わが庭には、椿の木がたくさん植わっている。
と言っても、5年前に、この鎌倉の家に移ってから、植え始めたのが大半で、一番大きな木でも2メートル程なので、まだ、花付きが安定していない。
しかし、新しく庭植えした椿は、殆ど園芸種の変わった椿で、庭に、一寸、違った雰囲気を醸し出していて、面白いのである。
私が、幼少年時代を過ごしたのは、宝塚の田舎で、森や林にかこまれた田園地帯であったので、農家の庭先にも椿の古木が植わっていたり、結構、椿の大木が植わっていたが、殆どすべて、赤い花弁で筒形の先の蕊が黄色のヤブツバキであった。
花弁の付け根を舐めると、ほんのり甘かったのを覚えている。
ヨーロッパに移ってから、あっちこっちで、椿の花を見て、日本原産の椿が、欧米でも、結構人気が高いのに一寸驚いたのだが、何のことはない、オペラで「椿姫」の舞台を観ているのだから、驚くに値いしないのである。
それに、私が住んでいたキューガーデンの庭にも、薩摩紅に似た赤い椿の古木が植わっていて、毎年、沢山の花を咲かせて豪華であった。
近くの世界最高峰の植物園キューガーデン(The Royal Botanic Gardens, Kew)にも、椿は勿論、桜やモミジなど、プラントハンターが持ち込んだ日本の花木が植えられていて、四季に咲き誇っていた。
日本に帰ってきて、その翌春、庭の隅に植えてあった乙女椿が咲き始めて、匂うような美しさに感激して、私の椿趣味が嵩じ始めたのだが、丁度、菅原道真の飛梅を見た心境であろうか、10年近く忘却して打っ棄っていた椿が無性に愛おしくなったのである。
その後気づいたのだが、関東には、ヤブツバキよりも、乙女椿の方がポピュラーなようなのである。
最初に買ったのは、天賜、薩摩紅、
近くの田舎の園芸店で椿の好きな店主が並べていた椿鉢で、奇麗に咲いていた花を見て、2鉢選んだのである。
その後、崑崙黒、花富貴、四海波、岩根絞、小磯、曙、紅妙蓮寺、白羽衣、孔雀椿、式部、黒椿・・・
オランダに居た時に、黒いチューリップに興味を持ったので、必然的に、ナイトライダーやブラックオパール、ブラックマジックに行くのは当然で、ヨーロッパに居て、バラを見過ぎた影響もあって、派手な洋椿に興味が移り始めた。
と言っても、洋椿の大半は、日本の椿の子孫の交配椿で、この口絵のタマグリッターズも、玉之浦の子孫で、やはり、欧米人には、赤地に白覆輪のツートーン・カラーに、バラに似た八重咲の豪華な花に興味が湧くのであろう。
今では、わが庭は、唐子咲の和椿もかなりあるが、派手な八重咲や唐子咲の洋椿も多くなっている。
昨年から、挿し木や実生で、苗木を育てて来ているので、春には、肥料など育種に気を配って、大きく育てたいと思っている。
至宝やエレガンス・シュプリームなど、希少性の高い椿を挿し木したのだが、枝の先端部分を挿し木した苗木には、花芽がてついているのもあり、苗木には負担がかかるのだが、元気な株は、花を咲かせてみようと思っている。
私が、椿に拘るのは、椿が好きだというほかに、世話が格段に易しいということで、手間暇がかかって大変なバラや草花などと比べて、庭植えなどになれば、肥料・薬剤散布、そして、剪定などくらいで殆ど手がかからないことである。
鉢植え管理で、失敗するのは、水遣りで、水が切れれば、必ず枯れてしまって回復が効かないことで、これまで、何度か、貴重な苗木を、この不注意で失っている。
しかし、いずれにしろ、私が、花に興味を持ってガーデニングを趣味に加えるようになったのは、まだ、30年くらいで、それ以前には、オランダで花に囲まれた生活をしていたり、イギリスのキューガーデンに住んでいて、あの素晴らしい王立植物園が散策路で憩いの場所であったこととか、ヨーロッパ各地を旅していて街並みや民家や町全体が花で飾られている風景を見たり、花の好きな友人がいて、アムステルダムやロンドンから出張などで帰国時に花の球根などを買って帰っていたことなど、色々な経験が重なった結果で、老年になって、その有難さを感じている。
それに、千葉に居た時も、この鎌倉に移ってからも、かなり、広くて日当たりのよい庭に恵まれていたことや、写真が好きで、絶えずカメラを構えて花の写真を楽しんでいたことも、幸いしていると思っている。
大みそかの今日、朝、庭に出て、真っ先に、開き始めたタマグリッターズが、目に入ったので、一つの思い出として、椿に魅せられてきた一年でもあったので、この文章で、一年を締めくくることとした。
今年はまだ、紅葉が美しい。地球温暖化の後遺症でなければ嬉しいのだが。
と言っても、5年前に、この鎌倉の家に移ってから、植え始めたのが大半で、一番大きな木でも2メートル程なので、まだ、花付きが安定していない。
しかし、新しく庭植えした椿は、殆ど園芸種の変わった椿で、庭に、一寸、違った雰囲気を醸し出していて、面白いのである。
私が、幼少年時代を過ごしたのは、宝塚の田舎で、森や林にかこまれた田園地帯であったので、農家の庭先にも椿の古木が植わっていたり、結構、椿の大木が植わっていたが、殆どすべて、赤い花弁で筒形の先の蕊が黄色のヤブツバキであった。
花弁の付け根を舐めると、ほんのり甘かったのを覚えている。
ヨーロッパに移ってから、あっちこっちで、椿の花を見て、日本原産の椿が、欧米でも、結構人気が高いのに一寸驚いたのだが、何のことはない、オペラで「椿姫」の舞台を観ているのだから、驚くに値いしないのである。
それに、私が住んでいたキューガーデンの庭にも、薩摩紅に似た赤い椿の古木が植わっていて、毎年、沢山の花を咲かせて豪華であった。
近くの世界最高峰の植物園キューガーデン(The Royal Botanic Gardens, Kew)にも、椿は勿論、桜やモミジなど、プラントハンターが持ち込んだ日本の花木が植えられていて、四季に咲き誇っていた。
日本に帰ってきて、その翌春、庭の隅に植えてあった乙女椿が咲き始めて、匂うような美しさに感激して、私の椿趣味が嵩じ始めたのだが、丁度、菅原道真の飛梅を見た心境であろうか、10年近く忘却して打っ棄っていた椿が無性に愛おしくなったのである。
その後気づいたのだが、関東には、ヤブツバキよりも、乙女椿の方がポピュラーなようなのである。
最初に買ったのは、天賜、薩摩紅、
近くの田舎の園芸店で椿の好きな店主が並べていた椿鉢で、奇麗に咲いていた花を見て、2鉢選んだのである。
その後、崑崙黒、花富貴、四海波、岩根絞、小磯、曙、紅妙蓮寺、白羽衣、孔雀椿、式部、黒椿・・・
オランダに居た時に、黒いチューリップに興味を持ったので、必然的に、ナイトライダーやブラックオパール、ブラックマジックに行くのは当然で、ヨーロッパに居て、バラを見過ぎた影響もあって、派手な洋椿に興味が移り始めた。
と言っても、洋椿の大半は、日本の椿の子孫の交配椿で、この口絵のタマグリッターズも、玉之浦の子孫で、やはり、欧米人には、赤地に白覆輪のツートーン・カラーに、バラに似た八重咲の豪華な花に興味が湧くのであろう。
今では、わが庭は、唐子咲の和椿もかなりあるが、派手な八重咲や唐子咲の洋椿も多くなっている。
昨年から、挿し木や実生で、苗木を育てて来ているので、春には、肥料など育種に気を配って、大きく育てたいと思っている。
至宝やエレガンス・シュプリームなど、希少性の高い椿を挿し木したのだが、枝の先端部分を挿し木した苗木には、花芽がてついているのもあり、苗木には負担がかかるのだが、元気な株は、花を咲かせてみようと思っている。
私が、椿に拘るのは、椿が好きだというほかに、世話が格段に易しいということで、手間暇がかかって大変なバラや草花などと比べて、庭植えなどになれば、肥料・薬剤散布、そして、剪定などくらいで殆ど手がかからないことである。
鉢植え管理で、失敗するのは、水遣りで、水が切れれば、必ず枯れてしまって回復が効かないことで、これまで、何度か、貴重な苗木を、この不注意で失っている。
しかし、いずれにしろ、私が、花に興味を持ってガーデニングを趣味に加えるようになったのは、まだ、30年くらいで、それ以前には、オランダで花に囲まれた生活をしていたり、イギリスのキューガーデンに住んでいて、あの素晴らしい王立植物園が散策路で憩いの場所であったこととか、ヨーロッパ各地を旅していて街並みや民家や町全体が花で飾られている風景を見たり、花の好きな友人がいて、アムステルダムやロンドンから出張などで帰国時に花の球根などを買って帰っていたことなど、色々な経験が重なった結果で、老年になって、その有難さを感じている。
それに、千葉に居た時も、この鎌倉に移ってからも、かなり、広くて日当たりのよい庭に恵まれていたことや、写真が好きで、絶えずカメラを構えて花の写真を楽しんでいたことも、幸いしていると思っている。
大みそかの今日、朝、庭に出て、真っ先に、開き始めたタマグリッターズが、目に入ったので、一つの思い出として、椿に魅せられてきた一年でもあったので、この文章で、一年を締めくくることとした。
今年はまだ、紅葉が美しい。地球温暖化の後遺症でなければ嬉しいのだが。