今年のNHK大河ドラマは、「平清盛」で、タイトル・ロールを松山ケンイチが熱演していたと思うのだが、視聴率は最低で、松山が、「ひとつ言えることは、最低記録を更新できたことはすごく光栄だと思う」「本気でやってそれを出せるのはめったにないことで、高視聴率を出すのと同じくらい難しい」と総括したのを、大分、批判されていると聞く。
視聴率だけを狙った民放の俗悪番組とは違って、NHKのメイン番組とも言うべき大河ドラマであるから、低視聴率を威張る言われも理由なども毫もない筈なので、批判されて当然だが、やはり、視聴率が悪かったのには、それだけの理由なり原因があったのだろうと思う。
まず、視聴率が悪かった原因の一つに、神戸市長が批判したように画像なり映像に美的感覚が著しく欠如していて、それに、冒頭から暗いシーンの連続で、視聴者に、楽しいと言うワクワク感なり、話の面白さ興味深さを感じさせて、次が楽しみになると言った気持ちなり期待感を起こさせなかったと言うことであろうと思う。
私は、この時、大島渚の映画作品を思い出していたのだが、やはり、大河ドラマは、いくら、高級志向を意図しても、もっともっと、寅さんの世界に近づけないと、視聴者は、裏番組に多少魅力的なものがあれば、ソッポを向いてしまうと言うことである。
もう一つ気になったのは、このドラマが、歴史とフィクションを綯い交ぜにして描かれていたことで、平家物語なり歴史教科書で得た清盛の世界と違っているなど、どこまでが歴史で、どこまでがフィクションか途惑ったと言うこともあろうかと思う。
たとえば、このドラマでは、清盛が、白河法皇の落胤であるとか、白河法皇と璋子(後の待賢門院)は不倫関係にあって、朱徳天皇は、法皇の実子であるとか、西行が待賢門院に恋をしてなさず故に出家したとか、と言った、必ずしも定説とはなっていない仮説を前面に押し出して、話にメリハリをつけ過ぎていたりしていた。
逆に、定説となっていてファンが期待していたシーンなどを、ないがしろにしたり、さらりと流してしまったり、能や歌舞伎などでは、重要なテーマとなっている平家物語の世界などの、多くの逸話や登場人物の扱い方が、あまりにも多くのサブテーマやマイナー・テーマを詰め込み過ぎたために、杜撰な扱いになっていたキライがある。
ところで、平安時代の末期で、末法思想が強かった貴族社会から武家社会への転換期の物語であり、実際には、ドラマで展開されていたようなドロドロした、決して美しくもなく、あのような暗い側面を持った時代であったと思っており、時代考証などのNHKの扱いなり、ドラマづくりについては、私は、殆ど、疑問には思っていない。
このドラマの視聴率の低さの原因として、「平安時代のハンデ」として、信長や秀吉とくらべて、日本史の授業でも影が薄い時代で、「平清盛」も「壇ノ浦」も単なる"試験に出る歴史キーワード"だと言った批評があったのだが、これなどは、マッカーサーが、戦後の日本人に、日本歴史教育を禁止した後遺症かも知れないのだが、もし、平安時代、それも、源平盛衰時代の清盛や頼朝・義経が、影の薄い時代であり、単なる受験のキーワードだと言った認識を、日本人の多くが持っているのなら、大変な悲劇であろうと思う。
日本歴史上、この時代は、正に日本歴史を画する極めてエポック・メイキングな重要な時代であって、日本人として、政治経済社会、そして、日本精神史においても、肝に銘じて認識しておくべき時代なのであり、平清盛は、正に、日本歴史上最も重要な役割を果たした傑出した日本人の一人なのである。
それに、この批評には、「和歌と草書で意味が分からない」として、「崇徳天皇や待賢門院堀河の有名な歌とか、もはや「百人一首も知らない無教養なやつは見なくて結構」みたいな演出意図にへこむ。受信料払ってあんまりな仕打ちに、チャンネルを合わせるガッツがへし折られる。」と書いてあったが、このあたりに、今回の大河ドラマ「平清盛」の問題がありそうな気がしている。
あくまで、私見だが、私なりに、今回の「平清盛」は、非常に面白くて楽しみながら鑑賞させて貰った。
しかし、正直なところ、平家物語を古文で読破して、平家物語ファンとして、京都や神戸、厳島、下関などゆかりの土地も訪れて、能や歌舞伎にも出かけて、かなり、平家や源氏、そして、平清盛を勉強して知っているつもりの私でも、今回のドラマには、良く理解できない部分があったり、疑問に感じることが結構あったことは事実で、これは、出演者の問題と言うよりも、台本や演出に問題があったのではないかと思っている。
下記の視聴率調査を見れば分かるように、とにかく、全国の視聴者が楽しみにしている大河ドラマであり、何を期待しているのか、NHKの担当者が、そのあたりを十分に認識して、どのような姿勢で臨むのかが、ポイントであろうと思っている。
2000年以降、
視聴率20%を超えた大河ドラマは、
2009年 『天地人』 平均視聴率:21.10% 妻夫木 聡、北村一輝、常盤貴子、阿部 寛、松方弘樹...
2006年 『功名が辻』 平均視聴率:20.9% 仲間由紀恵、上川隆也、武田鉄矢、柄本 明、西田敏行、舘 ひろし...
2002年 『利家とまつ 加賀百万石物語』 平均視聴率:22.1% 唐沢寿明、松嶋菜々子、反町隆史、竹野内 豊、加賀まりこ、菅原文太...
視聴率18%を切ったのは、
2012年 『江~姫たちの戦国~』 平均視聴率:17.67% 上野樹里、宮沢りえ、水川あさみ、向井 理、豊川悦司、北大路欣也...
2004年 『新選組!』 平均視聴率:17.4% 香取慎吾、藤原竜也、山本耕史、優香、江口洋介、佐藤浩市、石坂浩二...
2003年 『武蔵 MUSASHI』 平均視聴率:16.6% 市川新之助、堤 真一、米倉涼子、松岡昌宏、中井貴一...
視聴率だけを狙った民放の俗悪番組とは違って、NHKのメイン番組とも言うべき大河ドラマであるから、低視聴率を威張る言われも理由なども毫もない筈なので、批判されて当然だが、やはり、視聴率が悪かったのには、それだけの理由なり原因があったのだろうと思う。
まず、視聴率が悪かった原因の一つに、神戸市長が批判したように画像なり映像に美的感覚が著しく欠如していて、それに、冒頭から暗いシーンの連続で、視聴者に、楽しいと言うワクワク感なり、話の面白さ興味深さを感じさせて、次が楽しみになると言った気持ちなり期待感を起こさせなかったと言うことであろうと思う。
私は、この時、大島渚の映画作品を思い出していたのだが、やはり、大河ドラマは、いくら、高級志向を意図しても、もっともっと、寅さんの世界に近づけないと、視聴者は、裏番組に多少魅力的なものがあれば、ソッポを向いてしまうと言うことである。
もう一つ気になったのは、このドラマが、歴史とフィクションを綯い交ぜにして描かれていたことで、平家物語なり歴史教科書で得た清盛の世界と違っているなど、どこまでが歴史で、どこまでがフィクションか途惑ったと言うこともあろうかと思う。
たとえば、このドラマでは、清盛が、白河法皇の落胤であるとか、白河法皇と璋子(後の待賢門院)は不倫関係にあって、朱徳天皇は、法皇の実子であるとか、西行が待賢門院に恋をしてなさず故に出家したとか、と言った、必ずしも定説とはなっていない仮説を前面に押し出して、話にメリハリをつけ過ぎていたりしていた。
逆に、定説となっていてファンが期待していたシーンなどを、ないがしろにしたり、さらりと流してしまったり、能や歌舞伎などでは、重要なテーマとなっている平家物語の世界などの、多くの逸話や登場人物の扱い方が、あまりにも多くのサブテーマやマイナー・テーマを詰め込み過ぎたために、杜撰な扱いになっていたキライがある。
ところで、平安時代の末期で、末法思想が強かった貴族社会から武家社会への転換期の物語であり、実際には、ドラマで展開されていたようなドロドロした、決して美しくもなく、あのような暗い側面を持った時代であったと思っており、時代考証などのNHKの扱いなり、ドラマづくりについては、私は、殆ど、疑問には思っていない。
このドラマの視聴率の低さの原因として、「平安時代のハンデ」として、信長や秀吉とくらべて、日本史の授業でも影が薄い時代で、「平清盛」も「壇ノ浦」も単なる"試験に出る歴史キーワード"だと言った批評があったのだが、これなどは、マッカーサーが、戦後の日本人に、日本歴史教育を禁止した後遺症かも知れないのだが、もし、平安時代、それも、源平盛衰時代の清盛や頼朝・義経が、影の薄い時代であり、単なる受験のキーワードだと言った認識を、日本人の多くが持っているのなら、大変な悲劇であろうと思う。
日本歴史上、この時代は、正に日本歴史を画する極めてエポック・メイキングな重要な時代であって、日本人として、政治経済社会、そして、日本精神史においても、肝に銘じて認識しておくべき時代なのであり、平清盛は、正に、日本歴史上最も重要な役割を果たした傑出した日本人の一人なのである。
それに、この批評には、「和歌と草書で意味が分からない」として、「崇徳天皇や待賢門院堀河の有名な歌とか、もはや「百人一首も知らない無教養なやつは見なくて結構」みたいな演出意図にへこむ。受信料払ってあんまりな仕打ちに、チャンネルを合わせるガッツがへし折られる。」と書いてあったが、このあたりに、今回の大河ドラマ「平清盛」の問題がありそうな気がしている。
あくまで、私見だが、私なりに、今回の「平清盛」は、非常に面白くて楽しみながら鑑賞させて貰った。
しかし、正直なところ、平家物語を古文で読破して、平家物語ファンとして、京都や神戸、厳島、下関などゆかりの土地も訪れて、能や歌舞伎にも出かけて、かなり、平家や源氏、そして、平清盛を勉強して知っているつもりの私でも、今回のドラマには、良く理解できない部分があったり、疑問に感じることが結構あったことは事実で、これは、出演者の問題と言うよりも、台本や演出に問題があったのではないかと思っている。
下記の視聴率調査を見れば分かるように、とにかく、全国の視聴者が楽しみにしている大河ドラマであり、何を期待しているのか、NHKの担当者が、そのあたりを十分に認識して、どのような姿勢で臨むのかが、ポイントであろうと思っている。
2000年以降、
視聴率20%を超えた大河ドラマは、
2009年 『天地人』 平均視聴率:21.10% 妻夫木 聡、北村一輝、常盤貴子、阿部 寛、松方弘樹...
2006年 『功名が辻』 平均視聴率:20.9% 仲間由紀恵、上川隆也、武田鉄矢、柄本 明、西田敏行、舘 ひろし...
2002年 『利家とまつ 加賀百万石物語』 平均視聴率:22.1% 唐沢寿明、松嶋菜々子、反町隆史、竹野内 豊、加賀まりこ、菅原文太...
視聴率18%を切ったのは、
2012年 『江~姫たちの戦国~』 平均視聴率:17.67% 上野樹里、宮沢りえ、水川あさみ、向井 理、豊川悦司、北大路欣也...
2004年 『新選組!』 平均視聴率:17.4% 香取慎吾、藤原竜也、山本耕史、優香、江口洋介、佐藤浩市、石坂浩二...
2003年 『武蔵 MUSASHI』 平均視聴率:16.6% 市川新之助、堤 真一、米倉涼子、松岡昌宏、中井貴一...