この本は、小冊子ながら、流石に、アメリカの国家情報会議の出版物で、将来の世界を観通すのに、参考になるのみならず、非常に面白い。
これからの世界の潮流を、まず、メガ・トレンドと捉えて、その特質を、四つの流れ、すなわち、個人の力の拡大、権力の拡散、人口構成の変化、食糧・水・エネルギー問題の連鎖、だとして、その動向を詳細に論じている。
例えば、これから世界のあらゆる地域において数億人規模の中間所得層が誕生し、その中間所得層が主流になって、グローバルなレベルで「市民」としての意識が高まり、世界経済や国際政治に好影響をもたらす可能性があり、更に、世界の人口は都市部に集中し続けるであろう。と言った調子である。
更に、最近、国際社会が見せ始めている「傾向」について、国際社会を大きなゲームに例えた場合、その流れを変えてしまうような大きな6つの要因、すなわち、危機を頻発する世界経済、変化に乗り遅れる「国家の統治力」、高まる「大国」衝突の可能性、広がる地域紛争、最新技術の影響力、変わる米国の役割、を、ゲーム・チェンジャーとして分析を加えながら、2030年を展望している。
前述の四つのメガ・トレンドと、6つのゲーム・チェンジャーが、絡み合って互いに影響し合いながら、「2030年の世界」を形成して行くと言うのである。
権力の拡散については、イアン・ブレマーの「Gゼロ」、すなわち、アメリカの地位の凋落によって、「覇権国家ゼロ」の時代が到来するとしている。
1750年以降続いて来た欧米中心主義を反転させ、アジアが再び国際社会と国際経済の主役となり、2020年代のどこかで、中国が米国を追い抜き世界一の経済大国となろうが、中国の労働人口のピークが2016年に来るなど、経済成長も5%程度に下落し、「世界一の経済大国」としての中国の地位は、以外にも短命になる可能性が高いと言う。
世界のあらゆる地域内で覇権国の交代が起きるとして、エジプト、エチオピア、ナイジェリア、ベトナム、ブラジル、コロンビア、メキシコなどの国の台頭に言及しているのだが、これは、ジム・オニールの「ネクスト11」論や、ルチル・シャルマの「ブレイクアウト・ネーションズ」論と殆ど変らず、人口が多くて資源に恵まれた国を列挙した感じで、政治や社会的なカントリー・リスクを無視した分析なので、私は、あまり、信用していない。
その意味では、中国についても同様で、異常な公害や政治腐敗などあまりにも酷いカントリー・リスクの高い国なので、経済大国としてアメリカを凌駕する前に、失速する可能性もあるのではないかと思っている。
詳細を論じるのは、避けるが、インドとブラジルの経済大国への躍進トレンドには、同意している。
日本については、ここでも、日本の国力がじりじりと低下して行くのは見逃せないだとか、「危機を頻発する世界経済」の項でも、特に、最も不な国は日本だとか言った調子で、このレポートでの日本に対するイメージは、非常に悪い。
「国家の統治力」については、民衆が団結して独裁政権に立ち向かった「アラブの春」などに言及して、民主化不足状態にある国、独裁から民主主義に移行中の国は不安定だとして、ペルシャ湾岸や、中東や中央委アジアに集中しているとしながらも、
中国とベトナムの民主化不足状態にも言及して、その動向に注意する必要があると言う。
国民の一人あたりの収入が1万5000ドルを上回ると、国内で民主化の動きが活発になるのだが、中国経済は、今後5年以内に、この水準を超える見込みなので、この民主化は、政治的、社会的な混乱を伴い、多くの専門家が、中国で民主化が進むと中期的には国粋的な内向きの傾向が強まると言う意見で一致している。と指摘している。
現在の中国は近隣諸国と多くの領土問題を抱えており、愛国主義的な傾向が強まれば、こうした近隣諸国との軋轢が更に悪化する可能性がある。と言うのだが、江沢民治下において、愛国教育を受けて育った若者たちが多いことを考えれば、対日関係は、もっと厳しいことであろう。
民主化の動きが、完全に経済成長を止めてしまうような大打撃を与えない限り、長期的には中国は安定した政治制度作りに成功する筈だと言っているのだが、さて、どうであろうか。
そのほか、一つ一つ取り上げていると終わらないくらい、興味深い未来展望が書かれていて興味が尽きないのだが、最後の章「オルターナティブ・ワールド」で、「2030年」4つの異なる世界として、「欧米没落型」「米中協調」「格差支配」「非政府主導」夫々のシナリオを描いているのが興味深い。
最初の二つのシナリオは、ほぼ、想像がつくのだが、
「格差支配」は、経済格差が世界中に広がり、「勝ち組」「負け組が明確になり、孤立主義的な傾向が強まり、EUは分裂すると言う。
「非政府主導」は、グローバルな人材がネットワークを駆使して世界を牽引する時代になって、国際社会はかなり安定したものになると言う。
いずれにしろ、予測などが全く当たらないのが人類の歴史の特質であって、多くの未来予測が、外れに外れて来た現状を思えば、予測そのものが無理なのかも知れない。
しかし、出来るだけ、願望や希いを交えながら未来を展望して、政治経済社会を動かして行けるのが、人間の人間たる所以であるのだから、夢を馳せることは、人間の特権かも知れないのである。
これからの世界の潮流を、まず、メガ・トレンドと捉えて、その特質を、四つの流れ、すなわち、個人の力の拡大、権力の拡散、人口構成の変化、食糧・水・エネルギー問題の連鎖、だとして、その動向を詳細に論じている。
例えば、これから世界のあらゆる地域において数億人規模の中間所得層が誕生し、その中間所得層が主流になって、グローバルなレベルで「市民」としての意識が高まり、世界経済や国際政治に好影響をもたらす可能性があり、更に、世界の人口は都市部に集中し続けるであろう。と言った調子である。
更に、最近、国際社会が見せ始めている「傾向」について、国際社会を大きなゲームに例えた場合、その流れを変えてしまうような大きな6つの要因、すなわち、危機を頻発する世界経済、変化に乗り遅れる「国家の統治力」、高まる「大国」衝突の可能性、広がる地域紛争、最新技術の影響力、変わる米国の役割、を、ゲーム・チェンジャーとして分析を加えながら、2030年を展望している。
前述の四つのメガ・トレンドと、6つのゲーム・チェンジャーが、絡み合って互いに影響し合いながら、「2030年の世界」を形成して行くと言うのである。
権力の拡散については、イアン・ブレマーの「Gゼロ」、すなわち、アメリカの地位の凋落によって、「覇権国家ゼロ」の時代が到来するとしている。
1750年以降続いて来た欧米中心主義を反転させ、アジアが再び国際社会と国際経済の主役となり、2020年代のどこかで、中国が米国を追い抜き世界一の経済大国となろうが、中国の労働人口のピークが2016年に来るなど、経済成長も5%程度に下落し、「世界一の経済大国」としての中国の地位は、以外にも短命になる可能性が高いと言う。
世界のあらゆる地域内で覇権国の交代が起きるとして、エジプト、エチオピア、ナイジェリア、ベトナム、ブラジル、コロンビア、メキシコなどの国の台頭に言及しているのだが、これは、ジム・オニールの「ネクスト11」論や、ルチル・シャルマの「ブレイクアウト・ネーションズ」論と殆ど変らず、人口が多くて資源に恵まれた国を列挙した感じで、政治や社会的なカントリー・リスクを無視した分析なので、私は、あまり、信用していない。
その意味では、中国についても同様で、異常な公害や政治腐敗などあまりにも酷いカントリー・リスクの高い国なので、経済大国としてアメリカを凌駕する前に、失速する可能性もあるのではないかと思っている。
詳細を論じるのは、避けるが、インドとブラジルの経済大国への躍進トレンドには、同意している。
日本については、ここでも、日本の国力がじりじりと低下して行くのは見逃せないだとか、「危機を頻発する世界経済」の項でも、特に、最も不な国は日本だとか言った調子で、このレポートでの日本に対するイメージは、非常に悪い。
「国家の統治力」については、民衆が団結して独裁政権に立ち向かった「アラブの春」などに言及して、民主化不足状態にある国、独裁から民主主義に移行中の国は不安定だとして、ペルシャ湾岸や、中東や中央委アジアに集中しているとしながらも、
中国とベトナムの民主化不足状態にも言及して、その動向に注意する必要があると言う。
国民の一人あたりの収入が1万5000ドルを上回ると、国内で民主化の動きが活発になるのだが、中国経済は、今後5年以内に、この水準を超える見込みなので、この民主化は、政治的、社会的な混乱を伴い、多くの専門家が、中国で民主化が進むと中期的には国粋的な内向きの傾向が強まると言う意見で一致している。と指摘している。
現在の中国は近隣諸国と多くの領土問題を抱えており、愛国主義的な傾向が強まれば、こうした近隣諸国との軋轢が更に悪化する可能性がある。と言うのだが、江沢民治下において、愛国教育を受けて育った若者たちが多いことを考えれば、対日関係は、もっと厳しいことであろう。
民主化の動きが、完全に経済成長を止めてしまうような大打撃を与えない限り、長期的には中国は安定した政治制度作りに成功する筈だと言っているのだが、さて、どうであろうか。
そのほか、一つ一つ取り上げていると終わらないくらい、興味深い未来展望が書かれていて興味が尽きないのだが、最後の章「オルターナティブ・ワールド」で、「2030年」4つの異なる世界として、「欧米没落型」「米中協調」「格差支配」「非政府主導」夫々のシナリオを描いているのが興味深い。
最初の二つのシナリオは、ほぼ、想像がつくのだが、
「格差支配」は、経済格差が世界中に広がり、「勝ち組」「負け組が明確になり、孤立主義的な傾向が強まり、EUは分裂すると言う。
「非政府主導」は、グローバルな人材がネットワークを駆使して世界を牽引する時代になって、国際社会はかなり安定したものになると言う。
いずれにしろ、予測などが全く当たらないのが人類の歴史の特質であって、多くの未来予測が、外れに外れて来た現状を思えば、予測そのものが無理なのかも知れない。
しかし、出来るだけ、願望や希いを交えながら未来を展望して、政治経済社会を動かして行けるのが、人間の人間たる所以であるのだから、夢を馳せることは、人間の特権かも知れないのである。