演説に徐々に斬新さを加えて独自色を出して、民主党本来の福祉国家政策などのリベラル政策をブラッシュアップすれば、ハリスの勝機は向上するはず。
   A new way forward を、どう叩き付けて、後ろ向きのトランプを粉砕するか、
   とにかく、9月10日のテレビ討論会を期待したい。
   
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ハリス:中産階級活性化の経済政策

2024年08月20日 | 政治・経済・社会
   CNNは、 ハリス米副大統領は16日、庶民重視の経済政策を公表し、1億人を超える中産階級や低所得層の米国人を対象とした新たな減税計画を提案した。と報じた。
   また、副大統領候補にミネソタ州のワルツ知事を選んだことについて「米国を結束させる指導者で、中流階級のための闘士」を探していたと説明した。
   私の注目したのは、「中産階級重視」の経済政策である。

   ハリスのこの中産階級活性化の経済政策の詳細が分からないので、詳論できないが、しかし、かってアメリカには、中産階級の繁栄が、アメリカ社会の黄金時代を現出した時代があったのである。
   経済分析の余裕がないので、わがブログの一部を引用すると、
   第二次世界大戦後30年に及ぶ高度経済成長期には、経済とは、将来への希望を生み出すものであり、きつい勤労は報われ、教育は上昇志向で、より多くのより良い仕事を生み出し、殆どの人々の生活水準が上がり続け、米国では、他には見られないような巨大な中間層が形成されて、米国経済の規模が倍増すると同時に、平均労働者の所得も倍増した。
   企業経営者たちも、自らの役割を、投資家、従業員、消費者、一般国民、夫々の要求をうまく均衡させることだと考えて、大企業は実質的には、企業の業績に利害をもつすべての人に所有されたステイクホールダー資本主義であった。
   アメリカにも、そのような民主主義と資本主義が息づいた素晴らしい時があったのである。 

     ライシュが、大繁栄時代として肯定しているこの第二次世界大戦後の四半世紀には、政府は、「経済の基本取引」を強化、すなわち、完全雇用を目指してケインズ政策を採用し、労働者の交渉力を強化し、社会保障を提供し、公共事業を拡大した。
   その結果、総所得のうち中間層の取り分が増える一方、高所得層への分配は減少したのだが、経済自体が順調に拡大したために、高所得者も含めてほぼ総ての国民が恩恵を受けた。
   個人消費がGDPの70%を占めるアメリカ経済では、ボリュームゾーンの中間層が健全であることが必須で、中間層が、生産に応じて適正な所得を取得して、生産した財やサービスを十分に購買可能な「経済の基本取引」が成立した経済社会であったが故に、生産と需要が均衡して繁栄したのである。

   これは、日本にも言えることで、団塊の世代などは経験していることだと思うのだが、戦後復興効果はあったものの、日本経済はどんどん高度成長を続けて年々所得が上がって生活が向上し、1億総中流家庭と言われる幸せな時期が続いて、Japan as No.1の高見まで上り詰めた。

    ところが、その後、歯車が逆転して、政府は富裕層優遇の経済政策を推進し、賃金の中央値の上昇が止まり、国民総収入のうち中間層に流れる割合は、減少し続けて、大部分のアメリカ人にとって、賃金の伸びが止まっていないかのように生活を続ける唯一の方法は、借金であり、中間層の消費者は、最後の手段として借金漬けとなった。 
    深刻な経済格差の拡大と資本主義の挫折、We are 99%、ウォール街を占拠せよの到来。

   ところで、今日、日経が、「米企業、「株主第一」の修正進まず 労働分配率が低下」と報じた。経営の非民主化、逆転現象である。
   米企業が掲げた「ステイクホールダー重視」経営から「株主第一主義の修正」が進んでいない。利益配分の株主偏重を改め、従業員や地域社会への還元を厚くすると大手企業が宣言してから5年がたったが、労働分配の比率は低下する一方、巨額を株主に投じている。経済格差への不満が社会の分断や不安定化につながる構図は強まっている。 というのである。
 
   徹頭徹尾、弱肉強食の市場経済の魂が刷り込まれたアメリカの経済社会、
   成熟化して若いエネルギーを失ってしまって、もはや、後戻りが効かなくなってしまったアメリカ社会に、「中産階級再活性」の夢を実現できるのであろうか。
   ハリスの経済政策はアメリカ社会の起死回生には必須条件ではあるが、極めてハードルが高いと言わざるを得ない。
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名目GDP初めて600兆円超える

2024年08月15日 | 政治・経済・社会
   時事が電子版で、
   内閣府が15日発表した2024年4~6月期の名目GDP(国内総生産)速報値は、年換算で初めて600兆円を突破した。  500兆円を達成してから32年半ぶりに新たな大台に乗せた形だが、物価上昇による「水ぶくれ」の側面が強く、成長の実感は乏しい。と報じた。

   物価を反映した名目GDPは1.8%増え、年率換算した金額は607兆円となり、初めて600兆円を超えた。15年に安倍晋三政権が掲げた「名目GDP600兆円」の目標を9年越しに達成したことになる。
   岸田文雄首相は15日、記者団に見解を問われ、今年の春闘の高い賃上げ率などにも触れたうえで「賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を示す数字であると受けとめている」。名目GDPが1973年度に100兆円を超え、4〜5年ごとに100兆円刻みで増えてきたと指摘した。日本経済の低迷に触れ「92年度に500兆円を超えた後は足踏みが続き、32年かかって600兆円を超えた。こういう道のりをたどってきた」と意義を訴えた。と言う。
   ただし、実質GDPの実額は約559兆円で、前年同期の約563兆円を下回る。約608兆円となった名目GDPの伸びに実質成長は追い付いていない。のである。
  
   欧米に後れを取ってのキャッチアップ経済とも知らずに快進撃を続けていたつもりで、Japan as no1に酔いしれていた日本のバブル経済が一気に崩壊して奈落の底、  
   深刻なデフレ経済に陥って、成長から見放されて鳴かず飛ばずの失われた30年、
   やっと辿り着いた600兆円の頂上がインフレ含みの幻想、
   お釈迦様の掌の孫悟空の心境!

   びっくりするような巨大な乱高下に見舞われた日経平均株価だったが、捨てたものではなく、今日は半値戻し、
   さて、アメリカのインフレが2%台で下落傾向で推移して、今日の、小売業の先月売上高が1%上昇して期待以上であったという発表を好感したのであろうか、
   23時半現在、
   NYダウが、 ▲0.84% 40,343.79 +335.40
   シカゴの日経先物が、▲1.93% 37,435.00 日経比:+708
   明日16日の日経平均株価は、上昇する予感である。
 
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カマラ・ハリスに大いに期待する

2024年07月23日 | 政治・経済・社会
   この口絵写真は、ウィキペディアからの借用だが、急遽バイデンに変わって、民主党の大統領候補に躍り出たカマラ・ハリス副大統領である。大統領に何かあったときに変わり得るNo.2であるから、当然というか順当な起用であろう。

   この報を聞いて真っ先に感じたのは、トランプとの大統領選挙争いが、急に新鮮さを帯びたことである。
  バイデン大統領(民主党)とトランプ前大統領(共和党)との老人の争いに嫌気が差している有権者 の「ダブルヘイター」現象が解消されたことで、
   一気に、トランプの存在が、賞味期限切れに感じられてしまったのである。
   トランプは、「MAGA」など聞き飽きてしまったお題目は変更し得ないので、ハリスとの選挙合戦でも、多少、バリエーションがあっても、壊れた蓄音機のように繰り返し続けるであろう。
   しかし、ハリスは、バイデノミクスなど、バイデン政権の功罪綯交ぜで継承するであろうが、白紙状態から、若くて清新なドクトリンや政策を立ち上げて、手垢にまみれた時代錯誤のトランプに対峙することができる。

   クリントン以降、大統領は皆大学院を出て高等教育を受けているが、トランプだけは、大卒。代筆させた自著さえ読まないという読書音痴で、確たる哲学も思想も希薄であり、知性教養や勉強には最も縁の遠い大統領であった。
   一方、ハリスは、カリフォルニア大の法科大学院卒の法務博士。

   ハリスの方が、若くて遥かに知的水準が高くて英明なので、老醜に追い打ちをかける雄姿を彷彿とさせて、これからの政策論争や9月の大統領テレビ討論会の丁々発止が愉しみである。

   私は、リベラル派で、民主主義を叩き潰そうとしているトランプには与しえない。
   ハリスの健闘を切に祈りたい。
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トランプは事件後も変わっていない

2024年07月19日 | 政治・経済・社会
   ロイターが、電子版で、「トランプ氏、指名受諾演説で暗殺未遂語る 当初の融和色は雲散霧消」と報じた。

   トランプは、。指名受諾演説を行い、自身が負傷した暗殺未遂事件について語り、「全能の神のご加護」のおかげでこの場にいると強調して、演説の冒頭でいつもの攻撃的な姿勢を抑え、融和色を前面に出した。 
   しかし、その後はいつもの激しい口調で、国を「破壊」しているとしてバイデン現政権を批判。自身が起訴されているのは民主党の陰謀の一環だと根拠なく主張し、民主党のバイデン大統領が「第3次世界大戦」を引き起こすとしたほか、南部国境を移民が越えてくることを「侵略」だと表現した。 当初の融和色は雲散霧消し、いつものように大げさな表現と不平不満を織り交ぜ、民主党が2020年の大統領選を盗んだという虚偽主張を繰り返した。また、自分だけがこの国を確実な破滅から救うことができると主張。「私なら電話一本で戦争を止めることができる」と語った。というのである。

   九死に一生を得た奇跡的な経験をしたので、人生観なり主義信条が変わるのを期待していたのだが無駄であった。

   トランプのもしトラが実現した時の経済政策については、先日スティグリッツ教授の見解「トランプよりバイデン、米国経済にとってどちらがよいか議論の余地なし 」を紹介して、経済実績も政策も、悪化すると説明した。
   このブログで、トランプ批判を繰り返してきたので、蛇足は避けるが、多少、経済政策につて触れてみたい。
   このあたりのトランプ政策を、NHK記事から引用すると、
   共和党の政策綱領案には「アメリカ第1主義:常識への回帰」と記され、アメリカのメディアはトランプ前大統領が草案の一部を書いたと伝えています。このうち、インフレ対策はエネルギー生産の規制撤廃や政府支出の削減などで、好転させるとしているほか、移民政策では、国境沿いの壁を建設するなど、対策を強化するとしています。 「アメリカ第1主義」の経済政策を支持し、中国をめぐっては、貿易上の優遇措置などを講じる「最恵国待遇」を撤回するとしています。外交政策では、同盟国が防衛への投資義務を果たすことなどで関係を強化するほか、インド太平洋地域では平和と通商の繁栄を目指すとしています。 

   要を得た解説だとは思えないが、まず第一に、「アメリカ第一主義」と「MAGA」とは、かなり矛盾する概念である。たとえば、中国を締め出し、保護貿易主義に徹して世界市場から距離を置くことは、アメリカ市場そのものを縮小して、革新の芽を摘み、アメリカ経済の成長発展を犠牲にすることになる。移民抑制排斥も、頭脳の流入を妨げ知的新陳代謝を害する。「MAGA」に逆行するのである。
   それに、 「アメリカ第一」のために、アメリカを猛追する中国をターゲットにして排斥隔離政策を取ろうとしているが、諸般の事情で経済的覇権は握られなくても、グローバリゼーションに背を向けている限り、国際競争力を失った製造業の再興など望み薄だし、科学技術等先端分野ではキャッチアップされるのは時間の問題であり、 ファーストは維持できるとは思えない。歴史の趨勢を見れば明らかである。
   政府支出の削減については、小さい政府を主張する保守党の基本姿勢だが、養育や学術分野での削減は死活問題であり、それに、老朽化して崩壊の危機にある多くのインフラストラクチャの存在は、アメリカの経済体制や社会構造、将来の成長発展そのものの足かせとなりかねない。
   トランプは、最早インセンティブにさえなり得ない富者強者への減税政策を実施して国家財政を悪化させよう。健全な中産階級の育成など眼中になければ、弱者救済の確たる処方箋も示していない。益々、格差の拡大を促すことになる。

   勿論、経済は生き物なので、実際にはどうなるかわからないが、唯一の機関車がエンストを起こすと大変なことになる。
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英国の政変:問題は経済だ

2024年07月08日 | 政治・経済・社会
   英総選挙の全議席が確定して、 労働党412議席で圧勝 保守党は121議席で大幅な後退である。投票率は59・9%で、01年総選挙に次ぐ第二次世界大戦後2番目の低さで、当初から労働党の圧勝が見込まれたことや、国民の政治不信が背景にあるとみられるという。

   大統領選挙で、ビル・クリントンが、「It's the economy, stupid! (経済こそが問題なのだ、愚か者!)」とブッシュを揶揄したように、今回の英国選挙は、すべからく国民生活を窮地に追い詰めた経済が問題であった。

   詳しく分析する余裕がないので、大和総研の「英国民の生活危機は去ったのか?  」を引用させてもらって問題を論じたい。
   インフレの現状について論じているが、国民生活の窮乏について、
英国FCA(金融行動監視機構)の報告書によれば、英国民の8割弱の人々は生活費高騰に対してなんらかの対応を取っていると回答しており、日々の消費の節約・先送り、省エネによる節約を行っていると回答した人は全体の半数を上回る。しかし、それでも3割弱の人が生活費の高騰に財政的に対処できていないという。
さらに興味深い内容として、物価高騰が人々のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼしていることにも触れられている。物価高騰に対しストレス・不安を感じている人は全体の4割超おり、さらに「お金の心配で眠れない」「メンタルヘルスに悪影響が出ている」と回答した人は、それぞれおよそ2割に上る。英国では長期疾病を理由とした労働市場からの退出者が増加しているが、物価高騰による生活苦を背景としたメンタルヘルスの悪化が、人々の労働参加に影響している可能性が示唆される。
こうした報告書の内容を踏まえると、これまでの物価高騰による英国経済への悪影響は想定以上に長引くかもしれない。インフレ率は今後も低下し、統計上は実質賃金の増加傾向は続くと見込まれるが、人々の気持ちが前向きにならない中では、個人消費の本格的な回復は期待し難い。

    先日、NHKの英国の国民医療制度の崩壊危機報道について触れたが、大規模な鉄道ストも起こっているのだが、この大和総研の報道だけでも、一般英国市民の経済状態の窮状悪化ぶりは明白であろう。
   まさに、(経済こそが問題なのだ、愚か者!)」であって、こんな状態では、政変は必定である。

   私が、英国経済というよりも、英国国家そのものが、危機的な状態になっていて、政治経済社会全体が機能不全に陥っていた時代、サッチャー政権への移行時期、をよく知っている。
   ゆりかごから墓場までの福祉政策を推進していたはずの労働党政権の失政で、まさに、国家体制崩壊の危機に瀕していたのである。

   私の経験だが、ヒースロー空港の通関では、殆ど間違いなくスーツケースが全部開けられて中身を盗まれるのは毎度のことであった。
   シティでは、ストでごみ収集をやらないので、ごみが金融街に舞って散乱しており、ロンドン全体が戦後のような混乱状態であった。
   労働組合の横暴サボタージュは極に達していて、
   たとえば、自宅の塀の補修を依頼すれば、仕事引き延ばしのために、職人が1日にごく少数のレンガを積んだだけで帰って翌日に回して、2~3日で終わる作業が、延々と1か月以上掛る状態で、こんな現象が全英に蔓延していて、国家はマヒ寸前。
   踊り出たサッチャーが、業を煮やして蛮勇をふるって、労働組合を叩き潰して政治経済社会改革を実施し、
   その後、次から次へと荒業を遂行して、ビッグバンへ突き進んでいった。

   私が、ロンドンを含めて、ヨーロッパに在住して、イギリスの国情を具に見ていたのは、1979年から1993年、
   マーガレット・サッチャーとジョン・メージャーの保守党時代である。
   したがって、英国社会の混乱から金融ビッグバンでのシティの活況への道程は、ベルリンの壁とソ連の崩壊、そして、歴史の終わりともいうべき民主主義のグローバルベースでの大変革などとともに、ロンドンで体験している。
   弱肉強食の競争優位の市場原理主義を強行して資本主義を軌道修正したサッチャリズムやレーガノミクスには功罪あい半ば、批判も多いが、英国にとっては、必然の道程だったのであろう。
   その後、トニー・ブレア政権に移って、やや、左旋回して中道左派の国家体制に移るのだが、ブレクジットで危機に直面する。

   賢い筈のイギリスが、信じられないような愚かな道に陥る。
   今回の総選挙は、奇しくも、このケースであろうか。
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世界的な選挙ラッシュに思う

2024年07月06日 | 政治・経済・社会
   各メディアが、   
   「イラン大統領選、改革派のペゼシュキアン氏、決選投票で勝利」と報じた。
   穏健派であったロウハニ政権以来の対外融和路線に3年ぶりに回帰することとなり、欧米との対立を深めたライシ師の保守強硬路線が、核開発問題などを巡り国際協調を図る方向に転換することとなろう。
   最高指導者ハメネイ師の影響下にある護憲評議会は、国際協調を重視する穏健派や改革派の有力候補を相次いで失格にして候補者を絞ったのだが、有権者の体制不信を招いたこともあって、米国の制裁で疲弊した経済を立て直すためには、欧米と対話を重ねて核合意を再建し、制裁解除が必要だと訴えたペゼシュキアン氏が勝利した。
   イランは、 “ヘジャブ”事件以降、すでに、歴史の振り子が穏健派へ反転していたのである。
   興味深いのは、この記事を見て、すぐに、NYTとWPのHPを開いたのだが、トップページの記事の片鱗さえないことである。
   イランは、ペルシャ以前からの偉大な文化歴史国家であって、現下ではアメリカに盾突いているだけ、
   いずれにしろ、この選挙の結果は、イランにとっても世界にとっても朗報だと思っている。

   イギリスの総選挙は、 労働党が単独過半数を獲得して大勝して、14年ぶりに政権交代 して、スターマー党首が首相に就任した。
   1年前、BBCは、「イギリスは「失われた経済成長」が今後5年続く シンクタンクが警告、格差も拡大し貧しい人ほど影響を受ける 」と報じていた。欧州連合(EU)離脱と新型コロナウイルスのパンデミック、そしてウクライナでの戦争が、イギリス経済に悪影響を与えているというのだが、悪性のインフレにも祟られて国民生活を疲弊させて、国民医療体制の崩壊危機にまで追い込んでいる。
   ロンドン市内の1か月の家賃が平均およそ47万円!? とNHKが報じているから、正気の沙汰ではない。
   失政続きの保守党の退場は当然で変革が必要であろうが、確たる明確な施策方針が見えないうえに、財政逼迫で財源もなく妙手も見出し得ない労働党政権に何ができるのか疑問だが、ブレア時代の中道左派的なリベラル政治を目指すようだから、一応期待しよう。

   フランスの選挙だが、NHKが、「仏議会下院選挙の決選投票 極右政党は過半数獲得しない可能性」と報じている。
   200を超える選挙区で与党連合と左派の連合が候補者を一本化したことから、国民連合は第一党となるものの、当初の勢いをそがれ過半数の議席を獲得する可能性が遠のいたというのである。
   先のEU議会選挙の極右政党の躍進、特にルペンの国民連合の大躍進には、フランス政治の大激震を予感させたが、あまりにも性急な右傾化で、振り子を左側に振り戻す必要があろう。

   さて、アメリカの大統領選挙だが、民主主義を叩き潰そうとしているトランプに対する拒否反応が増すばかりで、論評を避けたい。
   バイデンでも現状維持が良いところで、何も進歩向上は望めないが、自由平等と平和を守ろうとする自由民主主義を堅持し発展させるのは人類の使命だと思っている。
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イギリスの公的医療制度NHSが危機的状況

2024年07月02日 | 政治・経済・社会
   昨夜、NHKの国際報道2024で、「公的医療制度とインフレ 英国が直面する課題」を放送した。
   7月4日に行われる総選挙で、最大野党・労働党の政権交代が広く予想されている。その選挙における大きな争点となっているのが、「機能不全に陥っている」とも指摘される公的医療制度、そしてインフレに伴う生活苦への経済対策だ。与野党双方が争点の改善を訴える今回の選挙を通じて、イギリス社会が直面する深刻な課題を伝えている。

   特に深刻なのは、NHS(国民健康サービス)が崩壊寸前だということである。
   子供のころに「ゆりかごから墓場まで」というキャッチフレーズで、福祉国家の見本としてイギリスが称揚されていて羨ましく思ったのを思い出す。
   その一環ともいうべき、「診療・治療・原則無料」というNHSが、財政難で危機に瀕しているという。
   現在、治療を待つ人は750万人で、待つ時間は、平均3か月半だというから、機能不全である。
   財政難による保守党の緊縮財政で、予算・人員の不足、それに二けたのインフレが続いて医師たちの生活がひっ迫してストライキが頻発、待遇の良い国外に去る医療関係者も多くて、公共医療制度は崩壊寸前である。
   若い医師が、「夜勤で300人の患者を一人で担当したが、時給は14ポンド(2800円)だ」と語っており、政府は何もしないので医療の質がどんどん落ちているというのである。


   選挙前の党首討論で、両党首とも改善を公約しているが、財政の裏打ちがないので、から手形だということのようである。
   なぜ、イギリスの経済がかくまで悪化したのか、
後先を考えずに突っ走ったBrexit と保守党の無為無策なのであろうが、考えられないような没落である。


   さて、私も5年間ロンドンに住んでいたので、イギリスの医療サービスのお世話になった。
   しかし、高度な保険からいろいろな私的な健康保険があって、
   我々海外駐在員は、このようなNHSの公的保険には関わりなく、民間の医療保険に加入していたので、至れり尽くせりの医療サービスを受けることができて、問題はなかった。

   このイギリスの例と同じことをブラジルで経験している。
   一般のブラジル人は無料の公的保険に頼っていたので、何か月も待たされていたが、金持ちは私的保険で十分な医療サービスを享受していた。
   アメリカの医療制度は、最悪だが、
   外国では、完備した高価な民間の医療保険に加入するのが必須であって、病気もすべて金次第という世界である。
   アメリカ留学の時は、会社の制度もいい加減で医療費負担ということだったが、入学時に、ペンシルベニア大学医学病院で面倒を見るという通知を受けていたので、まあいいかということで、とにかく、保険を気にせず2年間過ごした。
   若くて元気だったので、家族ともども無事に過ごせたのであろう。

   ところで、イギリスもフランスも、敗北覚悟で選挙に出た。
   自由な民主主義の守り手として天下の御旗を振り続けてきたエスタブリッシュメントに失望した国民は、ドラスティックな変化を求めて動き始めた。
   アメリカの動きは危機的様相を呈していて、民主主義を叩き潰そうという勢いである。
   ガラガラポン、行きつくところまで行って、歴史の軸心を変革しなければならない、ということであろうか。
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