トッドは、ソ連の崩壊、アメリカ今金融危機、アラブの五春、イギリスにEU離脱などを予言して、ことごとく的中した。
しかし、卓越した文明史家でもなければ未来学者でもなく、預言者でもない。
鹿島茂に言わしめれば、専門としている家族人口学と人口動態学から割り出した数値に基づいて、蓋然的な予想を述べたに過ぎない、数字にすべてを語らせただけだと言うのである。
もう一つ、鹿島茂の言いたいのは、目先の派手さだけにしか興味のないジャーナリストたちが、トッドの著作を全く読まずに(読めずに)、経過を無視して結論だけ追う姿勢に我慢できなくて、トッドの言っていることはそうじゃないといいたくて、抗議のためにペンを執ったと言うことである。
鹿島茂は、この本で結構深遠な理論を展開しているが、基本となるのは、トッドの理論のエッセンスは、四つの家族類型とイデオロギーとの関係性の展開で、その起点となった出生率転換をもたらした最大の要因である識字率の分析である。
トッドは、まず、
親子関係が「権威主義的」か「非権威主義的」か、「子供が結婚後にも同居する」のか「結婚後は同居する」のかという変数、
子である兄弟関係が遺産相続において「平等」か「不平等」かという変数を媒介変数として、この二つの変数をX軸Y軸に配して、四つに分類している。
その四つの家族類型とは、
★絶対核家族「イングランド・アメリカ型」
自由主義、資本主義、二大政党、小さな政府、株主資本主義
★平等主義核家族「フランス・スペイン型」
共和主義、無政府主義、小党分立、大きな政府
★直系家族「ドイツ・日本型」
自民族中心主義、社会民主主義、ファシズム、政権交代の少ない二大政党制、土地本位主義、会社資本主義
★外婚制共同体家族「ロシア・中国型」
スターリン型共産主義、一党独裁型資本主義
この四類型が互いに影響し合いながら歴史は変容して行き、多様なイデオロギーや思想、文化を生み出して行き、これに、「識字率」と「出生率」が、重要なパラメーターとして作用する。
鹿島茂は、この四類型の家族理論を展開しながら、歴史上重要な転換点なりエポックメイキングな「世界史の謎」や「日本史の謎」を、明快に解いていて興味深い。
まず、英米型の絶対核家族の場合だが、直系家族の長男が一切を相続するので、はじかれて無産のあぶれた次男・三男が、十字軍に参加してエルサレムを奪還し、傭兵となって百年戦争を長引かせ、イギリスでは、ドライな親子関係が賃金労働を拡大して産業革命を起こした。と言う説明も何となく分かるような気がする。
こんな調子で、何故、フランスでフランス革命が起こり、ドイツでヒトラーが誕生し、ソ連で世界初の共産主義国家が誕生したのかなどを説いている。
経済的な発展においても、イギリスが失速しドイツがヨーロッパでNo.1になった理由や、第二次大戦後、ドイツと日本が復興した理由なども、この直系家族関係で説明していて面白い。
「日本の謎」においても、面白い理論を展開しているのだが、この方面では、私には、説明に無理があるような個所もあって、そんな考え方もできるかも知れないと言った感じであったが、トッドが説明すればどうなるのか、興味のあるところでもあった。
いずれにしろ、鹿島茂は、高名な仏文学者であるようだが、読書量が膨大だとかで、博学多識で、トッドを出しにして、滔々と持論を展開していて、教えられることが非常に多い、素晴らしい本である。
しかし、卓越した文明史家でもなければ未来学者でもなく、預言者でもない。
鹿島茂に言わしめれば、専門としている家族人口学と人口動態学から割り出した数値に基づいて、蓋然的な予想を述べたに過ぎない、数字にすべてを語らせただけだと言うのである。
もう一つ、鹿島茂の言いたいのは、目先の派手さだけにしか興味のないジャーナリストたちが、トッドの著作を全く読まずに(読めずに)、経過を無視して結論だけ追う姿勢に我慢できなくて、トッドの言っていることはそうじゃないといいたくて、抗議のためにペンを執ったと言うことである。
鹿島茂は、この本で結構深遠な理論を展開しているが、基本となるのは、トッドの理論のエッセンスは、四つの家族類型とイデオロギーとの関係性の展開で、その起点となった出生率転換をもたらした最大の要因である識字率の分析である。
トッドは、まず、
親子関係が「権威主義的」か「非権威主義的」か、「子供が結婚後にも同居する」のか「結婚後は同居する」のかという変数、
子である兄弟関係が遺産相続において「平等」か「不平等」かという変数を媒介変数として、この二つの変数をX軸Y軸に配して、四つに分類している。
その四つの家族類型とは、
★絶対核家族「イングランド・アメリカ型」
自由主義、資本主義、二大政党、小さな政府、株主資本主義
★平等主義核家族「フランス・スペイン型」
共和主義、無政府主義、小党分立、大きな政府
★直系家族「ドイツ・日本型」
自民族中心主義、社会民主主義、ファシズム、政権交代の少ない二大政党制、土地本位主義、会社資本主義
★外婚制共同体家族「ロシア・中国型」
スターリン型共産主義、一党独裁型資本主義
この四類型が互いに影響し合いながら歴史は変容して行き、多様なイデオロギーや思想、文化を生み出して行き、これに、「識字率」と「出生率」が、重要なパラメーターとして作用する。
鹿島茂は、この四類型の家族理論を展開しながら、歴史上重要な転換点なりエポックメイキングな「世界史の謎」や「日本史の謎」を、明快に解いていて興味深い。
まず、英米型の絶対核家族の場合だが、直系家族の長男が一切を相続するので、はじかれて無産のあぶれた次男・三男が、十字軍に参加してエルサレムを奪還し、傭兵となって百年戦争を長引かせ、イギリスでは、ドライな親子関係が賃金労働を拡大して産業革命を起こした。と言う説明も何となく分かるような気がする。
こんな調子で、何故、フランスでフランス革命が起こり、ドイツでヒトラーが誕生し、ソ連で世界初の共産主義国家が誕生したのかなどを説いている。
経済的な発展においても、イギリスが失速しドイツがヨーロッパでNo.1になった理由や、第二次大戦後、ドイツと日本が復興した理由なども、この直系家族関係で説明していて面白い。
「日本の謎」においても、面白い理論を展開しているのだが、この方面では、私には、説明に無理があるような個所もあって、そんな考え方もできるかも知れないと言った感じであったが、トッドが説明すればどうなるのか、興味のあるところでもあった。
いずれにしろ、鹿島茂は、高名な仏文学者であるようだが、読書量が膨大だとかで、博学多識で、トッドを出しにして、滔々と持論を展開していて、教えられることが非常に多い、素晴らしい本である。