日経ホールで、「変貌する資本市場ー適正な市場ルールと執行の行方を探るー」と言う時宜を得た興味深いシンポジウムが開かれ聴講した。
金融庁の三國谷勝範長官や木下信行証券取引等監視委員会事務局長による金融行政や市場監視行政の動向や課題などについての講演や、楽天三木谷浩史社長による企業統治やリーダーシップに関する講演など、それなりに勉強になったが、後半の各界からの論客によるパネルディスカッション「活力と規律ー市場ルールのあり方を考える」の方が面白かった。
冒頭、大久保勉参議院議員から、民主党が進めようとしている「公開会社法」についての説明がありシンポに入ったのだが、この公開会社法については、これまで、早稲大学のCOEプロジェクトなどで、上村達男教授から話を聞いており、著作などでも触れて勉強しているので、やっと、その時代が来たのかと言う思いで感慨深く聞いていた。
世紀末から幾度かの商法改正を経て生まれ出でた現行の会社法には多くの問題があり、今回のこの構想は、資本主義社会の根幹を成す公開会社に相応しい法制の確立を謳っており、証券市場に適合した会社法としての公開会社法を企図するものなので、当然、金融商品取引法と会社法の統合を図ることとなる。
従って、証券市場が要求する情報開示の徹底、会計・監査を確実に実行し得るコーポレートガバナンスの強化がポイントとなり、更に、企業集団を基本的な構成要素として認識して企業統治や責任体制を構築すると言う姿勢が貫かれる。
現行の会社法や金融商品取引法の制定も、アメリカ型市場万能の資本主義が最盛の時期に、あたかも、アメリカ型の法制度や統治体系が、最先端のグローバル・スタンダードであるかのように受け止めてフォローした帰来があるが、その後の資本主義の大転換によって、今回の国際財務報告基準(IFRS 通称国際会計基準)などは、イギリス基準に依拠するなど、大きく企業を取り巻く環境も変化してきているので、新しい公開会社法も、大分様相を変えるのであろうか。
石黒徹弁護士が指摘していたが、今や、会社にとって大切なのは、期末の株主によって成り立っている極地戦である株主総会と言うよりも、総力戦であり全面戦争として闘わざるを得ない集合概念である投資家の形成する証券市場であることは間違いない。
会社は誰のものかと言うコンセプトも、市場原理主義華やかなりし頃は、会社は株主のもので、株主価値の最大化こそ経営者の責務であると言う考え方が主流であったが、コーポレート・ガバナンス強化となれば、当然、社外取締役の要件のみならず、例えば、独蘭型の労働者代表の経営参加なども視野に入るであろうし、ステークホールダー重視への傾斜は必然であろう。
もっと影響の大きいのは、IFRSの導入で、世界中が従おうとしており、世界の孤児に成ることを避けるためにも、日本も、遅ればせながら準備段階に入った。
しかし、IFRSの精神は、これまでの日本人が抱いていた会計に対する考え方とは根本的に違っており、例えば、損益計算書重視で売上高と利益計算ばかりに力を入れていたのが、一挙に、これらの利益概念が吹っ飛んでしまって、企業の将来キャッシュの生成能力を問う財務諸表重視に転換してしまい、更に資産の定義も違ってくると言うのであるから、経営の目指すべき視点が根本的に変わってくる。
もっと、日本人に馴染めないのは、プリンシプル・ベースと言う大人のコンセプトで、文書化された基準が極めて限られているので、経営者が自分自身で基準・規範を決定して自己を律さなければならない。
日本に対する陰謀だと息巻く御仁がいるが、成熟した大人の経済社会と言うものは、そう言うものなのである。
監査報告書にしろ、内部統制システムにしろ、雛形がないと一歩も前に進めない日本の企業が、ノブレスオブリージェの精神に富み、倫理観念の高い成熟した社会に育まれたヨーロッパの法体系に同化出来るのであろうか。
これこそ、正に、企業経営とは何かと言うコンセプトそのものに対する革命であり、経営者の経営観念を根本的にリセットしなければ、グローバル競争に伍して行けなくなる。
プロの経営者による経営の時代の到来である。最低限度バランスシート(損益計算書ではない)が読めて、ドラッカーの分かる、あるいは、分かろうと努めている経営者であろうか。
脱線してしまったが、シンポジウムは、その後、
ライブドアや村上ファンドなどの企業不祥事や刑事制裁や行政処分、自己規制・自己規律、民事訴訟、国際化対応など、興味深いテーマを題材に、非常に面白い議論が展開された。
私自身の専門分野ではないので、非常に興味深く聞かせて貰った。
金融庁の三國谷勝範長官や木下信行証券取引等監視委員会事務局長による金融行政や市場監視行政の動向や課題などについての講演や、楽天三木谷浩史社長による企業統治やリーダーシップに関する講演など、それなりに勉強になったが、後半の各界からの論客によるパネルディスカッション「活力と規律ー市場ルールのあり方を考える」の方が面白かった。
冒頭、大久保勉参議院議員から、民主党が進めようとしている「公開会社法」についての説明がありシンポに入ったのだが、この公開会社法については、これまで、早稲大学のCOEプロジェクトなどで、上村達男教授から話を聞いており、著作などでも触れて勉強しているので、やっと、その時代が来たのかと言う思いで感慨深く聞いていた。
世紀末から幾度かの商法改正を経て生まれ出でた現行の会社法には多くの問題があり、今回のこの構想は、資本主義社会の根幹を成す公開会社に相応しい法制の確立を謳っており、証券市場に適合した会社法としての公開会社法を企図するものなので、当然、金融商品取引法と会社法の統合を図ることとなる。
従って、証券市場が要求する情報開示の徹底、会計・監査を確実に実行し得るコーポレートガバナンスの強化がポイントとなり、更に、企業集団を基本的な構成要素として認識して企業統治や責任体制を構築すると言う姿勢が貫かれる。
現行の会社法や金融商品取引法の制定も、アメリカ型市場万能の資本主義が最盛の時期に、あたかも、アメリカ型の法制度や統治体系が、最先端のグローバル・スタンダードであるかのように受け止めてフォローした帰来があるが、その後の資本主義の大転換によって、今回の国際財務報告基準(IFRS 通称国際会計基準)などは、イギリス基準に依拠するなど、大きく企業を取り巻く環境も変化してきているので、新しい公開会社法も、大分様相を変えるのであろうか。
石黒徹弁護士が指摘していたが、今や、会社にとって大切なのは、期末の株主によって成り立っている極地戦である株主総会と言うよりも、総力戦であり全面戦争として闘わざるを得ない集合概念である投資家の形成する証券市場であることは間違いない。
会社は誰のものかと言うコンセプトも、市場原理主義華やかなりし頃は、会社は株主のもので、株主価値の最大化こそ経営者の責務であると言う考え方が主流であったが、コーポレート・ガバナンス強化となれば、当然、社外取締役の要件のみならず、例えば、独蘭型の労働者代表の経営参加なども視野に入るであろうし、ステークホールダー重視への傾斜は必然であろう。
もっと影響の大きいのは、IFRSの導入で、世界中が従おうとしており、世界の孤児に成ることを避けるためにも、日本も、遅ればせながら準備段階に入った。
しかし、IFRSの精神は、これまでの日本人が抱いていた会計に対する考え方とは根本的に違っており、例えば、損益計算書重視で売上高と利益計算ばかりに力を入れていたのが、一挙に、これらの利益概念が吹っ飛んでしまって、企業の将来キャッシュの生成能力を問う財務諸表重視に転換してしまい、更に資産の定義も違ってくると言うのであるから、経営の目指すべき視点が根本的に変わってくる。
もっと、日本人に馴染めないのは、プリンシプル・ベースと言う大人のコンセプトで、文書化された基準が極めて限られているので、経営者が自分自身で基準・規範を決定して自己を律さなければならない。
日本に対する陰謀だと息巻く御仁がいるが、成熟した大人の経済社会と言うものは、そう言うものなのである。
監査報告書にしろ、内部統制システムにしろ、雛形がないと一歩も前に進めない日本の企業が、ノブレスオブリージェの精神に富み、倫理観念の高い成熟した社会に育まれたヨーロッパの法体系に同化出来るのであろうか。
これこそ、正に、企業経営とは何かと言うコンセプトそのものに対する革命であり、経営者の経営観念を根本的にリセットしなければ、グローバル競争に伍して行けなくなる。
プロの経営者による経営の時代の到来である。最低限度バランスシート(損益計算書ではない)が読めて、ドラッカーの分かる、あるいは、分かろうと努めている経営者であろうか。
脱線してしまったが、シンポジウムは、その後、
ライブドアや村上ファンドなどの企業不祥事や刑事制裁や行政処分、自己規制・自己規律、民事訴訟、国際化対応など、興味深いテーマを題材に、非常に面白い議論が展開された。
私自身の専門分野ではないので、非常に興味深く聞かせて貰った。