熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本の中小企業継承:婿養子

2012年12月03日 | 中小企業と経営
   この口絵のイラストは、エコノミスト誌の、Adult adoption in Japan Keeping it in the family Family firms adopt an unusual approach to remain competitive の記事から借用したものである。
   養子縁組と言うのは、欧米では、赤ちゃんや子供の場合が大半なので、大人の男性を養子にして、中小企業を継承させると言う日本の婿養子制度が、不思議だと言うことであろう。

   関西の大店では、昔から、女の子が生まれると、むしろ喜んだと言う風習があったくらいだから、何も少子化になったからと言うことでもなく、日本では、ごく普通の伝統なり習わしだと言っても良さそうである。
   それに、最近では、女性社長も多くなって来たのだが、やはり、後継者は男性でなければと言う日本の男社会意識が残っていることも一因かも知れない。

   昔の商家の大店などでは、多くの奉公人の中から、これだと思う人物を選んで番頭などに引き上げて、娘と結婚させて、家業を継がせると言う風習があったのだが、優秀な後継者かどうか分からない息子に後を託すよりも、血筋は残るのであるから、確実な家業の継承方法であったと言うことであろう。
   この同じ方法が、現在の中小企業で、実現可能かどうかは分からないが、この記事では、中を取り持つ結婚斡旋業について書いているが、いずれにしろ、日本の中小企業では、婿養子をとることによって、会社を継承する場合が多いと言うことで、欧米では、珍しいと言うことである。

   その前に、企業経営における同族経営ダイナスティの問題だが、これには、良いか悪いか賛否両論があって定説はない。
   しかし、企業家を育成し新しいベンチャービジネスを開発するには、ファミリー企業の利点は十分にあり、経済成長著しい開発途上国にあっては、ファミリー企業の起業と活力に期待する側面が強いであろうし、世界企業の過半がファミリー企業であり、大企業においても「フォーチュン500」の3分の1は、ファミリーの経営か創業者の家族が経営に参加しているとデビッド・ランデスなども言っている。
   ドイツなどでも、優秀な同族企業が多数存在するし、華僑やユダヤ、あるいは、ラテン系の国など同族やアミーゴ意識の強いクローニー・キャピタリズムの国では、同族経営ダイナスティ経営が、極一般的である。

   いわば、日本の婿養子は、その同族企業の継承者を、どのように選ぶかの選択肢の問題であって、創業者なり社長なりは、自分の目に叶った婿を取って、血筋を残しながら、事業を継承できるのであるから、成功するかしないかは、後継者の問題であって、願ったり叶ったりの次善(?)の方法だと言うことであろう。
   岡野工業株式会社の岡野雅行社長が、眼を細めて娘婿のことを語っていたが、この婿養子制度は、日本の良き伝統だと思う。
   日本のマッチメーカー企業が、意欲に燃えた若い男性と後継者候補の欲しい中小企業経営者の娘とを娶せるべく、活躍していると言うことだが、見つからなければ、企業の将来も危ういと言う表現が興味深い。
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”不況に克つ! 日本の中小企業の底力”~ブルーオーシャン経営の精華

2010年11月30日 | 中小企業と経営
   日刊工業新聞が、創刊95周年記念として、日本産業人クラブ連合会と共催で、標記シンポジウムを開催したので参加した。
   元気印の今を時めく中小企業のトップたちが立って、その企業経営の底力の秘密を開陳すると言う非常に興味深い会合となり、その後、懇親会に入り、中小企業の人々との交わりがあった。
   これらの優良中小企業の成功話を聞いていて、悉く共通しているのは、ブルーオーシャン市場の開拓に成功して、好業績を上げ続けていると言うことであった。
   このブログでもずっと書き続けて来た私の思いでもあるので、ここで、これらの企業のケースを借りて再説してみたいと思う。

   ブルー・オーシャンとは、W・チャン・キムとレネ・モボルニュが、「ブルー・オーシャン戦略」で展開した理論で、共通して優良企業が好業績を持続している要因は、ブルー・オーシャン(新しい市場)の開拓とその成功による発展成長にあることを発見したことから生まれた理論である。
   好業績やその持続を実現させているのは、産業や企業に内在する要因などではなくて、新しい市場空間を切り開き、ブルー・オーシャンの開拓に成功し、需要を創造し大きく押し上げたその企業の戦略にあったのである。
   ブルー・オーシャン戦略とは、コスト競争や従来型の差別化戦略で、ライバル企業との競争に打ち勝つという手法ではなく、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、買い手や自社にとっての価値を大幅に高めるとともに、競争を無意味にしてしまうバリュー・イノベーションにあると言うことで、このブルー・オーシャン市場では、競争を前提とした戦略論の常識であるコスト競争で勝つか差別化で勝つかと言う「価値とコストはトレードオフ」と言う関係を覆し、差別化と低コストを同時に実現することによる成長発展である。

   したがって、このシンポジウムに登壇した中小企業は、悉く、その分野でのオンリー・ワン企業で、自分の道を自分自身で切り開いてわが道を行くことによって活路を見出しているのであるから、モデルもなければ、競争相手さえないと言うパイオニアである。
   しかし、市場に恵まれて技術などの優位だけに胡坐をかいている良くある創業ベンチャーのような脆弱な企業ではなく、経営戦略や企業体質・システムなどがしっかりしていて、経営そのものに問題のない優秀な企業家によって経営されていると言うことである。
   旺盛なチャレンジ精神を持続しながら、絶えず時代の潮流に敏感に対応した経営の舵を取り、街の中小企業から、宇宙産業や原子力産業などの高度なハイテクの世界までにも製品やサービスを提供するのであるから、日本の中小企業の底力の凄さには目を見張るものがある。

   基調講演に立ったのは、合成樹脂製品の金型製造から事業を展開した大成プラス(株)の成冨正徳社長で、合成樹脂をメインにしたデザイン・設計・金型製造販売・輸出入およびノウハウ・技術の提供・ライセンス供与を行いながら、接合をコンセプトにしたオリジナル技術をベースに設備なき製造業を目指しており、日本のトップ自動車メーカーなどへハイテク部品を提供するのは勿論、独自に開発した技術は特許で300件を超え、海外にも進出して、既に6件のライセンスパートナーを持つと言う。
   他所で出来ないような相談ばかり来るのだが、顧客と対面するのではなく、横に座って、客と同じ目線に立って仲間意識で問題点を検討し、失敗を繰り返しながら解決策を炙り出しソリューションを導き出すのだと言う。
   単なる下請けではなく、ものの作り方を一緒に考えて解決するもの作りのパートナーだと言う意気込みである。

   この何か役に立つことがないかと待ち構えていて、誰も何処も解決できないような要求が来れば、出来るか出来ないか考える前に仕事を引き受けて挑戦すると言うもの作り精神の横溢した技術者・職人魂は、どの成功中小企業にもある共通した特徴である。
   面白いのは、ラシャ問屋からスタートしたヒーティング技術ノウハウでは断トツの坂口電熱(株)で、NOと言わない技術開発に徹した対面R&D開発によるオーダーメイド戦略を社是としており、既に、世に送り出した製品は300万点を超えると言うのだから恐れ入る。
   ヒーターと言うヒーターは言うに及ばず、温度センサーやコントローラー、絶縁材料まで「加熱」に関するアイテムは常に9000アイテムを取り揃えていると言うことだが、
   この会社は、年商40億程度の中小企業ながら、NPOを設立して地域社会への貢献をしているのみならず、海外からの私費留学生への奨学金を支援する財団を設立して延べ200人に及ぶと言う「社業を通してご恩返しを」と言う企業理念を推し進めていると言う見上げたエクセレント・カンパニーである。
   この会社の蜂谷真弓社長は、非常にチャーミングな若いレディで、滔々と会社の未来像を熱っぽく語っており、日本の新しい会社像が見えてくるようで頼もしい。

   もう一つの分かり易いケースのブルー・オーシャンは、臼井努社長が語った東西テクノス(株)のビジネス・モデルで、メーカーがサポートを打ち切ってしまってサービス切れとなった製品の修理・保守・メインテナンス一切を引き受けると言う戦略で、計測機器の修理から始まって、医療、情報、通信分野等の各種機器、システムを何処のメーカー製品でもワンストップでサービス対応すると言うマルチベンダー・サービスで、仕事は、原子力発電所にまで及んでいると言う。

   産学協同の進展など、中小企業の先端科学や技術へのアプローチなども垣間見えて来たが、やはり、日本のベンチャーなり中小企業は、教育や科学、経済社会的なバックグラウンド等が違うので、シリコンバレーで生まれ出るような、全くクリエイティブで革新的なブルー・オーシャンではなく、目的が明確であるとか、ソリューションがはっきりしている場合などのブレイクスルーの追及や、既存技術やノウハウの深掘りと言った持続的イノベーションに向かう方が向いているのであろう。
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短時間ビジネスへのイノベーション~特にウーマン市場

2010年02月21日 | 中小企業と経営
   17日のNHKゆうどきネットワークで、最近、少しずつ普及し始めた短時間ビジネスについて放映していた。
   短時間・低料金で気軽に利用できるユニークな工夫を凝らして、新規の顧客を引き付けようとする、謂わば、ニッチ市場を狙ったビジネス・モデルのイノベーションである。

   真っ先に紹介されていたのは、10分1000円のカットだけの散髪屋チェーンのQBハウスである。
   あの「ブルーオーシャン戦略」でも取り上げらたれっきとしたイノベーション・ビジネスで、このブログでも何度か取り上げているのだが、考え方によっては、必ずしも、革新的な発想でもないので、いくらでも、中小企業にとっては、発想の転換でニッチ市場を目指せば、ニュー・ビジネス・チャンスを掴み取ることは可能だと言うことである。

   何故、QBハウスが、それ程斬新な発想ではないのかと言うことだが、これは、私が、もう30年以上も前に、アメリカでの留学中に経験したことで、アメリカの散髪屋は、カットだけで終わればいくら、次に、洗髪すればいくら、髭を剃ればいくら、と言った具合に、段階的に料金が決まっていて、先の工程に進めば料金が加算されると言うシステムであった。
   私などは、むくつけきイタリア男に剃刀を握られるのが嫌だったので、何時も、『カット・オンリー』で通したのだが、このシステムを格好良くシステム化してビジネスにしたのがQBハウスなのである。

   もう一つ、短時間ビジネスの変形と言うべきか、コーヒー・チェーンの「ドトールコーヒー」だが、確か、創業者は、技術移民でブラジルに渡ったと言うことのようで、ブラジルの街角の至る所にある止まり木スタンドのある簡易オープン・バーである「バール」を模して、安い簡易コーヒーショップを発想したのではないかと思う。
   私も、在伯中には、良く、このバールで、カフェジンニョ(小さなデミタス・カップに入ったエスプレッソ・コーヒー)を飲んでいたのだが、ブラジルでは、どこへ行っても出される日本のお茶と同じなのである。
   余談だが、ドトールと言うのは、ポルトガル語のドクターで、私なども、アメリカ製のMBAなのだが、殆どの会社の社長は、ドトールと呼称するので当然だと言わんばかりに、秘書が、ブラジル人相手の電話には、ドトール・ナカムラと言って受け答えしていたのを思い出す。
  
   いずれにしろ、QBハウスにしろ、ドトールコーヒーにしろ、オリジナルの発想の元は単純だがどこかにあって、それを、ビジネス・イノベーションとして、それまでにはなかったブルー・オーシャンのニュー・ビジネスとして事業化した企業家精神の発露が、重要な意味と価値を持つのである。

   さて、本論の短時間ビジネスだが、NHKは、10分100円のカーレンタル、30分単位のフィットネスクラブ、歯の洗浄だけのビジネスなどを取り上げていた。
   経済的に生活に余裕がなくなり、多忙を極めている現在人には、この短時間・低価格サービスの提供は、正に、生活応援とも言うべき有難いビジネスで、顧客のニーズ・ウオントを満足させるのがビジネスだと言う本来の王道を行っている。
   尤も、サービスだけではなく、例えば、デパチカの惣菜の上を行く、電子レンジでチンするだけで、封を切って皿に移せばすぐに食べられる安価で手ごろな食品の開発など、モノの生産における短時間ビジネスの発想もいくらでも探し出すことが出来る。

   この短時間ビジネスで最も喜んでいるのは、恐らく女性客であろう。
   今、マイケル・J・シルバースタイン他著「ウーマン・エコノミー」と言う「世界の消費は女性が支配する」とした非常に興味深い本が出ていて、徹底的な調査の結果、国の如何を問わず、500兆円もの膨大な市場を握っている女性が、最も悩んでいることは、時間がないと言うことで、時間を取り戻せる製品やサービスを最も高く評価すると報告している。
   問題は、単なる時間不足ではなく、時間の三重苦、すなわち、
   やることが多すぎる、優先順位をつけるのが難しい、自分の時間が持てないと言うことから脱出出来ないことにある。
   自分の代わりとなってくれて、時間を有効活用でき、より多くの時間を取り戻し、やらなくてはいけないことにではなく、やりたいことに時間を使えるようにしてくれるモノやサービスで、時間と利便性を叶えてくれてそれなりの品質と価格なら、いくらでも財布の紐を緩めると言うのである。

   同書が、女心を掴む製品やサービスを開発・提供すれば、無限のビジネス・チャンスが広がるとして挙げているビジネスは、
   食、フィットネス、美容、ファッション、金融サービス、医療。
   しかし、男性向け市場だと考えられている、家具・インテリア、休暇、住宅では90%以上、自動車では60%、家電製品では51%も、買い物決定権は、女性が握っていると言うことである。
   ウーマン・エコノミーについては、後ほど、ブックレビューで取り上げるつもりだが、どこかに転がっている筈のニーズとウオントを掘り起こして、ニッチの短時間ビジネスを生み出すことによって、新しいQBハウスやドトールコーヒーを生み出せるのだと言うことを強調して置きたい。
   
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ネットショッピングの威力とカカクコム

2009年09月09日 | 中小企業と経営
   「インターネットの登場以来、買い物に出かける頻度は激減した。最後にデパートに行ったのはいつか、思い出せないくらいだ。」と言うのは、「グーグル的思考」の著者ジェフ・ジャービス。
   店は、退屈な場所に成り下がり、どこの店も置いている品物は一緒だし、品揃えもネットショップには遠く及ばない。在庫がないことはしょっちゅうだし、価格もインターネットで探せばもっと安く手に入る。商品に関する情報も、店員に聞くより、グーグルで探した方が詳しく分かる、と言って、店に行くのは、ガソリン代と時間の無駄だとのたまうのである。

   ネットショップでは、楽天やヤフーが御馴染みだが、私が一番お世話になっているのは、カカクコムのサイトである。
   昔は、カメラや家電など品目が限られていたが、今では、色々な商品に手を広げて、旅行や不動産、FXまで手を広げる総合サイトに変身しているが、何と言っても最も役に立つのは、色々な商品の実勢価格が分かることで、どこの店で買えば一番安いかをたちどころに教えてくれることである。
   商品名や製品型式などを入力してクリックすれば、一挙に、最低の値段の店から一覧展示され、マニアの口コミ情報から消費者の評価等々商品に関する多くの情報を掴むことが出来る。

   出展している店舗は、ネットショップが多いので、特売価格を除けば、大型ディスカウント店で有名なヨドバシカメラやビッグカメラなどよりも遥かに安い場合が多く、大型家電量販店もお手上げの状態で、今まで、どこよりも安く他より1円でも高ければ値引きすると豪語していた販売戦略も空しくなってしまっている。
   寅さんではないが、「白木屋黒木屋の紅白粉つけたお姉さんが・・・」と言うような綺麗な店舗を構えて立派な身なりをした店員を置いて売っているような店ではないので、限りなくオーバーヘッド・コストが安く、ビジネス・モデルが全く違うのである。

   私は、商品名や型番などはっきりした一流企業の製品などでは、どこで買っても同じなので、結構、このカカクコムのサイトで店を特定して買うことがある。
   大型家電などは、信用度確認のために店舗情報やサイトでの消費者の評価や販売頻度などをチェックして、知らない店舗で買うこともあるが、カメラなどは、秋葉原などの店へ直接出かけることもある。
   殆どの店は、販売用店舗なしの倉庫などからの直送店舗に徹しているようであるが、秋葉原には、販売店舗を併設した多くの小さなネットショップがある。あくまでネットショップ本位なので、間口2~3間奥行き5~6間程度の店舗に所狭しとパソコンや家電製品、カメラなどが置かれていて、僅かな店員が忙しく立ち働いており、地方発送なのかパッキングにかかりきりの店員もいる。
   こんな店であるから、在庫は現品限りと言うか極めて少なく、売り切れればしまいで回転率は非常に早い。
   インターネット一発で勝負して、クロネコヤマトなどの宅配を使えばよいのであるから、流通販売経費等コストを考えれば、ヤマダ電機であろうとビッグカメラであろうと太刀打ちできる相手ではない。

   ところで、カカクコムであるが、20年度3月期の決算数字だが、売上高97億円に対して、売上総利益80億円、営業利益39億円、当期純利益23億円と言う驚異的な業績を上げている。
   プログラム担当のソフト・エンジニアの人件費が結構かかるのだと言っているが、インターネットの世界のeトレードであるから、極端に言えば、一度、プログラムを設定してプラットフォームさえ構築すれば、殆ど変動コストはかからないはずであり、M&Aとか、事業拡大などの経営戦略を誤らなければ、利益基調は間違いない有望事業であり、グーグルを他山の石としてどこまで事業展開出来るか興味のあるところである。
   セキュリティ・フェアで、社長が、ウイルス感染や不正アクセスでの情報流出などについて社運をかけた危機管理対策について述べていたが、デジタル時代のICT産業の宿命でもあろうか。

   さて、これまで、商業そのものが、インターネットの普及によって、既に、企業が主体ではなくなり、消費者の方が多くの情報を握る主客逆転時代に入ってしまって、百貨店や書店など、生きて行くためには、これまでのやり方を止めて、ビジネス・モデルを根本的に変えなければならないと論じてきた。
   ものを安く買うためには、今や、店舗に出かけるよりもネットショッピングの方が遥かに有利となり、どんどん店舗離れが進んで行き、現実にも、毎年、百貨店の前年割れの業績発表が止まることがない。
   ネットショッピングに、ダブルベッディングするだけでは、アマゾンに負けたバーンズ&ノーブルのようにどっちつかずに終わってしまう。
   百貨店や書店等、折角立派な場を提供しているのであるから、店頭に出かければ、十分に楽しめるとか価値ある豊かな経験が出来るとか、日々の生活に付加価値をつけられような工夫をして、消費者に喜びを与えられるような経営戦略を編み出せないものなのであろうか。
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銀行本来の仕事とは・・・ジャンニーニのバンク・オブ・アメリカ

2008年12月30日 | 中小企業と経営
   今世界中を吹き荒れている金融危機で、アメリカの投資銀行は実質的に消滅し、AIGやシティバンクなど名だたる金融機関が殆ど国有化の状態に陥るなど、金融機関を取り巻く環境は様変わりとなった。
   こんな状況の時に、初期の銀行はどのような状態で産声を上げたのか、興味深い思いで、T・G・バックホルツの「伝説の経営者たち」の、バンク・オブ・アメリカ(BOA)の創立者アマデオ・ピーター・ジャンニーニ(通称AP)の項を読んだ。

   19世紀から20世紀にかけての銀行業は、モルガンやロスチャイルドなど財閥系が主体で、金持ちだけを相手にし、預金など基本的に金庫に眠ったままのような閉鎖された状態であったが、A・Pは、小規模事業主や勤め人、更に主婦さえも信頼してカネを貸せる相手であることを理解して、銀行の窓口係の格子戸を取り払って貸し出しを行って、近代銀行業を生み出す端緒を開いた。
   最初は、バンク・オブ・イタリアであったようだが、金持ち相手のモルガン方式ではなく、庶民にカネを貸すことを慈善ではなく立派なビジネスに仕立て上げ、銀行業の利益の仕組みと経済そのもを革命的に変えてしまった。
   1世紀も前に、正に、ピープルズ・バンクを志向して、アメリカ経済を過去から解き放ったのである。
   
   形を変えた形で、極貧層への銀行業で成功を収めて話題になっているグラミン銀行の先駆けとも言うべきビジネスモデルであるが、プラハラードが「ネクスト・マーケット」で説いている、50億人の貧困層を「顧客」に変えるボトム・オブ・ピラミッドの次世代ビジネス戦略へのパラダイム・シフトの発想でもある。
   時代の潮流が大きく動き出す時には、人々は、その流れに沿って変革を志向するのは当然であるが、
   少しづつ変わりつつある潮目を見極めて革新的なビジネス・モデルを生み出すことは非常に難しいのだが、ここにチャンスを見出したAPの発想は、やはり、ニューヨークではなく、辺境のサンフランシスコに居たからであろうか。
   日本の多くのビジネスが、グローバリゼーションの潮流に乗れずに、ビハインドを託っているのは、良かれ悪しかれ豊かで最先端を行く恵まれた日本と言うマーケットにどっぷり埋没しているからであろうと思う。

   APの興味深い発想は、「低い金利は、貧しい借り手を引き寄せ、高い信用リスクを呼び寄せる」と言う当時の銀行家の概念への挑戦で、誰でも、掘り出し物が好きであり、低い貸し出し金利を探す人は、知性と勤勉さを実証しており、より良い条件に反応するので「信用力」が高いと考えたのである。
   「より安い金利を得るために戦う人こそ、我々がカネを貸したい人だ」と宣伝して、広告を打つのだから、モルガンと言えども、白日に晒された高金利を下げざるを得なかったのが面白い。

   サンフランシスコ大地震の時、壊滅状態であった街の中を、暴徒を避ける為に、果物や野菜の箱を積み上げた荷車に、現金を隠して運び出し、翌日、波止場に二つの樽の上に厚板を渡してカウンターを作って青空銀行を立ち上げて、困っている人たちに少しづつ融資したと言うのだから、見上げたものである。
   更に興味深いのは、何でも担保に出来ると考えたことで、住宅など格好の担保だと考えていた。
   当時、銀行は本店だけだったのを、支店開設を試みたり、支店拡張のためには企業買収に主眼を置くなど、今では、極普通のビジネス手法をどんどん編み出して果敢に挑戦を試みたイノベーターとしての企業家精神には脱帽である。

   APの真の天才は、アメリカの庶民の可能性を見出したことだとバックホルツは言っているが、引退するまで、この気持ちは変わらなかったと言う。
   現在の銀行は、AP時代とは様変わりだが、モルガンなど当時のエスタブリッシュメントが落日で、バンク・オフ・アメリカなど新興群が健在なのが面白い。

   この項での教訓は、発想の転換。押して駄目なら引いてみよ、である。
   ブレーキは何の為にあるのか、と言うシュンペーターの問いかけに何人の中小企業の経営者が正しい答えを出せるかが問われている。
   ブレーキは、止まるためにあると考えるだけでは、ビジネスは一歩たりと前進しない。
   より早く走るためにこそ、ブレーキはあるのである。
    
   
   
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ディズニー:スタートはミッキーではなくウサギのオズワルド

2008年12月27日 | 中小企業と経営
   ディズニーの最も有名なキャラクターは、ネズミのミッキー・マウスだが、しかし、ウォルト・ディズニーが映画事業を起こして最初に人気を博した主役は、ミッキーではなく、ウサギのオズワルドだった。
   ウォルトが、ウサギのオズワルドの一連のアニメで有名になり、映画配給会社ユニバーサル・スタジオのチャルズ・ミンツに制作費の値上げ交渉した時に、拒絶されたのみならず、会社のアニメーター達を引き抜かれ、契約上の不備もあって、オズワルドの権利も取り上げられて、門前払いを食ったのである。
   この屈辱的な不幸と怒りがあったればこそ、その後のウォルト・ディズニーの成功があったのだと、バックホルツが「伝説の経営者たち」の中で述べている。

   ミンツがナイフをウォルトの咽喉もとに突きつけてオズワルドを盗んだことから、ウォルトは、2つの重要な教訓を学んだと言う。
   一つは、自社の独立を保つこと、もう一つは、自分が独自に生み出したものに対する権利を絶対に手放さないことである。
   この教訓は、以前に紹介した盛田昭夫が、ニューヨークで、咽喉から手が出るようなトランジスターラジオの大口注文を受けたのだが、相手先ブランドが条件であったので、涙を呑んで受注を蹴ってSONYブランドを死守したと言う逸話と同じ精神で、創業期や中小企業段階での非常に貴重な戦略であることを忘れてはならないと思う。

   しかし、このキャラクター盗難事件での最大の収穫は、ミッキー・マウスの誕生であった。
   オズワルドを取られたウォルトには、新しいキャラクターが必要であった。
   色々な動物を片っ端から思い描いたが、事務所を走り回っていたネズミを脚色して、頭、耳、ふっくらした身体を描き、色を加えて出来上がったのがミッキー・マウスだが、その姿は、ウサギのオズワルドそっくりであった。
   オズワルドの耳を丸くして、お腹にチョコレートファッジを10ポンド詰めれば、ミッキー・マウスの出来上がりだと言うのである。

   ところで、ウォルトの偉いところは、ミッキー・マウスを、オズワルドを超えたワンランク上のキャラクターに仕上げようと必死の努力をしたことである。
   ウォルトは、観客が面白いと思ってくれるように、そのニーズに応えたキャラクターを描くために、観客の反応や評価分析をすべく、ミッキーの冒険譚の試写用プリントをロサンゼルス郊外のグレンデル劇場で上映して貰って、後部座席に座って観察し克明にノートを取ったのである。
   現在では、マーケットリサーチとしては当たり前の手法だが、このミッキー・マウスを普遍的なシンボルとして育てようとしたウォルトの試みは、精神分析の大家カール・ユングが「元型と集合的無意識」を著す数年前のことだと言うから、コトラーもびっくり!であろう。

   もう一つ特筆すべきは、ウォルトの新技術に対する飽くなき挑戦、イノベーター精神である。
   間もなく封切しようとしていたサイレント・アニメ映画「蒸気船ウィリー」を、苦心惨憺して、音楽と台詞を加えたトーキー映画に仕立て上げて世に問うたのであるから、一声を風靡し、大変な人気を博して、ミッキー旋風が全米を席捲したのである。
   まさに、ミッキー誕生、ミッキー元年の快挙だが、尤も、この成功においても、配給業者からの独立を守ったものの、放映業者シネフォンのパット・パワーズに、同僚アブ・アイワークスを引く抜かれて事業を乗っ取られようとするなど不幸に見舞われたが、どうにか、ミッキーの権利は死守した。

   短編が次々に成功を収めているにも拘わらず、周りの反対を押し切って、長編アニメ映画の製作に、またまた挑戦したのである。
   大物映画制作者たちの尊敬を集めたいと言うウォルトの野心と、当時、映画館が長編2本立てに移行しつつあり、これに対処するための経営者としての抜け目のなさがそうさせたと言うのだが、何度もトレース・彩色部門のスタッフに修正を指示して、一こま一こま細心の注意を払って製作されたのが「白雪姫」である。
   現在なら、CGなどコンピューター技術を駆使して難なく出来る手法も、当時では、白雪姫の頬に口紅を塗って、それを辛抱強くぼかして描いたと言うから、その努力は並大抵のものではなかったのだが、この妥協を許さぬ作品製作へのウォルトの執念が、その後のディズニー映画の成功を支える鍵でもあった。

   更に、あの1929年大恐慌前に、「蒸気船ウィリー」の製作資金を集めるために、ミッキーの顔を鉛筆に使用させるライセンス契約を結んだと言うから、ディズニーのキャラクターの商品化の今日の隆盛があるのは当然のことだが、TVとのコラボレーションなど、ウォルトのビジネス・イノベーションへの試みは、止まる所を知らなかった。
   何と言っても、最大のヒットは、テーマパークであるディズニーランドへの挑戦と成功であろう。世界中のテーマパークや公園などエンターテインメント施設が、どんどん閉鎖の憂き目にあっているにも拘わらず、益々、総合エンターテインメント・センターとして輝きを増し続けている。
   
   イノベーションと言えば、新技術や新製品の開発ばかりに目が行くが、ウォルト・ディズニーが挑戦して勝ち取ったのは、時代の潮流をしっかりとキャッチして、新技術の活用を駆使して創意工夫を重ねながら生み出したビジネス・イノベーションである。
   この手法は、創業時や中小企業段階の企業が、最も試み易く、また、活路を切り開く為の最も有効なビジネス戦略だと考えられないであろうか。
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ウォルマートのサム・ウォルトンの創業

2008年11月08日 | 中小企業と経営
   中小企業の経営を考える時、大企業の創業者がどのようにして起業し、事業を軌道に乗せて行ったかを研究すると非常に参考になる。
   バックホルツの「伝説の経営者たち」に取り上げられているウォルマートの創業者サム・ウォルトンの伝記は格好の教材を提供しており、どのようにして、「エブリディ・ロー・プライス」の世界最大の巨大スーパーを築き上げたのか、その片鱗が理解できる。

   まず、特筆すべきは、アメリカの典型的な富豪が、所謂、泥棒男爵であったと言うビジネスモデルを覆したことで、顧客のポケットからカネをむしり取るのではなく、顧客のポケットにカネを詰め込む、顧客に節約させることによって金持ちになったことである。
   したがって、ウォルトン自身も、倹約と謙虚さと田舎(アーカンソー)の素朴な価値観を終生保ち続けたようで、安モーテルでは同僚と相部屋だし、P&GのCEOの会談さえも、ホテル代が100ドルだったので断ったと言う程である。
   このウォルトンに匹敵する徹底的なけちの億万長者は、このブログでも取り上げたが、イケヤの創業者イングヴァル・カンプラードくらいであろうが、出すものは舌を出すのも嫌だと言った船場の繊維商と甲乙付け難い徹底振りである。

   余談だが、この創業者の意思を継いだのかどうかは分からないが、徹底的に福利厚生費を切るつめるなど従業員の待遇は極めて低く、ウォルマートが出店すると、物価は安くなるが、その地域の労働環境が一挙に下がってしまうと言うことで、社会問題を起こしているなどと言ったことを、オバマのブレインの一人であるロバート・ライシュ・ハーバード大教授が、「暴走する資本主義」で克明に書いている。
   尤も、ライシュ教授も、弱肉強食の市場原理主義に毒された現在の超資本主義のルールが変わらない限り、ウォルマートが甘い顔をして人件費を緩めれば、ライバル企業に仕事をとられるだけで、結局、競争的優位性は単に、「まだ社会的責任を果たしていない」企業へ移るだけだと、変な擁護論(?)を披露しているのが面白い。

   最初の仕事は、バラエティ・チェーンのフランチャイズ店で、商品の80%を本部から仕入れると言う本部依存の雁字搦めの契約で利益が見込めなかったので、残りの20%の商品調達のために、おんぼろトレーラーを引いてニューヨークやテネシーまで出かけて、安いものなら手当たり次第に何でも買い込んで来て店頭に並べて売った。
   ウォルトンにとっては安さが総てであり、安さのためには万難を排して商品の調達に駆けずり回った。「安く仕入れて、高く積んで、安く売る」と言うビジネス・モデルの誕生であり、すなわち、正にサプライチェーン革命の到来である。

   もう一つのウォルトンの特質は、徹底的な調査で、競争相手から学ぶためには、ヒヤリングに止まらず、店舗に潜り込んで、陳列棚の引き戸を開いてシャツの枚数を調べたり、ゴミ箱を漁って値札をチェックしたり、或いは、客や商品運送の運転手に聞き込んだり、とにかく、必要かつ有益な情報を集めるためには徹底的なリサーチをして、戦略を考えたのである。
   ところが、こんなに苦心惨憺して、ど田舎のおんぼろフランチャイズ店を大繁盛の店にしたにも拘わらず、賃貸契約の不備で、地主の息子に店を取られてしまって、一敗地に塗れた。次には99年契約にしたと言う。

   次に行ったのは、レジを一箇所に集めてセルフサービス店舗に切り替えたこと。これは、既に、1号店と2号店が他にあって、マネをしたらしい。
   フラフープ・ブームの時に、商品を仕入れるカネがなかったので、本物と同じ直径のプラスチック・ホースを1トンも買ってきて、屋根裏部屋で繋ぎ合わせて偽フラフープを作って売ったり、広告も、新聞広告やチラシを切り貼りして代用で済ませるなど、コスト削減に努める一方、店をよくするためにどうすれば良いのか、それを学ぶためには、どこへでも飛んで行ったと言う。

   次の挑戦は、本格的な「ディスカウントストア」への道である。
   ウォルトンの重要な戦略は三つ。
   第一は、小さな町こそ旨みのある場所と言う戦略で、競合企業が大都市の郊外に大挙して出店していたが、「フライオーバー・カントリー」即ち、空から眺めるだけで飛び越している小さな田舎町こそ商機があると言う出店戦略である。
   昔、ジャスコは、狐と狸が出るところしか出店しないと言われていたが、これを真似ていたのかも知れない。
   第二は、ハサミ経済で、中間業者を排除して、メーカー、サプライヤー直結の商品調達戦略である。               
   第三は、サプライチェーン管理の徹底で、自社の専用トラックを持って自前の配送システムを構築した。競合他社は、店舗近くに配送センターを置いたが、逆に、郊外に巨大な配送センターを置いて、その周りに店舗を配置したのである。

   もう一つ、特筆すべきは、ウォルトンのリーダーシップによってウォルマートが、テクノ小売業への道を先導したことで、今では、衛星通信システムの活用やRFIDタグの導入など最先端のICT技術を駆使する最先端企業となっている。

   創業者サム・ウォルトンが亡くなったのは、1992年。  
   アーカンソーの片田舎からはじめて、物流と情報を徹底的に革新して世界最大の小売業を創り上げたが、一つ一つ、悩みに悩み、工夫に工夫を重ねて築き上げた敢闘精神の結晶が、ウォルトンの最大の業績であろうか。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
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企業の巨大化と中小企業

2008年11月02日 | 中小企業と経営
   パナソニックが三洋電機を買収して11兆円企業になって、日立を抜いてトップに躍り出ると言う。
   銀行も百貨店も、昔の懐かしい名前は殆ど消えてしまって、どこの業界も、メガ何とかになりカタカナやローマ字社名になってしまって、どんな会社だったか、何がなんだか分からなくなり、大きいことは良いことだと言う時代が変質し始めている。
   GMにとって良いことはアメリカにとって良いことだと当時の社長が豪語したのはほんの半世紀ほど前のこと、そのビッグスリーも余命いくばくもなく風前の灯火となってしまい、完全に、20世紀は遠き昔になりにけりである。
   ICTを席巻したデジタル革命とグローバリゼーションの破壊力は、それほど強烈だったのである。

   ところで、巨大企業は、益々巨大になる、巨大に成らなければ駆逐されてしまい巨大化を目指さざるを得ない、と言う厳粛なる運動法則は、ウイナー・テイクス・オール、すなわち、NO.1企業だけが利益を総ざらえして行くと言う弱肉強食のマーケット・メカニズムが働く限り抗しようの競争原理である。
   その競争も、ソニーやキヤノンの競争相手が、ヤマダ電機や価格コムであり、メガバンクの競争相手が、政府系ファンドなどと言ったように内田早大教授の言う異業種格闘の様相を呈して来ると益々熾烈さを極めて来る。

   私は、パナソニックが三洋電機を買収して巨大化することは悪いことだとは思わないが、家のことならトータルで「もの・サービス」を提供できると言う総花的なゼネラル・総合メーカー戦略には、疑問を感じている。
   三洋を買収して、将来大きな市場を期待できる太陽電池やリチウムイオン電池などを強化することは良いことだと思うが、経営資源が限られているのであるから、停滞気味のシロモノ家電を切るとか、ジャック・ウェルチがGEでやったように、集中と選択を行わない限り、業績の向上は有り得ないと思っている。

   インテルが頭打ちになっていることを考えても、デジタル革命とグローバリゼーションの進展により、益々、コモディティ化して行く物の生産、すなわち、製造業には、永遠に、陳腐化と価格競争の追い討ちがかかり、いくら高度で最先端の技術を開発しブラックボックスで囲い込んでも、たちどころにキャッチアップされて、創業者利潤など瞬時に吹っ飛んでしまう。
   国際製品、グローバル製品になればなるほど、ものである限り、どんな高級技術でも、熾烈なグローバル競争によりコモディティ化して行くのは必然である。
   以前に、シャープのブラックボックス化戦略や、液晶や太陽電池で技術の優位による集中戦略に疑問を呈したが、これなど瞬時の栄華であり、経営の新機軸を目指さない限り足をすくわれてしまう。
   コモディティの最たる半導体に入れ込んで巨大な設備投資をしている電機メーカーがあるが、これなど最も危うい戦略で、製造業の場合には、巨大な製造拠点、時には途轍もない21世紀型コンビナートを建設したりしているが、地球温暖化で、宇宙船地球号がもつかもたないかと言われている今日、10年先に、同じ製品がそのまま製造されていると言う保証は全くない筈である。

   書いている間に、話の方向がずれてしまったが、今回、言いたかったのは、中小企業の窮状をいかに救うかと言うことであった。
   結論から言うと、中小企業が、大企業の下請けと言う位置づけである限り、問題の解決は非常に難しいと言うことで、この下請けから脱却への道を政府が積極的に支援することである。

   根底にある問題が、製造業の場合、元請の大企業自身が、激烈な競争に晒されている為にあまりにも利益率が低く、下請けである中小企業には、殆どコスト削減要求を突きつけて締め上げる以外に道がないと言うことである。
   それに、不況になれば、情け容赦なく発注を切る。
   日本が経済復興期にあった頃や、ジャパン・アズ・NO1と言って成長期にあった頃にも、大企業と中小企業の経済の二重構造が問題となっていたが、あの頃は、多少の景気循環はあっても経済が成長していて、大企業も中小企業の面倒を見る余裕があり、少しづつ成長して豊かになっていたので問題が隠れていたが、
   今日のように、大企業がもろに経営危機に直面しているような経済環境の中では、極めて脆弱で経営資源の限られている中小企業には、大企業に抗する能力も力も限られており、不況の波を被れば一たまりもない。
   
   グローバリゼーションの時代においては、要素価格平準化原則が働いて、賃金も製品の価格も、リービッヒの樽の法則で、世界で一番価格の低い水準になってしまうので、後進国や新興国の同業者の賃金や製品価格と競争せざるを得なくなるのだが、自由貿易を旨としている以上避け得ない。
   結局、中小企業と言えども、競争相手と違った価値を生み出すなり、ニッチ市場を目指すなり、或いは、誰もやっていないようなブルーオーシャン製品やサービスを開発するなど、差別化戦略を遂行して、少しでも競争優位を獲得して付加価値を高める以外に生きる道はない。

   中小企業が、小さなイノベーション、適切な方向転換であるリノベーション、或いは、隙間・ニッチの製品やサービスを探し出したり出来るような仕組みを政府が積極的に構築してサポート出来ないであろうか。
   QBハウスが、1000円散髪屋を始めて成功しているが、これなどは、欧米で、元々、散髪は、頭をカットしていくら、髭を剃っていくら、頭を洗っていくらetc.段階的に価格を決めて客に選択させていたのを、カットだけ切り離して商売にしただけだが、立派にイノベーションだ、ブルーオーシャンの典型だと騒がれている。
   私など、40年近く前から、アメリカでQBハウス・システムで散髪しており、このようなイノベーションなり、リノベーション、ブルーオーシャンは、いくらでも探せるし、身の軽い中小企業だから、どんどん、対応できる筈である。
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